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☆寄り道編☆ 鏡よ、鏡。 [Side by Tamaki]


 急に思いついて書き上げたので

かなり雑になってるような気がします。

試験的にサイドストーリーをUpしています。

書いている方はものすごく楽しかったですが。

不評であればサイドストーリー最初で最後ですので

ご不満等ありましたら苦情は

お手柔らかにお願いいたしますね;;

 鏡よ、鏡。

 どうか私を可愛い女の子にしてください。

 そしたら、きっと彼が私を・・・・・・。


 顔をあげて向かい合った鏡に映る自分の顔。

 もう生まれてからずっと見つめあってきた顔。


 この顔だけはどうにもならないか。

 

 しもぶくれで肌だけ白くて。

 頬はまるで絵本にでてくるような雪ん子みたいに丸く赤い。

 唇は厚いのに小さい。

 おまけに目は一重でまつげも短い。

 この顔にロングの髪は似合わなくてバッサリ短く切った。

 

 スタイルだって・・・・・・。


 ハンカチで手を拭きながら身体の方へ視線を向ける。

 

 身長は高くもなければ低くもない。

 それよりなにより、体質のせいなのか家系なのか太めっていうのがダメ。


 こんな私じゃ、とても・・・・・・。


 夏の制服の白いブラウスにゆとりがないって最悪。

 

 ダイエットしてるのに・・・・・・。

 子豚ちゃんって言われるハズだよ。


 ため息をつきながら女子トイレから出る。

 廊下には熱がこもっていてトイレの方が幾分か涼しく感じた。


 突然、目の前を誰かが走りぬける。

 

 ったく、廊下は走ったら―――。


 注意しようと思った瞬間、その誰かが止まる。


 「田巻さん!」


 「・・・・・・優ちゃん?」


 松田まつだゆう

 同じクラスで一番、背の高い女子だ。

 私の知るかぎりでは成績も程よく、性格も明るい。

 スタイルも良くておまけに美人だ。

 人の好みはいろいろあるだろうけど、子鹿のような顔は誰からみてもウケがいいにきまってる。


 「ねえ、さーちゃん見なかった?」


 「さーちゃん? 見てないけど、帰ったんじゃないの?」


 さーとゃんとは同じく同級生の澤田さわだ あやの事だ。


 「そんなはずない! 絶対いるはず! ったく〜・・・・・・またおせっかいしてるんだ」


 優ちゃんの顔が険しくなる。

 

 仲が良いことで。

 同じグループだからってあんなに四六時中、一緒にいて、放課後もまた一緒とはすごいすごい。

 そりゃ〜さーちゃんも逃げたくなるって話だよね。

 

 走り去っていく優ちゃんの背中を呆れながら見つめた。


 「あ・・・・・・注意するの忘れた」


 ハンカチをスカートのポケットにしまいながら呟いた。

 

 ま、いいか・・・・・・。


 教室へ向けて歩き出す。

 廊下は窓全開なのに暑さでどうにかなりそうだ。


 もう夏本番といったところ。

 あと2週間もしたら夏休みがやってくる。

 

 「田巻さん」


 その声に心臓が止まるかと思った。

 少し高めの、男子のものとは思えない声。

 この声の主を私が間違えるはずがない、見なくたってわかる。


 突然、脈拍上昇。


 ゆっくりと振り返ると笑顔のクラスメイトがいた。


 「緑川君」


 ああ、私の声のかわいげのなさ・・・・・・。

 せめて声くらい可愛かったら。


 反射的に眉間にしわがよる。

 

 「わっ! 僕、また何かした? サボらないで来たのに」


 緑川君は一歩後ずさる。

 

 怯えるような彼の態度にさらに表情が険しくなってしまう。


 私も素直じゃない・・・・・・。

 これじゃ、いつまでたったって近づけない。

 

 「委員会の仕事するのは委員長なんだから当然でしょ! もう夏休み前なんだから早く終わらせてよ。副委員の私が迷惑なんだから・・・・・・」


 ふたりで放課後、残ってたなんてまた知られたら噂が大きくなるじゃない。

 また・・・・・・私、その気になるじゃない・・・・・・。


 3年生になって、緑川君が委員長に選ばれ、2年の時も経験していた私が副委員長に選ばれた。

 それから何度か一緒に居残りをしていたら「できている説」がどこからともなく流れ。

 いつの間にか私たちは公認の関係ということに・・・・・・。


 でも。

 本当はそんな事実どこにもない。

 あるのは私の片思い。

 こんな私じゃ・・・・・・。

 わかってるのに否定する勇気もない・・・・・・か。


 「ごめんごめん。ちゃんと夏休み前には終わらせるし、大丈夫だって。田巻さん有能だしね」


 満面の笑み。

 

 この笑顔は私だけに向けられたものだよね。

 少しは期待してもいい?

