☆58☆ 本当のこと
すみませーん><
残業…残業…残業…。
おそくなりました;;
でもって、今日もいっとけ〜〜〜い!←ちょっとブーム
薄暗い生徒玄関に辿り着いた時には、外が暗くて驚いた。
時々、後ろの方から足音が聞こえると緑川君が追いかけてきたんじゃないかって振り返ったりして。
追いかけてくるはずない……か。
期待してなかったわけじゃない。
だけど、困らせるような人じゃない。
緑川君は……。
あたしを想って追いかけない。
これは自惚れかな。
あたしはふうっと息をついて下駄箱から靴をとりだす。
その時、下駄箱の影からぬっと人影がでてきて飛びのいた。
「だ、だれ?」
「さーちゃん……?」
「の、野村さん……?」
待ち伏せしてたかのように出てきた人影は目を真っ赤にした野村さんだった。
野村さんはキョロキョロとあたりをみまわす。
「緑川君ならいないよ」
「え、あ、そう。そっか……」
「でも、教室にまだいると思うよ」
靴を履き替えるとあたしは野村さんに言う。
野村さんといえば、あきらかに泣いていた赤い目を潤ませている。
「あ、ちがうの。さーちゃんを待ってたの」
慌てた野村さんはあたしの腕をつかむ。
その掴む腕を見て顔をしかめた。
もう、関わりたくない。
できれば、何も聞きたくない。
「あ、ご、ごめん。でも、やっぱりどうしても聞いてもらいたいの。絶対に誤解してるはずだから」
「もう、さ。誤解とか、何でもいいんだよ」
あたしは困って笑うしかなかった。
「え……どういう、あ! そっか、そうだよね。緑川君が教えてくれたんだ……」
野村さんのキラキラ光る唇が震えている。
「別れたから」
短くそう言うとあたしは腕をひっぱって外へ向かう。
「えっ! うそっ……ちょ、ちょっと! そんな! 私のせいなの?」
野村さんは驚いて、くいかかるようにあたしの腕を力いっぱいひっぱる。
「わっ! あぶな!」
「私のせい?」
のぞきこむ瞳が苦しそうに翳る。
「の、野村さんのせいなんかじゃないよ。ただ、わかったの。あたしは野村さんたちみたいになれないなって。あたしなんかじゃダメなんだって」
自信もないし。
強くもない。
おまけに子供。
緑川君の相手にはふさわしくないじゃない。
情けなく笑ってみせると、目の前の真っ赤な目が怒りをあらわにする。
「そんな! さーちゃんじゃなきゃダメなんだよ! どうしてっ、どうしてわかんないのっ!?」
「野村さん?」
「どうしてよっ! 緑川君は何も言わなかった? 聞いてないの? だから、だから私が言おうと思ったのに!」
野村さんは悔しそうに唇を噛むとあたしに「よく聞きなさい!」と顔を近づけた。
「私は好きだった!」
「いいよ……」
「緑川君を好きになって、私から告白もした!」
「もう、いいんだって」
振りほどこうとしても野村さんは離してくれない。
「でも、本当は……本当はね!」
「やめて! もういいんだって!」
「返事はノーだったの!」
「……え?」
抵抗するあたしも止まる。
何かの聞き間違えかと野村さん方へ振り返る。
「そう、フラれたの! わかる?」
野村さんの真剣な顔が近くにあって、怖い顔をしてかみあわない事を言う。
「な、なに言って……だって……」
ふられた?
つきあってるってみんなが言ってた。
もちろん、緑川君も否定しなかったじゃない。
つきあってなかった?
「つきあってるってのは噂だけ、本当は何もなかった、私が勝手に無理やりつきあわせてたの。それに……噂を流したのも私」
「うそ……」
「嘘じゃない、本当。悔しかったから、引けなかったの、ごめん」
「どうして……?」
すべての力が抜けるように野村さんの腕があたしから離れてだらりと垂れ下がる。
「好きな人がいるからって断られて。それが誰かなんてすぐにわかって。だからもっと余計に悔しくて……」
野村さんは真っ赤な目を細めてあたしを見る。
「好きな人……」
「そう。緑川君ね、ずっと好きな人がいるんだって。わかるでしょ? 私がさーちゃんをずるいって言ったりキツイ事を言ったのは……やきもち。でも、だからって別れてほしいなんて思ってないんだから!」
ずっと?
好きな人……?
