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ネームレスワールド ~ 星空の降る夜に~   作者: 茄子 富士
第一章 【NAMELESS WORLD】 子供達の記憶
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ブッスリごめんなさい



 ルーシュナことルー(ネェ)が我が家に来てから二年程が過ぎ

俺ことソリッド君も五歳になったぜ!


え~っとルー姉って初めて会ったときは年下だとばっかり思ってたんだけど

俺より一歳ほど年上だったんだ。……で呼び名がルー姉になったわけだ。

あの時はルー姉がイルパパの隠し子疑惑で大変だったんだぜ?

まぁ結果から言うとルー姉はイルパパの隠し子って訳ではなく別の訳有りらしい……。


らしい……ってのは俺には理由を教えられてないからだ。

ただ、ルー姉をクルース家で預かると共に養子扱いするって事になったんで

俺に【お姉さん】が出来たってことになるんだよな。


……義姉とは言え姉が後から出来るとは……普通さ、妹か弟じゃね?

まぁレリアママが言うには基本的に子供が作れないそうだから期待値少ないけど

俺という前例があったんだから妹も期待したいぜ!

頑張ってくれ、イルパパ!!……いろんな意味で。



 この二年間で俺とルー姉は随分仲が良くなった。

まぁ幼馴染ネタは多分殆んどクリアしたんではなかろうか?

……ん? 義姉だから幼馴染じゃないって?

そうなんだけどさ、何て言うか感覚的に友達半分、姉半分て感じなんだよね、俺的にはさ。


勉強するにしろ、大人達の手伝いの時も、遊ぶ時も大抵一緒に過ごしていたもんな。

そういえばルー姉って初めて会った時は

ゴスロリツインテールで無口少女のイメージだったんだけど

一緒に遊ぶ様になって判った、あの時は猫被ってたんだな……と。

まぁ猫被ってたって言ったら言い過ぎか、やっぱり緊張してたんだろうなぁ。



◆◆◆◆◆◆



 この世界に転生してから俺は此処で何をしたいのかをずっと考えていたんだけど

色々考えて最近判ってきたかも知れない。俺はこの世界とゲームのOWOの関係を知りたいみたいだ。

考え出すと止まらないんだよ……何故?どうして?って次々とね。

多分これの答えが出るまで俺の原動力になりそうだ。


例えば前々から気になってるんだけど、この世界に【オルトリンデ】がいるのかどうか?

滅ッ茶苦茶気になっているぞ!?再会を約束したのに千年ったっているって……。

罪悪感が半端じゃないよ?……ただ存在してるかどうかの確信が持てないのもあるけど


仮に彼女が存在していたとしたらだ。

……彼女を生み出した俺自身のアバターである【マサト】もこの世界にいたことになる?

とかね……気になっている事は他にも一杯あるけど、これが一番気になってる……。


マサトが千年前に存在してたとしたら……俺との関係は?この世界ってやっぱOWOそのもの?

他のプレイヤーキャラもいたのか?じゃ、なんでゲームと違う処があるのか?とかな……。

考え出したら止まらない止まらない。


これらの鍵はやっぱゲーム時代のマイホームがあれば手掛かりになるんじゃね?

ただ、今居る【アルメニア王国】は【ラブラドール大陸】にあるのに対して

ゲーム時代のマイホームがあった【ヴェルファリア王国】は【フランドール大陸】にある。

どう考えても別大陸にあるわけで……最低でも船で海を渡らにゃならん……。


えらく遠いし道中どんな危険があるかも判らんし

そもそも地図や海図の存在が国家機密みたいな物で世界地図なんて見たこと無いから

フランドール大陸って何処にあるのよ?そもそも世界地図なんてあるんだろうか?

大陸間航行って可能なのか?とか羅針盤はあったっけ?とか北極星ってあるの?とかさ

ちょっと考えるだけで問題続出だわ~。ハ……ハハ。


つか、ゲームの時代が今から千年前ってんだから

……国とかマイホームが残ってるかどうかも判らんしな!


