惑わすモノ
龍人達の国を目指して【竜の谷】を魔物達の眼から隠れるように迂回して移動し続け
【竜の谷】地域をやっと抜けた時、俺達はいきなり襲撃を受けました……一人の少女に。
「今この時にここを通ろうとするなんて貴方達はラーグの手先ですね?
ここは通しま……せんっ!」
とか訳分からん事を叫び、右手と左手に戦斧を一本ずつ構え
飛翔しながら俺に斬りこんで来た!
少女は右手の戦斧で斬り払いに来たのを俺が咄嗟に左手に持っていた盾で防ぐと同時に
斬り払いの回転を殺さずにそのまま左手の戦斧で斬り込んで来た!!
その様はさながら竜巻の様で……斬りこんで来た時に俺の眼に映った少女の顔は
可愛いと美しいの丁度中間くらいの美少女で白金髪のサイドテールが
陽の光に反射しながら靡き一瞬見惚れそうになるがその竜巻の回転に逆らわずに盾でいなすと
ッチ!
とその美少女は舌打ちしながら俺の盾をその美脚で蹴り押し
その反動で持って空中後背転をしながら間合いを取りやがった!
その美少女は改めて両戦斧を構え直す……ちなみにその少女の頭には羊か山羊の様な角が生え
背中からは蝙蝠の様な翼、そして尻尾が生えている。
さらに注意して観察すると胸が中々に大きく……じゃ無かった。
そうじゃ無くて装備している鎧や服が俺に酷く違和感を感じさせた。
その違和感はその龍人族の美少女がその翼によって宙に舞った時に最大限に増幅した!!!
何故ならば、その美少女はプリーツスカートだったので宙に舞い高度を取る時にチラっと
純白の三角地帯が見えたからだっ!俺は白が大好きなんだよ!!……じゃ無くて!
プリーツスカートだの鎧の隙間から覗える服だの脚部装甲の隙間から見えるニーソックスだの
いや鎧その物の意匠がこの世界の地味臭い?意匠と違い
寧ろアレは【ONE WORLD ONLINE】のプレイヤーメイドの物に近いからだったんだってば!!
具体的に言うと、俺やルー姉が装備している騎士甲冑の意匠が
ほぼ中世の意匠で基本的にこういった意匠の物がラブラドール大陸の普通の鎧なんだけど
今、俺の前で宙に浮いてパンツ拝ませてくれる美少女……ありがとうございます、ご馳走様です!
イヤイヤイヤいい加減にしろよ、俺。ああっでも無理、やっぱり見ちゃう、男の子だもんよ!!
ああっもう!!……要するにパンツ美少女の装備が胸の谷間からおへそ迄丸出しの
清清しい位のエロ鎧ですね!?誰が意匠した!?
弟子入りさせて下さい!!とか、俺が美少女のパンツをガン見しながら悶えていると
ルー姉がそのパンツ美少女と同じく龍人としての姿を現し宙に舞い上がり
パンツ美少女の前に相対し叫んでたぜ。
「待って!あなた龍人種族の人でしょうっ!?私達はあなた達の敵じゃないわ!
ただ、聞きたい事があってあなた達を訪ねて来たのっ。
だからお願い、お話を聞いて頂戴!」
ハッ!?そうだぞ、俺!ルー姉の言う通りだ!パンツ見てる場合じゃ……場合じゃ??
「あなたも龍人族!? ハッ……馬脚を現しましたねラーグの犬が!!
“我、求めるは敵を穿つ光の矢也”【魔力の矢】!!」
俺がパンツに見惚れていると白パン女がルー姉に向けて
十本近い魔力の矢を射ち込みやがった!?
「ック!? “我、求めるは我を護る光の防壁也”【魔力の盾】!」
白パン女の魔力の矢をルー姉は魔力の盾を発動させる事で悉く防ぐ!
【ONE WORLD ONLINE】ではPVPで【魔術士】同士の戦いになると
魔法の矛と盾が性能面で互角なので千日手になり易いんだよね。
魔力の差が相当大きくない限りは決め手に欠けるんだ。
今、空中で白パン女とルー姉がガンガン魔術戦を交わしているけど
どうやらゲームと同じらしい……魔術士ってのは基本的に魔力保有量が多い訳で
つまり魔法攻撃力が高いと共に魔法抵抗力も高いからなんだよなぁ。
魔法抵抗力が高いから対人戦で超有効!な【麻痺霧矢】なんかも抵抗されるんだ……。
だからゲームの時の魔術戦は駆け引きが重要で見てる分には面白かったんだよな。
実際自分でやるとなったら頭が混乱するけど……読み合い合戦でさ。
あ、白パン女が業を煮やしたのか戦斧での空中近接戦に切り替えて来やがった!
