☆57☆ ひとりぼっち
おなかペコペコ。
今日も連続更新いっときました!
文章のお粗末さはいつものことなので
出来立てホヤホヤでどうぞ召し上がれ〜♪
「ごめん。アレは本当なんだ……」
最初に口を開いたのは緑川君だった。
「本当の事だから何も言えない。だけど……」
言いづらそうにうつむきながら唇を噛むのが見えた。
ああ、そんなつらそうな顔しちゃって。
ごめんね。
みんな、あたしが悪いのかもしれないね。
あたしの「好き」がみんなを変えてしまうんだよね。
あたしがでてこなければ……。
あたしはうつむく緑川君の顔をのぞき込むように笑う。
「ねえ、緑川君は知ってた?」
「え?」
顔をあげて驚いたようにあたしを見る。
今はあたしを「好き」だと言ってくれる目があたしを見る。
「あたし……緑川君の事、どうでもいいと思ってた」
あたしはそっと机に寄りかかる。
「え、……うん」
戸惑うように短くこたえてくれる声が心地いい。
よく考えたら、いつだって緑川君はそうだった。
いつだって向き合ってくれた。
だから、どうしてあの時あたしを見てくれなかったのか不思議で不自然で。
あの騒動の最中、緑川君はあたしの存在なんて忘れてしまったみたいに神田さんとやりとりをしてた。
あたしなんてまったく気にならないみたいに。
「好き」ってなに?
あたしたちにはまだその意味がわからないんじゃないの?
教室の静かさがあたしの鼓動を響かせる。
「あたしね、最初ね。好きだって言われて、どうしていいかわからなかった。でも無視されて、すごく嫌だったから、どうしたら前みたいにもどれるのかな〜って考えたの」
「うん」
「最初は……最初はね、好きじゃなかった……」
楽しい話でもないのに笑ってしまうのはなんでなんだろう。
笑ってあがった頬が痛いのはなんでかな。
「うん……知ってる。何が言いたいの?」
笑うあたしを不思議そうにみつめている。
あたしは寄りかかった机の上にそのまま、よいしょと座る。
ぶらぶらと足を交互に動かしてつま先を見つめて思い出したように話す。
「ねえ、知ってた? 神田さんが話してたとき野村さんも田巻さんも緑川君を見てたんだよ。あたしもね、見てたんだ……。緑川君はみんなを気遣ってて、野村さんは嬉しそうだったよ。でも……あたしは見てくれなかった……ね」
「それは―――」
ハッとした顔をして何かを言いかける。
でも、そんなのきいてなんてあげないんだ。
あたしは動かしていた足をピタッと止めて緑川君の顔を真っ直ぐに見る。
「あたしね、わかっちゃったの。田巻さんはずっと緑川君が好き。神田さんも同じ、知ってた? 笑っちゃうよね。あんなことしてたのに。」
「……」
緑川君は言葉を遮られてから言葉をみつけられないのか黙っていた。
あたしは崩れていく何かを止められずに必死で何かを手探りで探しているように話す。
「それに、野村さんはね、……今でも好きなんだよ」
落ち着かなくてパチンと爪を鳴らすと緑川君が一歩近づく。
「ねえ、アヤ」
緑川君の歩みを止めようとあたしは慌てて話し続ける。
「あたしはどうしよう……。あたしはどうしようか」
これは本心。
あたしは迷っていて、どこにも出口は見えなくて。
戻ることも進むこともできない。
だから、助けてほしかった。
―――誰に?
