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☆26☆ 先にあるもの


 考えていることと書いてることが微妙にズレていて

 へこみます。このまま書いていていいのでしょうか・・・・・。

 


 今でもあの時の電話は思い出せる。

 あのドキドキも。

 

 「少しがんばれよ、がんばって泉高校を目指したら?」


 冗談だと思っていた。

 

 「澤田さんのこれからに僕はいる?」


  そう聞いてきた緑川君を見てもいないのに目を閉じると浮かんでくる。

 悲しそうに笑う顔。

 

 どれだけ想ってくれているのか。

 目に見えるカタチで証明してくれるとでも言うのだろうか。

 

 でもこれはダメ。

 こんなこと・・・・・・。

 

 どうしてこんな事に。

 どうなっちゃってるの?


 何も聞いていない。


 今度こそあたしのせいなんじゃないんだろうか。

 だとしたら・・・・・・。


 「アヤ? アヤっ!」


 母の声が現実にもどす。


 「どうしちゃったの? 具合でも悪い? 顔青い」


 学校をどうやってでたのか、どうやって歩いてきたのか。

 もう家が目の前だった。


 「あの子、何て言ったかしら。熊・・・・・・熊君」


 「熊田君・・・・・・」


 「大きな子よね〜、やっぱり男の子は違うわね〜。あんたあの子にお礼言うのよ」


 カバンの中へ手をつっこみながら母は言う。


 お礼・・・・・・? 何の?


 ふと疑問に思って考え込む。


 「あ、あったあった。鍵、鍵。何があった知らないけど、人に迷惑かけたらダメだっていつも言ってるでしょ」


 鍵穴に鍵をいれながらあたしの方は見ない。


 「迷惑・・・・・・」


 「下駄箱ついたらアヤいないんだから驚いたわよ。熊君が連れてこなかったら、あんたまだ学校だったんじゃないの?」


 訂正したところで熊田君と呼ぶ気はないのだろう。

 あたしは少し前に記憶をさかのぼらせる。


 「学校・・・・・・」


 ・・・・・・そうか。

 あの先生の衝撃の一言のあとで。

 あたしは放心してしまって動けなくなった。

 その後、そばにいた熊田君があたしを母のいる生徒玄関まで背中を押してくれたんだ。


 また、助けられた。


 熊田君はどう思ってるだろう・・・・・・。

 あたしが推薦をやめさせたと思ってるだろうか。


 「変な子ね〜・・・・・・。そういえば泉高校がどうとかって寝言みたいに言ってたけど志望校変えたの?」


 志望校変えた。

 そう、変えたんだ。

 緑川君が。

 第一の推薦なんてみんな喉から手がでるほど欲しいものなのに。

 簡単に捨ててしまえるなんて・・・・・・。

 

