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ネームレスワールド ~ 星空の降る夜に~   作者: 茄子 富士
第一章 【NAMELESS WORLD】 子供達の記憶
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ハイハイ ウォーキング



 あの夢か現のママとの会話からおよそ一年が過ぎた。

あの後、何度もあの謎空間での会話を繰り返したもんだ。

その内容はあの時の異世界知識は駄目って事だったけど

全部が全部駄目と言う事では無く、駄目なものが多いと言う事らしい。

要するに前世知識を使うなら前もって相談しろと言う釘を刺してきたってことだ。



他にはあの時の天動説、地動説の会話からこの世界の大地はどうなってんの?

ってな俺の疑問に対しては今のところ世界は平らな大地と海が延々と

無限に続き空の上には天海と呼ばれる海が広がり太陽や月を含む星々と共に

神域に属する形らしいが、それを聞いた時は力が抜けたね、ファンタジー過ぎるぜ!うん。

とは言えまだ形が明確に決まってないらしいけど。



 そういえばママが女神の分霊体である事はパパにも内緒らしい。

いや、言っても良いけど信用されないってさ。

これに関してはあれだね、俺って前世の知識もってるんだぜ!とか言っても

誰も信用しないのと同じだろうな。



パパは名前がイスマイルっていうらしく、一代限りだけど男爵位を持つ領地持ちの騎士様らしい。

ママにはイルと呼ばれているそうな。

なんでも冒険者をしていたそうだが、その時にママと出会ったんだってさ。

で、国内で頂点を極めたと言って良いほどの実力と名声を誇る頃に

様々な国から勧誘されてママとの所帯を持つ事を決めた時に任官したんだとさ。

なんていうか物語の主人公の様なパパさんだな、オイ!。



 ところで俺のこの一年間だけど、前世での記憶はある物の基本的に俺は赤ん坊。

最初の数週間はマジで眼が弱視というか……眩しくて碌に見えやしなかったぜ。

ちなみに会話だけど最初の数週間で赤ちゃんに対する様な会話なら理解出来ていた。

まぁ赤ん坊に対して難しい事を言う人もいないし、赤ん坊って時間が濃いんだ。

一日一日の密度がさ。理由は良く判らんけどね……あと理解力も高い気がする。

会話に対してだけでなく他にも様々な事に対する観察力や集中力も凄いわ……。


まぁ会話は理解出来るんだけど……口が回らんのがなぁ……口というか舌?

歯も乳歯が全部生え揃ってないから話しているつもりでも実際は……。


「ダァアアアァ!ウゥゥウ!!」


ってな感じでとても会話になってないんだけどね!


後は体と共に手足も未熟だから痒い所にも手が届かなかったり

腹が減ってもビッグ&スモールBENをしちゃっても自分ではどうにもならんから

泣いてアッピール……そういえば転生前の記憶があるといっても

赤ん坊になってるからか?喜怒哀楽の感情を抑えるのが難しい……。


というか、感情の強さが生前よりエラく激しい気がする?

ので何か不快な事があると直ぐにビービー泣き喚いてしまう……。

とんだ羞恥プレイだぜ!と開き直るしかなかったりするんだ、これが。


 今は取り合えず歩く練習が最優先って所かな?

最近は屋敷内を探索するのが俺の日課だったりする……ハイハイだけどね……。

パパンは基本的に王都にいる事が多く領内の事はママンと代官の人がこなしているっぽい。

代官の人は屋敷内での執事さん!をこなす人でルッツさんという名前だ。

今の所俺との接点は然程(さほど)ありません。はい。


俺の世話というか目付け?をしているのは家政婦さん……というかメイドさんだ!

リアルメイドか……相変わらず夢みたいだなぁ。名前はエリンさんというらしい。

普段は家事をこなしつつも俺の行動を常にチェックしていると言うやり手さんだ。

ちょっとでも危なそうな行動を起こすとアっという間に安全圏に戻されてしまう。

ある意味エリンさんとは毎日がバトルだぜ!!


 それにしても一代限りとは言え親が領主に執事にメイドさん付きですか……スゲェなぁ。

あれかね?大学生の童貞で人生が終わってしまった俺に対するご褒美ですか?