小さな疑問に目の前の緑川君を見て苦笑する。
「気にするなよ」
緑川君はあたしの迷いを見逃さないで、欲しい言葉を口にする。
あたしはその言葉を待っていた。
それなのに、待っていた言葉を聞いたのに。
緑川君の言葉でもダメなんだ。と肩を落とした。
「ダメだよ……」
「やっぱり野村さんの事が―――」
「違う、わからなくなったの。「好き」って何なのかなって」
「何って?」
「あたしの「好き」は好きだって言われたからで、忘れようと思えば忘れられるくらい簡単な「好き」で。緑川君の「好き」は……緑川君の「好き」は今限定でいつか忘れてしまう「好き」なんだよね」
情けないあたし。
自信のないあたし。
それでも、何かに期待して待っている。
ズルイな〜と、思わず笑いそうになる。
こんなにひどい事、よく言える。
こんなんじゃ、もう……。
あたしが小さくため息をついたとき。
「ひどいな……」
と、緑川君が呟いた。
その言葉にサーッと血の気がひくような感じがした。
予想どおりの反応なのに胸が苦しい。
嫌われちゃった……。
そうだよね……。
嫌いになるよね、あんなにひどい事いっぱい言ったんだもん。
でも、これでいいんだよね。
これでいい……。
だって、もうこわくて、こわくて。
いつ、緑川君の中からあたしが消えちゃうんだろうって。
いつ、野村さんみたいに見てもくれなくなるんだろうって。
そう思ったら。
今すぐに消したくなったの。
ごめんね。
嫌な事いっぱい言っちゃって……。
あたしなんかダメなんだよ。
だけど、なんでかな。
さっきから胸が痛いの。
好きなのに、好きなのにって叫んでるみたい。
終わりにしたら、痛くなくなるのかな。
「……うん、ひどいね。だから」
するりと滑るように机からおりる。
そして、あたしは決意したように緑川君を見る。
「だからね、だから……もう、やめにしよう」
「え? ……え!」
緑川君は驚きの声を出すと、目を大きく開いた。
あたしは曖昧に笑ってみせる。
「ごめん、これからは無視してくれてもいいから、もうあと少しで卒業だし、嫌な気分なのは少しだから……」
顔をそらして笑う。
緑川君の呼吸の音が大きくなったように聞こえた。
「なんで……」
「ごめんね……あたし、無理みたい」
「どうして! やっぱり野村さんの……」
少しずつ近づいてくる緑川君は必死。
「気にしてないわけじゃないけど、ちがう。あたしがダメなの。あたしにはまだはやかったみたい」
田巻さんみたいに一途に想えない。
神田さんみたいに強く想えない。
野村さんみたいに優しく想えない。
あたしの好きはただ流されただけ。
偽物だったから……。
忘れられる。
これで楽になれる。
面倒なのはもうしばらくいいや。
あたしにはまだ早かったんだから。
微笑かけると緑川君は泣きそうな顔をしていた。
その顔に胸がぎゅっとつぶされてしまうのかと思うほど痛んだ。
だってね。
あたしの中に緑川君はいっぱいいるの。
緑川君の中にあたしはいる?
どんなに好きでも変わってしまうんでしょ?
そんなの怖いよ。
好きって何なの?
緑川君の好きって何なの?
だから、ダメなの。
「ご、ごめんね!」
今、何か言われたら泣きそうだから。
そんな矛盾したのを見せられない。
あたしは慌ててカバンを持つと逃げるように走りだす。
ガンッ!
ドアを開けたところで大きな音があたしの足を止めた。
「っでだよ!」
突き刺さるような鋭い声が背中から襲ってきた。
あたしはぎゅっと目をつぶると何も言わないで教室を出た。
冷たい廊下を一人で走る。
別れた。
別れちゃったよ。
これが別れるってことなんだ……。
あたしはただ、わからなくて、真っ白で、真っ黒で。
緑川君が怖くて……あたしの気持ちが大きくなっていくのがわかって、こわくて。
好きなのに、こんな方法しか思いつかなかった。
気がついたらこうなってた。
これを望んでいたわけじゃない。
だけど、壊れていく感じがわからなかった。
こんなに……。
こんなにあっというまに終わりがくるなんて。
なんで? どうして?
どうしてあたしはひとりぼっちなの?
あんなに嬉しかった事も、恥ずかしかった事も、苦しかった事も。
全部、終わっちゃった。
これで本当に開放されるの?
これで本当に苦しくなくなるの?
おわっちゃった……。
もう、あたしは緑川君の特別じゃないんだ。
立ち止まると冷たい廊下にあたしはひとり。
そこに、ひとり。
冷たい廊下だけが長くまっすぐ伸びていた。
※下にあとがきと次回予告がひっそりとあります。
(あとがきパスな方用に見えないようにしています。
■あとがきという名の懺悔■
本日もイライラしながらご来場ありがとうございました!
なんでやねん! とつっこみたくなるような急展開。
別れちゃいましたからね。しかもあっさりと。
ってか、別れる必要あるの? みたいな意味不明さ。
本当は意味とか内容とか書きたかったんですけど、
肝心の主人公がまったくわかってないんですよね。
それじゃあ、書けないだろう・・・・・・と。
思い込みっていうか自分勝手なのは子供だからだと理解していただければ。
大人だったらこんな事じゃ別れませんよね。
さて次回♪ ☆58☆ 本当のこと
再度、ノムさん登場。
ここでさらにノムさんからのお言葉が。
って、まだよく考えてません。早くかこ〜っと。
書けたら明日いっとけ〜〜〜〜いっ!