 玄関のドアは開かれていた。

 母はやっと楽な格好ができると急いで部屋へ向かう。


 「お、おかーさん!」


 「なによ」


 階段に足をかけて母は少しだけ不機嫌そうな声をだす。


 「あ、あのさ・・・・・・」


 「志望校の事なら好きにしていいわよ。がんばりなさい」


 母は部屋に入ってしまった。


 違うのに・・・・・・。


 あたしもゆっくりと自分の部屋へ向かう。


 このままでいいんだろうか。

 ものすごい思い上がりかもしれないけど。

 止められるのはあたしだけかもしれない。


 自分の部屋のノブに手をかけたまま動けない。


 「やっぱり、あんた変よ」


 いつの間にいたのか母が怪訝な顔で見ている。

 いつものだぶだぶのTシャツにゆるゆるジーンズというラフな、ラフすぎる姿だ。


 「熱でもある?」


 「おかーさんならどうする?」


 おでこに手をあてられてあたしは我慢できず言葉にしてしまう。

 誰かに言わずにはいられなかった。


 「友達が志望校を変えたの」


 「突然なに? それって熊君の事?」


 「違うよ。なんでそこで熊田君がでてくるのよ」


 「違うの? ふ〜ん」


 あえて友達と言うところが怪しかったのか母は胡散臭そうに目を光らせた。

 それもそうだろう。

 友達といえば優ちゃん、久美、雪ちゃんと名前を出しても母には通じる。


 「本当はものすごくレベルの高いところにいけるはずなの。いかなくちゃダメなの。それなのにやめたみたい」


 「友達ね〜・・・・・・。そうね〜。親御さんは困るのだろうけど、その子が自分で選んだんだったら仕方ないんじゃないの? 自分の事だもの自分できめるでしょ」


 あんただってお母さんの言うことなんて聞かないじゃないとぷいっとそっぽを向く。


 「それはそうだけど。その子は・・・・・・違うの」


 違うんだよ。

 あたしががんばって1ランク上の高校へ行く。

 緑川君が1ランク下の高校へ行く。

 同じ場所へ。


 そんな事のために。

 そんな事のためなんかに。

 

 「おかしな子。先の事なんて誰もわかんないのよ。ましてや高校がすべてじゃないし、その先があるじゃない。そこで終わりじゃないのよ」


 「わかってるよ、そんな事・・・・・・」


 「どうかしらね〜。高校に行けばとりあえず終わりって思ってるんじゃないの?」


 「あ、あたしの事はいいの! あたしは高校入ってから考えるから!」


 ふふん、と母は鼻を鳴らして意味深な笑顔をつくる。


 「ま、おかーさんの意見としては。先を考えての選択ならがんばれって応援するけど無鉄砲に算段なく決めたなら教えてあげるわね。先を考えろって」


 「この先を・・・・・・考える・・・・・・」


 「まあ、人の心配するより自分の心配したほうがいい人にとやかくは言われたくないでしょうけどね」


 おでこをちょいっとつついて母は忙しそうに下へ降りていく。

 一人残されて部屋のドアに、もたれかかる。


 「応援なんてできないよ。できるわけないよ・・・・・・こんなの間違ってるんだよ」


 同じ場所へ行く。

 その先は?

 緑川君はきっと大学へ進む。

 あたしは?

 あたしは・・・・・・まだわからない。


 なりたいもの。

 夢。

 そんなのを追いかけたいわけじゃないけど。

 あたしにはわかる。

 

 緑川君とあたしは進むべき道が違いすぎる。


 高校っていうわかれ道。

 この先にいくつもあるわかれ道。

 最初のわかれ道。

 これを無理して乗りきってもいずれまた、わかれ道はあるんだ。

 

 同じ場所にいられないことはそんなにも怖いことなのかな。


 この先のことなんてわからない。

 高校に入ってから考えればいいとずっと思ってた。

 ちがう、そうじゃない。

 そんな先の事なんか考えたこともないんだ。


 大人になって。

 あたしがどうなってるとか、緑川君がどうなってるとか。

 優ちゃん、久美、雪ちゃんがどうなってるかなんて。

 まだずっと先のことだって思ってたから。

 

 苦しい胸を押さえながら。

 あたしはこの先にあるものの大きさに震えた。

 

 行かなくちゃ。

 今ならまだ推薦もとりもどせるはず。

 今日の事だもの。


 勢い良く部屋へ入るとバサバサと制服を脱ぎ、着替える。


 


「おかーさん!! ちょっと出かけてくるー!」


 玄関で叫ぶ。

 

 「どこいくの!? もう夕飯の時間よ」


 キッチンの方から母の驚く声が返ってくる。


 「いってきまーす!」


 怒られるのは覚悟だ。

 この時間だもの。

 帰りは遅くなる。

 それでもあたしは行かなくちゃ。

 

 コートの袖をぎゅっと握り母の返事を待たずに飛び出た。

 もうそこまで夜がきているのか、空の半分が夜になっている。


 行かなくちゃ!

 緑川君のところへ!


 力いっぱい自転車のペダルを踏んだ。



※下にあとがきと次回予告がひっそりとあります。

    (あとがきパスな方用に見えないようにしています。

















  ■あとがきという名の懺悔■


 あれ〜? お話進まなかった・・・・・・。もう少しひっぱってもいいでしょうか。

 なんだかあれもこれもと書き込んでいます。

 心の葛藤みたいのながもっと欲しい感じです。


 次回♪ ☆27☆ いつか怪獣になる日 

 緑川君の家の事情なんかを会話で表現できたらな〜と思います。

 

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