……え? 女神モードのレリアママに聞けば楽勝で判るんじゃね?……って?

あぁ……基本的にそういうカンニングじみた事は教えてくれんのよ……ママ。


「ソリッドちゃん? 多分そういう判らない事を自分で見つける方が色々面白いと思うわよ♪」


……だってさ。なんていうか、教えたくない訳じゃなく俺の楽しみを奪いたく無いニュアンスか。

    

レリアママと会話してると気付いてきたんだけど、自主性を重視する人?なんだ。

女神レリアテルスとして人に対する教えって『好きにしろ!』ってだけで

神殿で信者に教えてるのは殆んど全部、人が作った典範らしいし。


でもさ、この『好きにしろ』ってのは何もレリアママだけじゃなくて他の神々も同じらしいぜ……。

どうも神々ってのは世界そのものに関してしか興味が無いというか責任が無いらしい。

世界の綻びなどがあれば全力で正常化するよう動くらしいけど

世界に住む人や生き物達は全体を見るだけで、基本的に不干渉みたいだ。


レリアママが言うには私達が主役だった時は神話時代で終わったんだそうな。

今の主役は生きている者達なのだから責任は主役が取るべきなんだとさ。

この意見は一人間としちゃ厳しい気がするけど判らんでもない……かなぁ。

でもこれを訊くとレリアママが今此処にいる理由も薄っすらとだけど見えてきたかな?


俺が生まれるちょっと前?に世界に何らかの綻びが生まれたのか

もしくは口で言うほどには世界に住む者たちに対して無関心ってわけじゃないのか?だ。

まぁそこら辺の追求をする気はゼロだけど。


ただ、世界の綻びってのは多分あれが関係していると思う。

OWOメインクエストに出てきた(エネミー)の呼称で出てきた存在じゃないかと

睨んでるけど当たってるかどうかは判らん。ハァ……。



 話が随分逸れたけど、俺の行動原則はそんな処なので

やっぱ将来は実力のある冒険者稼業を目指すのが良いみたい。



◆◆◆◆◆◆



 そんなこんなで俺の行動は大体が冒険者を目指すものになりがちだ。

この世界での生活は日が昇ると起きて日が沈むと寝るのが基本だ。

一応明りを燈して夜中に活動する事も無いわけじゃないけれど

光源が松明や蝋燭、ランタンなどで大して明るくないし燃料代が勿体無いからか?

ついでに言っておくとランプがまだ普及してない……一応あるらしいけど。

魔具で明りを燈すものもあるけれど高価なんだ。


なので朝起きるのは早い。先ずは兵舎前の訓練場で従騎士達に混ざって剣の訓練をしている。

ちなみにルー姉も一緒だったりする。

獲物は片手剣を模した木剣と皮製の盾で、これは従騎士達の訓練道具の備品を借りた物だ。


ゲーム時代に良く使っていたのは両手剣なんだけど、今は非力だからなぁ……。

実際にこの訓練用の片手剣と盾もまだ重いんだけどこれより軽い物がないからね。

でもまぁ、この二年間でそれなりに振り回せる様にはなっているぞ。


素振りや型を繰り返し、それが終わると一対一の対戦でそれが終わると集団戦の訓練。

集団戦の訓練は危険なので俺とルー姉は混ぜて貰えないんだ……。

一対一では基本的にはルー姉が相手で集団戦が始る前に

一戦だけ従騎士の一人が相手してくれるんだ。

訓練中は俺もルー姉も領主の子供と言うのは当然ながら無視してもらっている。



 さて、その従騎士との対戦だけどこんな感じ。回想スタート?



