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ネームレスワールド ~ 星空の降る夜に~   作者: 茄子 富士
第一章 【NAMELESS WORLD】 子供達の記憶
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俺と義姉と



 あの地獄の様な早朝午前訓練の後に俺とルー姉はイルパパとレリアママ

つまり家族全員で朝食を取った。


あの後に俺はマルカスさんに尻叩き百回を食らったよ。

そのせいで俺の尻は赤く腫れ上がり周りの大爆笑がさらに盛り上がったんだけど

……それで済むなら俺的には恩の字だよ、……ホントに。


余談だけどさ、あの後暫く俺は『カマ堀りのソリッド』と呼ばれ

訓練の時に従騎士連中が股間を覆う防具(フォールド)着用になったのは秘密にしてくれ……。トホホ



 朝食はエリンさんの用意した物で給仕もエリンさんが勤めているぞ。

メニューは少々硬い黒パンにホワイトシチューにワインだ。

シチューには地球のニンジンに似た野菜でポメットと呼ばれている物や

ジャガイモに似たノモンと呼ばれている物、後は鶏肉が入っている。

まぁ面倒なのでニンジン、ジャガイモでいいか。


鶏肉はこの屋敷の裏の鶏小屋で飼われているものを絞めたものだ。

パンをシチューに浸し、味を染みさせ柔らかくした後に食べ

咽喉が渇いたらワインで潤す。

うん、とっても美味しいです。訓練の後だから空腹もスパイスになってるぜ!


まぁ最近でこそ訓練の後に美味しく食べられる様になってきたけど

最初の頃はとてもじゃないけど食べられる気がしなかったけどさ。

あ、後はこの世界っていうか我が家では朝にガッツリ食べて夜は少なめって食事だわ。


「エリンは相変わらずお料理が上手ね、とっても美味しいわ♪」


と、レリアママがエリンさんを誉めるとそれに続きルー姉が


「ホントね♪ こんなに美味しいと一杯い~っぱい食べれちゃうわ」


とホクホク顔で満足げにエリンさんに笑いかける。

ちなみに耳がピクピク動いてるのが可愛いかもしれん。……当人の自覚はないんだろうなぁ。


「俺も俺も、うん、美味しいよエリンさん」


俺もモキュモキュ食べながらエリンさんにグッジョブサインで親指をビッと上げる。

イルパパも威厳を保つ為か?声は出さなかったものの頷いている。

家族全員に誉められて嬉しいのか誇らしげに胸をそらした後


「ありがとうございます、皆様。それでは次も腕に寄りを掛けてお料理しますね」


とニッコリと微笑みながらエリンさんはお辞儀した。

我が家の朝の団欒風景ってこんな感じかなぁ。




◆◆◆◆◆◆



 朝食を終えて食休みを取った後、俺とルー姉は正午まで家庭教師の下で勉強だ。

勉強内容は文字、単語の綴り、文章の構成と基本的な物から王国の成り立ち

即ち歴史、貴族としての心得ノーブレスオブリージェ、人心の把握術

領地経営学、算術、税制、法学、神学、その他……と多岐に渡る。


イルパパ一代限りの爵位なんだし

俺達貴族になるわけじゃないんだからこんなに勉強しなくてもいいんじゃね?

と思わなくも無いが、それはそれとして教養を受けている。……ハァ。

   

それらを曜日毎に時間割(カリキュラム)を組み行われる。


「こんなにいっぱい……覚えられないわよぉ……」


と隣でぐったりするルー姉、その耳もぐったりとへちょってるのが萌えるけれど

俺も同じくぐったりするぜ……この量は……。

まぁ弱音を吐いているルー姉だが頭は良いらしく覚えた事は忘れない様だ。

てゆ~か、ルー姉ってチートじゃね?ッて言うくらいに色々な面でハイスペックを誇る。


まず早朝の剣の午前訓練だが俺との一対一で勝率はほぼ五割に達し俺とほぼ互角……。

技では俺が優るんだが、力、スピードと身体的スペックが俺の三倍位ありそうなんだ。

俺が量産機なのか?ルー姉が赤いの専用機なのか?

……まぁそれはともかくほぼ互角なのは確かだ。

技術で追いつかれた時はもうアカン。多分勝てる気しないわ~。


で、寝る前の魔法の練習も当然まだ続けていて簡単な魔法なら二十回はいける様になったんだけど

この世界じゃ魔法は真言さえ暗記できれば意味が判らなくても誰でも魔法が使えるので

ルー姉に簡単な魔法を覚えさせた所、今じゃ簡単な魔法を六十回は使える……。

これも俺の三倍か?やっぱ赤いのか??


