11話
今回の戦争、
私は魔王城での留守番になってしまった…。
何度説得しても魔王は聞く耳持たず…。
魔族軍を連れ戦場に行ってしまった。
今まで全く参加しなかった癖に、どういう 風の吹き回しだろう?
意外と魔王は勇者達と戦って見たかったのか?
「で?本当の所どうなんだ、魔王様?」
『以前言った通り、ただ勇者達を見てみたいだけだ』
魔王が不在な為、城に残った私は魔王の玉座でのんびりさせて貰ってはいるが……ヒマだ…。
「本当にそれだけか?」
『そうだ…勇者達の確認だ。』
「人間領の結界の確認は?」
『そんなものついでだ。』
「おい…。」
勇者達よりも結界の方が優先順位は高いと思うがな…。
『光の神が寄越した人間だ…確かめるのは当然だ。……ボソッ(それに奴らがお前を苦しめるなら…』
「?何か言ったか?」
『知らん。そろそろ念話は切るぞ、人間達が我々に気付いた様だからな。』
「わかった…。」
念話が終わった今、留守番である私に出来るのはただ待つだけ…。
「魔王…無事に戻って来い…。」
闇の神…どうか魔王を守って下さい…。
魔王は自分は不死身とか言っていたが、やはり心配なんだ…。
だからこそ神頼み何て滅多にしないが、あの優しい闇の神だ。
きっと魔王を守ってくれるだろう。
ーーーーー
魔王視点
シホとの念話を俺は国境の方角を見る。
砂塵と轟音がこちらに向かって来ている。
その中には一際大きな魔力が1つ。
「此方に向かって来ているか勇者…。俺とシホの魔力は同じ位の大きさだからな、
シホと間違えて居るんだろう…。」
果たして勇者は何を思って向かって来るのだろう?
シホが俺に操られている等と下らない考えならば…
シホの手を煩わせる必要は無い。
俺が潰してやろう。
「さて…。」
此方に向かって来る人間達、魔族軍のモノ達も戦う準備は出来ている、
俺がすべき事は1つ。
「魔族軍の戦士達よ!亡き同胞達の仇である人間達を打ち倒せ!!」
オオオオオォォォォ!!
出陣の号令を出せば、頼もしい戦士達は一斉に前に出る。
「各部族長はここで待機!俺は勇者の元に行く。」
「「なっ!?」」
共に戦場に来た龍・魔女・獣人の部族長にそう指示すれば皆が慌て始めた。
「なりません魔王様!魔王様はどうか奥にお戻りを!」
「俺が戻れば誰が勇者と戦うというのだ、魔女部族長?」
「そっそれは私めが…」
「ならん。もう勇者の力はだいぶ強くなっているだろう。
今となっては俺か黒騎士しか相手に出来ないくらい。」
「…」
以前の勇者は3本角の鬼相手に苦戦したと聞いたが、今や5本角の鬼部族長に匹敵、
またはそれ以上の力を持っている。
今また前線で4本角の鬼の魔力が消えた。
「これ以上、戦士達を殺させる訳にはいかんからな。」
「お待ちください魔王様!」
制止する声を無視し俺は勇者の元に向かった。
ーーー
近づいてくる人間は俺の魔力に適わないと感じればすぐ逃げ出す者ばかり。
逃げた人間を戦士達が次々殺す。
「脆すぎるな人間は、勇者と戦う前座にすらならないとは…。」
戦う価値すら無いな人間は…。
早々に勇者を見つけ、溜りに溜まった鬱憤を晴らそう。
そう思った時だ。
「紫穂!」
俺の前に飛び抜けて大きな魔力を持つ人間と、
並の人間よりは大きい魔力を持つ人間達、
3人が現れた。
コイツ等が勇者に賢者・聖女。
「漸く見つけた…、貴様が勇者だな。」
「っ!紫穂じゃない。お前は一体…。」
「俺は魔王。…勇者よ、お前の力、確かめさせて貰う!」
「「「!!!」」」
勇者達に向かって闇の魔法で生み出した刃を放てば、ギリギリの所で躱した。
「反応速度が遅いな。もっと危機感を持たねば死ぬぞ?」
「っ、お前が魔王…。」
助言をしてやったら、斬り掛かってきた勇者。
だが俺にはそんな剣は通じない。
全て余裕で避ければ勇者は此方を睨む。
「…を、紫穂を解放しろ!魔王!」
「なに?」
「お前が紫穂を操ってるんだろ?じゃなきゃ紫穂が人を殺したりなんてしない!!」
やはりか…シホが俺に操られている。
シホが思った通りの考えだ。
単純な思考しか出来ない勇者だな。
シホが戦いたがっていたが、こんな下らない奴ら、シホが戦う価値もないな。
「何も知らない勇者とは、実に滑稽だな。」
「何だと!?」
「俺はシホを操って等居ない。それどころかシホを戦わせたくもない!《火球》!」
「なっ!」
火の魔法で生み出した巨大な火球を勇者達に向かって落とす。
…しかし
「《守護結界》!」
「っし、ナイス香奈!」
「えへへ。」
「《水槍》!」
「ちっ、聖女と賢者か…。」
俺の魔法は聖女に弾かれ
賢者が俺に攻撃する。
「シホを戦わせてる癖に、戦わせたくない何て嘘をつくな魔王!お前は…」
「ふん!貴様等がどう思おうが関係ない!貴様等はここで…」
聖剣を握りしめ此方に斬り掛かろうと、向かってくる勇者。
対する俺も闇魔法で剣を作り、勇者の元へ向かう。
「「俺が倒す!!」」
互いの剣が、強い魔力が激しくぶつかり合う。




