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☆52☆ 噂


 まて次回! 的なものはゆるせない! 

 と思われる方はここからは3〜4話まとめて読まれたほうがいいかとおもいます。 

 とりあえず、このドロドロパート終了まで。

 必死で書いてるんですけど・・・・・・終わらなかったのです;;


 

 トイレから戻ると、教室では優ちゃんが待ちかまえていた。

 あたしはゆっくりと教壇前を通って手を振る優ちゃんの席へ歩いていく。

 時々、いろいろな笑い声と話し声の隙間から熊田君と話す緑川君の声が聞こえたけど振り返ったりはしない。


 だって、振り返ったらきっと。

 きっと何かが壊れてしまういような気がするから。


 机の隙間を通り抜けて優ちゃんの隣。

 あたしの席までくると、優ちゃんの方を向いて椅子に座った。


 「どこ行ってたの〜?」


 優ちゃんは面白くなさそうに睨む。


 「トイレだよ、トイレ」


 あたしの答えに納得できないように優ちゃんは身体を乗り出してきた。

 けど、すぐに止まる。


 「あっれ? あれれ!」


 怒られるのかと思いきや驚きと興味の眼差しであたしの顔を覗きこんでくる。


 「な、に?」


 「いや〜、かなり驚きの変化でここまでは予想できなかったな〜って思って」


 「な、何が?」


 ニヤニヤした顔が再度、あたしに近づく。


 「これ!」


 何かを確認したのか、うん! と頷いてから指差したのは唇。

 あたしは「口?」と指で触れた。

 指先にペタっとクリームが指につく。


 あ〜、グロスか。

 野村さんからもらったグロスをさっきトイレでつけてきたんだった。


 「あ、これね。もらったの」


 恥ずかしくてニヤける。


 「誰に?」


 「野村さん、この前の放課後、優ちゃん待ってるときに」


 「ふ〜ん」


 腕を組みながら少し離れてみたり横から見たりと忙しい。


 「わぁ〜、さーちゃんが」


 「おおっ」


 5時間目の授業、社会科の準備を終えて雪ちゃんと久美があたしと優ちゃんの席にやってきた。


 お昼休みの教室、一日の中で一番のストレス発散タイム。

 あたしたちは決まって教室でくだらない話をする。

 以前は放課後にできたことなのに、今はこのお昼休みにしかできないというのが受験生の辛さ。


 「そんなに、みんなで力いっぱい驚かなくてもいいじゃん」

 

 あたしはカバンから教科書を出しながら3人を見る。


 「リップもつけないさーちゃんが、グロスとは。いや〜こりゃ何かありましたな久美さん」


 「ですな〜、オレが推測するに〜昨日のバレンタインっつーやつがクサイっすな〜。どうですか雪さん?」


 「ですよですよ〜、クサイですよ〜。だってほら!」


 雪ちゃんは腕を横に動かして教室の中を見るように案内する。


 いつもと変わらない教室。

 生徒がバタバタと出入りするためか昼休みは騒がしい。

 それでも女子は比較的にどこかの席に固まっていて。

 もちろん、テニス部女子グループは教室のうしろの席に大きくかたまっていたが、それ以外はいつもと変わらなく小さくいろいろな席に集団をつくっていた。


 「ほら?」


 あたしは特に驚くこともなかったから首をかしげた。


 「気がつかないの!?」


 優ちゃんの驚きと呆れた声があたしにぶつけられる。


 「やっぱ、かわんね〜な」


 久美もため息をつく。


 「何よ、それ。どうみたって普通の教室だし」


 「普通じゃないでしょ、よく見てよ」


 優ちゃんが顔を近づけて小声で話し始めた。


 「いい? まず藤村さん、あの人はいつも渡辺さんのグループにいたじゃない」


 「うん、それが? ・・・・・・あっ」


 教室の中央に藤村さんの席はある。

 いつもだったら静かなお嬢様グループの渡辺さんたちが、かたまっているのに、今日はなぜかその姿はない。

 かわりにいたのは。


 「た、田辺君? なんで?」


 田辺君はどちらかと言えばおとなしめな男の子。

 同じクラスといっても影が薄いのでほとんど話をしたことがない。


 藤村さんが田辺君と?

 どういう組み合わせ?


 驚くあたしをからかうように雪ちゃんは自慢話でもしてるかのように続けた。


 「それだけじゃないんですよね〜、林君もなんですよ〜」


 「は、林君っ!?」


 あたしは勢い良く教室の窓側の一番うしろを見る。

 林君といえば学年でも指折りのイケメン。

 つねに女の子の噂はたえないけど本命が誰なのかは謎だった。

 

 「あれって・・・・・・隣のクラスの」


 「高橋さんだろ」


 久美のつっこみに力が抜ける。


 「そ、そうだよね・・・・・・」


 あたしはぽかんと口をあけながら普通に見えていた教室がずいぶんと変わっていることにやっと気がついていた。


 なんなの、このカップル急増。


 「高橋さんっていったら女子バスケ部の華じゃんね」


 優ちゃんは美男美女のカップルをまるで芸能人を見るようにうっとりと見つめていた。


 「昨日のバレンタイン勝者ですよ、うんうん」


 雪ちゃんは楽しそうに微笑み、優ちゃんも。


 「まあね、毎年恒例っていうか、この時期だけぐっとカップル率があがんのよね」


 としみじみと言う。


 「ま、例外もあるけどな、おまえんとこの委員長は相変わらずだしな」


 「え・・・・・・」


 久美に言われてあたしは緑川君の席を向く。

 そこにはいつもといえばいつもの光景がある。


 いつのまに・・・・・・。

 