そして今のこの時間の勉強も俺よりは断然に物覚えが大変によろしく優秀である。


……で容姿もばっちり愛くるしい……。

艶があり癖の無いサラッサラのツインテールにした黒髪も

愛らしくパッチリと大きく煌く黒眼も

将来は間違いなく美少女だと思わせる容姿も

もはや神に愛されたとしか思えない完璧超人ぶりである。

あれだな……きっと容姿も魅力も三倍なんじゃね?……もうさ。



 まぁそんなこんなで正午で勉強を終えると俺とルー姉は昼食(ランチ)を取るんだ。



◆◆◆◆◆◆



 昼食はエリンさんの作ったサンドイッチで両親は仕事で忙しいので

俺とルー姉の二人で食べる事が多い。

サンドイッチの種類はハムサンド、チキンサンド、エッグサンド、その他と

多種に渡るがどれも美味しい。


サンドイッチに使われるパンは白パンで少々高価な小麦粉をこねて焼いた物なんだ。

ついでにハムサンドに使われているハムは何頭か丸ごと買われた豚を絞めて

食料保存倉庫で解体されて腸詰にされたり干し肉にされたり燻製にされたり……

と言った風に加工された物の一つで絶品だ。


チキンサンド、エッグサンドもまた裏の鶏小屋からのものなので新鮮であり風味豊かだよ。


「はぁ~食べている時が一番幸せだわ、私って」


サンドイッチを綺麗に平らげた後にウットリと恍惚な表情で仰るルー姉。

耳もピコピコ機嫌良さそう……ルー姉って耳をみたら内心の機嫌が判りやすいのか?

……まぁそれはおいて、この世界って娯楽が少ないからなぁ。判らんでもない……か。


 まぁ娯楽は兎も角として、昼食を食べ終わった後の時間は自由時間になる。

これが一般的な家庭だと家の手伝いで忙しいかと思われる。

が、家の手伝いとなると俺達の場合邪魔にしかならんのがまたなんとも……。

領地経営に子供の出番はないし、家事手伝いをしようとしたらエリンさん達に止められる。


なので自由時間になるわけ。

夕食まで何をするかは、その日によって……というか気分によって変わったりするね。

例えば兵舎の武器防具の修理の為にある鍛冶工房。


ここには専門の鍛冶士がいる訳じゃなく従騎士達が各自が自分達の装備を整備する為にあるんだ。

つまり従騎士達も最低限の鍛冶知識を持っているんだよね。

研いだり折れた剣を打ち直したり位は出来るみたいだね。まぁ個人差はあるけど。


ここで俺は従騎士さんが見守る中、【ONE WORLD ONLINE】の知識を生かして

ナイフを打ったことがある。

どうすればいいのかは判るんだけど、OWOの時の身体的スペックより非力な子供だからかな?

勝手が違うので完全には上手く行かなかったが一応は形になった。


装飾は皆無で実用性だけを追求したナイフを二本だけ打ち

一本は自分用でもう一本はルー姉にプレゼントしたんだ。

ルー姉もとても喜んでくれたんだけど、自分も鍛冶をやって見たいと言い出した時は

全力で止めたよ。

鉄床に灼熱化させた鉄を槌で打つと火花が飛び散り、場合によっては火傷する事もあるしね。


ここの設備だと扱える金属は鉄止まりかな?

炉の中で使われているのが石炭を蒸し焼きにしたコークスを燃焼させるのだけど

鉄鉱石の不純物除去の為に石灰石を使い精錬して出来上がるのが銑鉄(アイアンインゴット)

これに砂鉄に似た物を混ぜ槌で折り返し鍛えることで(スティールインゴット)と呼称する……。


これはゲームの知識で得た物で、鋼以上の金属の場合はもっと色々必要になる。

まぁ鋼以上の武器防具の金属となるとそうそう手に入らないし鋼で充分すぎるか。


十五歳位になったらここで装備を自作しようと計画してる。

ちなみにOWOの世界では鍛冶技術の最先端はドワーフ族が担い

他種族はドワーフから学び、若しくは技術を盗んで鍛冶技術の発展を促していたはず?


作ってみたいのはゲームでもお世話になった全身を覆う騎士甲冑(プレートメイル)

身長が伸び終わるまでは作っても無駄になるよなぁ……。

甲冑作るので三ヶ月位掛かるしさ……。


そういえばさ、プレートメイルを着ると自力で馬にも乗れないとか上手く動けないって

話を訊いた事があるんだけど、それって馬上槍競技(メレー)専用のプレートメイル

の事なんだよね。実戦用のプレートメイルだと重さは全身で35kg~50kg位で

全身に均等に重さが配分されてるから訓練した戦士なら馬にも飛び乗れるし普通に戦えるぞ。

 


