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☆66☆ 最高の友達


 見直しをしてないのでおかしいかもですが。

 後で読み返しておかしなところは修正します!

 今日はこれから飲み会><b イエーイ!


 「さーちゃん、大丈夫?」


 呼びかけられて目を開けると。

 優ちゃんと久美があたしを覗き込んでいた。


 「あ……優ちゃん」


 「本当にドジ! なにやってんのよ……」


 優ちゃんの目が潤んでいくのが見えて、あたしはベッドに横になったまま微笑む。


 「もう、平気だよ。……雪ちゃんは?」


 「いるよ」


 優ちゃんは潤んだ瞳で微笑み、隣のベッドを見えるようにどけてくれた。

 横を向くと雪ちゃんがベッドに腰を下ろしてあたしの方を見つめている。

 

 「雪ちゃん……あたし……ごめんね」


 今にも飛びつきたかった。

 それができないもどかしさで泣きそうになる。


 「どうして、さーちゃんが謝るんですか? 私の方が悪いのに…・・・」


 雪ちゃんは悲しそうに微笑んであたしと同じように今にも泣きそうだった。


 「どっちが悪いとかいいだろ! 雪はとにかく謝ればいいんだよ!」


 久美は怒ったように雪ちゃんの腕をひっぱる。

 雪ちゃんの身体がベッドから引きずり下ろされてあたしの前へ。

 

 「久美ちゃん……」


 あたしの前に立っている雪ちゃんが申し訳なさそうに呟くとうつむきながらあたしの手を取る。

 あたしはさっきよりは痛みがひいた身体をゆっくりと起こす。


 「雪ちゃん、ごめんね。あたし……気づいてあげられなかった」


 「さーちゃん……、違うんです。私!」


 雪ちゃんが言いたいことは先生との会話でわかっていたから。

 あたしは「うん」とわかっていると頷いてから微笑んだ。


 「ありがとう。あたしを守ってくれたんだよね……あたしが怖がらないように必死に隠してくれてたんだよね。雪ちゃんは不安でいっぱいで泣いてたのに……」


 「さーちゃん……」


 「あたし、雪ちゃんが本気であんなこと言うはずないって信じてたもん!」


 あたしはそっと雪ちゃんの左手首にふれる。

 

 「ごめんね……ずっと痛かったよね……ずっと」


 そう。

 きっとずっと痛かったんだよね。

 あたしが笑ってるときも雪ちゃんは苦しくて痛かったんだ。

 相談したくてもできないで、ひとりぼっちだったんだよね。


 「さーちゃんはバカですね」


 雪ちゃんの目から大きな涙がこぼれる。


 「あれ? さーちゃんがバカなのなんて知ってたことじゃない」


 優ちゃんがおどけて口をはさむ。

 

 「だよな〜。さーちゃんのバカがつくくらい人を疑わないのはもう特技としか言いようがないだろ!」


 「久美ーっ、それ褒めてるの!?」


 あたしは大きな口をあけて笑う久美をにらみつけた。


 「私……勉強ばかりしてて、少しだけ羨ましかったんです。いつも楽しそうなさーちゃんが、いつでも笑ってて。私はたくさん勉強しても受からなかったらどうなるんだろうって怖くて。もう怖くて……気づいたら自分で自分を……先生には相談してたんですけど、先生は友達にも相談してみろって言われて……でも、言えなかったんです。いつも笑ってるさーちゃんを悩ませてしまうって、それも怖くて……さーちゃんに気づかれたって思ったとき、もうダメだって思いました。もう嫌われるって。だから逃げたんです……それがこんな事になってしまって……ごめんなさい」


 「勉強ばっかりね〜、確かに雪はやりすぎだな! でもな、やるだけやってダメなら仕方ないだろ? くよくよすんなよ!」


 久美はガハハッと豪快に笑う。


 「久美〜、あんたね〜。慰めになってないっての!」


 優ちゃんと久美はいつもどおり笑いながら雪ちゃんの悩みを受け止めて二人なりに気遣っていた。

 残されたあたしは真っ直ぐ雪ちゃんを見つめて微笑んだ。

 そう、もう心は決まっていたから。


 「大丈夫だよ。まず! 落ちたら……とかは考えない! 久美が言うみたいにやるだけやろうよ。怖いのはみんな一緒だもん。雪ちゃんだけじゃないよ」


 ひとりじゃない。

 あたしたちはひとりぼっちなんかじゃないんだから。


 「そうだぞ! オレなんか受からないって太鼓判押されて仕方なく志望校変えたんだからな!」


 「えっ!」


 久美の一言に3人が驚いた。

 

