☆47☆ 奇妙なツーショット
なんだかモチベーション低下中デス;;
つまらなかったらペッ! と吐き出しちゃってくださいっ><
コートぐらいは着てくればよかったな。
やっぱり廊下寒い。
ブルッと身震いしながら冷たい廊下を進路指導室に向けて歩いた。
進路指導室は教務室の隣、小さな物置のような場所だ。
2回だけ強制で入ったことがある。
小さな部屋に机がひとつに椅子が4つあって一枚開きの窓がついている。
この時期は私立の推薦を受ける生徒や併願の説明なんかで使われる。
優ちゃんは併願、つまりすべり止めの説明を受けている。
すベり止めくらい一緒にしておけばよかったのに。
書類選考のみの併願を受けていたあたしは志望校を落ちても行く高校がないって事はまぬがれていた。
早く受験なんか終わっちゃえばいいのに・・・・・・。
長い廊下を一人で歩いていく。
以前だったらここに久美や雪ちゃんが一緒にいた。
でも、さすがに受験一ヶ月前になると雪ちゃんは勉強漬けになっているし。
久美も少しだけ危ないと個人面談で言われていたために毎日4時間は勉強しているらしい。
あたしには無理・・・・・・。
高校なんてどこでもいいよ。
通りすぎる先生たちに頭を下げながら目的地を目指す。
先生密度が上がっていくのは教務室が近いからだ。
それよりもチョコだよ。
チョコなんて何あげていいかわかんないよ。
優ちゃんなら経験ありそうだし、教えてもらわなきゃ。
やっぱり手作りなのかな・・・・・・。
手作りはダメだよな〜。
おかーさんにバレちゃうし、どうしようかな・・・・・・。
甘いもの大好き・・・・・・って本当かな。
野村さんの話ってもしかして、あたしに当日チョコを持ってきたらだめだよって教えてくれてたのかな?
そういえば、何か言いかけてたし。
他にも言いたいことがあったんだよね。
なんか、言いづらそうだったな・・・・・・。
あたしは廊下を歩く自分の足をみおろしていた。
神田さんと緑川君も気になるし。
あれって何だったのかな。
やっぱり神田さんって緑川君が好きなのかな。
顔をあげるとちょうど進路指導室の前にいた。
あたしは廊下の壁に背をつけて中の様子をうかがった。
中からかすかに優ちゃんの声が聞こえてきて、まだ中にいることを確認する。
「まーだ話してるし」
廊下の窓から中庭を見ると向こう側の特別校舎に人がいるのが見えた。
「今頃、あんなとこでなにやってんだか・・・・・・あれ?」
あれって・・・・・・女子生徒がふたり?
壁から離れて窓の方へ自然と足が動く。
視力に自信がないから、かなり近づかないと顔まではわからない。
何してるの? あんなとこで・・・・・・。
――――ガラッ。
うしろの進路指導室のドアが開く。
「ありがとうございました」
優ちゃんの声がして振り向くと優ちゃんがドアを閉めるところだった。
あたしを見つけると嬉しそうに笑う。
「おっ、待っててくれたの? ありがと〜」
「おっそいよ! 寒いし」
あたしは優ちゃんの身体に軽く体当たりする。
「あー、ごめんごめん」
「待ちきれなくてここで待ってたんだから」
「そりゃあ寒いわ。じゃ、帰りますか」
優ちゃんは申し訳なさそうに言うとキョロキョロとあたりを見回す。
「カバン、教室だから」
あたしは肩をすくめると、もう一度、特別校舎の廊下を見る。
「持ってきてるかと思った〜。ん? なになに? 何かあるの? おっ、あれってさ・・・・・・」
人影を指差して不思議そうに首をかしげる。
「何? 知ってる人? あたし、目が悪いから良く見えないんだけど、誰なの?」
優ちゃんにききながら目を細めて良く見る。
薄暗い特別校舎の廊下に女子生徒がふたり。
向かい合って立っている。
「やっぱり、あれって野村さんと神田さんじゃん」
「野村さん・・・・・・と神田さん?」
優ちゃんの目はいつも頼りになる。
だけど、こればっかりは疑いたくなる。
あの二人が一緒にいるなんておかしすぎる。
「なにやってんの? あの人たちって仲良かった? 仲悪かったじゃん!」
優ちゃんは自問自答して窓にしがみついた。
「ゆ、優ちゃんっ、見えちゃうって」
うしろから制服のすそを引っ張る。
「大丈夫だって、もしかしたらケンカかもしれないじゃん」
「ケンカなんてするわけないじゃん、中3だよ?」
いくら仲が悪くたってケンカはないでしょ。
「わっかんないよ〜、いきなり張り手くるかもよ。ほら! やった!」
「えっ!?」
あたしも思わず窓にしがみつく。
神田さんらしき人が野村さんらしき人に何かを必死で訴えてる。
何?
どういう事?
良く見えないよ。
「神田さんビンタされちゃったよ」
「神田さんが?」
「野村さんにまた嫌な事いったんじゃないの? あの人、性格悪いし。懲りない人だよね〜」
優ちゃんは楽しそうに言う。
また?