まぁなんだかんだで鍛冶工房は製作欲を満たしてくれるし楽しいから好きなんだけどさ

やっぱ高熱を発する炉の存在がある為、従騎士さん達の付き添いがないと

基本的に使用も見学も許可が下りないのが無念だぜ……。

でもまぁ、ここで工具を借りて行くのは割と自由なので良く使わせて貰ってる。



 まぁ今日は鍛冶工房じゃ無く外に出る事に決めてたんだけど。



◆◆◆◆◆◆



 基本的に俺とルー姉が砦の外に出る事は周りからいい顔されない

というか、寧ろ禁止事項なんだ。

理由は……一応領主の子供だからな、身代金目的の誘拐とか

人質にとって脅迫要求されるかも知れないと言う心配があるからだろう。


とは言え籠に閉じ込められるのは精神衛生上とてもよろしくない。

……ので、最近は良く外に脱出してるから諦め半分のお目こぼしを受けてるのが現状。

脱出方法は至って簡単、城壁から【落下制御】フォーリングコントロールを使って飛び降りるだけ。

俺が城壁から飛び降りるとルー姉も続いて飛び降りてきた。


「待ちなさいよ、ソリッド。今日は採集に行くの?……それとも例の場所で?」


俺の横に追い付いてきたルー姉が今日の予定を弾んだ声で聞いてきた。

それに対して俺は歩きながら答えた。


「ん~、どっちも……かな?調合素材の採集と例の場所を完成させるのとさ。

採集はあの場所に行くついでかな?ルー姉も素材植物とか途中で見つけたら採集しておいてね?」


「えぇ、わかったわ。私に任せなさい」


俺の頼みを笑いながらあっさり了承するルー姉、……楽しそうだなぁ。

砦の外に出た俺達だけど徒歩五分で着く【ブルグント市】には行けない。

いや、行ってもいいけど門番兵さんに砦に送り返されるしさ……。

後、危険度で言うなら人の多いブルグント市の方が

先述の理由で今の俺とルー姉にとっては危険だからな。


なので、赴く先は目の前に拡がる【オークウッド大森林】である。

この森は国家に属さない所謂、空白地帯の一つに属するんだ。

まぁ敢えて国家と称するなら此処はオークの国と言ってもいいかも知れない。


その広大な面積は日本で言うなら北海道の広さに匹敵し

そこは恵み豊かな森なので様々な種族や野生の動物、そして魔物や魔獣

エルフの集落、オークの集落、そしてゴブリンの集落……と犇めき合っている。


ちなみに森の名前の【オークウッド】とはオーク達が独自に育てる樹木で

とても質の良い材木となり家具や建築材としても人気が高いし

一本一本の木々がとても太く大きく育つのでも知られているようだ。

この森の大半はオーク達が育てた森林でもあるからこの名称が付いたみたいだ。

そして広大に拡がり自然の恵みの豊かさから様々な種族が集まってくるようになったわけだ。


他のゲームや物語では悪役っぽい扱いを受ける事が多いオークやゴブリンだけど

あ~例えば人やエルフの女性を浚ってはアレやコレと十八禁扱いの豚顔の性獣扱いとか

名高いファンタジー某作品の世界観だと冥王がエルフをだまくらかして作り上げた

エルフの模造品扱いで悪役の下っ端扱い…こちらでは悪役であるものの別段

豚顔じゃなかったはず。…醜いって表記はあったけど。

ついでにその作品だと確かゴブリンはホビット語でオークを指したような?


これらの悪い印象の元になっているのはローマ神話のオルクスが冥界の神プルートーや

ハーデースの別名なのが関係してるようだ。

ついでにラテン語でオークとは悪魔や地下世界の生き物をいうらしい。

ここからオークは冥界の生き物扱いになって悪い印象がついたみたい。

後、豚顔になった由来がオルカ即ちシャチが海豚(イルカ)の仲間なのは関係してるかどうか

…オルカをアルファベット表記にしてみると判るかも?


【ONE WORLD ONLINE】の世界では単純な善悪二元論を嫌ったのか

存在そのものが悪というイメージは払拭され

人の様に善悪両方を兼ね備えた存在としてデザインし直されたみたいだ。

まぁ前述の悪いイメージのオークとごっちゃになって

民族によって様々な葛藤や対立をサブクエストの形で描かれていたけど

この世界のオークもそういう存在らしい。


オークウッド大森林に住むオークは勇敢ではあるが殊更、外道な存在ってわけじゃなく

男爵領との通商貿易なんかも行われてるよ。

後は…そうだ、オークやゴブリンの性欲は…人間とそう変わらんかも。

この表記が性欲旺盛と見るかどうかは人それぞれでいいや。


あとオークやゴブリンが人やその他の種族と異種配合された場合

半オークとか半ゴブリンには絶対にならず、純粋なオーク、ゴブリンしか生まれない事も

アレなイメージの元になって……る…のかなぁ??



◆◆◆◆◆◆



 俺はこの森に住むオークのあれこれを考えながら、ルー姉と薬草などの植物採集をして

目的地を目指してたんだ




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