過去編6話
これにて過去編終了!!
念の為、言っておきますね。…残酷描写?になるかも知れない?です。
…たぶん大丈夫だと思いますが…。
一応の注意でした。
「待っていたわよラウル。さぁ早く!私の水晶花はどこ?早く見せてちょうだい!」
ここは人間領 アルロベ侯爵家
外套を深く被った私は、ラウルと呼ばれる人間の後ろに立ち、剣の柄をその背に当てる。
余計な事をしない様釘を指す為に。
「おっお待たせしましたお嬢様…、その…こちらが水晶花でございます。」
ラウルに持たせた水晶花はだいぶ枯れ、月の光を浴びてももう輝いては居なかった。
「こんなのが水晶花?ふざけないで!こんなの水晶花じゃあないわ。一体何しに行ったのよ?!
もういいわ。あの街中の魔族は皆殺しにしたんでしょうね?私御用達の庭師に直接採りに行かせるわ。」
先程からラウルと話して居るのはアルロベ侯爵家のお嬢様、
…つまりミント達を殺す様命令した張本人。
金髪の派手な巻き毛に派手な化粧、
胸元を大きく開けたこれまた派手なドレス、
その首元には大きな宝石の着いた首飾り、
指にもいくつか指輪がある。
漫画に出てくる様な悪女みたいな格好だな…。
「月の光りを浴び美しく輝く水晶花、私にこそふさわしいの…。
それがもうすぐ私の物。ウフフ、楽しみだわぁ。」
水晶花を身に付ける自分を想像しているのだろう、
自分に酔いしれるお嬢様。
こんな奴の自分勝手な考えのせいでミント達が殺された…。
そう考えるだけで腸が煮えくりかえるのが解る。
「そうと決まれば早速準備よ!明日の朝一に出発する様庭師達に連絡を…」
次の瞬間にはお嬢様の首は胴から離れていた。
「おっお嬢様!」
血を拭きだし倒れる、お嬢様だった塊を見ながら驚愕するラウル。
その傍には
外套を脱ぎ
血に濡れた剣を握る私。
「ヒッ、ヒイィィィッ、たっ助けてくれー!」
喚きながら部屋を出ていこうとする人間、
だがその前にただの肉塊になる…。
「人を2人も殺したのに…何も感じない…私はもう人間には戻れそうにないな…。」
静かに涙を流しながら、ラウルの悲鳴に駆け付けようとする数人の足音の方へ迎う。
もう2度と泣くことは無いだろう…、
今の私は魔族だ。
人間は魔族の敵なのだから。
ペンダントだった鎧を身に纏い、足音の人物達を次々蹂躙する私の姿を見て、
人間は恐怖し言う。
「化け物!!」
とー
ーーーーー
魔王視点
水晶花の街〔シルベーノン〕が人間により襲われた。
その報せを聞いたのは全てが終わった後だった。
「血の匂いを纏ったシホが帰城した。」
魔女族の部族長が慌てながら謁見室にそう知らせて来た。
その間もなく後、
シホが土・空間魔法を使用しながら大量の水晶花を持ち帰ってきた。
以前は魔法の扱いが下手で、2つの魔法を同時に使う技術は無かった筈だ…。
魔法石を作った事で風や空間での飛行に成功したと聞いたが、
今のシホは魔法石など使ってない…。
また以前より格段に身に余っていた魔力を引き出せる様になっている、
更に出発前はペンダントだった鎧を身に纏っている。
「シルベーノンが襲われたと聞いた…、何があったんだ?」
「…水晶花を狙った人間が街の結界を破壊し街中の魔族を殺した。」
「そうか…シルベーノンは…皆が…滅んだのか…。」
またも多くの魔族が殺された。
そう聞くだけで体から力が抜ける。
創世記からずっと生きている俺にとって魔族の皆は大事な家族であり仲間。
まだまだ生きられたであろうに、無惨に殺されていく魔族達の事を考えただけで…。
人間に…人間と敵対させる光の神に怒りが湧いてくる。
「魔王…この水晶花、シルベーノンには置いておけなかったから持って帰って来た。
…どこかコレを植えるのに良い場所を教えて欲しい。」
「なら、城の中庭に花が植えられてない花壇がある…そこを使うといい。」
「分かった。」
用は済んだとばかりに部屋を去ろうとするシホ。
俺はその姿をみて申し訳なく思ってしまった。
「すまない…俺がシルベーノンを勧めたから、お前をこの様な目に遭わせてしまった。
…本当にすまない…シホ。」
微かな声だがシホには聞こえたのだろう…
俺の言葉に足を止めたシホがこちらを振り向かずに言う。
「魔王が謝る事は無い…悪いのは人間だ。……それと、私はもう井野原紫穂じゃない…。
人間だった私は死んだ。…もう紫穂とは呼ぶな。」
そう言って今度こそシホは部屋から出ていってしまった。
ーーー
それからシホは戦争に参加する様になった…。
人間を次々殺していくその姿を見ていつからか人間から〔黒騎士〕と呼ばれ、
恐れられる様になるほど…。




