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私はお前らが大嫌い   作者: ヒスイ
22/29

14話

魔王視点



「大丈夫かシホ?」



陣営に戻ってからずっと魔女部族長を回復させていたからか、青い顔でテントの隅に座り込むシホ。



「あぁ…それと、その名で呼ぶなと言ってるだろう…。」

「そうだったな。だがこういう時位、真名まなで呼んでも構わんだろ?」

「…勝手にしろ。」

「あぁ、そうする。」



シホの隣に座り込めば、テントの布ごしに土の冷たさを感じる。



「ところで…お前には城の留守を頼んだはずだが?」

「あっ…。いや、わっ忘れていたわけじゃ…。」



しまったという顔をし焦りだすシホ。

〔シルベーノン〕以来、以前の様なコロコロ変わる表情を見られなくなったが今は時折、

表情を浮かべる様になって俺は少し安堵する。



「今は、獣人部族長に吸血鬼部族長、鬼部族長が留守の城を守ってくれている。

だから焦る必要はない。」

「そっそうか…なら良かった。」

「それとシホ。魔女部族長を助けてくれて心から感謝する。

…俺は二度と俺を庇い誰かが死ぬのは嫌だったからな。」



あの時、シホが来なければ魔女部族長は死んでいたかもしれない…。

そう考えると背筋が冷たくなる。



「どういたしまして。あと礼を言うのは此方もだ。あの時魔王が声をかけてくれなければ、

頭を冷やす事が出来なかった。」

「そうか、それにしてもあの勇者は物凄く馬鹿なのか?」

「頭は良いが色々と馬鹿な奴なんだ。」

「そうか…、あの勇者と戦ったが終始お前を解放しろとかシホを返せと喚いていた。」

「うわぁ…。」




本当に喧しかった…。

勝手な想像を押しつけられていい迷惑だ。



思い出すと段々苛ついてくる。

…しかしだ。



「シホ。明日全ての決着をつけると言っていたな。」

「そうだが?」

「恐らく勇者は聖女や賢者と行動を共にしている。だから、

聖女や賢者は俺に任せてお前は勇者を斬れ。」



勇者を一番恨んでると言っていいのはシホだ。

だからこそシホに全てを託すとしよう。


そう思い、勇者を斬れ。と言えばシホは驚いた顔をする。




「!、いいのか?」

「色々と勇者はムカつくが、お前の方が根は深い。だからこそ、

俺の分を含めて今までの鬱憤全て晴らせ。」

「ハハハッ流石だな魔王、任せておけ、全力を持ってフルボッコだ。」

「ふふっ。…あぁそうそう、光の神は俺の方が根が深いから俺に任せろ。」

「光の神なら2人がかりの方がいいんだろ?魔王7割、私3割でどうだ?」

「それもそうだな。」

「よしっ決まり!明日の決着が着いたら、すぐ光の神を〆る。」

「十分な休息をとる必要もあるぞ。」





光の神の事だ、今頃俺達を覗き見してるだろうな。






その頃別空間で、

「まだそんな事考えてたのー!」

と、お菓子を食べていた真っ白な人物が悲鳴をあげていた。







ーーーーー


優也視点




ダンッ

「さっきの…一体どういう事何だ雅人!」

「ッ!」



あの後、紫穂と魔王が撤退すると魔族達全てが撤退していった。


俺達は今国境近くの砦で体を休める様言われた。

だが俺の頭には先程の紫穂と雅人の話しかない。



雅人の胸ぐらを掴み壁に押しつける。



「もう訳が判らねぇよ!紫穂が死んだとか黒騎士だったとか…3年前からこっちに来てたとか!!

詳しい事教えろよ雅人!」

「つぅ!?」

「落ち着いてゆっくん!まーくん苦しそうだよ!?」



香奈の声で俺はようやく雅人の首を絞めかけていたのを知る。



「ぁ…悪い…。」

「ゲホッ、ゴホッ!…っ大丈夫だ。」


香奈に背を撫でられ呼吸を整え雅人は話しだした。




「優也、俺も全部を知っているわけじゃない。だが知っている事は全部話す。」





湖での出来事の後城にある書庫から魔王や黒騎士の情報を得る為、魔族に関する資料を調べた事。



3年前、黒騎士が現れた事。

黒い髪の魔族の資料絵が紫穂だった事、

そしてそれが、紫穂が3年前からこっちに来ていたと考えてしまう材料になったと言う事を。




「でもまーくん…もしかしたらそれしーちゃんじゃ無いのかも…。」

「ずっと前から紫穂を見てきたなら一目で判るよ。アレが紫穂だってな。」

「…。」

「でも、どうして紫穂だけ3年前から?」



思った疑問を雅人に投げ掛ければ、雅人は少し渋った様な顔をし直ぐに口を開ける。



「ずっと考えていた事がある。…紫穂だけ3年前に来たのは、

紫穂が言っていた光の神による異世界召喚に巻き込まれたからだと。」

「あぁ…。」




そう…確かに言っていた、そして闇の神に魔族として蘇らせてもらったと。



「その紫穂が死んだ原因の光の神、または紫穂を魔族として蘇らせた闇の神のどちらかが、

紫穂を3年前に送ったとしたら?」

「そんな事本当にできるのまーくん?」

「相手は此方の世界の神様だ。不可能ではないだろう。」

「神様か…。」




一体どちらの神様が紫穂を3年前に送ったのかは分からない、

でもそれにより俺達の日常が変わったのは事実。



もし光の神が俺達じゃなく別の奴を異世界に召喚していたら…



そしたら…





「…私はずっと前からお前等が大嫌いだ!縁を切り二度と会いたくない位にな!!」






今でも思い出す…紫穂のあんな言葉を聞かなくて済んだかもしれないのに…。





でもきっと彼方に居てもいつか聞かなくてはいけなかったかもしれない。



紫穂は彼方で嫌がらせを受けていたと言っていた。



「紫穂は何時から嫌がらせを受けてたんだろ…。」

「嫌がらせだなんて、そんなの有り得ないよ!だって皆凄い優しくていい人達ばっかりだもん!」



ポツリと呟いた、俺の言葉を真っ先に否定する香奈。

…確かに香奈の言う事も一利ある。

皆、俺達を慕ってくれて荷物を運んでくれたり食べ物をくれたりしてくれた。



「でも、そう聞いて考えれば…いくつかそれらしき事があった。」



次に俺の呟きに反応し肯定したのは雅人だ。



…そうなのだ、雅人の言う通り次々思い浮かぶのは少し考えたら解る嫌がらせの数々。




何時から紫穂は身を守るため体を鍛えた?

何時から紫穂は気に入っていた長い髪を切った?

何時から紫穂は俺達の前で笑わなくなった?

何時から紫穂は学校で俺達以外の誰かと行動する事がなくなった?




「どうしてもっと早く気付かなかったんだろな、俺達…。」




もっと早く気づいていれば何か変わって居たのだろうか?




俺はただただ後悔するばかりばった…。






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