 誰にでも調子のいい緑川君だから不安だよ。

 噂を否定しないのは一緒だから?

 


 「ちょ、調子のいいこと言うのは他の子だけにして!」

 

 私にもっと優しい言葉を言って。


 「そもそも、遅れたのって誰かのお尻でも追いかけてたんでしょ」


 他の子なんてどうでもいいじゃない。


 「貴重な時間なんだから時間は守ってよ」


 私との時間に興味を持って。


 口から出る言葉とは裏腹に心の中はめちゃくちゃ。

 

 「あ〜・・・・・・そうだよね。受験勉強だよね。時間おしいよね。田巻さんはどこの高校?」


 申し訳なさそうに隣で肩を落としている。

 

 そう、こういう時の緑川君は一瞬、大人っぽい顔をするんだよね。


 横をチラチラッと見てから。


 「第一」


 とボソリ。

 

 「へー、同じだね。やっぱり第一を志望してると勉強ばっかになるのかな」


 同じに決まってる。

 同じにしたんだよ。

 本当は私立の女子高校へ志望してたのを公立に変えた。

 それも、つい先日。

 

 「自分だって勉強ばっかりでしょ」


 「まあね」


 そう笑う顔が胸を締めつけさせる。

 恋なんてしないって思ってた。

 噂が流れてから意識してしまって嫌になる。

 優しくしないで強く否定してくれたらあきらめられるのに・・・・・・。


 こんな私じゃ、自分から告白なんてとてもできない。

 図々しい私が時々、期待をして顔をだすけど、自制心には自信があるから心配しないで。

 困らせる気はないんだから。

 ただ・・・・・・。



 どうして噂を否定しないの?






 教室のドアを開けると、中には誰もいなかった。

 この暑さだ。

 みんな家へ帰るにきまってるか・・・・・・。


 「じゃあ、早めに球技大会とかの班決めとかしちゃって帰ろう」


 緑川君は大きく腕を伸ばして教室へ入っていった。

 

 「言われなくてもするよ」

 

 私も続いて教室へ入る。

 これからしばらくはふたりだけの教室になる。

 この時間が私は好きだった。

 

 ―――― カタッ。

 

 「・・・・・・」


 え?


 教室の隅に誰かいた。

 誰もいないと思っていたのに、教室の床を這うようにゴソゴソと何かしている。

 しかも、スカートの中が丸見え。

 

 緑川君はまだ気がつかないのか適当な席に座っている。


 「田巻さん? 始めないの?」


 不思議そうに私を見て、緑川君はその視線の先を追う。

 次の瞬間、ガタガタッと椅子をひっくり返して立ち上がっていた。


 それもそうだろう。

 いくら体操着の短パンをはいているからといってもスカートの中が丸見えなくらい這っているんだから。


 「誰?」


 私よりも緑川君の方が先に声をかけた。


 「え? きゃっ! あ、あったーっ!」


 這っていたスカート丸出し女子は声をかけられてビクッとしたかと思ったらいきなり叫び声をあげた。


 「さ、澤田さん?」


 緑川君は突然、さーちゃんの名前を呼んだ。


 「え? さーちゃん?」


 言われてみたらその声は確かにさーちゃんのもののように聞こえた。


 ゆっくりと立ち上がってめくれたスカートを直し、私たちの方を向く。

 そこに現れたのは間違いなく澤田 彩だった。


 肩まである長い髪を束ねて。

 丸くて大きな瞳をキラキラ輝かせて満足そうに笑っている。


 「それはないんじゃない?」

 

 不満そうな緑川君の声にハッとする。

 

