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ネームレスワールド ~ 星空の降る夜に~   作者: 茄子 富士
第一章 【NAMELESS WORLD】 子供達の記憶
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ようこそ幼女



 どうも今日は、ソリッドです。三歳児になりました。

舌足らずではあるけれど会話が可能になり、更には三歳児なりにだけど

歩き回る事が出来るようになったので人付き合いを含む行動範囲が飛躍的に広がったぜ!


生まれ変わってから常に思うんだけど、マジで幼児ってばさ、一日一日が濃いっていうか

体感時間が長いわ。この3年間、振り返ってみると偉く長く感じるぜ……。


 大雑把に俺が何をして過ごしてたかっていうとだな、基本的には歩行が可能になった後は

ダッシュアンドゴーで走る練習を兼ねた遊び……まぁエリンさんとかルッツさん

後は週に三~四回程屋敷に来る家事助っ人のお手伝いさん達に悪戯を咬ましては逃げ回ってたぜ!

……うむ、特にエリンさんのお尻にタッチするとエライ勢いで追っかけて来るからな

楽しくスリルを味わえ更にいい訓練になるし、尻のあのフカフカした柔らかな感触

……あぁ、あの尻はいい尻だ!


もうちょっと俺が成長するとムラムラするんだろうが、今の所はまだエロ要素はあまり感じず

反応が面白いからかな?悪戯するのは。

執事のルッツさんが仮にズラだったら絶対に咬ますんだが

……そういう美味しい設定じゃ無かったのが悔やまれるぜ。



 まぁそんな感じで遊びながら体を鍛えてるわけだが、筋力トレーニングの様な事は

していなかったりする。

えっと、理由なんだけど前世で何処で知ったのかは忘れたんだけど

成長期が終わる前に筋肉を鍛えすぎると骨が伸びないから背も伸びにくいって聞いた事あるんだ……。

あれが本当か嘘か判らんけど在りそうだから

成長期が終わるまでは本格的な筋トレはしないでおこうか……って決めてみた。

十八歳くらいまで……かなぁ?


代わりに心肺機能を重点的に鍛えてスタミナを伸ばした方が今はいいかなぁ……ってさ。

で、それには誰かに悪戯かまして追っ掛けられるのがダッシュ力と走り回る持久力

更には如何逃げれば逃げ切れるか?ってな瞬時の判断力育成にもなってる気がするし

ついでに何より楽しいしな!

日中はこんな感じで過ごしていたわけだったりする。



 で、寝る前に簡単な魔法を……例えば【灯火】の魔法なんかを無詠唱で練習して

体内の魔力量(MP)を増やす様にしている。

魔力量も魔力を使って負荷を掛け続けると器が広く大きくなる事はOWOからの知識で

理解してるからね。それに、寝る前なら使いすぎて気絶しちゃってもいいかなってさ。

お陰で今では簡単な魔法なら三回は使えるようになったぞ。

ここ最近の過ごし方はこんな感じだわ。



 あれ?なんかこう、回想して見ると俺ってば唯のエロガキじゃね?って気がしてきた?

……あぁ……気がしてきたんじゃ無くて事実だったか……不覚なり。

ま……まぁそれはともかくとして……だ!

一応悪戯ばっかりじゃ無くてこの好奇心旺盛な幼児ならではの活発な行動力を満たすために

未知への冒険、探索も欠かしちゃいないんだぜ?


冒険、探索って何かって?


うむ、即ち未探索であった屋敷内及び天井裏の探索

また玄関口から外に延々と広がる未踏域領野への冒険の数々!!

……え?…………しょっぱい冒険だな?って??


イヤイヤイヤッ!!そげんこつなかッ!身体的スペックがチート無しの純三歳児にとっちゃ

これでも大冒険だってばYO!

天井裏に潜むネズミや(ニャンコ)……未踏域領野でたまに出くわす大怪獣(ワンコ)

奴等は今の俺にとっちゃ永遠のライバルと言っても過言じゃない強敵(トモ)達だぜ?

ま、パソコンもスマホもインターネットもテレビも無いような世界だし……。

ハハハ……お陰で毎日健全に暮らさざるを得ないというか、なんと言うか……フゥ。



 でもさ、初めて外に出た時は眼ン玉が飛び出るかと思ったよ。

なんかね、南西の方角にさ、地平線の見える彼方に大地が浮かんでたんだわ。

まぁファンタジーなら浮遊大陸って定番だけど実際見るとね……圧巻でした。

地平線が上と下で二つ見える感じ?

少なくともゲームの時の設定じゃ【ヴェルファリア王国】のあった【フランドール大陸】には

浮遊大陸(島?)なんて無かったからね……。


浮遊大陸……あれどうやって浮いてるんだろうな?衛星軌道上に乗ってる?浮遊石のコアでもある?

つか、あの上に何か生き物が住んでるんだろうか?

住んでるとしたら、気圧とか酸素とかどうなのよ?

