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ネームレスワールド ~ 星空の降る夜に~   作者: 茄子 富士
第四章 【NAMELESS WORLD】 巡り合う仲間達
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有翼鷲獅子とソレイユ



 ダースラさんとマリーベルさんの案内も合って

俺達は【オークウッド大森林】東端部に着いた。


「オラァ達の案内は此処までだべ。後はオメェ達、気ィ付けて行けや!」


「それじゃぁね、アナタ達♪

アナタ達とは縁がある気がするから、又会うかもね~♪」


そう言って御二人は森の中へと帰って行ったんだ。

その背中に向けて俺達三人(トリオ)


「俺達をここまで送ってくれてありがとうございました!」


「私達を送ってくれてありがとうございました~!」


「キュキュ~~。」


手を振りながら見送ったんだよね。

若干一名はルー姉の頭の上で尻尾でフリフリしてたけどな。

ちなみに御二人の案内に対する御礼は村に泊まった時にポーションの形で渡したぞ。

妖精と共生している村だからどの程度の需要があるのか判らないけど喜んでくれてたぜ?



 【緑と蒼の血族】の集落を出てからはダースラさん達の案内で

面倒(トラブル)を避ける為に他の部族の集落やエルフ、ゴブリンの集落、及び領域(テリトリー)

迂回しながら進んだから結構時間が掛かったぜ。

ところで森を抜ける道中に御二人から聞いたんだけど

【オークウッド大森林】内部ってのは基本的に緊張状態なんだってさ。

ま、日本の戦国時代って程じゃないけど色んな勢力が冷戦状態って感じかね?



でも大森林の外から別の勢力が侵攻してきたりすると

一致団結して迎え撃つってんだから……何て言うか都市国家同盟を彷彿させるよなぁ。

それはともかく部族の領域を迂回したんで逆に魔物の領域に踏み込んだ訳で

魔物との戦闘(バトル)でも時間を食ったんだよな……。

ダースラさんとマリーベルさんが居たから楽ではあったけどね。

代わりに【黒騎士】には追い付けなかったと言うか見つけられ無かったけどな……。



 森を抜けた先はなだらかな起伏が続く丘陵地帯だった。

丘は丈の短い草によって覆われ所々に巨石の残骸がある。

それにしても……東に見える【古代の塔】の形が近寄ったとは思えない程に変わらない。

【オークウッド大森林】を横断したから北海道横断した位の距離は近づいてるんだけどなぁ……。

どんだけ遠いのYO!

そうやって思考に耽っていると


「【黒騎士】には追い付けなかったわね。

……これからどうするの、ソリッド?」


「……キュキュ~?」


旅の仲間二人からどうするかを問われた…クゥーラも多分そうだよな?

さて、どうするか、ね……?


「う~ん、取り敢えず【黒騎士】とやらは森から東に抜けて行った訳だしね

……森から何処へ向かったかは判らんけどこのまま東に向かったと仮定して

東に行こうぜ【古代の塔】のある方向だしさ。

【黒騎士】が何処へむかったにせよ西へ戻ったってのは考え難いし

森を出た後に北か南にいったのかも知れないけどぶっちゃけ判らんし……。

ってな訳で当初の目的通り東に向かって村か宿場町でもあれば

そこで情報を集めてみるってのはどうだろう?」


ってルー姉とクゥーラに提案してみた。

俺の提案を聞いて二人は顔を見合わせ

……ルー姉の頭に乗ったクゥーラが見下ろしルー姉がクゥーラを見上げ

それでお互いが取り敢えず納得したのか


「そうね、そうしましょうか」


「キュキュッ」


と、頷くと共に俺に背を向けて東へと歩き出したんだ。

さて、この先には何が待っているんだろうな!?



◆◆◆◆◆◆



ドムッ!!



チィッ、刃が刺さら無ェッ!まるでゴムの塊をブッ叩切(タギ)れない感じだ!!

その両脚を持ち上げ叩き付けて来るのを横っ飛び(サイドステップ)で避ける。


 ッドオォオオォン!!


俺が避けた為にソイツの両爪によって地面が抉れた!

……こんなもん当たったら今の防具なんて紙同然に引き裂かれちまうぞ!?

ソイツの体長は凡そ八メートルに及び体高は三メートルはあるだろう……。

雄雄しい羽を拡げ鷲の前半身を持ち体は獅子のそれを誇るソイツの名は

ファンタジーでも名高い魔獣、【有翼鷲獅子】(グリフォン)



あの後、丘陵地帯を歩いていた俺達に空からの襲撃を掛けて来たのがコイツだ。

多分、地上を歩いていた俺達を丁度良い昼飯(ランチ)にしようってんだろう!?

ルー姉はすぐさまクゥーラを体に(ロープ)で縛り付けると【龍人】として力を解放し

空からの抑えにまわり、その間に俺は【身体強化】系の魔法全てを

自らに付与(エンチャント)し迎撃にまわったぜ。


「“我、求めるは敵を穿つ光の矢也!”落ちなさい!【魔力の矢】(マジックミサイル)!」


グリフォンの頭上で【龍人】として翼を拡げたルー姉の周囲に

八つの魔力の光が収束し光りの軌跡を描きながらグリフォンに突き刺さる!