俺が見るに白パン女は龍人族の戦士としてはまだまだ駆け出しなんだろうな。
魔法戦でその気になってればルー姉が圧勝出来た筈だけど
俺達は龍人達から情報が欲しいのであってその意味で少女を倒すのは甚だ不味いからなぁ。
つまり白パン女を取り押さえないといけない訳でそれって単に倒すよりも難しいぞ。
「……キュ~」
空中でのルー姉と白パン女の斬り合いをクゥーラが心配そうに見上げている。
空中戦になると俺とクゥーラの出番が殆んど無いじゃん。
一応【飛行】系魔法ってのはあるんだけどさ……飛んでる間ずっと魔力消費するし
飛行速度と高度があの空中戦に対応できる物じゃ無いし。
「心配するなクゥーラ。俺が見た所……近接戦でもルー姉のが上っぽいからな」
心配そうに耳と尻尾が萎れているクゥーラにそう声を掛けると
クゥーラは耳と尻尾をシャッキリさせてルー姉を応援するかの様に
強くルー姉の戦いを見つめ
「キュッ!」
一声鳴いてた。
俺も純白パンツを……もとい白パン女とルー姉の戦いを見つめ俺に何か打つ手が無いかを考え出していると
「私達はラーグなんて知らないわ!?お願いだから話を聞いて頂戴!!」
「最早、問答無用!!……私を惑わそうとしても無駄です!」
白パン女が戦斧でルー姉を叩き伏せようとする斬撃をルー姉が盾で弾く
……といった攻防が空中で繰り広げられている!
俺は如何介入するべきか!?
白パン女を倒しちゃって良いならとっくに終わってるんだが
龍人達に友好的に接してルー姉のご両親の情報が欲しいから白パン女を倒さずに捕縛せよ。
ってなミッションだからなぁ……ん?捕縛……だと!?
フ……フフ、あるぞ!?俺に打てる手があったぞぉおぉお!!
俺は隣で心配そうに空での戦いを見上げる子狐の隣で背負っていた背嚢から
一本の綱を取り出した。
さて、いっちょやってみますか……多重詠唱!
「“我、求めるは彼を硬化せし力の付与也”【硬化付与】!
“我、求めるは遠隔より操作せし不可視の手也”【遠隔操作】!」
発動した魔力が綱に纏わり、切れたりしない様に強化させそれを不可視の手で操る。
自分でやってて思ったけど、別にこれって多重詠唱しないで順番に詠唱で良かったんじゃね?
ってな疑問が湧いたけど気にすんな……俺。気にしたら……負けだ、多分。
今はこっちに集中だ……芸術ってやつを再現しちゃるぜ!!
うねろっ我が魔力を纏いし束縛の綱よ!
疾く行きて白パン女を束縛せしめん!!……とかアレな事を胸の内で叫び
魔力を付与した綱をルー姉と絶賛空中戦しちゃってる白パン女の背後の方に飛ばし
こう……スルスルスル~っと束縛させちゃいました。
無論、束縛の仕方はかの芸術性の高い縛り方と名高い亀甲縛り……には憧れるけど
縛り方が判らないので乳を強調させる二の腕を含めたグルグル巻きだけどね~。
綱が長いので両脚までグルグル巻きだから簀巻き状態に近いかもな?
「い……イヤァアアアァアッ!?な……何ですかこれはぁああぁああ!?」
突然背後から綱で乳を強調させる(ここ非常に重要、俺的に)グルグル巻きで縛られた白パン女は甲高い悲鳴を上げてたぜ!
突然の事にって言えばルー姉も戦っていた白パン女がいきなり縄でグルグル巻きになって吃驚してるな……あれは。
「ルー姉! その白パ……その女を今のうちに捕まえてくれッ!」
俺がやりましたアピールをしつつルー姉にそう叫ぶとルー姉は気を取り直したのか
白パン女の縄を掴みこちらにやって来た。
ルー姉は俺とクゥーラの方に来ると乳を強調される形で縛られた白パン女を
乱暴にならない様に丁寧に地面に降ろすと俺に向かって
「この綱で束縛したのってソリッドなの?」
と尋ねて来たので俺は頷き
「ああ、倒さない様に捕まえて説得するには一番だろ?これって」
と言うと縛られた白パン女が怒ったのか
それとも虚勢を張ってるのか良く分からんけど
「ふ……ふざけないで下さい!私を……この束縛を解きなさい!!」
ってな感じでジタバタ暴れながら怒鳴ってました。うん
このサイドテールで白金髪の龍人族の少女をこれから説得して
ルー姉のご両親について何か知っているのかって事と
ついでに装備している物の由来も気になるから聞いてみたいしね。
……面倒そうだなぁ……頭が堅そうな印象だしさ。
「お願い話を聞いて頂戴。私はルーシュナ クルース。
私は両親の行方を求めて龍人族の国に向かっているの。それで貴方に聞きたいのだけれど
アルナスとイルミナと言う夫婦の名前に聞き覚えは無いかしら?」
グルグル巻きにされて地面でジタバタと転がっている白パン女に
ルー姉が切羽詰まった様子で尋ねていたんだ。
すると白パン女は転がるのをピタっと止め
「アルナスとイルミナってエルドラースの夫婦?」
ってキョトンとした顔でルー姉に問うと
「知っているの!?それなら是非、教えて下さいっ!」
ルー姉が更に勢い込んで聞いてたぜ。
それに対して白パン女は
「……ッハ!? これも私を惑わす為の虚言ですか?
