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☆11☆ おいかけっこ

ムダじゃないですよっ><

ムダって言われちゃいましたらもう全話ムダ?

なんていうか、女の子時代っていいですよね〜・・・・・・。

 あたしは朝から悶々としていた。

 すでに6時間目が終わろうとしている。


 なんでよっ。

 どうして、あたしが話そうとしてる日に限って席にいないの!?


 朝から、この6時間目までの間。

 もちろん昼休みも含めて。

 一度も緑川君に声をかけることができていない。

 いざ、声をかけようとすると先生や委員会、男友達となにかと忙しそうだ。

 さすがに昼休みなら・・・・・・と思ったが。

 今度は音楽祭の緊急会議とかでいなくなってしまった。


 結局、放課後なの!?

 放課後・・・・・・また何かくるんじゃないでしょうね・・・・・・。


 自分の席から見える緑川君の背中を睨む。

 

 次こそ!!


 6時間目のチャイムが鳴ると教室は一斉に騒がしくなる。


 「終わったーっ! さーちゃんかえ・・・・・・?」


 優ちゃんが言い終わる前にあたしは走りだしていた。

 

 いないっ!!

 またいないっ!!


 いるべき席にもう緑川君の姿はない。


 急いで廊下へ出る。

 チャイム直後の廊下は大勢の生徒であふれていて誰が誰かわからない。


 もーーーーっ!!

 また逃がしたっ!!


 「さーちゃん??」

 

 呼びかけられて振り向く。


 「うわっ! おまえなんて恐ろしい顔してんだよ!」

 

 久美の顔がひきつっている。


 「さーちゃん・・・・・・どうしたの?」

 

 優ちゃんも驚いているようだった。


 「え? な、なんでもないよ」


 「なんでもないって顔じゃないですよ」


 雪ちゃんも心配そうだ、というよりおびえてる?


 「もしかして、緑川君とケンカとか?」


 「ちっちがっ!!」


 それどころか、全然会えないんですけど・・・・・・。


 「緑川なら今日はアレじゃね?音楽祭の」


 またか・・・・・・。

 がくーっと肩を落とす。


 「あれ? あれれ? 緑川君を探してた?」


 優ちゃんは満足そうに口に手をあてる。


 「そんなんじゃ・・・・・・あっ!」


 あたしはまた走り出す。


 「くっ熊田君っ!」

 

 ガシッと大きな身体のクラスメイトの肩をつかむ。


 「うわっ!」


 熊田君は緑川君と仲良しな友達だと勝手に思っている。

 だって、いつも一緒だから。


 「く、熊田君っ、はぁっはぁっ、みっ緑川くっんっ、ふぁ?」


 息が切れてところどころ声がちゃんと出せていない。


 「澤田さん、大丈夫?」


 「だいじょぶっ! それより、緑川君は?」


 息が整ってくる。


 「緑川? あいつなら昼間の緊急会議の続きだって生徒会室だろ」


 えーっ! また〜?


 途端に力が抜ける。

 

 「なんだよ〜緑川になんか用なのか?」

 

 どうやら熊田君はあたしと緑川君の事は知らないみたいだ。

 冷やかす顔はしていない。


 「用ってほどじゃないけど・・・・・・」


 「あいつ、今忙しいからな〜・・・・・・なかなかつかまらないかもな」


 「そっか・・・・・・」


 「それより、今日は塾だぞ、早く帰らないと」


 「うん、わかった、ありがと〜、また塾でね」


 週二回の塾は近所にあって、熊田君も同じ塾だった。

 

 手を簡単に振って優ちゃんたちのところへもどる。


 「熊田と何はなしてたの?」


 優ちゃんは目を輝かせて聞いてくる。


 「なんでもない・・・・・・」


 すべての手を封じられた気分。

 生徒会室には行けない。

 田巻さんがいる。


 「あ、図書室に本かたづけるように先生から言われてたんだ」


 優ちゃんが思い出したように慌てている。

 

 「待ってますよ?」

 

 雪ちゃんはカバンを持ちながら言う。


 「じゃあ、どうせなら一緒にきてよ〜まず教務室にカギとりにいこ〜」


 優ちゃんは雪ちゃんと久美と一緒に歩き出していた。


 「さーちゃんいくよ〜」


 「う、うん・・・・・・」


 目的はまだ達成されてない。

 何か手はないのかな・・・・・・。


 あたしも後から3人に追いつく。


 教務室の前までくると小声になる。


 「先生にカギもらってくるね」


 「まってますね」


 優ちゃんは教務室へはいっていく。


 教務室前の廊下から平行して特別校舎の廊下が見える。


 「あっ!」

 