 さっきまで熊田君と話していた緑川君なのに、見えたのは緑川君のとなりに仁王立ちの田巻さん。

 楽しい会話というよりは何か言い争うような雰囲気。


 「あらら〜、いいの? もういい加減バラしたらいいのに」


 優ちゃんは面白くなさそうに田巻さんに向けてべーっと舌を出す。


 「え、いいよ・・・・・・別に」

 

 不思議と何も思わなかった。

 いつもは面白くない光景だったのに今はなぜか何も感じなかった。

 

 大丈夫だよ、大丈夫。

 緑川君の魔法の言葉があたしに自信をくれて顔をニヤけさせる。


 「な〜に〜? その余裕はどこからくるのかな〜?」


 あやしむ優ちゃんに久美や雪ちゃんの好奇の眼差し。


 「絶対、何かありましたね」


 「ほら! 吐け!」


 久美がいたずらっぽく首をしめる。


 「なんにもないって!」


 「嘘つけ! 昨日なにがあったか言いなさい」


 優ちゃんも加わってくる。


 「やだ、わかった、わかったから!」


 あたしはまいったというように手をあげて体を小さく丸めた。


 「誰にも言わないでよ」


 「わかってますって」


 久美はゆっくりと首から手を離す。


 「じゃあ、ちょっとかたまってよ」


 机に顔を近づけて、外に聞こえないように小さく声を出す。


 「言うけど、本当に! 絶対に! 内緒にしてよ」


 「わかってるって何度も言ってるでしょ」


 優ちゃんのなんとも疑いたくなるような軽い返事に言葉がつまる。


 言っていいのかな・・・・・・。

 これだけカップルが増えてるんだし、まあいいか・・・・・・。

 でも、全部言うのはまずいよね。

 アレは内緒かな・・・・・・。


 「実はね・・・・・・」


 あたしは昨日の出来事を思い出しながら口を開いた。


 「うん?」


 4人が顔を付き合わせる。


 





 「ええっ! キスっ!?」


 その声に身体がビクンッと飛び上がる。

 

 なっ、何っ!?

 あたし、まだ何も言ってないよっ!

 っていうか、そのことは言わないつもりだったしっ!


 教室中に響いたその言葉はみんなを黙らせた。

 

 「なに今の?」

 

 優ちゃんが顔をあげて声の発信源を捜す。


 もちろん言ったのはあたしじゃない。

 あたしも声のした教室のうしろを見る。


 女子テニス部の集団。

 その全員があせったような、動揺した顔をしてなんでもないよ〜と手を振っている。


 教室中でザワザワと誰が誰と? と囁き始める。

 こうなるともう噂話はとまらない。


 「私、知ってる」


 「あれって確か野村さんじゃなかった?」


 「いつだっけ? 二年のときだよね」


 「あれって誰とだったんだ?」


 「ばっか! 緑川だろ」


 「別れたよね? 短くなかった?」


 「わっかんね〜、聞いてみろよ」


 それぞれが知っている小さな情報を出し合ってひとつの答えをだそうとしていた。


 野村さん・・・・・・。


 その名前に嫌な予感がした。

 目の前の優ちゃんたちの顔が険しくなっていて、なぜかヒソヒソと何かを言い合っている。


 「優ちゃん?」


 嫌な予感が大きくなるのがわかる。

 身体のどこかで警報機が鳴っているみたいに考えることを拒否しているような感じ。


 「さーちゃん・・・・・・」


 優ちゃんの複雑な顔で「ああ・・・・・・」と確信した。


 いつからだろう。

 なんとなくではあったけど、野村さんと緑川君の事は見ないようにしていた。

 たぶん、直感。

 あたしの中の自己防衛本能がそれにふれないようにしていたんだと思う。


 きっと知ったら嫌な気持ちになるのはわかってたから。

 だから、今も決定的なことは知りたくないって思ってる。

 これも逃げてるのかな?


 あたしは優ちゃんに助けを求めるように笑った。

 優ちゃんは少しためらったあとで口を開く。


 「さーちゃ―――」


 「緑川君と野村さんの事でしょ? いまさら何さわいでるの?」


 優ちゃんがあたしに何かを伝えようとした時。

 教室の入り口で何かを含んだように微笑みながらまた教室中を黙らせる一声。


 教室中の誰もがその人物に顔を向けた。


 「神田さん・・・・・・」


 雪ちゃんの声が小さくあたしの耳に届く。

 あたしはゆっくりと顔をあげて神田さんをみつめた。






※下にあとがきと次回予告がひっそりとあります。

    (あとがきパスな方用に見えないようにしています。






















 ■あとがきという名の懺悔■


 本日もご来場ありがとうございました!

なんていうか、こういう問題シーンは苦手だなと感じました。

ただ甘いだけのほうが書いてて楽しいですし。

でもって野村さんの登場シーンをおぼえていらっしゃると実はあの時。

というような設定にしてあります。

もともと、隠れ要素だったのですが野村さんを出すと決めたときに

野村さん登場とキスはセットで決定しました。

が、ドロドロとしたのはあまり書きたくないのでササッと終わらせちゃいたいです。


 さて次回♪ ☆53☆ 過去のこと

 

 君とつきあう前のことだから。そうとわかっても前の彼女の存在って複雑。

 大人だから許せるとか子供だから許せないんじゃなくて。

 女だから許せないんじゃないかと私は思うわけです。

 わかってはいても嫌なものです。


 


 

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