何処までも卑怯な……ラーグの犬なだけありますね!?」
と何やら言い出したんだけどさっきから白パン女の言うラーグって何?
取り敢えず其処から聞いてみないと話が進みそうにないもんな。
「なぁ、俺はソリッド クルースってんだけどさっきからアンタさ
ラーグの犬とかって俺達を呼んでるけど……ラーグって何の事なんだ??」
って聞いてみると、白パン女が黙り込んで何やら考え事をしている……。
しばらく何かを考えて結論に至ったのか白パン女は俺の方を見て
「……本当にラーグを知らないのですか、あなた達は?
それにそちらの女性はあのエルドラース夫婦の娘なのですか?」
って聞いて来たんで俺とルー姉が揃って首を縦に振ると
白パン女がため息を吐くと
「こちらが勝手に勘違いをして貴方達に襲いかかった事はお詫びします。
ですが、この拘束を外して下さらない限り貴方達に話す事は何もありません」
ってな感じで言って来た。
なるほどね、拘束している限りは俺達を信用出来ないって事か。
白パン女が俺達を信用出来なかったのと同じ事を試されるって訳だ。
つまり拘束を外した途端逃げ出したりまた襲いかかって来るかもしれないってな疑惑をな。
俺自身は……信用しても良さそうだと思うけどルー姉とクゥーラはどうかな?
って二人の方を見てみるとルー姉とクゥーラは俺に視線で促して来たんだ。
拘束を解けってさ。
「拘束を解くのは構わないが、その後に俺達としては君に聞きたい事が幾つかあるんだ。
知っている限りで構わないけど答えて貰えるか?」
と白パン女に確認したんだけど先の言葉通り何も答えて来ない。
本当に頑固だなぁ。ま、いいか……そう思って俺は綱の魔力を解除したんだ。
すると白パン女を拘束していた綱はスルスルっと地面に落ち
白パン女は無言で静かに立ち上がった後、こちらに向けて頭を下げ
「改めてこちらの勘違いをお詫びします。私の名はスノウ シルヴァニア。
お詫びの証しとして私の話せる範囲の事であれば質問に答えます」
と確約してくれた。
◆◆◆◆◆◆
「……それじゃ私の両親はそのラーグと言う者が率いる龍人族の勢力に対抗する為に
ずっとこの国に滞在しているって言うの!?」
ルー姉がスノウに自分の両親の情報を尋ねると返って来た答えが
今から二十年程前にラーグという龍人族が力、技、知恵に優れる龍人族こそが
全世界を支配するにふさわしい選ばれた種族なのだ!!
とか言う主張を立てそれに賛同した龍人族を率い
まずは手始めにとフランドール大陸の支配に乗り出したんだってさ。
この世界でも公式チートの様な強さを持つ龍人族だ……魔族と恐れられる力は伊達じゃなく
僅か千にも満たない人数で、とある国一つを落としたそうだ。
だけどラーグの主張に賛同する龍人族ばかりって訳では無く
龍人族の国【ドラグノール国】の凡そ半数以上がラーグの野心に反発したんだってさ。
で、スノウが言うにはラーグ率いる勢力とそれに反発する龍人族の勢力が
真っ向から戦い始めて二十年近く過ぎているらしいね。
で、反発する勢力の中にルー姉のご両親が何て言うか……幹部っていうか将軍ていうか
まぁ重要な位置に就いているそうな。
娘放っぽり出して何してんの!?って突っ込みたくもなったけど直接聞いてみないと判らんか。
ラーグってのは一方の龍人族勢力の頭で……龍人族ってのは魔族って恐れられてる訳で。
……魔王?の様な扱いらしい。
スノウから聞いた話だとルー姉のご両親はそのラーグの行いを止めたいそうだ。
「それじゃ、私達を両親の処に案内してくれるのね?」
「勿論です、貴方がエルドラース夫婦の娘であるならば会うべきでしょう」
どうやら俺が考え事をしている間に話はそう進んでいた。
道中でスノウから色々聞き出したい事が一杯あるな……こりゃ。
装備の意匠の事や……悠久の時を生きる龍人族だし千年以上生きている人に
会わせてくれる様にも頼みたいしな!
色々判るかもしれないな……この先でさ!