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私はお前らが大嫌い   作者: ヒスイ
28/29

19話

雅人視点





「きろ…起きろ雅人!」

「!!」



誰かの声で目を覚ませば、目の前には紫穂の姿が。



一体俺はどうしたのだろう?

確か…香奈と魔王を倒すために戦っていて…。



「っ!そうだった、魔王は?香奈は?!」

「落ち着け雅人、魔王も香奈もあっちだ。香奈はまだ寝てる。ついでに勇者もな。」

「そうか…。」



紫穂の視線の先には倒れている香奈と優也に、2人の傍で佇む魔王の姿が。




「そうか…。そうだ紫穂、戦争は?どうなったんだ?」

「戦争はもう終わる。お前達は元の世界に帰れる。」

「お前達はって…紫穂はどうするんだ?」

「私はこのまま此方に残る。彼方には帰らない。」

「!?…もう決めた事なのか?」




そうは言っても紫穂の眼は覚悟した眼だ。

何を言っても聞かないのだろう。



「ああ、それで雅人には頼みがある。」

「頼み?」

「彼方に帰ったら、香奈に戦争が終わった事、私が此方に残った事を教えてやって欲しい。」

「わかった…。だが、叔母さん達には何も言う事は無いのか?」



向こうに帰り紫穂が居なかったら、叔母さん…紫穂の両親達はきっと心配するだろう。



「特にないな、お母さん達も私より雅人達の方が好きみたいだからな。」

「そんな筈無いだろう?叔母さん達だって紫穂が大切に決まってる。」

「…その話はもういいだろ。さようなら、私の大嫌いな幼馴染達。」

「紫穂っ!まだ話は…。」



久しぶりに見た紫穂の笑顔を最後に、俺の意識は白と黒に呑み込まれた。






ーーーーー




「と!…雅人!!」

「!?…優也?ここは…俺の部屋?」



気が付けばここは元の世界の俺の部屋、部屋には優也が来ており、

俺に呼び掛けてくれた様だ。



「そうなんだ、どうやら俺達戻って来たみたいだ、向こうの世界から。俺もさっき目を覚ましたんだ、

俺の部屋で。」

「そうなのか…。だが何故俺達は部屋に?さっきまで公園に居たはずだが?

それにいつのまにか日が暮れてる。」




紫穂を呼び出した公園から向こうの世界に行ったのに。

夕暮れだった空は日がとっくに沈み、真っ暗だった。


「俺もそれはよく解らないんだ。母さんに聞いたら俺は普通に帰って来たって。

ちょっと元気が無かったけどって、言ってた。」

「そうか…。そういえば香奈や紫穂は?」



『さようなら、私の大嫌いな幼馴染達。』




香奈はともかく紫穂は…あんな事言ってたのだ。

きっともう…。




「香奈は目を覚まして、今は紫穂を「ゆっくん!まーくん!」香奈?」




慌てながら俺達の元にやって来た香奈。

急いで来たからか息も絶え絶えだ。



「大変なの!しーちゃんが何処にも居ないの!?」

「!?、紫穂が…居ない?」



紫穂が居ない、それを聞いて優也の顔は血の気が退いたような顔に。




「やっぱりか…。」

「やっぱりって、どういう事まーくん?」

「向こうから戻ってくる前に俺は紫穂と話をした。それで戦争が終わった事と紫穂が向こうに残るって決めた事を伝えて欲しいって。それと…!?」




全部言い終わる前に俺は優也に胸ぐらを掴まれる。




「何で…何で止めなかったんだ!向こうに残る何て…雅人が説得してくれたら!!

紫穂はこっちに戻って来てくれたかも知れないのに!?」



優也の顔には怒りと悲しみが浮かんでいた。

紫穂を止められなかった俺への怒り、紫穂が居なくなった事への悲しみが。



「すまない…、紫穂に考え直させる事は俺には無理だった。紫穂は向こうで生きる覚悟があった、

だから何も言う事は無かった。」

「だからって…何でだよ…もう紫穂に会えなくていいのかよ雅人。」

「良いわけないだろ…、けど俺達は散々紫穂に迷惑を掛けたんだ…。

紫穂のやりたい様にさせるのが俺達なりの償いだと思う。」



そう、俺達はいつも紫穂に迷惑を掛けた。

恐らく小学校高学年あたりからだろう、その頃から紫穂はどこかよそよそしかった。


だからこそ…紫穂には彼方で好きな様にさせてやりたい。



「もし…もっと早くにしーちゃんの事気づいてあげられたら、何か変わってたのかな?」

「俺には解らないや…、雅人はどう思う?」

「…紫穂の最後の言葉は…『さようなら、私の大嫌いな幼馴染達。』だった…。

きっと気づいても遅かっただろうな…。」




優也と香奈は自身の事を悔やみ泣いた。

俺も静かに涙を流した。





ーーーーー



優也視点



ごめん、ごめん…紫穂。



向こうの世界から元の世界に戻り、雅人の部屋で俺達は泣いた。

紫穂の事何も考えなかった俺自身を悔やみながら。




一通り泣いた後、雅人の部屋に雅人のお母さんが慌ててやってきて、紫穂がまだ帰って無い事、

紫穂の両親が心配している事を聞いた。




そうして紫穂の家や俺達の前に警察が事情聴取に来た。



俺達は彼方の世界の事は伏せ、最後に俺達が紫穂と近所の公園で会った事、

俺が紫穂に告白し振らた事、雅人から聞いた紫穂の最後の言葉を洗い浚い全て話した。



ーーー




翌日俺達は話し合い、いつもより早くに学校に向かった。

まだ人が少ない学校で、紫穂の下駄箱やロッカー、机を調べ、見てしまった…。




下駄箱に入れられたおびただしい数の死ねや消えろと書かれた手紙、

ロッカーに入れられた生ゴミ、机の上に置かれた白い菊の花と、



それらの嫌がらせ行為を行う後輩達や先輩達、友人達の姿をー。







調べれば簡単に解った。

学校の大半…俺達が友達だと思っていた人達が紫穂に嫌がらせ行為をしていた事に。



顔を青ざめた皆はすぐ俺達に謝って来た。




許して。

ごめんなさい、もうしません。

すみませんでした。



皆が口々に行って来ても、俺達は皆を許せそうに無かった。




「酷い、酷いよ皆!?私達もだけど…皆の…皆の所為でしーちゃんは!!」

「何故紫穂にあんな事をしてたんだ!?気づかない俺達も悪いが!お前達がした事は最低な行為だ!」

「紫穂が何かしたのか?!何もしてないだろ!!…もう俺達に近づかないでくれ!!」


そうして香奈、雅人、俺は。


いつも迎えに来てくれる皆に迎えを止めさせ、

いつも話しかけて来た皆とも話すのを止め、

いつも貰っていた差し入れを受け取るのを止めた。




それでも皆が謝って来た、紫穂ではなく俺達に。






皆が嫌がらせ行為の犯人だと俺達が知ったすぐ後、学校に警察がやってきた。



そうして…

井野原紫穂が行方不明になった原因は同高の生徒達による嫌がらせ行為にたえきれなかった為。




と嫌がらせ行為を調べた警察は紫穂が行方不明になった原因を見解した。


そうして…二度と此方の世界で紫穂が見つかる事は無かった。



こっちでは君を苦しめてごめん…


どうかそっちでは幸せになってくれ紫穂。





さようなら…俺の大好きな幼馴染…。






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