☆18☆ ちょっとしたすれ違い
本当に読まれているのか不安ですが。
読まれていると仮定してこれからもがんばりますっ!
と言いたい・・・・・・。
「澤田、ちょっと・・・・・・」
廊下で呼ばれて立ち止まる。
昼休みって事もあって人がたくさんで誰に呼ばれたのかわからなかった。
「こっちこっち」
特別校舎へつながっている廊下から熊田君が手招きしている。
「あ・・・・・・」
呼ばれた理由はなんとなくわかっていた。
「悪い、昼休みだけどいい?」
「うん、別にいいけど」
あたしはいつになく真剣な顔の熊田君に嫌な予感がした。
「こっちいい?」
熊田君の言うままに後ろをついていく。
クラスメイトが「何?何?」と驚いて見ていた。
だけど、今は熊田君の話しの内容が気になって気になってそれどこではなかった。
特別校舎に入ると熊田君は階段をあがり屋上のドアの前で止まった。
「こんな所までごめんな」
「いいよ、どうせ優ちゃんの事でしょ?」
わかってますとあたしは笑う。
「あ、うん・・・・・・あいつ、何か言ってたか?」
熊田君は困ったように頭をおさえている。
「何も言わないよ、言わないから聞けないし」
そう、優ちゃんは何も言わなかった。
告白の返事がどうだったとか、熊田君と話した事とか、まったく口にしなかった。
優ちゃんが言わないって事は聞いてはいけないと自然にその話題は避けた。
「そっか・・・・・・」
「断ったの・・・・・・?」
おそるおそる聞いてみる。
熊田君は何も言わずに小さくうなづいた。
やっぱり・・・・・・。
「熊田君と優ちゃんって仲がいいからてっきり・・・・・・」
「だよな。でも、どうなんだ?好きかって聞かれてもさ、そんなのわかんねーよな」
ワシャワシャッと髪をかく。
「アイツの事、好きかもしれないけど違うかもしれないだろ。そんな、わけわかんないのに好きだなんて返事できねーよ」
ああ・・・・・・優ちゃんの目は正しいんだ。
熊田君は真面目で、すごくかっこいい。
あたしにはわかる、熊田君が言いたい事。
痛いくらいにわかる。
「でも、他に好きな人がいないなら・・・・・・」
「澤田〜・・・・・・そんなもんじゃないだろ?好きってヤツはさ」
「ロマンチストなんだ」
「ばっ!そうじゃなくて、好きってのはなんていうのかな。ほら、がぁーーーっポンッ!みたいな」
ふたりしかいない小さな空間で熊田君はオーバーアクションで伝えようとする。
「わかんないよ・・・・・・何いってるの?」
「なんだ、ほら花火みたいな感じで」
「消えちゃうの?」
「ちがうって、弾ける感じでな・・・・・・まあ、あれだ。まだ経験がないからよくわかんねーな」
ぷっと思わず噴きだしてしまった。
「笑ったな、澤田こそどうなんだよ。好きなやつとかいるんだろ」
「好きな人・・・・・・あたしもわかんないな」
つきあってる人はいるけど、なんて言えない。
「まだ早いんだよな、つきあってるヤツとかもいるけど、本気かよって思うよ」
「優ちゃんは本気だよ」
あたしの声が冷えた階段に響く。
「わかってるよ、そのくらいわかってるって、だからつき合うなんて言えないだろ」
好きかどうかもわかんねーのによ。と小さくうなる。
「優ちゃんを泣かせたくないよ」
あたしはうつむき小さく言う。
「ごめんな・・・・・・松田の事、頼むよ」
壁にもたれながら苦しそうにお願いポーズをする熊田君はもしかしたら優ちゃんと同じくらい傷ついてしまったのかもしれないと思った。
「わかった・・・・・・でも」
顔を熊田君に向ける。
「でも、もし受験が終わって、まだ優ちゃんの気持ちが変わらなかったら、・・・・・・熊田君の気持ちが変わってたら、優ちゃんにもう一度チャンスをちょうだいね」