 「志望校変えた? 先輩追いかけて泉高校行くんじゃなかったの?」


 優ちゃんが初耳とばかりに口をパクパクさせて言う。


 「やめたっつたろ〜。先生が受からないって言うもんだから親がビビッて変えたんだよ! 本当ロクなことしねーんだよ」


 「久美ちゃん……」


 「雪ーっ、そんな目でみるなよ〜、オレだって泣いたぞ。でもな〜仕方ないこともあるんだって。まっ、いいほうへ考えようって事でオレもさーちゃんと同じ高校だからな」


 「えっ!」


 2度目の衝撃。


 「あたしと同じ?」


 「あんた、東高校行くの?」


 「久美ちゃんだけズルイ!」


 「なんだよ! 急に変わりやがって! なにがズルイだよ! オレはな〜泉高校へ行きたかったんだぞ! 少しは慰めろよ!」


 久美はバタバタと手足を動かす。


 「な〜んかおもしろくな〜い」


 優ちゃんが急にふくれると、雪ちゃんまでもが「へ〜そうなんですか〜」と空気があやしい。


 「だっから! お前らみんなおかしいだろ! そこ責めるとこちがうし!」


 「もー、優ちゃんも雪ちゃんも久美をいじめるのやめなよ……」


 あたしはあまりにもいつもどおりの展開に苦笑する。


 「そうだぞ! 雪とオレと対応の差はなんなんだよ! それに雪の話はどうなったんだよ!」


 「あ〜、あれ? もういいよね」


 「はい! もういいです! なんか重要な話を聞いた感じがしますし!」


 優ちゃんと雪ちゃんは二人でコソコソと話しだす。


 「優ちゃんも雪ちゃんもさ〜……久美かわいそうじゃん……」


 「信じられないよな……これが友達かよ」


 4人に笑顔が戻ってくると んっんっ! とわざとらしい咳払いが響く。

 みんなで咳払いの主を振り返ると、苦い顔をした緑川君が立っていた。


 「仲直りがすんだなら早く帰れよ」


 無表情に冷たく優ちゃんたちに言う。


 「うっわ〜、最悪なのが来たよ」


 優ちゃんがあたしを隠すように立つ。

 

 「まあ、あいつが共通の敵って事で」


 久美は腕組みをしてふんっと鼻を鳴らした。


 「そうですね!」


 三人はあたしの前を塞ぐ。


 「あのさ〜、敵とかどうでもいいけど、澤田さんは誰かさんのせいで動けないわけだし、迎え呼んだりしたの僕なんだよね。何の役にも立たないなら早く帰って、その心配な勉強でもしたらどうなの?」


 相手にならないというように、緑川君は保健室の応接セットのソファーに自分のカバンを置いてテキパキと保健室使用の書類を記入しはじめていた。


 「ひ、ひどいですっ。確かにさーちゃんはあたしのせいで……」


 「雪! 泣くな! これは罠だ!」


 「雪ちゃん、泣いたら……ああ〜っ」


 座り込む雪ちゃんを抱えるように三人はその場に座り込む。

 視界が開けて、まっすぐに緑川君が見える。

 

 「背中、どう?」


 書類に何かを記入していた手をとめて、あたしの方を視線だけむけて緑川君がきいてくる。

  

 「うん、もうだいぶいいよ。歩けると思う」


 あたしはベッドからゆっくりとおりる。

 足を床につけて、ベッドに手をついたまま立ち上がる。

 少しだけ痛みが背中に残っていたけど、歩けないほどではなかった。


 「いいみたいだね。一応、家の人を呼んでもらったから、もうすぐ迎えがくるよ」


 「ありがとう」


 そのまま、あたしはベッドに腰をおろす。


 「もう遅いし、優ちゃんたちは帰っていいよ。あたし、迎えを待つし」


 しゃがみこんでいる三人を見下ろしながら、あたしは笑う。


 「うん、じゃあ、あたしたち帰るね」


 優ちゃんは雪ちゃんの背中をポンポンと励ますように叩くと三人は立ち上がって歩きだす。

 そのうしろ姿にあたしはもう一度確認するように言葉をかける。


 「雪ちゃん! もうダメだよ、また怖くなったら、そのときは電話してよ!」


 あたしはベッドの上から小さくなった雪ちゃんの背中に言うと雪ちゃんが少しだけ振り返る。


 「さーちゃん、ごめんね……」


 「あたしも、ごめんね」


 あたしたちは二人で笑った。

 優ちゃんも久美も「よし!」と嬉しそうに笑っていた。


 3人が緑川君にいくつか文句を言いながら保健室を出ると、あたしは急に力が抜けたように肩を落とした。


 「疲れた?」


 優ちゃんたちがいなくなったのを見計らっていたみたいに緑川君は微笑みながらきいてきた。


 「ううん。ちょっといろんな事がぐるぐるしてるだけ。あ、緑川君も帰っていいよ。あたしひとりで平気だから」


 そう言って笑うと、緑川君はあたしの前までゆっくりと歩いてきた。

 そして、ベッドに座り込んでいたあたしの頭をぐしゃぐしゃとなでる。

 

