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ネームレスワールド ~ 星空の降る夜に~   作者: 茄子 富士
第四章 【NAMELESS WORLD】 巡り合う仲間達
26/49

子狐さん母を尋ねて旅立ちます



 さて、本に書いてあった【獣】と狐の獣人だと思っていたクゥーラが

狐の子供の姿になった事って関係あるんでしょうか??

……全くの無関係とは思えないけれど朝になったら本の事をクゥーラに聞いて見るか。

それに旅に出る前に読んだ童話に出てきた【白銀の巨狼を連れた銀の髪の勇者】と

このクゥーラの家にあった本に出てきた【白銀の巨狼を連れた銀の髪の人】か……。



まだ……絶対とは言えないけれど、もしかするとこれって【オルトリンデ】なの……か?

前世の別れ際……「世界を見て周りたい」って言ってたしなぁ。

……でも、まだ二つだしな、唯の偶然かもしれないけれど。

いやいや、レリアママがあの時に読めば俺に良い事っていってたしな……他に思いつかないし。

これからも似た話が出てくれば本当にいるのかもしれないな!



と、なると……クゥーラの家の本に出てた【獣】が

仮にクゥーラの母親と何かの関係があるのなら……【オルトリンデ】の手掛かりに繋がる??

仮定の話ばっかりだけど……こいつは希望が見えてきたかも知れないぜ!?

クゥーラの母親探し……俺も手伝った方が良いってことか。

ルー姉と相談して何とか説得しないとな!



……それにしても【オルトリンデ】が居たとしたなら

この世界と【ONE WORLD ONLINE】の関係って一体どうなるんだろう……?

単純に似ているって話じゃ無くなるよな……?

ま、検証方法が思い浮かばない今はそれを一旦措いとこう

今は【オルトリンデ】の情報集めに専念するか!……会えたら何か判るだろうしな!



ところで、当面の問題としては……俺は何処で寝ればいいんだろう??

そういえば二人は飯も食わずに寝たのかな?

ん~……ルー姉の保存食料でも食べたのかなぁ??



取り敢えず二人が起きた時に気付ける様にテーブルの上に食べ物は置いとくか。

後は……クゥーラが子狐になったからか服が落ちてるし掛けといてやろう。

……じゃ、俺も適当な場所で寝よっと…おやすみ~。



◆◆◆◆◆◆



 翌朝


「エ?……エエエェエェェェェェェェエエエエッ!?

ク……クゥーラなの……この子って!?」


「キュ??」


安らかな眠りに就いていた俺を叩き起こしたのは

そんなルー姉の驚く声だったんだ。

ルー姉は子狐姿の多分クゥーラ?を抱き上げると


「か……可愛いィ~ッ!」


「キュッ……キュ~~ッッ???」


胸に抱え振り回してらっしゃる。

無論、振り回されている(推定)クゥーラ?は目を回してるようだ。

取り敢えず……


「ルー姉、そろそろ放してやってあげて……目を回してるから!」


と止めてやったんだ。

すると慌てた様子でルー姉は振り回していた子狐を藁の寝台に降ろし謝っていた。


「え?……あ……アァ!

ク……クゥーラ?……ご……ごめんなさぁいッ!」


「キュ……キュ~……」


心無しか藁の寝台にへたり込んだ子狐の毛並みがへちょってる様に見えた。

それがまた可愛いのか……実際俺から見ても可愛いし

ルー姉は子狐を撫でながら


「ねぇ、ソリッド。……この子が……クゥーラだと思う?」


って俺に訊いて来たんだよな。


「うん、状況を見たら……そうなんじゃないの?

ってか、俺に訊くより直接その子狐に訊いた方が早くね?

クゥーラなら返事するだろうし……違ったら会話出来るはずも無いしな」


「それもそうね。ねえ、貴方はクゥーラなの?」


と子狐を撫で繰り回しながらルー姉が尋ねると

子狐が小動物特有のあの円らな瞳でルー姉を見上げ

大きな欠伸をしながら背筋を伸ばし


「キュ~~~ッ…………キュ♪」


一鳴きしたかと思ったら白い煙をポンッとさせ

クゥーラの姿、人型に戻ってたんだ……イヤ……子狐の方が元の姿なのか……この場合?

当然スッポンポンの素っ裸だったぜ!


……可愛いとは思うしオープンエロを自認している俺だけど

おぱ~い信者の俺には守備範囲外なので紳士の如く後ろを向いてやったけどな!

ま、あれだな……きっとクゥーラのお母さんだったら……ウハハ♪


「ソリッド!貴方は後ろを……あら?

もう後ろ向いてたんだ……取り敢えずクゥーラが着替えるまで後ろ向いててね?」


フ……俺とて何時(いつ)も何時も期待に応える(お約束を守る)とは限らないのさ。



 ルー姉がクゥーラの着替えを済ませている間に

俺は朝飯の準備をする事にしたんだ。

取り敢えず【ホロホロ鳥】を捌くのに時間かかるし。

自分で狩って自分で捌くと食材に対する感謝の念が湧いてくる。

食材に対して「ありがとう」ってな。



◆◆◆◆◆◆



 「駄目よッ……絶ッ対に駄目!!