あたしはまっすぐに熊田君をみつめる。
「おう、その時はオレの方が動くかもな」
「へ〜、男だね。だけど・・・・・・それは優ちゃんに言わないでおくから」
「わかった・・・・・・」
「じゃあ、約束ね」
あたしが熊田君を見ると彼は何かに驚いていた。
視線はあたしを通り越して階段下へ。
「約束って何の約束?」
突然、第三者の声が階段に響く。
その声は聞き覚えがある。
ちがう、こんな声じゃなかったような。
もっと、甘みを帯びて。
こんなに冷たい声じゃ・・・・・・。
振り返るとそこには声の主である緑川君が立っていた。
確か、つい昨日も同じような場面が・・・・・・。
「緑川?」
熊田君も驚いてるみたいだった。
いつもだったら、ふにゃふにゃっとした顔で「こ〜んなとこでなにしてるのかな〜?」とかってふざける人なのに、今は違う。
まるで別人のように表情がない。
「もう、昼休み終わってるんだよね、何人かが澤田さんと熊田が特別校舎に行ったって言ってて、委員長だからね。探しにきたんだ」
淡々と状況説明をする。
目が笑っていない。
「悪かったな、チャイムが聞こえなかった」
そういえば、チャイム聞こえなかった。
「朝、先生の話きいてなかった?特別校舎の配線が壊れてて、工事がはいるって言ってたでしょ、だから1日、放送はとまってるんだよ」
そういえば、そんな事を言ってたかも・・・・・・。
「5時間目、はじまってるの?」
声が震えるのをおさえるのがやっとだった。
何かに怯えてた。
嫌な予感が強くなる。
「そうだよ、早く教室に戻ってくれる?」
冷たい声の主はあたしを見ない。
あたしに怒ってる?
緑川君の怒る理由がわからない。
面倒なことをさせたから怒ってる?
「緑川君っ、あの・・・・・・」
「お前、変じゃないか?」
熊田君が様子の違う緑川君に近づく。
「本当にね、おかしいんだよ。だって変なのはどっち? ねえ、澤田さん」
緑川君は熊田君の存在が見えていないように通り過ぎ、あたしの前に立つ。
「お、おい、緑川?」
「どうして?・・・・・・熊田となら噂になってもいいの?」
まるでナイフのようにあたしを突き刺すような目でみつめる。
こんな目を見たことがない。
いつもの調子のいいムードメーカーは影も形もない。
怖いっ!!
「ち、ちがっ・・・・・・」
否定しようと声に力を入れた瞬間、肩を両手でつかまれてバンッと勢いよく壁に押しつけられる。
緑川君の指先が制服の上から、くいこむほど強くつかんでいた。
あたしはあまりの痛さに顔をゆがませた。
「痛っ」
「おいっ!何やって!」
熊田君が緑川君の腕をつかむ。
「熊田には関係ないんだから邪魔するなよ」
なんでだろう。
こんなに痛いのに。
こんなに怖いのに。
抵抗しようとは思わない。
緑川君の目があたしを責めている。
傷つけた・・・・・・?
「ごめ・・・・・・んなさい・・・・・・」
「謝ってなんか・・・・・・ほしくない、そんなの欲しくないっ。結局、澤田さんはわからないで済ませちゃうんだよ」
「そんな事・・・・・・」
「っとに・・・・・・イラつく」
そう言うと、緑川君は肩から手をはなした。
肩がジンジンと熱を持ったように痛む。
あたしは吐き捨てられた言葉と一緒に捨てられたような気がした。
「緑川君っ」
「もういいよ・・・・・・」
緑川君は階段を下りて消えてしまった。
「澤田・・・・・・おまえ・・・・・・」
残った熊田君が心配そうに覗き込む。
「お前たち、どういう関係だよ・・・・・・つきあってるのか?」
どういう関係?