 「あれ? 緑川君に田巻さん。どうしたの? あ! また噂の・・・・・・」


 そこでしまったというような顔をする。

 

 「今のナシね。ヒヒッ」


 「ヒヒッじゃないよ。ちょっと考えたほうがいいよ」


 緑川君の声はより一層不機嫌な感じだ。


 「何が? あたしはただシャープ探してただけだよ」


 さーちゃんも緑川君の態度の悪さに反発しながらそう言って、持っていたシャープペンシルを見せる。

 

 あれは・・・・・・。


 あれはたぶん水沢みずさわ 桃子ももこのものだ。


 私には見覚えがあったし、数時間前に問題になったものでもあった。


 「それって・・・・・・」


 私はよく見るために近づく。


 「そうだよ。これ桃子さんの」


 さーちゃんは私にニコニコと笑いながら近づいてくる。

 

 「やっぱり、落としただけなんだよ」


 「桃子さんのために? そんな事しなくたって」


 おせっかい。

 わざわざ面倒なことしなくたっていいのに。


 水沢 桃子はいじめっ子だった。

 ところがクラスの反撃にあい、いじめっ子生活は1ヶ月で幕をおろした。

 その1ヶ月で行った行為でいまだみんなに無視をされている。


 自分でまいたタネだ。

 

 私はそう思っている。

 そんな彼女のシャープがなくなって大騒ぎしていた数時間前。

 とった、とらないの大騒ぎをとめることもできなくて。

 結局、彼女は呪いの言葉を叫び、帰って行った。


 「仕返しなんて良くないよ。田巻さんだってそう思うでしょ?」

 

 本当にイライラするくらいに良い子の見本で腹が立つ。

 

 「そうだね・・・・・・」


 「ねえ! シャーペンとか仕返しとかどうでもいいけどさ、あの格好は良くないよ! あれはナシだよ」


 緑川君の声が割り込んでくる。

 

 何がそんなに面白くなかったのか怒っているように見えた。


 「何が?」


 「澤田さんのあの格好だよ!」


 「あ〜、あれね。ちゃんと考えて体操着きてたし大丈夫、大丈夫」


 さーちゃんは笑う。

 

 「大丈夫って・・・・・・」


 「あ、田巻さん。優ちゃん見なかった?」


 さーちゃんは絶句する緑川君を無視して私に聞いてくる。

 こんなにうろたえている緑川君もめずらしい。


 「え、優ちゃん? ・・・・・・あ、そういえば血相変えてさーちゃんの事、探してたけど」


 緑川君に気をとられながらも数分前の優ちゃんの怒りの表情を思い出す。


 「う、うわ〜、本当? まずい! 優ちゃん怒らせるとこっわいんだよ〜。じゃ、そういう事でお邪魔しました〜」


 さーちゃんは手をヒラヒラとさせて走っていった。


 「澤田さんっ!」


 緑川君が叫んだけど、さーちゃんは振り向いて舌を出しただけで止まらなかった。


 「ったく・・・・・・あの格好はナシでしょ。女の子なんだから・・・・・・」


 ブツブツとさーちゃんの後姿に向かって唸っている。


 「まあ、体操着きてたわけだし」


 私はふぅ〜とため息をついて邪魔者が去ったあとの空気を整えると。


 「さ、はじめよう」と声をかけた。


 


 椅子に向かい合うように座ると、クラス名簿を開きながら仕事を始めた。

 教室にふたり。

 目の前で真剣に委員会の資料をまとめている緑川君をチラチラと見る。

 その視線に気がついたのか突然 ―――。


 「ねえ、さっきのシャーペンって」


 仕事の手をとめることなく緑川君が聞いてきた。


 「え? ああ、あれは水沢さんのヤツ。ほら今日、問題になってた」


 「あ〜・・・・・・あれか。なんか女子が騒いでたやつね」


 「水沢さんは盗られたって騒いでたけど、結局、落としただけみたい。まったく自分がそういう事やってたからって」


 私は名簿から目を離さずにブツブツと言う。


 「なんで澤田さんが?」


 「わからないよ、そんな事。さーちゃんはお人好しかバカなんでしょ。修学旅行の時だって水沢さんと一緒に新幹線乗る人がいないからって一緒に乗るし」


 「へ〜・・・・・・」


 「優ちゃんが怒るのをなだめるの大変なんだよ。おせっかいも迷惑な話なんだって」


 緑川君は何も言わずに笑って聞いていた。


 そういえば、緑川君とさーちゃんって3年間同じクラスなんじゃ・・・・・・。

 

 「緑川君のほうがさーちゃんの事知ってるんじゃない?」


 「あ〜、でも澤田さんに逃げられてばっかりだから」


 言われてみたら、さーちゃんには何かとちょっかいをだしては怒られている。

 それでも、めげないって事はお気に入り?