 「やっ」


 あたしが撫でられるままに頭を揺らすと、緑川君は小さく笑う。


 「無理しないで」


 その一言を聞いた瞬間、せき止められていたものが一気に溢れた。

 

 苦しい涙。

 悲しい涙。

 怖さからの涙。

 そして……。


 嬉しい涙。

 

 まるで身体の揺れに反応するかのように涙がこぼれおちた。


 「よくがんばったね。でも、こういうのは心臓に悪いからさ」


 少し怒ったように、それでいて安堵するような微笑。


 どうして、この人は。

 何も知らないはずなのに。

 どうして、こんなにあたしの欲しい言葉をくれるんだろう。


 あたしは滲む緑川君の顔を見つめて唇が震えるのを感じていた。

 止められない震えは言葉にならない想いを必死で伝えようとしているみたいだった。


 そうだよ。

 怖かった。

 雪ちゃんが冷たくなったときも。

 腕の傷を見たときも。

 本当はすごく、すごく怖くて。

 逃げ出したくなるくらいに怖くて。

 解決方法なんて全然わからなくて。

 

 「……こわかった」


 やっとのことで出た言葉も小さくて周りの雑音にかき消されてしまう。


 でも、それは雪ちゃんには言えなかったあたしの本心。

 どうなるのかわからなくて怖かった。

 もとにはもどれないんじゃないかって怖くて。

 それでも「大丈夫」って笑って雪ちゃんを支えてあげたかった。

 精一杯の強がりでも、それがあたしにできることなんじゃないかって思えたから。


 そんなあたしを緑川君はバカだな〜と笑う。


 「悔しいけど、松田さんたちはさ、アヤに必要なんだよね」


 「うん」


 「4人いて上手くいく共同体みたいだよね」


 「うん」


 一緒じゃないとダメなの。

 それなのに……もうすぐバラバラになる。


 緑川君も……。


 あたしが望むものはあたしの力不足でみんな失ってしまう。

 

 大切なものがみんな消えていく日まであと何日?

 

 あたしは頭を撫でられながら必死で緑川君の袖を掴んでいた。


 「ところでさ……」


 突然、声のトーンを変えて緑川君がきいてくる。


 「勉強してないって本当?」


 「え?」


 見上げた緑川君の顔は冷ややか。

 涙が一瞬にして止まるのがわかった。


 「勉強しないで受験する気?」


 「え……少しはしてるよ……」


 状況がうまくつかめなくて、あたしはオロオロとしていた。


 「人のこと心配するより自分を心配したほうがいいね」


 ニコッと笑顔になる。


 「あ、うん……そうだね」


 「ちょうど今週の土曜は暇だし、一緒に勉強する?」


 は?

 勉強?

 何いってるの?

 

 あたしの頭の中はぐるぐると渦巻きがおこっている。


 「え? ……だって、緑川君はもう必要ないんじゃ……」


 「そんな事ないよ? 高校はいったらすぐテストあるんだよ? 知らないの? 」

 

 「え、だって……」


 「決まりね。 土曜日までにわからないとこまとめておいてね。時間あんまりないんだし」


 決まりって……。

 そんな勝手に。


 「いっ、いいよ!……そんなの……落ちたら、滑り止めの私立に」


 「ばーか! 努力しないでそんな事いうなよ!」


 緑川君が睨む。

 

 だって……その方が、方向が一緒なんだよ……。

 せめて登校するときくらい……。


 あたしはしゅんっと小さくなった。


 「少しはしてるんだよね? 成果をみせてもらおうかな」


 ぐしゃっと頭を大きく掴まれて見上げるとニヤリと笑う緑川君がいた。

 

 ここにもまた、今までに見たことのない笑顔がひとつ。

 必殺緑川スマイルとは違う笑顔。

 

 「う……うっ」


 背筋がひやっとするような壮絶な微笑をたたえて緑川君はあたしを見下ろしていた。


 







 ※下にあとがきと次回予告がひっそりとあります。

    (あとがきパスな方用に見えないようにしています。























 











 ■あとがきという名の懺悔■


 本日もご来場ありがとうございました!

 終わり〜終わり〜です。

 なんとか課題クリア〜♪

 これでやっと山も越えたのでのらりくらりといけそうです。(本当か?


 さて次回♪ ☆67☆ 受験戦争


 ここんとこ甘くいけたらいいけど、内容はお勉強ですから。

 なんかマニア向けな甘さになりそうな感じです。

 


 


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