 思わず叫んでしまった。

 

 「どうした?」

 

 「どうしました?」

 

 雪ちゃんと久美は不思議そうに聞いてくる。


 「ごめっ! ちょっと先にいってて!」


 あたしは言いながら特別校舎に向かって走り出していた。


 特別校舎は多目的教室や音楽室、図書室、理科室、家庭科室と移動教室が集まった4階建ての校舎。

 普段はあまり使わないので人の気配はない。

 校舎全体がひんやりとしていて、寒いくらいだ。


 あれ?

 さっきはここにいたけど・・・・・・。

 ぶつかるようにきたんだけどな。


 あたりを見回しても人の気配も感じない。


 場所がちがう?


 反対側の廊下に雪ちゃんと久美が見える。

 

 やっぱり、ここだ。


 先ほどまで緑川君の姿があった場所。


 いない・・・・・・。

 やっと見つけたと思ったのに・・・・・・。


 とぼとぼと来た道をもどる。


 何やってるんだろう・・・・・あたし・・・・・・。

 バカみたい。


 「さーちゃん?どうしたの?」

 

 図書室のカギを持った優ちゃんが心配そうにしている。


 「図書室、行くよ?」


 「うん、行く」


 優ちゃんの後ろをまるで亡霊のようについていく。


 「あれ? 緑川君じゃないですか?」

 

 「えっ!?」


 雪ちゃんの指差す方向を見る。

 今度は特別校舎の2階の廊下を歩いていた。


 「ちょっちょっと! 先いっててー」

 

 また走り出す。

 

 「図書館で待ってるよ」


 優ちゃんの声が後ろから聞こえた。


 特別校舎2階の廊下は本当に静かで。

 緑川君どころか誰もいない。

 静かすぎて怖いくらいだ。

 こんな時間に家庭科室も技術室も誰も近づかないのだろう。


 またいない・・・・・・。

 一体、どうなってるの?

 

 首をかしげながらその場で呆然と立ちつくす。

 

 「もうっ!」

 

 強く床を踏んであたしは優ちゃんたちの待つ図書室へ向かう。

 図書室は特別校舎の3階にある。

 階段をあがると図書室の方から楽しそうな話し声がきこえていた。

 あたしは図書室のドアをゆっくりあける。


 「おまたせ〜・・・・・・」


 まさに亡霊。


 「ぎゃーーーーっ!」


 3人の悲鳴が響く。


 「びっくりさせないでよっ!」


 優ちゃんは口をパクパクさせて鯉みたいだ。


 「どうでした?会えました?」

 

 雪ちゃんが笑いながら聞いてくる。


 「その顔じゃダメだな」


 久美はふきだす。


 「うーっ! なんで必要ないときは会えるのに会いたいって思ったときは会えないのっ!」


 「へー・・・・・・会いたいんですね」


 「ふ〜ん」


 「ほ〜」


 3人はニヤニヤしている。


 「べっ別に、ちょっと言ってやりたい事があるだけだよっ」


 強気にでてみたけど、ウソがばればれ。

 言いたいことも用事も本当は特にない。

 ただ・・・・・・。


 声が聞きたい。


 「あっ! ほら、教務室前の廊下に!」


 突然、今度は久美が指差す。

 確かにその先には緑川君の姿があった。


 「ほらっ、行ってきなよ」


 優ちゃんが背中を押す。


 「もう、会えなかったら戻らなくていいからなー」

 

 「生徒玄関で合流ですねっ」


 雪ちゃんと久美が言う。


 「ありがとっ、玄関ね」


 あたしはものすごい速さで走り出す。


 今度こそ! 今度こそっ!