 ズドドォドォドドオッドオオドドォォオン!!!


が、グリフォンにはそれほど打撃(ダメージ)を与えていない……。

この位階(ランク)の魔獣となるとその体皮は斬撃や衝撃を吸収する弾性に富み

また魔獣自体が大量に保持する魔力が壁となり魔法抵抗力が高い。

例えば【麻痺霧矢】などを使って効いたとしても

体の一部分を麻痺させるのが精々なんだ。

……つまり使っても大した意味が無いってことさ。



魔法抵抗力(マジックレジスト)が高い為、ルー姉が放った【魔力の矢】は位階(ランク)の低い魔法で

打撃力に劣り、数で補う攻撃魔法だからコイツには効果が薄いんだ……。

しかし、効果は薄かったものの、その攻撃はグリフォンの注意を引いたようで

ルー姉の方を向こうとした!



させネェッ!今はルー姉だけじゃ無くてクゥーラもいるんだぞ!?

振り向こうとしたグリフォンの首に目掛けて

全体重を剣に乗せた一閃(スラッシュ)でブっ叩切るッ!


 ダムッ!!


ッチィ!……やっぱり切れねぇッ……片手剣じゃ軽くてこの位階(ランク)の魔獣相手じゃ決め手に欠ける!!

かと言って……打撃(ダメージ)を通せそうな魔法だと

使っただけで魔力切れしそうだし……どうするよ!?……俺!


「グハッ!!」


クォ!?振り向き様体当たり(ボディラッシュ)して来やがった!!

盾で防いだものの俺はそのまま吹っ飛ばされ受身を取りながら後転三回転半コース!?


「ソリッド!?ッ“我、求めるは彼を貫く光りの槍也!”効いて!?【魔力の投槍】(マジックジャベリン)ッ!!」


宙を舞うルー姉の振るう長剣の先に強い輝きを放つ魔力の光が収束し光りの投槍と化して

光跡を描きグリフォンへと突き刺さる!


「GURUOOWoOOOooOWOOOOoON!!?」


そのルー姉の攻撃は打撃(ダメージ)を通したのか初めてグリフォンが悲鳴を上げた。

しかし、それはヤバイ!?またルー姉の方にグリフォンの敵意(ヘイト)が向いちまう!

俺への追撃を止めるためか……おかげで助かったけど急げ、俺!

三回転半から強引に体勢を取り戻した後、打ち身の痛みなど戦闘に対する興奮で無視し

グリフォンへと全力で疾走し一撃(ダッシュスラッシュ)を入れる!


 ズムッ!


やはり刃が通らなかったけれど注意は引けた!

しかし、どうするよ……俺!?

相手の動きは見えるのでかわし続ける事は出来る……。

が、【身体強化】の効果持続時間はおよそ十五分前後。

剣も駄目、魔法も駄目……打撃(ダメージ)を通せそうなのは

先程のルー姉の魔法クラスか、ルー姉による宙からの落下攻撃(ダイブアタック)位か!?


でも、ルー姉はクゥーラを縛りつけているから無茶は出来ない!

……ン?……縛り付ける!ッそれだ!!


ダッシュスラッシュで怒りの矛先が俺に向き両脚の爪による爪撃を

激しく繰り出して来るが、

俺はそれらを掻い潜り【身体強化】によって強化された

脚力を活かし俺はグリフォンの背中に跳び(ジャンプ)付いた!


「GuRUAaAAAAaAAA!!」


誇り高いグリフォン(ソイツ)は突然自分の背中に乗ってきた

無礼者を地へと叩き落さんと辺り構わずに跳ね回り、身を揺すり暴れまわる!

が、俺は【身体強化】によって強化された力で持って

グリフォンの背に太ももを挟み締め付けて振り落とされないように粘った。


その間に背嚢(バックパック)から(ロープ)を取り出し

それをグリフォンの首に巻きつけ締め付ける!!!


「私も手伝うわ!」


宙に舞っていたルー姉が滞空しながら俺の締める綱を持ち

一緒に締め付けたんだ。



………………締め付けてからどれ位の時間が過ぎたろう?

グリフォンはずっと暴れまわり俺を振り落とそうと足掻いていたけれど

俺だって必死だったさ……振り落とされないようにね。

そういった攻防が続いていたんだけど……そんな中、

俺の心に声が聞こえてきたんだ。



『……我の負けだニンゲンよ。頼む我を見逃してくれないか?

我はまだ死ぬ訳にはいかぬ!我にはまだ守らねばならぬ存在があるのだ!!』



その声は俺の心に直接響く不思議な物で

声と共に心象風景(イメージ)も流れてきて、それが……巣にいる雛の風景だった。

……この魔獣が心に語り掛けて来る現象って

OWOにもあった魔獣を手懐ける(テイミングする)時のアレか!?