懲りない?
前にも何かあったっけ?
そういえば仲が悪いっていうのは聞いたことがあるけど、何で悪いのかは知らないや。
「神田さん、前にも何かした事があるの?」
「え?」
あたしの言葉に優ちゃんが大きく反応する。
え?
驚いたのは優ちゃんなのにあたしも驚いた。
何?
なんかおかしな事きいた?
なんか変じゃない?
「・・・・・・あのね、優ちゃんを待ってるときにね、緑川君と神田さんが何か話しててさ。野村さんも残ってて、あたしに何か言いたかったみたいで。野村さん、あたしと緑川君の事、気がついてるみたいだったから。もしかして野村さんがあたしの事気にしてくれて神田さんに何か言ってくれてるのかな〜って思って」
慌ててたくさんの事を早口で言うと優ちゃんは考え込んでから小さくつぶやく。
「ちがう・・・・・・と思う」
「ちがう?」
「ねえ、さーちゃん。もしかして・・・・・・」
「なに?」
優ちゃんは心配そうにあたしを見る。
そして、何かに気がついたように唇を噛む。
「やっぱり、知らないんだ」
知らない?
何を?
「優ちゃん?」
「まあ、あの二人になにがあったかなんてわかんないけど、さーちゃんがしっかりしてたら問題なんてないと思う。でも・・・・・・」
でも?
なんか嫌な感じなんだけど。
どう考えてもあたしの知らない何かがあるって感じ。
まったく何を言っているのかわからないし。
だけど、きっと優ちゃんに聞いても笑うだけなんでしょ?
優ちゃんははっきり言う性格だ。
今までだってずっとそうだった。
でも、時々。
誰かを守るために黙るようになったのも知ってる。
「ねえ、それってあたしに関係があるの?」
最後にひとつだけ聞いてみた。
「ない」
優ちゃんはきっぱりと答えた。
今はそれだけでいいことにしようとあたしは笑った。
「わかった。それより帰ろうよ、ここ寒いし」
あたしは優ちゃんの手を引っ張る。
「うん」
「あ、そうだ! チョコ!」
思い出して大きな声で言うと優ちゃんがシーッシーッと口を押さえてきた。
「ばっか! 先生に聞かれたらおしまいだよ」
いつもの優ちゃんがあたしを捕まえていた。
よくわかんないけど、忘れちゃおう。
優ちゃんを困らせたくないし・・・・・・。
あたしはペロッと舌をだすと。
「でも、聞かれても聞かれなくても毎年持ち物検査してたよ」
と意地悪を言ってみる。
「そこを抜けられた者だけが勝者になれるのよ!」
優ちゃんのガッツポーズ。
「そんな事しなくても・・・・・・一度、帰ったほうがいいとおもうけど」
「あのね! 家を知らない子なんてたくさんいるの! みんなさーちゃんみたいに楽じゃないんだから!」
「楽って・・・・・・ひどくない?」
優ちゃんを睨む。
そんな事は気にもしないで。
「そうか〜、とうとうさーちゃんもチョコレート戦争に加わるわけか〜」
と優ちゃんは満足そうに腕を組んだ。
「べ、別に・・・・・・あたしは一度帰るもん」
「チョコの作り方、わかるの?」
意地悪な優ちゃんの顔があたしを見る。
「もーっ! 意地悪っ」
あたしが腕をあげると優ちゃんは楽しそうに笑った。
その笑い声が廊下に響く。
「よし! とっておきのヤツ教えてあげるよ」
そう言って、優ちゃんは教室に向けて歩き出した。
そのうしろで、あたしは落し物をしたような奇妙な気分だった。
みんな、何か隠してる。
これは確信。
だからもう一度、奇妙なツーショットを見るために窓から特別校舎の廊下を見る。
でも、そこにはもう誰もいなくて。
少しだけ怖くなった。
忘れよう。
忘れちゃうんだ。
でも・・・・・・なんだろう、この感じ・・・・・・。
嫌な予感がする。
何かよくないものが遠くのほうで準備をしているような不安が広がっている。
あたしはゆっくりと瞬きをすると優ちゃんの背中に追いつくように、それを振り切るように走った。
※下にあとがきと次回予告がひっそりとあります。
(あとがきパスな方用に見えないようにしています。
■あとがきという名の懺悔■
本日もご来場ありがとうございました!
ちょっとイライラするところもありますが、ごめんなさいっ!
どうしてこういう順番になってしまったのか私が一番イラついてたりします。
私の力不足で時間の作り方が甘くてこういう風になってしまいました。
いつもスカッと終わる一話完結的な感じを目指していたのに。
私にチャンスを!!
さて次回♪ ☆48☆ チョコレート戦争
バレンタインデーってあんまりいい思い出ないんですよね。
なんてあたしの話はおいておいて。
初チョコをお届けするというミッションを遂行するために
奔走する感じでいきます。