どういう関係なんだろう・・・・・・。
熊田君はあたしの肩に手を置く。
一瞬、強い痛みが走る。
「悪い、痛いのか?・・・・・・なあ、アイツ誤解してるぞ」
「誤解・・・・・・?」
「オレたちがふたりでいたからな、って、おいっ!そんな事もわかんなかったのか?」
熊田君は呆れたようにあたしを見下ろしている。
足に力がはいらない。
あたしはその場に落ちるように座りこむ。
「ど、どうしよう・・・・・・」
「澤田、アイツの事好きなんだろ?だからつきあうんだろ?違うのか?」
熊田君は不思議そうに首をかしげる。
「だって・・・・・・わかんないんだもん、熊田君みたいに花火みたいなのは弾けないし、優ちゃんみたいにはっきり言葉にできないし、だって・・・・・・緑川君と一緒にいるとよくわかんなくなっちゃうんだもん」
「はぁ?何いってんだよ」
だってっ!と熊田君の顔を見あげる。
「緑川君と一緒にいるとプールで泳いでる時に似てるの、でも変なの、あと少しのところでゴールなのに泳いでも、泳いでも、浮くだけで手が届かないの、あと少しなのに・・・・・・」
あと少しで何かがわかりそうなのに。
あと少しで追いつけそうなのに。
熊田君はあたしをなだめるように頭に手をおいてからしゃがむ。
「なあ、それがお前の好きって事なんじゃないのか?」
「・・・・・・」
「澤田にはそう感じるんじゃないのか?ゴールできたらわかるんだろ」
熊田君はしょうがないな〜と笑う。
「半分、オレのせいだしな。手伝ってやるよ」
そういいながらあたしの腕をひっぱりながら立ち上がる。
教室に戻ると先生に怒られるし、みんなには冷やかされるしで最悪だった。
優ちゃんにはあたしの行動はおみとうしで、「おせっかい」と言われただけですんだ。
本当に最悪なのは。
緑川君だ。
その後、一度もあたしを見てはくれなかった。
胸が絞られるみたいに苦しかった。
「緑川君に言い訳できたの?」
放課後、優ちゃんにきかれて首をふるしかできない。
「ばか、人の事ばっかり首つっこんでるからだよ」
優ちゃんに怒られても何も言い返せない。
言い返す力もない。
きっともう・・・・・・嫌われちゃったんだ。
「あんまり澤田を責めるなよ」
熊田君は机の間をすりぬけてきた。
「熊田・・・・・・あんたのせいでしょうがっ!」
バシッと優ちゃんが熊田君の頭を叩く。
「いって〜!凶暴女!だから手伝おうと思って、これ書いたんだぞ」
熊田君から紙を渡される。
開くと地図が書いてあった。
「これは?」
「緑川の家なら知ってるんだ、行ったことあるしな。明日、土曜だし、早めがいいかと思って」
「やるじゃん!熊田!でかした!」
優ちゃんはさらに熊田君の頭を叩く。
「おい、お前恨みこもってないか?」
「あったりまえでしょーっ!あたしみたいな可愛い子ふったこと後悔させてやるっ!」
優ちゃんはバシバシと叩き続ける。
「さ、澤田、行けよ、松田の事はまかせろっ!っつ、いてっ」
2人が一生懸命、励ましてくれてるのがわかる。
「ありがとう、あたし行ってくるっ」
「さーちゃん!ガツンと言ってこいっ!」
「ありがと、優ちゃんっ」
あたしは走り出す。
「お前達の事は誰にもいわないからな〜」
「あたりまえだっ!ボケっ!」
バシッと鈍い音が聞こえてくる。
ふたりの掛け合いが聞こえなくなるまで走った。
あとは、どう走ったのかおぼえていない。
気がつくと、大きな家の前に立っていた。
あたしんちが3つくらい建ちそう・・・・・・。
玄関の前に立ち、庭を見渡す。
そしてチャイムをゆっくりと押す。
返事はなかった。
もう一度、押す。
それでも応答はなかった。
壊れてる?
留守?
まだ、帰ってないのかな・・・・・・。
もう一度、家を見上げてため息をつく。
緑川君。
怒ってる?もう許してくれない?
ごめんね。
ごめんなさい。
どのくらい玄関の前で立っていただろう。
あたりは真っ暗になっていた。
家の電気はついていない。
誰かが帰ってくる気配もない。
明日、休みだし・・・・・・。
明日また来よう。
あたしはゆっくりと歩き出す。
空にはもう星がでている。
白い息が空に向かって流れる。
とにかく会わないと。
会って話しをしないといけないと思うの。
電話じゃダメ。
それで嫌われるなら・・・・・・仕方ないよね。
あたしが悪いんだから。
何が悪いとかごちゃごちゃはともかく。
緑川君を傷つけたのだから・・・・・・。
※下にあとがきと次回予告がひっそりとあります。
(あとがきパスな方用に見えないようにしています。
■あとがきという名の懺悔■
本日もご来場ありがとうございます。
なんていうか、驚きました。こんな話を書く予定はまったくなく。
いつの間にか緑君が凶暴化してます・・・・・・どうしよう。
でも少しずつですが気持ちが接近してます。片方逃げましたけど・・・・・・。
さて次回。 ☆19☆ 芽生える想い
本当はタイトル違ってたんですけど、内容がズレしてるので変えました。
これでいけるんじゃないかと・・・・・・。




