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☆42☆ 保健室の悪魔


 かなりビクビクしながら更新してます・・・・・・。


 あたしは怒っている。

 保健室のベッドの上で正座をして、まっすぐと目の前の緑川君を見据えていた。

 

 「こわいこわいー」


 「ふざけないで!」


 声を張り上げる。


 そもそも、すべてが仕組まれていたなんて少しも考えていなかった。

 いつもの毎日にしか見えなかったし。

 まさか、あえて見せつけるように、聞こえるようにしてたなんて。


 腕を組みながらお説教をはじめる母親のようにふんっと鼻を鳴らす。


 「確認って試したってことでしょっ」


 「まあ、言いかえれば・・・・・・」


 「ひどい・・・・・・」


 あんまりだ。

 ひどすぎる・・・・・・。

 試されたあたしもバカだけど、利用された田巻さんの気持ちはどうなるんだろう。


 でも、なんだろう・・・・・・。

 あたし、ちゃんと怒ってるんだよね?

 

 ずっと奥の方で気づいちゃいけない気持ちがあって、隠してるみたいに怒ってる。


 

 ダメ。

 見ちゃダメ。


 必死で逃げる気持ちとその何かを知りたい気持ちが戦ってる。


 ―――― 本当は嬉しいんでしょ。


 逃げたくても頭の中を黒いモノが覆っていく。

 

 これが・・・・・・本当のあたし?

 

 ―――― あたしの気持ちを確認したくて利用されてる、田巻さんかわいそ〜。


 「そんな・・・・・・」


 あまりに無責任で非情な哀れみの言葉は少しもその本来の意味が含まれていない。


 うそでしょ・・・・・・。

 こんなの・・・・・・ひどいのはどっち?

 緑川君? ちがう・・・・・・。

 あたしだ。


 「アヤ?」


 心配そうな緑川君の顔がのぞきこむ。


 「――っ。なんで・・・・・・こんな」


 そうだ、これは自分に怒っているんだ。

 緑川君は悪くない。

 いつも、いい子でいたい、あたしが勝手に怒っているんだ。


 「アヤ?」

 

 もう一度、呼ばれて顔をあげると、そこには心配そうな顔があった。

 何かを言いたくて口を動かすのに、声にならない。

 今、胸の中にある言葉を少しでも出してしまえば、そのどれもが汚い言葉のような気がして怖くて言えなかった。


 そんなあたしを見て、緑川君はフッとため息まじりに微笑む。


 「そんなに許せない?」 

 

 許せない?

 ちがう、許せないはずない。

 あたしは嬉しいと思ってる。


 首を振って答える。


 「じゃあ、何が嫌だった?」


 もう、いい加減でもなければ、ふざけてもいない顔がそこにあった。


 「アヤは嫌だったんでしょ? 僕が――」


 「やっ!」


 それ以上、言われるのは嫌だった。


 他の子と仲良くするのが嫌だったけど。

 緑川君の口から言われたら、もう止められそうにない。



 「や、やだ。それ、緑川君が言わないで・・・・・・」


 あたしの気持ちを緑川君が言うのはやめてよ。

 

 「田巻さんの事?」


 緑川君が聞いてくる。


 「それは・・・・・・。だって、あたし、知ってるんだよ。田巻さんが緑川君の事すきなのこと」


 「だから? 前も言ったけど思ってるだけなんて何も変わらない。僕だってそうだったんだから。言わないとわからないじゃん」


 「じゃあ、言ってきたら・・・・・・?」


 口にして初めて、その言葉が現実になったらと不安になる。


 「それはアヤには関係ないよ」


 その言葉の冷たさ。

 泣きたくなる。


 「ごめん、言い方悪かった」


 「いい」


 「アヤはどうしてほしい? 松田さんに言ったみたいに僕にも言ってよ。言ってくれないとわからないよ」


 どうして気持ちは想ってるだけで伝わらないんだろう。

 言葉にしないと何でわからないんだろう。


 「嘘つき・・・・・・本当はわかってるくせに」


 田巻さんの気持ちも、あたしの気持ちもわかってるくせに。

 

 悔しくて睨みつける。


 そうでしょ? 