「礼!」


審判役の従騎士達の隊長が号令を掛けると俺と今回相手を勤めてくれるマルカスさんが

一歩前にでて互いに礼をとる。その後に互いに木剣を合わせ試合を始める。


片手剣と盾、このスタイルだと左半身を前に盾を構える。

……なるべく体を盾に隠すため中腰の様な姿勢で互いに隙を伺いあうことになる。

これが槍の様な長物だとその間合いの長さで盾で隠しにくい足元なんかを

狙えばいいんだろうけど、お互いに木剣と盾なのでそれは無し。


うん、はっきり言ってマルカスさんとの体格差、体力差、体重差、スピードその他……。

文字通り大人と子供であるわけで……マルカスさんに限らず従騎士が相手だと格上対戦になる。


格上対戦だと勝ち目なんて殆んど無いんだけど、勝つ気が無いと訓練にもならんので

勝利を目指すぜ!


片手の直剣は基本的に刺突武器である。

一応斬撃も可能なんだけど、その形状故に日本刀のそれとは違う形になる。

日本刀だと刀身の反りがある為に斬った後引く動作が生まれる。

これは包丁で例えるならトンとぶつ切りにした後に

包丁を引く動作でスッと切れるあれと同じ理屈だ。


それに対して直剣だと反りが無いので斬ると言うよりブッ叩切るイメージだ。

先ほどの包丁で言うとトンで終わり……包丁というより鉈に近い?

なので斬撃は可能なんだけど刀身に対する金属疲労が大きくなるからね。


後、ついでに……刺突武器はなるべくなら軽い方が良いんだ。

重いと重力が掛かるので狙った場所を正確に突くのが難しくなるからさ。

斧槍(ハルバート)が扱いに難しい理由の一つがこれだ。

刺突、斬撃、払うの動作の内、斬撃と払うは斧がある為先端の重量を生かし使い易いんだけど

刺す動作にはその先端の重量が仇になる。

ついでにその先端の重量故に懐に入られると扱いにくいってのもあるか~。


ちなみに刺す動作をし易くして行き着いた形の一つが細剣(レイピア)なんかだろう。

これだとかなり正確に突きを放て、さらに連撃も容易くなる……が

普通の斧とか剣と打ち合うと折れやすい、どんな物も一長一短だな~。


ついでに直剣で突くのがメインなのは確かなんだけど

これも多数の相手と戦っている時だと突き刺さった剣が抜けない!

なんてこともあるから、そういう時は斬撃メインになったりする……ケースバイケース?


こういった武器の知識とか戦い方の知識は全部OWO時代の戦士や鍛冶士をプレイした時に

得た物だけど……役に立ってます、ハイ。

後、こういった人との剣術訓練は騎士にとっても役に立つが冒険者にとっても

役に立つ……が冒険者だと人型相手だけではないので応用力が必要になってくる。

例えば……狼なんかが相手だと人相手に剣を振るうのとは勝手が変わってくるからさ。

     


おっと、また話が逸れた、マルカスさんとの試合だった。

他の人は知らんけど、俺は格上と戦っている最中は基本的に頭空っぽにする様にしている。

冷静にあれこれ考えながら戦えるのは格下相手の時だけだよ、俺の場合。

あれこれ考えていると動作が一呼吸か二呼吸遅れるんだよな……。


なのでこの時は対戦前にマルカスさんの動きを予想しておいたんだ。


マルカスさんから見れば相手は子供の俺で

体力差は歴然で力で強引に隙を作りそこに一撃当てて終了。ってのが予想できる。

そしてそれには盾で押し込むのがマルカスさんも隙を作らず

俺にも余り怪我を与えずに済むわけだ。この動きが従騎士さん達が俺を相手にする時、一番多い。


もしくは俺の左半身を前にして盾を構える姿勢の背中側に

……即ちマルカスさんから見て右側に素早く回りこみ一撃を放つか?


この二つを予想してた。


俺が勝つ為には大人と子供の体力差からカウンターぐらいしか手が思いつかない。

即ちマルカスさんの攻撃の後に出来る一瞬の硬直をつくか、攻撃してきた剣か盾を

横から弾いて隙を作りそこに一撃を入れるか……だ。

ぶっちゃけこの手はマルカスさんどころか他の従騎士達及びルー姉にもバレバレだけどさ!