まさか、ね。
「やっと報われた緑川君を見て素直に嬉しかった。だから神田さんの言葉はヤバイと思ったの。このままじゃいけないって思って……」
野村さんは今にも泣きそうなくらい目を潤ませていた。
「緑川君がどれだけさーちゃんの事好きなのかわかるの。私にはわかる……」
野村さんはうずくまるようにしゃがむ。
「私のせいだ・・・・・・ごめん、ごめんなさい。どうしよう……私どうしたら」
「野村さん! 違うんだって!」
あたしは慌てて同じ目線までおりる。
「野村さんのせいなんかじゃないから。あたしがダメなの。こわくて、ザワザワしてて、落ち着かなくて」
あたしはうずくまる野村さんの背中をなでる。
「何があったかなんて問題じゃないの。ただ……あの時、緑川君はあたしを見なかったから……神田さんと野村さん、田巻さんともめた時、一度もあたしを見なかった。だからわからなくなったの。あたしがダメになったの、こわくなったの。いつか変わっちゃうのがこわくなったの。あんなふうにいないみたいに扱われるのがこわくなったの」
野村さんは驚いたように顔をあげる。
「こわくなった? 見なかったから? だからダメになった? さーちゃん、本気で言ってるの?」
「え? うん……」
コクンと頷くと野村さんはハハッと声だけで笑った。
「何言ってるの? 本気? 信じられない……」
「なっ! なによ!」
野村さんの呆れた顔に何がどう悪いのかわからずに反発してしまう。
「あ〜……、まあ、さーちゃんだもんね……わかんないか」
「ど、どういう意味なの、それ……」
口を尖らせてムッとした顔で野村さんに言ってみる。。
「あのね、さーちゃんを見なかったのは、巻き込みたくなかったからに決まってるじゃん! あの神田さんだもん、さーちゃんの事なんて知ってるって思ったんでしょ、あそこでさーちゃんなんか見てたら、もっと面倒な事になってたよ」
「巻き込みたくなかった?」
「緑川君の考えそうな事だよね、私と神田さん、田巻さんにフォローしながら本当に守りたいものは近づけさせない。本当に……嫌味なくらい自然にできちゃうとこがムカつく」
野村さんはいつもの明るい笑顔であたしを見ていた。
「そんなの……知らない」
うそ……。
なんで言わないの?
なんで?
言う機会はあったでしょ……どうして?
「言うわけないよ。私のことも否定しなかったんだもん……」
「え、どういう……こと?」
「緑川君は何も言わなかったんだよね」
野村さんの問いにあたしはうなづく。
「そっか……言わなかったんだ。あのね、キスは……本当。だけど、ちょっと違う、かな」
野村さんは舌をだした。
「違う?」
「うん……。ふられたあとしばらく諦められなくて、いつか好きになってくれるって信じてて、でもまったく見てくれないから悔しくてさ、諦めるのに私が無理やりしたの……情けないでしょ」
無理やりって。
野村さんが?
でも、そんな事も一言も言わなかった。
緑川君は何も……。
「で、でも!」
「うん、あの人は言わなかった。みんなの前で否定しようと思えばできたのに……言わなかったね。優しいよね……ひどいよね。だから泣けちゃった。傷つかないようになんてさ、無理にきまってるじゃんね」
野村さんの目から涙がこぼれた。
「野村さん……」
「さーちゃん、変わらない好きなんてないよ。カタチは変わるけどちゃんと育ってる。忘れたくても忘れられないし。後悔ばっかりで苦しくて嫌になっちゃう。次の恋でもみつけたら楽になれるのかな〜。さーちゃんは……いいの?」
野村さんは静かに廊下の方へ目を向ける。
「まだ、いるんでしょ? 言いたいこと言ってからだっておそくないよ」
あたしの背中をそっと押す。
「でも……あたしひどいこといっぱい言っちゃったし」
「大丈夫、言葉くらいじゃ、緑川君はビクともしないから。私にも散々ひどいこと言ったんだから仕返ししてよ。でもさすがにさーちゃんにキツイ事言われたから今ごろ壊れてるかな」
ざまーみろと楽しそうに野村さんは笑う。
「行って。それで、あのカッコつけにガツンってやってしまって、大してカッコよくもないくせにムカつくよ、本当……」
「ガツンって」
「そう、ガツンってね。それで……できたら優しくしてあげて、ね」
「野村さん……」
「大丈夫、さーちゃんの「好き」はちゃんとどうしたらいいかもうわかってるはずだよ。自信もって」
背中を押されながら、もう一度、来た道へ踏み出す。
内履きになんてはきかえなくていい! と野村さんが背中を強く押す。
あたしは靴下のまま廊下へ飛び出る。
冷たい廊下に一歩でると、靴下の下がヒヤッとした。
そして、少しだけ振り返る。
「ノムちゃん、ごめんね。ありがとう」
「やだ! こんな時だけノムちゃんなの? 調子がいいな〜」
そっぽを向いて野村さんは嬉しそうに笑う。
「も〜応援なんてしないから。私、そんなに優しくないし!」
くるっと背を向けると野村さんは手をふって生徒玄関を出た。
「ありがとう……ごめんね」
あたしはその背中をしばらく見てから靴下では滑る冷たくて薄暗い廊下を走った。
後悔しないために。
言いたい事を伝えるために。
※下にあとがきと次回予告がひっそりとあります。
(あとがきパスな方用に見えないようにしています。
■あとがきという名の懺悔■
本日もご来場ありがとうございました!
やっと、やっと光がぁぁーっと。甘さの足りなさに禁断症状が。
次は少し甘いやつ書けるのかなってうれしさいっぱいだったり。
この長いドロリ編もあと1話! がんばれ皆さん! がんばれ私!
しかし、野村さんっておいしい役どころですよね。
野村さんみたいな友達っていいなって思いながら書きました。
良い友達はいつも一緒じゃなくても変わらないものです。
さて次回♪ ☆58☆ 恋する気持ち
や〜ん。なんかタイトルだけで何話も書けそう。
桃色タイトル最高ですね! 早く続きが書きたい!
でも、今日はこれから外出なので書けませんっ!(泣
あー・・・・・・書きたい。