クゥーラを私達の旅に連れて行ける訳が無いでしょう!?」


とルー姉が大声で駄目出しをしてなさる訳は……。


朝飯の用意が出来たので三人で(テーブル)を囲んで

(とは言っても椅子が二脚しか無いので俺が直座りだったけどね)

食べている時にクゥーラのお母さんも戻って来なかったので

クゥーラの今後をどうするか?……の相談をしてたんだ。


で、クゥーラの希望としてはお母さんを探しに行きたい。

ルー姉としては我が家である砦に預けるなり

ブルグント市にあるレリアテルス神殿の施設に預けるべきだ!と仰る。


ま、この場合……普通なら俺もルー姉と同じ様に考えたはずだ……多分。

なんせ母親探しとなると【黒騎士】とやらが関わって来るのは分かり切っているし

俺達がクゥーラを守りきれる保障なんてのも無いからね。

故に公平に見てルー姉の意見が正論だろうなぁ。


……が、それでも俺はクゥーラを連れて行くことを主張した。

それに対してのルー姉の駄目出しって訳さ。

さて、どうやってルー姉を説得したもんかなぁ……?


「まぁ、落ち着いてよ……ルー姉。

クゥーラが母親を探しに行きたい気持ちってのは

ルー姉こそが一番理解出来るはずだろ?」


「そんなのは判っているわ!

でも、私達は何時危険に晒されるか判らない冒険者なのよ!?

そんな旅にクゥーラを連れて行ける筈が無いでしょう!?

危険からクゥーラを守りきれるなんて絶対に言えないもの!!」


俺の感情に訴える説得はルー姉の正論によってあっさりと叩き潰される。

やっぱここは正直に言った方が良いかぁ。


「ルー姉の言う事は正しいって俺も思う。

ただ、その前にちょっとクゥーラに聞いても良いか?」


「一体……何をよ!?」


ルー姉は感情的になっているのか……不機嫌な表情で聞いて来たね。

それを見なかった振りをしてクゥーラに


「なぁクゥーラ。そこの棚にある本について聞いても良いかな?」


と尋ねると食べるのを一旦止めてあっさり頷くクゥーラ。

ルー姉の大声にも動揺している様子は無い。

意外と肝が据わってるのかなぁ??


「うん、聞いていいの」


「この本に書いてる内容は知っている?」


と俺が訊いてみると


「お母さんに何回も読んで貰っているの。

昔のお母さんのお話とお母さんのお友達のお話なの、とっても面白いの」


と笑みを浮かべながら言ってきたんだ。

何て言うか……自慢の本を人にも読んで貰いたいと勧めている感じかな?

このクゥーラの笑みは。

それはともかくビンゴ……だな、これは。


「ああ、クゥーラには悪いけれど昨日の晩に勝手に見せてもらったんだ。

で、面白いお話だったからね。

勝手に読んじまってゴメンな、クゥーラ」


クゥーラの頭を撫でながら……ついでに耳触りを堪能したのは内緒だ!

……謝罪するとお日様の様な笑みを浮かべ


「うん、とっても面白いの!」


と断言してくれました。

ちょっと!?……あんまり可愛いんでクゥーラの頭を撫で繰り回しちまったぜ!?


「おう!ありがとなクゥーラ!」


「あうう……」


やり過ぎてしまった様だ……クゥーラは目を回して頭に手をやってらっしゃる。


「……で?何が聞きたかったの、貴方は?」


そんな様子を黙って見ていたルー姉がジト目で訊いて来たんだ。


「ああ、昨日の晩ルー姉とクゥーラが寝たあとにさ、棚にあった本を読んでたんだ。

内容は今クゥーラに聞いた通りだ。

で、もしかしたらクゥーラの母親の友達って人が俺の探している人なのかも知れないんだ」


と説明すると


「……ホントに?……そんな偶然ってあるのかしら??

でも、それとクゥーラを旅に連れて行く理由はどう繋がるの?」


不信と言うほどでは無いけれどその形の良い眉を(ひそ)め半信半疑なルー姉。

……この反応は当然だろうなぁ、俺もそう思うもんよ。


「ん、つまりクゥーラのお母さんが

俺の探している人の手掛かりになるかも知れないってのと

そのお母さんの顔を知っているのがクゥーラしか居ないってのが主な理由なんだ。

クゥーラを連れて行くのが危険だってのは俺も判る……けど

頼む……ルー姉!この通り……お願いします!!」


か細い手掛かりになるかも知れないって焦りが俺にこの行動を自然に取らせたんだよね。

床に頭を擦り付けて土下座してルー姉に頼みました。


「チョ……ちょっと、止めなさいソリッド!」


黙って土下座し続ける俺。

……しばらく無言の時が過ぎルー姉が口を開いたんだ。


「……ハァ、もういいわ、頭を上げなさいソリッド。

ただ、これだけは絶対に私と約束しなさい」


頭を上げてルー姉を見上げると

そこには瞳を強く輝かせて俺を見つめるルー姉が居たんだ。

無言でルー姉を見る俺に


「クゥーラを絶対に守り切りなさい。

それが絶対条件よ!」


と言い切ってきた。

無論俺は


「勿論だぜ!」


とルー姉に感謝をしながら強く言い切ったぜ!