 「それって・・・・・・」


 「しっかし、正義の味方じゃないんだしひとりでどうこうするなんて」


 ため息が聞こえた。

 

 あきれてる?

 好きってわけじゃないのか・・・・・・。


 ホッと楽になるのを感じる。


 「でもすごいと思う」


 私ってずるいな。

 安心したとたんに褒めるなんて・・・・・・。


 自分の汚い部分に苦笑する。

 

 「すごい? んー・・・・・・まあ、そうとも言うか」


 腕をくみながら考え込む緑川君。

 前髪が風にゆれて伏せた目が見え隠れしていた。


 よく見れば結構、きれいな顔してる。

 

 見とれてしまってハッとする。


 「ほら! 手がとまってる! 早く帰れなくなるよ!」


 「うわ! はいはいはい」


 慌ててまた資料にかじりつく。

 その姿に笑ってしまう。

 

 「ここ!」

 

 私は無記入の欄を指差す。

 一瞬、指と指が触れる。


 あ・・・・・・。


 「ああ、これか。これでいいでしょ」


 「あ、う、うん・・・・・・」


 指をサッとひっこめる。

 顔が熱い。

 きっと白い顔も赤くなってるだろう。

 


 好き。

 あなたが好き。

 噂におどらされてるって笑わないで。

 だって、今はこんなに好きだから。

 


 見上げればすぐ目の前に好きな人がいる。

 みんなは普通だというけど、私にはかっこよく見える。


 笑った時の優しい顔がたまらない。

 これだけ近くにいるんだから、いつかは振り向いてくれる?

 誰よりも近くで見ている私を見てくれる?


 こんな私でも・・・・・・。


 「んー・・・・・・やっぱ、すごいより可愛いだな」


 突然、そう言うとまた名簿の名前を読みはじめた。


 「何が? 名簿が? え? 」


 聞いても笑うだけで答えない。


 「なんなのよ、もーっ。ったく、訳わかんない変な事いってないで仕事して!」

 

 「はいはーい」


 緑川君の顔がニヤけている。


 可愛い・・・・・・か。

 いつか私にもそう言ってくれる日はくる?

 いつかその手で私の手を握ってくれる日はくる?


 


 鏡よ、鏡。

 どうか私を可愛くしてください。


 誰よりも一番近くからサインを送るから。

 いつか私の気持ちに気づいて。

 そしていつか噂を真実に。






※下にあとがきと次回予告がひっそりとあります。

    (あとがきパスな方用に見えないようにしています。

















     ■あとがきという名の懺悔■

 

 本日は2度目?のご来場ありがとうございました!

 寄り道編の田巻さんストーリーでした。

 時期は夏なので緑君が告白する前のお話になります。

 本当は別視点での本編を抜き出そうとおもってたんですけど、

 純粋に田巻さんの片思いを描きたくなってしまってこんなんなっちゃいました。

 短編でUPしたらよかったのかもですね。

 まあ、おまけって事で許してください。

 好評でしたらまた別の寄り道編をご用意いたします♪


 さて次回♪ ちゃんと本編いきます!


 ☆38☆ 新学期のおまじない


 38!! 信じられない・・・・・・。長々書いててすみません。

 半年を書くわけで、まとめられないって言うかどこもみんな省けない感じで。

 省略しろ!って言われちゃいそうです。

 内容的には、その言葉どおりに新学期がはじまるって事で、また学校です。

 もう3学期なので受験目前。

 約束なしで会える「学校」って場所は大人になって羨ましい場所だったり。

 いつも一緒なんて大人になったら不可能ですからね。 


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