 しかし・・・・・・2度あることは3度ある。


 教務室前の廊下についたときには緑川君の姿はもうなかった。


 やっぱり・・・・・・。

 そんな気がしてたんだよね。

 これは、もう今日は会うなって事なのかも。

 

 がっくり肩をおとして亡霊状態で生徒玄関へ向かう。


 あたしは下駄箱を背に優ちゃんたちを待った。

 数人の生徒が通り過ぎていく。


 「あれ? 誰か待ってるの?」


 懐かしい人に会えたようなそんな感覚だった。

 その声に反応して顔をあげる。

 目の前には、荷物をかかえた緑川君がいた。


 「・・・・・・優ちゃんを」


 放心状態でなんとか答える。


 「え? 松田さんならさっき教務室に」


 「うん・・・・・・図書室のカギ」


 「なんだ知ってるんだ、でもよかった、今日は初だね」


 「え? うん」


 緑川君は重そうな荷物を抱えているのに嫌な顔ひとつしない。

 あたしはきっと間抜けな顔をしているにちがいない。


 「初の意味わかった?」


 「わかる、今日、初めて話した」


 「そう、上出来」


 うれしそうに笑っている。

 

 笑ってくれてる。

 よかった。

 

 「まだ忙しいんだ、音楽祭が終わればラクになるんだけど」


 「うん・・・・・・大変だよね、がんばって」


 「あ、うん。じゃあ、気をつけてね」


 緑川君は荷物の脇から小さく手を振って背をむける。


 あんなに追いかけてたのに。

 こんなにあっけなく会話終了?

 走ったのに・・・・・・。


 「あっ・・・・・・」


 緑川君が思い出したように戻ってきた。

 目の前に来ると、困ったように目を泳がせている。


 「あのさ・・・・・・もしかしてだけど、探してた?」


 目の前で恥ずかしそうに言う緑川君は少しだけ周りを気にしていた。


 「・・・・・・うん」


 すごい探してた。


 あたしはためらいもなく答える。

 次の瞬間、緑川君の顔がパァッと輝く、そう見えた。


 「やっぱり! な〜んか行くとこ行くとこで澤田さんの気配というか声っていうか聞こえてて、でもいないから禁断症状かとおもっちゃったよ」


 「禁断って・・・・・・」


 緑川君は満足そうに、嬉しそうにしている。


 「ヤバイ人になったかと思った〜・・・・・・で、何か用だった?」


 急に顔をのぞかれて目が飛び出そうだった。


 「やっ! 別に用とかじゃないからっ! ほらっ! お仕事忙しいんでしょ! 行って行って!」


 「え〜・・・・・・」


 ぶーぶー言う緑川君の背中を両手で押す。


 制服の上から体温を感じた。

 

 背中・・・・・・大きい。

 背も伸びてるのかな?


 「がんばってね」


 背中に向かって言う。


 「澤田さんも早く帰りなよ」


 名残おしそうにゆっくりと手をふる。

 緑川君が廊下を曲がって見えなくなるまで見つめる。


 しばらくすると、優ちゃんと雪ちゃん、久美が玄関へ来た。


 「おまたせ〜」


 「念願かなってよかったですね〜」

 

 「ま、これで勉強に身がはいるってことだな」


 3人はまたニヤニヤしている。


 「会えたのなんでわかるのっ!?」

 

 「そこで会ったんだよ〜すごかったよ〜」


 優ちゃんが面白そうに言いだすと、雪ちゃんも。


 「もうデレデレでしたよ〜」


 「ありゃ、音楽祭の仕事なんかできねーな」


 「でもさーちゃんは切り替えて受験生モードにならなきゃ、今日は塾なんだから」

 

 優ちゃんは意地悪そうに言う。

 

 「優ちゃんもね!」


 一緒じゃない! と優ちゃんに笑う。


 「灰色の受験生はみんな一緒だろー」

 

 「そうですよ〜」


 灰色の受験生・・・・・・か。

 忘れたくても逃げたくても許されない試練。

 それでも、学校は楽しい。


 「がんばろうね〜」

 

 優ちゃんのかけ声で4人一緒に玄関を出た。

 


※下にあとがきと次回予告がひっそりとあります。

    (あとがきパスな方用に見えないようにしています。


















   ■あとがきという名の懺悔■

 

 本日もご来場ありがとうございます。

 また連続更新&心に浸透するお話つくりを目指します♪

 あんまり恋愛話ばっかりだと友達が消えちゃうので時々だしてます。

 実は・・・・・・ってところで重要な人の名前はちょこちょこ出る作戦つかってます。

 あんまり作戦な感じもしないですが;;


 さて次回♪ ☆12☆ 受験生はツライ です。

 塾での一コマ書いてみたいと思いますv受験生に塾はつきものですよね〜。



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