うん、あれ見た後はそんな感じで疑問が次々沸いてさ

色々想像を巡らすのは案外楽しかったりする。

  

ちなみに俺の住んでいる場所は【ラブラドール大陸】にある【アルメニア王国】の東端

【クルース男爵領】という。ま、ゲームの時は聞いたことも無いような場所のようだ。


国の事とかは後から学ぶとして、浮遊大陸以外にもビックリしたな!もぅ!ってのが

東の遠くの方に見えるんだよ。何かってーと、軌道エレベータ?天空貫く塔?

……もうね、空の上までず~っと伸びて天辺が点になって見えないような塔が見えるんだ。

あの塔って地震とかあったら倒れたりしないのかな?そもそも自重を支えられるもんなのか?


あの塔も色々想像を掻き立てられるからね、いつか絶対登ったるぜ!



 外に出ると館は城壁に囲まれた砦内にあり、

領府も兼ねるので領内の行政、立法、司法がこの館で為され

他には兵舎や馬の入る厩舎なんかもあるのでかなり広い。

兵舎には三十人ほどの従騎士達が住んでいて

武器庫や武器防具を修理する為の工房なんかもあったりする。

工房は危ないからってなかなか近づけてもらえないんだよな……チェッ。

砦内には役人なども含めると常時百人ほどは居るかな?


男爵領の広さは日本の県程度で領内の治安を守る為に彼らは訓練に勤しんだり

領内でなにか問題があったらそれを解決すべく常に奔走していたりする。


この領地は【アルメニア王国】の東端に位置し東には【オークウッド大森林】が広がっている。

領主の館があるこの砦の東門はその【オークウッド大森林】に面した場所にあり

西門からは徒歩で五分程度の場所に領都である【ブルグント市】が拡がる。

領内には凡そ十万人弱の領民が住み領都にはその内二万人程の人口を誇るみたいだね。


人口が少ない気がするけど、やっぱ食料生産量が一番の原因……なのかなぁ?

農作業機なんてあるわけ無いから手作業だろうし、いても農耕馬か牛だろ?

……あぁ、まだ訊いた事無いけど労働力としての農奴制度もあるかもしれない、か……。


ちなみに先ほど砦内の兵舎に三十人程の従騎士達が居ると述べたが

領内には各主要街道が交差する街に騎士達の詰め所があり、この砦が領軍本部だ。

そして領内に存在する従騎士達の総数は百人ほどで、国の危機などで王から召集を

受けると領民から徴兵をして民兵九百人弱を加えて合計一千人が男爵領軍となるんだってさ。



 ところで、この大陸にある人間の国は此処【アルメニア王国】しか無かったりする。

まぁ人間の国といっても他種族も住んでいるけど。

他にある国はエルフの国であったりドワーフの国或いは魔族の国だったりする。

ちなみにどこも国同士で領土が隣接しあう処は無い……。

何処の国も周りは治める者も住む者もいない空白地帯になってるぞ。


空白地帯は魔物の領域(テリトリー)になっていたり

人が住むには不向きな自然の厳しい場所だったりするようだ。


領主の館が城砦になっているのは危急の際に立て篭もれるようになんだって。


【オークウッド大森林】にはオーク種族、ゴブリン種族、エルフ族の集落があり

その中でオーク、エルフ種族は男爵領と一応友好的なのだがゴブリン種族は敵対的で

繁殖して数が増えると集落から食料問題などで焙れた集団が男爵領に略奪しに来る事もあるからだ。


元々この男爵領は王の直轄地である王領でイルパパが受勲した時に拝領し

この砦は大森林に対する防衛施設だったのをそのまま領主の館にしたんだってさ。

通りで妙な場所に領主の館があるもんだと納得したっけ……。

ある意味最前線だもんな……普通領都とか領府って領地の中の方にあるんじゃね?ってさ。


そういうわけで、近くの領都民が加わっても一週間は篭れる備蓄を常に蓄えてるそうな……。



◆◆◆◆◆◆



 まぁそんなこんなの三歳児だったりするんだけど……友達が欲しい……。

同年代の友よ!カモ~~ンプリ~~~ズ!ってな欲求が最近出てきてま~~す。

一代限りとはいえ男爵の息子だもんなぁ……領民の子達からは遊びに来るわけ無いわな。


つまり友達が欲しかったら自分から逝けってことか……。

とはいえ、俺はまだ砦の外に出る事は出来ないのだ……。

近いうちに秘密の脱出口を見つけるか創らねばなるまい。


ってな事を考えながら今は砦の城壁の上にいる。

城壁の上は……あれだね万里の長城を思い出すね、此処。前世で行ったこと無いけどさ!


西に広がる【ブルグント市】も面白そうだけど東の大森林も面白そうだなぁ……。

脱出出来るようになったら森に秘密基地を作ってやるぜ!

あれだな、木の上に小屋とか作ってみたいなぁ……。

森で採集した物を保管したり或いは誰にも知られずに調合できる場所としても便利そうじゃん!

ウハッ、オラ、ワクワクすっぞ!