 優ちゃんとの会話を聞いてたなら、あたしが何を思って、何を考えていたかなんてわかってるはず。


 「僕は味方じゃないの?」


 「敵とか味方とかそんなのない。みんな友達だもん」


 「友達? 僕も?」


 「・・・・・・なんで、そういう意地悪言うの?」


 「言うよ。聞きたいから、どんなにみんながひどいって言っても僕はアヤしか興味ないし、他の人がどうだって知らない」


 「自分勝手だ・・・・・・」


 「そう。いいだろ、迷惑かけてないし」


 「あたしが迷惑」


 「じゃあ、アヤも迷惑かけていいよ」


 してやったりと笑う緑川君は勝者の顔をしている。


 負けだ。

 どんなに踏んばっても、吐き出したい気持ちを「どうぞ」と言われれば止めれない。

 そこを、留まれるほどあたしは大人じゃない。


 ゆっくり瞬きをして息をすう。


 「あ、そう。じゃあ言うけど、女の子が好きなのは勝手なんだろうけど、あたしのいるところではやめてよ! 見てると、きもちわるい! あと、あたしの性格が悪くなったら緑川君のせいだからね!」


 「上出来。最初から言えばよかったんだよ」


 「なっ!」


 「じゃあ、僕も言わせて。どんな話しててもいいけど、僕のいる場所でどこぞのアイドルグループだか知らないけど、ナッツ〜愛してる〜とか叫ぶのはやめてね」


 どこぞのアイドルグループって、アイドルじゃなくてロックバンドでしょ。

 あたしたち4人が熱をあげているバンド「ガボール」は今、流行のヴィュアル系ロックバンドだ。

 いつもテレビ出演のチェックや雑誌のチェックをしてるくらい好きな芸能人。

 そう、芸能人。


 しかも、ナッツが好きなのは優ちゃんだし。


 「ガボールはアイドルじゃないし、そんな事、あたし叫んでない! それにあたしが好きなのはリュウだもん!」


 あたしは顔を熱く火照らせながら反論する。


 「ああ、それそれ。誰でもいいけど、やめてよね」


 「芸能人だよ?」


 それくらいと慌てるあたしに冷ややかな視線を向けてくる。


 「同じだから」


 「同じじゃないし・・・・・・」


 「そういうのすごく面白くないから」


 そんな〜・・・・・・。

 それはそれ、これはこれじゃないの?


 あたしは必死で訴えるけど緑川君はとりあってくれなかった。


 「じゃ、鍵しめて帰ろうか」


 「・・・・・・意地悪」


 「毛布投げたお返し」


 意地悪な顔がより一層、意地悪く見えた。


 ベッドを直して、数時間ぶりに地面へ足をつける。

 保健室のドアを前に緑川君のうしろをついて出る。


 「緑川君の本性しったら、田巻さんもびっくりだね」


 「バレるようなヘマはしないから」


 「・・・・・・でも、田巻さんは」


 脳裏に教室を出るときの田巻さんの顔が浮かぶ。


 「知らない。利用できるものはするし」


 緑川君の顔はすでに意地悪を越して悪に近かった。


 でも、だからって嫌いになんてなれなくて。

 むしろ、あたしだけと言われているみたいで気持ちがいい。

 

 優ちゃんの言った、独占されると嬉しいの意味がなんとなくわかったような気がした。

 

 まあ、芸能人にまで及ぶとは思わなかったけど・・・・・・。

 

 

 緑川君の背中越しにため息をひとつ。

 そのため息に気がついたのか緑川君の足がとまる。

 


 「あ、そうそう。僕はそう簡単に嫌いになんてなってあげないから」


 安心してと笑う緑川君を前にして、本当にこの人にはかなわないと思った。

 


 この人は・・・・・・甘い果実で誘惑してくる悪魔だ。

 この生徒の鏡みたいな顔にあたしは騙されているのかもしれない。

 でも、それでもいいや。


 田巻さんを想えば胸が痛いけど。

 ごめんね、譲れないから・・・・・・。


 「あたしはすぐ嫌いになるよ!」


 あたしは言葉とは反対にそっと緑川君の手を握った。


※下にあとがきと次回予告がひっそりとあります。

    (あとがきパスな方用に見えないようにしています。






















 ■あとがきという名の懺悔■


 本日のご来場ありがとうございました!

苦しかった!! もう書けないかと思いました。

途中、何が書きたいのかさっぱりわからなくなるし、

これがスランプというヤツでしょうか? そんないちょまえに・・・・・・。

結局、らぶらぶなのもお約束ってことで。


さて次回♪ ☆43☆ 君のいない教室


ちょっと時期はとびますが2月にはいります。

1月はそんなに書くことなさそうなので、流しますね。

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