6話
「黒騎士!かぁくごぉぉ」
「…」
戦場の前線、そこで私は 私に襲い掛かってくる人間達を一掃していた。
「もっと強い奴は居ないのか…。」
弱すぎる。
これじゃ勇者達との戦いのウォーミングアップにもならない。
「どれ、ここはあれでもしてみますか…。」
久々の大技で選別して見ようか。
幸いここら辺には人間しか居ないようだ。
首元から黄緑色の石が付いたペンダントを取り出す。
そしてそれに魔力を与えれば…
「なっ!とっ飛んだ?!」
そう、今私は宙を飛んでいる。
実はこの黄緑色の石は私が作った魔道具。
風魔法と空間魔法を掛け合わせる事で、
翼を持つ者しか出来なかった飛行魔法を実現させたのだ!
「黒騎士だー!打ち落とせー!」
私が上に居ると知った人間軍は火・水・風の魔法で攻撃してくる。
「そんな弱い魔法で…!」
パチン
指を鳴らせば私の四方を黒い穴が囲む。
「《ブラックホール》!」
これも私オリジナル、闇と空間の複合魔法だ。
360度からの魔法攻撃は簡単に《ブラックホール》に飲み込まれる。
「なっ!魔法が消えた!」
「ひぃぃぃっ!」
魔法が消えただけで辺りは恐怖に包まれた。
「お返しだ!食らうがいい!《黒炎》!」
「ひぃっ!ぎゃあぁぁぁあ!!」
「何だ?この黒い炎ーっうぁぁ!」
これもまた私が生み出した複合魔法《黒炎》。
闇と火属性で出来たこの魔法は、
相対魔法である光・水を掛け合わせた複合魔法でなければ消す事は不可能。
「ま、そんな事出来るのは勇者位か。」
辺りを黒い炎の球が次々襲う。
私は上空から誰か生き残るかと思いながら、燃え尽きて逝く人間達を眺める。
しかし…。
「やっぱり全員死んだか、弱いなぁ。さて、勇者達はどこに居るかな?」
上空からなら見つけられると思ったが…ん?
何だ?もしかして人間軍撤退してないか?
………
撤退し始めてるじゃん!
魔族軍が優勢だったから?
人間軍の生存数も少ないし!
私は勇者を倒してないぞ!
「烈火!」
少し離れた場所で人間達と戦う愛馬を呼び寄せ、
その背に跨る。
「逃げた人間達を追え!」
ヒヒィィィン!
いななき、走りだす烈火。
その間にー。
「聞こえるか魔王!」
『聞こえている。どうした黒騎士。』
「人間軍が撤退した!私は勇者を追う!竜部族長に後を任せる様に伝えてくれ!」
『俺に伝言役をさせるのかお前は…。まぁいい…、
竜部族長には逃げた人間を深追いしない程度に追うよう伝える。だが黒騎士、
お前も国境を越え無い程度にしろ。』
「判った!」
前方を走る人間軍を追う魔族軍達を追い越し、勇者の後を追う。
その間、逃げるのを止め斬り掛かる人間達を凪ぎ払う。
「どこだ、勇者!!」
私の声は辺りまで響くが、勇者達の姿は見付からなかった………。
ーーーーーーーー
優也視点
「っ…、ここは…?」
「ゆっくん、やっと起きた!」
「香奈?」
「大丈夫か優也?具合はどうだ?」
「雅人…、大丈夫だけど。俺は一体…。」
起き上がってみれば何処かの湖。
先程までの戦場とは全く違う静かな場所だった。
「覚えてないか?戦場での事…。」
「そういえば…。」
何故湖に居るのか、それは解らないが意識を失う前の事を少しずつ思い出す。
ーーー
「次はどいつだ?!」
オーガを倒して魔族軍に向かって行こうとした時、
「黒騎士だー!打ち落とせー!」
突然、皆が上に向かって攻撃を始めた。
「黒騎士!?」
3年前表れた魔王の分身であると言われる存在。
上空には全身を黒い鎧で覆っている者の姿が…。
「あれが、黒騎士!」
「とっ飛んでる!どうやって?」
俺同様上空を見る雅人・香奈。
黒騎士に向かって人間軍は火・水・風の魔法で攻撃しだした。
360度からの攻撃、これは防ぐ事はできない。
そう思ったが…。
パチン
上空で黒騎士指を鳴らせば黒騎士の四方を黒い穴が囲む。
まるでブラックホールの様な穴、
360度からの魔法攻撃は簡単に飲み込まれてしまった。
「なっ!魔法が消えた!」
「ひぃぃぃっ!」
魔法が消え 辺りは恐怖に包まれた。
「あんなのが、居るのか!」
「まさか魔法が消される何て…。」
少し離れた位置から目撃していた俺達も唖然としていた。
「お返しだ!食らうがいい!《黒炎》!」
「ひぃっ!ぎゃあぁぁぁあ」
「何だ?この黒い炎ーっうぁぁ!」
そうしていると、今度は黒騎士から黒い炎が飛んできて、
辺りを黒い炎の球が次々襲う。
「っ!」
「優也!」
「ゆっくん!」
俺の目の前にも黒い炎が飛んできて…。
俺の目の前は真っ暗になった…。