ちなみに俺は従騎士さん達を相手に一本取れたことはこれまでに一度も無かったりする。


他に斬新な動き等をやらかすとそれ自体が大きな隙を作るからなぁ……。

例えば転がりながら足元狙うとか……一回こっきりの奇襲ならアリかもしれんが

……訓練にならん。

ってなわけでバレてるのを覚悟でやるしかないんだよな。


それはそうとして、俺がこの従騎士さん相手の格上対戦で訓練したいのは

【瞬間の判断力】これだけだ。一瞬の間に最上(ベスト)の判断を下せれば良い。


……で、審判の合図と共にマルカスさんが盾で俺の体勢を崩し(シールドバッシュ)に来た訳だ。

読み通りだったんで、横ッ跳び(サイドステップ)で彼の背中側、つまり右側に跳び

がら空きになった彼の背中に一撃を入れようとしたんだけど

それを読んでいたのかマルカスさんは左手の盾で俺の突きをなぎ払ってきた。

うん、彼のシールドバッシュはフェイントだったわけだ。


「甘いぞ!ソリッドッ!!」


木剣を思いっきり横からぶん殴られたお陰で体勢を崩し思いっきり隙を見せた俺に

マルカスさんはそう怒号を飛ばし斬りかかる!


その時の俺は思いっきり仰け反った体勢だったし、とっさの事だったからあの時の事は

誓って意識してやったわけじゃないんだ!………………いやホントに………………。


ヤベッっと感じた俺は切りかかって来るマルカスさんに俺の左手にある盾を思いっきり

マルカスさんの顔に目掛けてブン投げた!


意表を衝かれたのか?マルカスさんはそれを盾を顔に翳して防いだんだ。

盾を投げたと同時に俺は強引にマルカスさんの左手側の足元に転がった後

木剣を突き上げた!


……俺の転がった場所が。そう、マルカスさんの背中側で……………………………………。

突き上げた木剣は……ブッスリと刺さったんだ……そう、……マルカスさんの尻の間に……。


…………………………………………ワザトジャナイヨ??


その刺さった瞬間! 

   

「イッ!??……ギ……ギィエエエエエエエエェェェエエェェェエエエェェエ!!??」


とマルカスさんの絶叫が……そう絶叫が辺りに響き渡ると同時に 

俺はマルカスさんから初めて一本を取った歓喜とヤ……ヤベェッ!!

という恐怖を同時に味わったぜ。

その後、俺とマルカスさん以外のルー姉含む全員が大爆笑さ!


「「「「「「ブァハハハッハハハッハハアッハハアハハハハッハアハハ」」」」」」


「は・・腹痛ェ~~~」だの

「ヒィ~~ヒッィィヒィさ……刺さってる」だの


ありとあらゆる笑い声が響く中で俺のなりふり構わぬダイビング土下座!!

地面に頭を擦り付けながら必死で……そう必死になって


「スミマセン!ゴメンナサイッ!謝ります!ゴメンナサイッ!ワザとじゃないんです!

ゴメンナサイ、ゴメンナサイ!スミマセン!スミマセン!許して下さい!」


俺が半泣きで……いやマジ泣きで謝ってる間、マルカスさんは……


「ヒィィ~~ホッ……ヒッィィイイホッウ!!」


……と尻とブッスリと尻の間に刺さった木剣を両手で押さえながら辺りをピョンコピョンコ

飛び跳ね回っている……その間、周りは大爆笑。


周りの大爆笑が響けば響くほどに俺は……俺だけは笑っちゃイケネェ!

世界中の皆が笑っても俺だけは絶対笑っちゃイケネェッ!!と必死の思いで

マルカスさんに謝り続けた。



……しばらくして、だが相も変わらずに大爆笑に包まれる中

マルカスさんは……無言で……キュポンッっと……木剣を抜き取った後

土下座で必死に蒼い顔でマジ泣きしつつ謝り続ける俺にのっそりと……歩み……近寄り。



「ソ……ソリッド……クゥウゥウウゥン?……何……してくれてんのぉぉおおっぉおお!?」


と、地獄から響き渡る様な不気味な声で俺に呼びかけてきたんだ!!!




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