と、まぁ計画を立ててウキウキするんだけど、やっぱぼっちじゃなぁ……。

外に出れるようになったら【ブルグント市】で同年代の友達つくるか?

って、でもなぁ……日本の街とちがって街門で門番兵がいるから絶対見つかるだろな……。



 ってな事を考えながら領都の方を眺めていると男爵領の従騎士達を率いるイルパパが

砦に帰ってくるのを見つけた。

あれ?もうイルパパの帰ってくる時期だったっけ?


イルパパは冬から晩春までは王都で過ごし夏から晩秋まで館で過ごす。

これは館で過ごす時は領内の経営、主に農作物の収穫時期関係で領主の仕事をこなし

冬から春にかけては王都で国王直轄の騎士団で冒険者時代の知識を生かして

魔物に対する予備知識や街中のトラブルなどの対処法を指導しているんだ。


で、今は初春なので帰ってくるのにはちょっとばかり早かったので疑問に思ったわけだ。

とりあえずお迎えに上がりますか。



◆◆◆◆◆◆



 「お帰りなさい、貴方」


レリアママが館の玄関口でイルパパの帰宅を使用人や俺を代表して出迎える。

機嫌が良さそうだ。

イルパパの予定外?の早い帰宅が嬉しいに違いない。


「お帰りなちゃい、イルパパ~」


うん、今の俺が喋るとこういう年齢相応の舌足らずな話し方になってしまう。

演技とかじゃなくて実際に口と舌が回らんからね~。滑舌の練習もした方がよさげ?

ついでに言うと声も甲高い……変声期前だしね……歌えばボーイソプラノだよ?


「あぁ、ただいま、レリア。ただいま、ソリッド」


とイルパパが騎士服の上に羽織っていたマントをレリアママに渡しながら笑みを浮かべ応えた。

未だ二十八歳の若さながら渋いバリトンボイス!

イルパパの容貌は黒髪黒瞳のぶっちゃけイケメン。しかしながら渋い、渋すぎる!

チャラさと正反対の属性だね……この人。

髭を生やしてるとかじゃないんだけど、纏う雰囲気が重いというか?

     

イルパパに従う従騎士達も武人特有の威厳然とした雰囲気があるけど

パパのはもっとそれが深い……冒険者時代の経験がものを言っているのかもしれない。



「今回は早いお帰りで嬉しいわ、貴方。……でも、なにか理由があるの?」


レリアママが手渡されたマントを丁寧に畳みながら何気なくイルパパに訊いた。


「あぁ、色々あってな……詳しい事は後ほどゆっくり話すとするよ。

その前にお前達皆に紹介しておきたい子がいるんだ。……おいで、ルーシュナ」


そう言ってイルパパは玄関の扉の方に呼びかけるとそちらの方から

俺と同じ位の年齢で黒いゴスロリ服?を着た無表情な幼女が入ってきた??


無表情ながら容貌は肌が白く癖の無いツインテールで艶のある黒髪は両腕まで流れ煌き

年相応の黒瞳は大きく輝き口や鼻は小さく……耳が長く先端が尖っている。……エルフの美幼女?


「……初めまちて、ルーチュナでしゅ」


その子はレリアママや俺達の前に来るとチョコンとその小さな頭を下げお辞儀し

か細い小声で挨拶した。……緊張してるのかも?

おろ?挨拶した後イルパパの影に隠れて脚を掴んでるよ。

まぁ幼女が見知らぬ人に囲まれちゃ無理も無いか……。


ってイルパパとこの子の関係ってどんな関係なんだろう??

おおっと、詮索は後にして俺も挨拶しないとね。


「初めまちて、ルーシュナ。ソリッドでしゅ」


と俺もお辞儀をして挨拶とついでに軽い自己紹介をすると

レリアママもルーシュナの前に一歩出て微笑みとともに


「初めまして、ルーシュナちゃん。私は当主イスマイルの妻、レリアよ。よろしくね♪」


とルーシュナの頭を軽く撫でつつ挨拶すると、やおら迫力のある笑みをイルパパの方に向けつつ


「……で、イル? 応接間に行きましょうか……きっちりと、如何(どう)いうことか

せ・つ・め・い・して貰いますからね?」


っと余りの迫力に俺は思わずチビリそうになったが

イルパパの脚に隠れてたルーシュナもビクッ!っとなってるし

……あぁ周りのルッツさんやエリンさんを含めた使用人達もだわ。


とは言え、その笑みを向けられたイルパパ本人は俺達と比較にならない程

重圧(プレッシゃー)を受けたに違いない。

……実際に顔が蒼くなって引きつった笑みをうかべてるもんよ。


「あ……あぁ、そうだ…………な。せ……説明……するよ……うん」


グビリと俺にまで聞こえるほど咽喉を鳴らしつつ

イルパパはルーシュナを連れつつレリアママと共に応接間に向かったのであった。


……え~っと、これってチラッと思ったんだけど、イルパパ、隠し子でも連れてきたんか??

で、レリアママもそう思った……とかか?


     

 

     


     



      

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