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☆54☆ 不器用な彼女


 ちょっと寄り道編が書きたくなったのですが

 時間がなくて書けてません。

 明日はお休みなのでちょっと書けるかな〜・・・・・・。


 授業なんてまったく頭になんてはいらなかった。

 先生の言葉も教科書の文字も全部、何かの絵文字や外国語のようにしか見えないし聞こえない。


 あたしの頭は壊れてしまったんだろうか・・・・・。

 

 頬杖をつきながら先生が授業の終わりを告げる言葉だけが妙にはっきりと聞こえた。

 まるで操り人形の様に言葉の意味も理解しないで身体が勝手に何度も繰り返してきた動作をする。


 教室のざわめきがあたしに放課後を教えてくれた。

 それでも机に座り込んだまますぐに立ち上がることはできないでいる。


 たぶん、来るだろう。


 その重たい気分をどうにも上げられずにため息をつく。


 これは予想だけど確率は100パーセントに近い。

 狙うようにそれはやってくる。


 「澤田さん、いい?」


 予想は的中した、それなのに驚きはかくせなかった。

 予想していた人物ではない人に声をかけられて思わず教科書を落としそうになる。


 「・・・・・・神田さん?」


 「話、いい?」


 いつも微かに口元をゆるませている彼女は独特の空気をまとっていた。

 その空気にのみこまれないようにあたしは身体をこわばらせる。


 「何?」


 いつもは探るように用心深く観察するあたしも今日は、今日だけはどうしても攻撃的になってしまう。

 

 「そんなに怒らないでよ。まさかこんな事になるとは思わなかったんだから」


 申し訳なさそうに微笑む神田さんをただ無表情にみつめた。


 「怒ってないよ」


 「うそ。まあ、怒るのは当然だと思う・・・・・・でも、本当にほんの少しでいいから話をしたいんだけど」


 あたしはしばらく無言で神田さんの顔を見て、その後、うしろで様子をうかがっていた優ちゃんを見る。


 「ごめん、先に帰って」


 顔がこわばって微笑むこともできなかった。


 「わかった」


 短くそう答えると優ちゃんは雪ちゃんと久美と3人で教室を出て行った。


 「ありがとう。ここでいい?」


 目の前の席に座りながら神田さんは静かに話し出す。


 「ごめんなさいって言ったほうがいいのかな」


 小さくそう言う神田さんはやっぱり笑っていた。


 「何か用? あたし帰りたいから」

 

 「やめなよ、そんな言い方、らしくないよ。無理しちゃってさ」


 神田さんはニヤっと笑った。


 無理もするよ。

 目の前の優しそうに微笑む神田さんはいつあたしに攻撃してくるかわからないんだから。

 それに。


 「そっちこそやめてよ。あやまる気なんてないくせに」


 カバンを机の上にあげて、あたしは冷たく言い放つ。


 「バレた? まあ、悪いなんて思ってないもの」


 「そんなこと知ってる」


 「あたしが澤田さんの秘密、知ってること気がついてたみたいだね」


 楽しそうに笑う神田さんを無言で睨みつける。

 そんな事は平気と目を細めて


 「だってわかりやすいんだもん。緑川君の行動に反応激しすぎだし、笑っちゃう」


 と何も楽しいことなんてないのにまた笑う。

 そんな神田さんの笑顔が怒りを通り越して不気味に見えた。


 「あー、でも。あれかな〜ちょっと楽しそうだったから、かな」


 クスクスと笑いながら余裕を見せつける。


 なるほどね。

 楽しそうだったからね。

  

 確かに反応はしてたかもしれない。

 でもあたしと緑川君の関係に気づくって事はどういう事なのかわかんないのかな?

 野村さんが気がついて、田巻さんも薄々気がついている。

 共通点はひとつでしょ。


 あたしは神田さんの笑顔を負けずにみつめる。

 目をそらすことは負けなんだと心に言い聞かせながら。


 「でも〜、クラス中に注目されるほど噂を大きくするつもりもなかったし。あたしだってこんなの嫌なんだよね〜」


 ため息まじりに呆れたように教室をみまわす。

 神田さんの行動、言葉の全部が空しく聞こえた。


 「じゃあ、どういう展開がお望みだったの?」


 あたしは嘲笑しながら首をかしげる。


 「つまんないでしょ? みんな噂が大好きでしょ? 噂の真相をつきとめて話題を提供したかったのかな」


 「それでキズつく人がいるのに?」


 「だね」


 あたしを真似るように少しだけ首をかしげて、よくわからないと笑う。


 本当に気がついてないのかな。

 神田さんのことだもん、わかっててあたしをバカにしてるだけ?