◆◆◆◆◆◆



 朝食を食べ終えた俺達はクゥーラの家を後にしたんだ。

ちなみにクゥーラを同行させることになったんで

クゥーラの母親が家に戻ってきた場合に備え置手紙をおいてきたんだ。



 内容は


クゥーラがお母さんを探しに行きます。


というクゥーラ自身による一筆と

その間に俺とルー姉がクゥーラを預かり守る署名と

もしこの手紙を読んだのなら【クルース男爵領】の領主館に

この手紙を持って両親である領主に連絡をして

そこでクゥーラを待つように頼む伝言を残しておいた。



 そういった後始末をした後

俺達は今、【オークウッド大森林】の

【緑と蒼の血族】が住む村に続く道を歩いている。


【黒騎士】にしろ、クゥーラの母親にしろどの方向に行ったのか判らない以上

森の中での情報を集める為には男爵領の砦に戻るよりは

先に進んで情報を集めた方が良いと言う主張をしたら二人に納得して貰えたからね。


そんな道中での会話が


「で、結局クゥーラってどういう種族の子なのかしら?」


とルー姉は自分の頭に乗せた子狐に向かって呟いていた。


「キュ?」


ちなみにクゥーラは子狐の姿をしている。

どうやら人型でいるよりはそちらの姿の方が楽に過ごせるらしい。

人型だと常時魔力を消費しないといけないらしいからね。

その代わり人型だと身体能力が高くなるそうだ。

頭に乗ったクゥーラを見ながらルー姉の疑問に相槌をうつ。


「獣人じゃなかったみたいだしな」


うん、少なくても俺が知っているOWOでは【獣人】種族とは言え

動物そのものに変身なんてしなかったしなぁ。

ただ、思いつくとしたらゲームの時は見かけた事が無かったけれど

【九尾】(ナインテイル)なのかもしれない……とチラっと思った。


俺の相槌に対してルー姉は


「そうね、……でもまぁクゥーラはクゥーラで私は良いわ」


と自分で振った話題にしては至極あっさりそう言い切ったんだ。

まぁ……ルー姉も種族を詮索する事には思うことがあるんだろう。


「キュ~♪」


ルー姉の頭の上でクゥーラが機嫌良さそうに尻尾をフリフリしてた。

それとは別の事が気になっていた俺はそれをルー姉に聞いてみたんだ。


「なぁ、ルー姉。

ルー姉はイルパパの書斎で蒼い背表紙の本って読んだことがあるか?」


案外身近な所に手掛かりがあるかもなぁ……って事で。


「うん?……蒼い背表紙の本っていうと

……あぁ、【悪い魔法使いと勇者の物語】の事?」


……ルー姉も読んでいたのか。


「そう、それ。

それに出てきた【白銀の巨狼を連れた勇者】に

似たような描写の物語とか伝説とか童話って知ってるかな?」


と天に祈るような心持で尋ねると


「う~ん、あの勇者に似た描写のお話ねぇ……

う~ん、ごめんなさい私には心当たりは無いわ」


ルー姉は空を見上げながら思い出す仕草をしたものの

残念ながら心当たりは無かった様です。ハイ。

ちなみに空を見上げる仕草をした時に

クゥーラが自分で移動して落ちない様にしていた姿には萌える物があった気がするぜ。


まぁ手掛かりが無かったのは残念ではあったけれど

そうそうそんな偶然があるわけ無いよなぁ……とも思っていたので


「イヤイヤ、ルー姉が謝る事はないさ。

ただ、俺が探している人の特徴がそんな感じなんで

ルー姉も覚えててくれると助かります。ハイ」


と言うとルー姉が


「それって以前に言っていた……前世の記憶にある再会を約束していた人の事?」


って何気なく聞いてきたので


「ああ、そうなんだ。なんせ千年前の話だからなぁ……。

もし本当にいるなら多分寿命の無い存在だし

強さも半端じゃないはずだから

そういう伝説とかお話に出てても可笑しく無いって言うか……ね」


と俺が言うと


「……前世の記憶ね。

う~ん、何回聞いてもアレね……それ。

でも、本当に居て千年間も待ち続けていたんだとしたら……。

その人はどんな気持ちで貴方を待っているんでしょう……ね?」


ルー姉は何とも言えない表情で空を見上げながらそう呟いていたんだ……。




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