まぁ前世での両親には本気で申し訳ないけど……。

先立ってしまった親不孝ってきついよなぁ……仲が悪かったわけでもなかったし。



◆◆◆◆◆◆



 ところでこの世界が【ONE WORLD ONLINE】略してOWOに酷似してるとママに聞いてから

ステータスオープン!とかシステムメニューオープン!とか試したんだけど

駄目駄目でした、開きません……というかありませんでした。

やっぱゲームと違うんですかねぇ……勇者召還とは言わんけど転生チートは欲しかった。


まぁ前世の記憶が残ってるだけでもチートだし、家の境遇なんかも恵まれてるから

文句言えないどころか充分だろ?っていう声も俺の心から聞こえるけど。

読んだ事ある異世界転生物だと結構悲惨な状況から始まるのも多いもんな。

負け惜しみ全開で考えるなら俺みたいなのが無双チート貰ってたら

なんか天狗になって取り返しの付かない事をやらかしかねないしやっぱ無くてよかったのかもね。


それよりも、だ。エリンさんの目をかわすべくハイハイダッシュした後

立ってから歩く練習をしつつ最近考える事は、これからどうしよう?ってことだ。

異世界トリップだったなら日本に帰る事を目標にしたんだろうが

生まれ変わっての転生で両親も存在し家族愛も感じるとなると日本に帰るってのも

目標にし難いわけで……というか帰ったらこっちでも親不孝だしなぁ。


でもまぁ日本に行く手段を確保する事を目標にするってのはアリかな?

帰る帰らないは別にしてそれがあれば俺の精神的負担が激減するのは間違いないはずだ!

ん~でもそれだとあれか?未練が出るのかなぁ……わからん。


そもそもママに聞いた話だと俺ってばママの影響だろうけど不老長寿らしい。

二十歳くらいまでは普通に成長してその後はずっと不老で寿命が無いんだってYO。

まぁ不死では無いそうだから首ちょんぱとかになると死ぬって話だけどね!

つまり二十歳から後は一箇所に留まれるのは十年程度が精々だろうってことさ。


不老なんてのは昔から権力者が求める物って相場があるし、そうでなくても

妬まれる事は確実だろうから秘密にした方いいよな……多分。

嬉しい嬉しくないで言ったら嬉しいんだけれど、将来的に親しい人達が

俺を置いて皆逝ってしまったとかを楽に予想出来るだけに複雑だぜ……。

そういう日が来た時は嬉しく無くなったりするのかもなぁ……今はまだ実感ないけどな。


 一箇所に定住出来ないとなると将来はやはり冒険者かなぁ?

まずは冒険者登録をして10年過ごしたら街を移動する。

なるべく遠い街で再度冒険者登録……これを繰り返す感じ……?

人脈、信頼なんかが全部リセットされるけど不老バレはこれで防げるか。

この方法で駄目だったら他の方法も考えとか無いとなぁ。メンドイ。



「ソリッド坊ちゃま、そちらは危ないからいけませんよ」


ありゃ?エリンさんに捕まってしまった。二階に何があるか見たいから

階段をよじ登ろうとしてたのが不味かったか。

一年程度過ごした我が家なんだけど知らない場所がまだまだ多いんだよ。

で、探索しようとするんだがションボリとエリンさんに連れ戻される……と。


にしても、赤ん坊の体だと周りが全部大きく視える。この感覚は忘れてたなぁ。

周りのサイズを測る基準って自分の体だからか?

屋敷なんてとんでもなく広く大きく感じるし、大人は男女問わずに巨人にしか視えない。

そういえば前世でも小さい時はそんな風に感じてたよ。


あれだあの当時、両親以外で大人の男性はおじさんで女性はおばさん、年は関係なかった。

大きい人の呼び名がそうだと思ってたんだよなぁ……。

ま、今回は若い男女はお兄さんお姉さんと呼ぶようにしとくか。



「はい坊ちゃま、ここでお座りしてて下さいね。

その間にエリンはこの部屋の掃除をしますからね」


と俺はエリンさんに応接間のソファーの上に座らされた。

迷惑を掛けちゃいかんとは判っているんだけど退屈すぎるんだってば!

とは言え退屈を我慢しつつエリンさんの部屋掃除を観察する。


家具などの天井に近い位置から埃をはたきで落としてらっしゃる。

そういえばエリンさんって元は冒険者だったんだってさ。

詳しい事は教えてもらってないけど家の両親と何らかの縁があってメイドを勤める事になったそうな。

年齢は訊いた事無いから判らんけど見た目は20台半ば?

どうして冒険者を辞めてメイドなんかしてるんだろう?とは思うものの詮索するのも野暮か。


家にいるメイドさんは俺が知る限りエリンさん一人……。

屋敷全部で何部屋あるのかまだ判らないけど本当に一人だったらきつ過ぎじゃ……?