 ちがう・・・・・・よね。

 神田さんは気づいてないんだ、自分の気持ちに・・・・・・。


 ここまで来てもわからないなんて。

 バカだね、神田さんも・・・・・・。


 あたしは苦笑する。

 そして、神田さんにまっすぐ問いかけた。


 「神田さんは緑川君が好きなんでしょ?」


 「は?」


 「好きなんだよね」


 神田さんの笑顔が少しずつ真顔に変わる。

 どんな事を言われても常に不気味な笑顔を崩さなかった神田さん。

 特定の友達はいなくて、移動教室なんかも全部ひとりで行動してた。

 自分から好んでそうしていると胸をはって堂々としている姿は少しだけかっこいいと思ったこともある。

 そんな神田さんは今、普通の女の子に見えていた。


 「緑川君を? 私が? なに言ってるのよ、好きなのは澤田さんでしょ? 嫌だな」


 動揺しているのか目がキョロキョロと忙しそうだ。


 「あたし・・・・・・ずっとね、ずっと秘密にしてて、誰にも気づかれないようにしてたんだよ。そうしようと思ってしてたわけじゃないけど、噂になるのは嫌だったから・・・・・・でも、野村さんと田巻さんにはすぐに気づかれてた。あのふたりは緑川君が好きだから・・・・・・」


 「あのふたりは、でしょ? 私は興味があっただけ」


 「うそ。田巻さんと野村さんと一緒だよ、神田さんだって・・・・・・好きだからあたしの事に気がついたんでしょ?」


 「バカじゃないの。どれだけあいつがモテるのよ。あんなの眼中ないから」


 目の前の神田さんはいつもあたしが見ていた神田さんとは別人のように見えた。

 悪く言う人も多かったけど、凜として何にも負けない彼女はすごいと思ったりもした。

 それなのに、今の神田さんはどうだろう・・・・・・。


 「な、なによ。もー、降参! まいった! これでいい?」


 降参と両手を上にあげて神田さんは笑う。

 

 「うんん。降参とかそうじゃなくて。あたしわかったの・・・・・・今になって思えば全部つながってておかしなとこなんて一つもなかったなって、あたしたちは同じ気持ちだからお互いがよく見えるんじゃないのかなって・・・・・・」


 あたしはまっすぐ神田さんを見据えて言った。

 その言葉に驚いたのかしばらく口をあけたり閉じたり、何かを考えてから。


 「本当、やだ。そんなこと・・・・・・ない」


 と戸惑いながら答えた。


 神田さんの言葉、表情、仕草、すべてが「好き」と答えていた。


 それに、たぶん。

 神田さんはあたしにそれを伝えたかったんじゃないの?

 気づかなかったけど、あたしに何か言いたかったんじゃないの?


 だから今、あたしの目の前にいるんでしょ?


 動揺する神田さんを前に、あたしは不思議と冷静だった。


 もう、いまさらあたしの事を隠す必要もないし。

 だからって神田さんの気持ちを知る必要もない。


 まあ、それをあたしが知って、たとえば告白するって言われてもどうするの?

 ただ聞いてもらいたいだけならあたしじゃない人にしてほしいじゃない。

 それこそ本人に直接言ってほしい。


 それなのに、わざわざ気持ちを気づかせて、告白まで聞いちゃうつもり?

 

 あたしも本当にバカだな。

 なんでこんな事になってるんだろう・・・・・・。


 キョロキョロと落ち着かない神田さんと向かい合いながら重いため息が出た。

 

 「もういい? わけわかんないから。それに・・・・・・」


 神田さんよりも手ごわい敵が待っているはずだから。


 最後の言葉はのみこんだ。

 言いかけて黙ったあたしを見て神田さんはニヤっと笑う。


 「澤田さんってやっぱりずるいよね」


 と腕をくんで不気味な微笑みを取り戻す。

 それが負け惜しみのような強がりにしか見えないってわかってても。

 神田さんはこの状況を抜け出そうと必死に見えた。


 「ずるいよ。それが何?」


 淡々とした口調で、表情ひとつ変えないで、あたしは立ち上がった。


 「いい子はやめたの」


 キッパリと言い切る。

 その気持ちよさ。


 「いいんじゃない?」


 満足そうな神田さんの顔を最後にあたしは背をむけた。


 あたしの中の黒いモノが底のほうからモクモクと沸き起こる。

 それを止めることも抑えることもするつもりはなかった。


 「ちょっと見直した」


 背中越しに神田さんの寂しそうな声が聞こえた。


 あたしは振り返りもしないで教室を出た。

 廊下は別世界のように、にぎやかで明るく見えた。


 こんなにも楽しそうで幸せそうで。

 それなのに、あたしは最悪な気分。

 

 今は何も考えたくないのに、何も聞きたくないのに。

 家に帰って好きな曲を聴いて本を読んで寝転がりたい。

 それで全部忘れてしまいたい。

 

 何もなかっことに、何も聞かなかったことにしてほしい。

 今はどうしたいかもわからない。


 だからもう・・・・・・あたしのことをほっといて。

 お願いだから・・・・・・。


 あたしは早足で廊下を歩く。


 でもそんなお願いは許してもらえないみたいに誰かに肩をつかまれた。


 あたしは「どうして・・・・・・」と心の中で舌打ちをすると立ち止まって振り返る。


 そこには巻き髪を揺らして肩を上下に荒く動かしている野村さんが立っていた。


※下にあとがきと次回予告がひっそりとあります。

    (あとがきパスな方用に見えないようにしています。


 























 ■あとがきという名の懺悔■


あーもう、こういうドロリは最小限でいきたいです。

でもあと何話こんななんだろう・・・・・・不安。

はやく! って自分でも悲しくなってます。

あとがきも書きようがないんですよね、もう懺悔というかいい訳というか泣き言に近くてすみません。


さて次回♪ ☆寄り道編☆ 右向け左 [Side by Kanda]

タイトルを見てウエ〜ッて思った方には申し訳ありません。

でも、彼女は彼女なりに一生懸命なわけで、ね。

本編では出せそうにないので寄り道編で書かせていただきますね。


書きあがり次第のUpになるかと思います♪(必死で今かいてます!

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