だとすると……この精神感応(リンク)では嘘が付けないんだよな……。



さて、このグリフォンを助けたいか否かの二択を突き付けられた訳だけど……。

OK……俺は助けたい……この際理屈はいらん!

それに精神感応(リンク)で雛の事が無ければ

命乞いはしなかったってのも伝わってくる……その心意気が気に入った!




俺はルー姉に視線を送り綱を緩める事にしたんだ。

すると


『礼を言う……我と我が子の生命を助けてくれた恩に報いる為

アナタ達にこれを受け取って欲しい』


そう言うとグリフォンは右前脚の爪を自分の嘴で圧し折り

背中に乗っていた俺とルー姉に向けてその爪を渡してきたんだよな。

それを受け取ると


『その爪から笛を作ると良い。その笛を吹けば魔素と反応し何処に居ても

我にその笛の音が聞こえる。我の助けが欲しくば何時でも呼ぶといい』


って語りかけてきた。


「なぁ、このグリフォンの心の声ってルー姉にも聞こえてるのか?」


ちょっと気になったんでルー姉に聞いてみると


「あ、ソリッドにも聞こえるのね?……私にも聞こえてるわよ」


「キュ~♪」


どうやら二人にも聞こえていたらしい。

それにしても手懐け行為(テイミング)が出来るとは思ってなかったな……。

グリフォンから差し出された爪を受け取りながら感慨にふけちゃったけど……。

ま、それなら自己紹介といきますか!


俺は首に巻きつけていた綱を解いてグリフォンの背から降り


「おう、ありがたくこの爪、預かっておくぜ!

取り敢えず自己紹介しようぜっ……俺はソリッドってんだ、よろしくな!」


と受け取った爪を翳し俺がそう言うとルー姉が続いて


「よろしくね、私はルーシュナって言うの……そしてこの子がクゥーラよ」


「キュ~」


と綱で体のお腹の辺りに固定していた子狐のクゥーラを

一緒に紹介してたね。


『我もよろしく頼む……が、我には名と言うものが無いのだ』


前の両脚を折り、俺達に名前が無いことを済まなそうに告げるグリフォン。

って事なら……。


「なら、俺達が名前付けてやるよ、な、ルー姉、クゥーラ?」


とルー姉とクゥーラの方へ振り向き提案したんだ。

すると


「ン、それは良いわね。私達で貴方の名前を考えてみるわ」


「キュッ!」


と、どうやらお二方の賛同を得られた様です。

で、俺は早速


「どんな名前が良いと思う?

俺が思うに……グリ吉とかグリポンってのはどうよ!?」


って、自信満々で聞いては見たんだけど当のグリフォンはソッポ向いてるし

ルー姉とクゥーラに至っては華麗なるスルー技能を発揮し


「そうね、グリフォンと言えば王家の紋章にも使われる位

高貴な印象を受けるし、それに相応しい名前が良いわね。

ね、クゥーラ?」


「キュキュ~~♪」


っと仲が良さげに会話してるし……。


『うむ。我も是非ルーシュナとクゥーラに名前を考えて欲しい』


チョ……グリフォン……お前もか!?

ハァ……良い名前だと思うけどな……グリ吉、グリポン……覚えやすいし。


「ハァ……判ったよ、それじゃルー姉が考えた名前ってどんなのよ?」


軽く凹みながらルー姉に尋ねると


「そうね……空の王者……覇者……太陽……ソレイユ、

うん、ソレイユって言うのはどうかしら?」


と、何やらルー姉は一人連想ゲームの様な事を自問自答し

そこから導かれた名が【ソレイユ】らしい。

……ちょっとばかり、恥ずかしい名前だと思うけど……ま、呼んでれば慣れるか?

ちなみに俺以外の当事者とクゥーラは


『うむ、我もその名前が良い、気に入ったぞルーシュナ』


「キュ~キュ~♪」


とグリフォンはご満悦だしクゥーラも大喜びだしね。

ってな訳で


「じゃ、今後ともよろしくなソレイユ!」


と、俺が挨拶すると


「よろしくお願いね、ソレイユ」


「キュ~」


ってルー姉、クゥーラも笑顔で新たな仲間?を歓迎し


『うむ、我はソレイユ。アナタ達の為に尽力する事を誓おう!』


とその雄大な翼を広げてそう宣言したんだ。

ま、それはそれとして俺達もソレイユも傷付いてるからね、回復しとこうか。


「じゃ、ちょっと皆集まってくれ、怪我の回復をしようぜ。」


と皆に呼びかけ集まって貰い


「“我、求めるは治癒齎す生命の風也”【癒しの微風】(ヒールウィンド)


魔力の発動によって生命の力を帯びた微風が俺達を優しく包み

傷を浄化し塞いでいった。



◆◆◆◆◆◆



「じゃ、ソレイユ! 俺達を乗せて東に向かって村のある所まで飛んで行ってくれ!!」


俺達三人(トリオ)を背中に乗せたソレイユに頼むと


『了解した、しっかりと我に掴まっているが良い』


ソレイユはそう頷くとその巨体に俺達を乗せ大空に舞い上がっていった…!!!







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