俺が知らないだけで他にもお手伝いさんがいるのかな?エリンさんの為には居て欲しい気がするぞ。

そんなことを考えながら部屋の調度類を眺めると質素ではあるが趣味の良い木製品が多い。

魔法のあるファンタジー世界ってことで技術力が中世のそれという先入観があるけど

実際はどうなんだろう?


ゲームの時は生活に関することなんて気にした事が無かったけれど今はそうも言ってられないよな。

しかし赤ん坊の視点じゃ行動範囲や身長の低さから視えない事のほうが多いが

判っている範囲から類推してみるか?



まず食事、主食は小麦でパンやシチューなどに良く使われている。

冷蔵庫や冷凍庫なんて無いから痛みにくい穀物が主食になるのは当然か?

おかずになる材料は季節の旬になるものがメインになる。

この領地は海には面して無いので海産物が出る事はないようだ。


食べる物は日持ちできるように発酵した物や干物にしたり塩漬けにしたり燻製したもの

肉であるならば腸詰なんかもあるみたいだが……俺はまだ離乳食ばっかだぜ……トホホ。

まぁ食べ物に関してはこれぞファンタジー!という様な斬新な料理を視た事は

幸い?にしてまだ無かったりする。


米に関しては外を見てみないと何とも言えないが余程気候と土と水に恵まれてないと

耕作出来ないだろうから期待は出来ないかもな。



 衣服に関してもまだ家内の人の物しか見たこと無いから参考にならんけど

感想を述べるなら中世レベルかと思われる。

継ぎはぎなんかを見ると衣服を大事に着ているんだなぁと。

両親が着る服だって外着は立派な物が多いけれど部屋着だと継ぎの当たっている物なんて

珍しくないし。


住居で見ると台所で火を使うものは薪か炭火で網を使うものや一応オーブンになる物なんかもある。

水関連は汲み上げ式のポンプで地下水?を汲み上げて使っている模様。

それと外の井戸から持ってくる水も使っているようだ。

ポンプの存在を初めてみた時はそんなもんあるとは驚いたよ。

正直言ってこの世界舐めてました。


舐めていたといえば下水道の存在を知ったときもそうだったかも。

風呂があるのでその時に気付いた訳だ。

無論風呂には未だ一人じゃ入れないので両親かエリンさんに入れてもらっている。

ちなみに一般家庭にも風呂があるのかどうかは未だ判らん。

後はトイレがどうなってるか気になる所だけど、俺まだオムツです……はい。


あ……よく考えてみたらこの世界ってOWOに似た世界だっけ?

まぁ千年前とか言ってたけどあのゲームを参考にすればいいのか。

ってゲーム内でBENなんてするわけ無いから記憶にネェよ!


ん~技術力か……あの時点では大半が中世レベルだった気がする。

でもなんか所々で進んだ技術が合ってご都合主義を感じた事もあったような……。

まぁあれだ取り合えずご都合主義で良いからトイレットペーパー若しくは

それに類する物があって下さい!……切実に。



「フンフフ~~ン ルンルンルルル~~~♪」


……なんで俺はエリンさんがハミングしながら軽快に掃除をしているのを見ながら

トイレットペーパーの有無なんかを心配してるんだろう??

と、取り合えずトイレットペーパーの事は忘れよう……うん。


しっかし千年前って言う割にはあんまり技術力変わってないような……。

まぁ地球の歴史で参考にするなら産業革命が起きる前だとそんなに変わらなかったかな?

もうちょっと自由に動けるようになったらその辺も検証してみるのもいいかなぁ。


 検証といえばそうだ!

OWOのスキルってコマンド式とかじゃなく実際に実践するものだったから

あるいはこの世界でも使えるのかもしれない。

例えば剣技のスキルなんかだと教わる時はシステムサポートで何度も

実際に体を動かして貰ってその動作を覚えた後自分で動かせて始めてスキルを習得ってことだからだ。


剣を振るには手振りでは無く体全体に芯を通したイメージをし

足から背骨そして腕から剣へと連動させて振る。

う~ん言葉で言うのは難しい……感覚で掴んでるからなぁ……。


他の一例だと右手が利き腕の場合、踏み込み斬りの時は左足が蹴り足になる。

これが逆足の右足を蹴り足にした日には自分の左足を切り落としかねない

といったような知識と経験は生かせそうな気がする。


同様に他のスキルも使えそうなのが多い。 鍛冶とか忍び足のコツとかね。

わからんのが魔法とか錬金とかの地球の現実じゃ無かったようなスキルだ。



 ……試してみるか?

      

      


      



      

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