ツンデレ?と医務室
あの拷問の様で、ひそかに先生の柔らかさも堪能できたマッサージで体が軽くなったのか?
大会を順調に勝ち上がり意外にも決勝戦まで来たんだけど対戦相手が予想道理?ルー姉です。
馬上槍競技では互いに馬を突撃させ、その突進力をそのまま槍に乗せ相手にぶつけるんだけど
相手も馬に乗って突進して来るよな?
これって例えるなら電車に乗ってて対抗車線の電車が来るのを見るのと同じで
体感速度がとんでもなく速いんだ。
槍を当てるインパクトの瞬間を掴むのが大変で早すぎても駄目、遅すぎても駄目。
でも、俺にとってはこれが一つの武器になる。
その理由なんだけどOWOでレベル一のキャラの平均能力数値
例えば【筋力】とか【魔力】とかって大体十前後なんだよね。
種族差や個人差もあるけどさ、誤差は精々二から三くらいで
この数値が一上がるごとにレベルも一上がると思ってくれていい。
なので、この数値が百十前後になるとカンストレベルになっているんだ。
つまりレベル一のキャラの身体的能力のおよそ十倍近い人がカンストキャラだ。
多分これってこの世界でも同じだと思う。
ゲームでのレベル一のキャラがこの世界の一般的な大人の事で数値を表すと恐らく十前後ってこと。
成長の終わってない子供はもちろん大人より数値が低く赤ん坊なら一くらいだろうな。
今の俺の身体的能力値を数値で表すなら恐らく六から七程度でレベル一に達してないはず。
でも、俺はゲームの中でとはいえカンストレベルでの動きをしていた事がある訳だ。
つまり十倍近くある身体能力での動きをね。
まぁ十倍とはいっても単純に数字通りに速度が十倍とかって訳じゃないけどさ。
その理由は空気抵抗だの慣性力だの色んな要素が複雑に絡み合うからなんだけど
今それは措いとくわ。
言いたいのはカンストしてた時の瞬間の速さは馬の速さを上回ってたって事だ。
無論今の動体視力はカンストキャラだった【マサト】に遥かに及んでないけれど
それでもあの速度での攻撃するタイミングは覚えているからさ。
俺の武器ってのがこの攻撃するタイミングを覚えてる事だ。
決勝はこのタイミングを活かしてルー姉に勝ってやるぜ!
ルー姉、小さい頃から俺の身体的スペックの三倍近くは有りそうだったから
例えば俺の【筋力値】が七だとしたらルー姉は二十一位あると思っていい。
剣術とかならOWOの経験を活かせるけどジョストはゲームで経験して無いから技量差も無い。
そういう人が相手だから如何しても一か八かの勝負になるわな。
ちなみにルー姉が能力的にチートを誇る理由は薄々とだけど気付いている。
でもまぁ、ルー姉が話してくれるまでは絶対に詮索しない様にしてるんだけどね。
◆◆◆◆◆◆
「WhoOOOOOOowooWOWowOOoooooooooWOOhHOoo!!!」
ルー姉との対戦だと観客席の盛り上がりが凄すぎる。
おいおい、皆盛り上がりすぎだろ?
まぁ俺の事なんて眼中に無いのが丸判りでいっそ清々しい。
成る程ね、ルー姉の対戦相手はこの敵地を感じながら戦ってたのかぁ。
同じ立場になって初めて判ったなぁ。
お、もう開始位置に着くか……。
俺もルー姉もまだ兜のまびさしを上げてるからお互い
相手の表情が見えるんだけど……あらら、ルー姉ってば凄ェ真剣な顔してるよ。
……負けられないな。
お互いに開始位置に着き兜のまびさしを下ろす。
ジョスト用の騎士甲冑は怪我を防ぐ為に首周りの防御の厚さが
ガチガチで首を回すことも出来ず、兜のまびさしを下ろすと
視界が極端に狭くなり正面しか見ることが出来なくなる。
今、俺の視界には騎馬に跨るルー姉の姿しか映らなくなったって訳だ。
集中しやすくていいかもな……フゥ、さぁ……開始の合図はいつでもいいぜ?
審判の開始の旗が振り下ろされる!
すかさず馬を疾走らせる俺とルー姉!
加速を続けさせると、どんどん視界の中のルー姉がこちらに迫ってくるぜ!!
…………まだだ、まだ、……まだ………………此処だ!!!!
互いの間合いを喰い潰す俺とルー姉の疾駆……槍が届くその刹那の瞬間に槍を突き出した!
ほんの少しだけ遅れてルー姉も俺に槍を突き出す!
俺のが先に当たる!俺の勝ちだ!
ドガッ!!ズザザッ!!!
!!?行き成り視界が天地逆さまに回転し俺の全身に衝撃が突き抜けた!
落馬させられた俺は馬の加速力とルー姉の槍に叩き落とされた衝撃で地面にゴロゴロと転がった。
そしてそのまま俺は意識を失った。
◆◆◆◆◆◆
……気がつくと目の前にはルー姉が目の前にいて……あらら?他にも人がいるな?
つか俺ってベッドで寝てたのか……まわりを見渡すと……あぁここって医務室か。
……そうか、負けたんだな……俺は。
「あ、ソリッドが目を覚ましたわ。ソリッド、体は大丈夫?どこか痛い所は無い?」
と俺の様子を覗き込んでいたルー姉が心配そうに具合を尋ねてきた。
ルー姉の耳がションボリとへちょってる!?
それに答えようとするとルー姉の後ろに控えていたのが
「ちょっとアンタ……私の下僕の分際で何をルーシュナ先輩に心配なんかさせて、その挙句に
看病なんかして貰っちゃってるわけェ!?」
と金髪ロングのやかましいのがこちらをビシッと指差し割り込んできた。
このやかましいのは……アリアか。
取敢えずアリアは置いといてルー姉に安心して貰わないとな……。
「ああ、大丈夫だよルー姉、全身が打ち身だらけでズキズキするだけだから問題無い」
……ア……あれ?問題無いのを格好良くアッピールする予定が本音駄々漏れじゃね??
俺の返事を聞いてルー姉が辛そうに眉を潜め
「ごめんね、ソリッド……。私、ソリッドに酷いことをしちゃったわね……」
ダァアアァアアッ!!チョ……マ……ち、違うんだルー姉ェッ……今の無しにして!?
慌てて先ほどの発言を訂正しようとした時
「アンッタって本当にバカ!? そういう時は男なら平気な顔でしょッ!
それをルーシュナ先輩に余計心配させる様な事言ってんじゃ無いわよッ!
大体、ジョストで負けたんだからその位の痛みは当然でしょッ!?」
と、アリアが俺とルー姉の間に更に割り込んで来て怒髪天を突く勢いで怒鳴った。
ウン、……何故だろう?全く同じ様なことを俺も考えたんだが
……その同じ考えをアリアに怒鳴られるとムカつくのは??
しかぁし、今優先すべきはルー姉の憂いを払うことだ!
アリアに対するムカつきは取敢えずどっかに放り込んでおこうぜ、俺!
「ゴメンゴメン、アリアの言う通りなんだから元気だしてよ、ルー姉。
ルー姉の所為じゃなくてジョストで正々堂々とした勝負の結果なんだからさ」
と耳までションボリさせていたルー姉に元気付けると何故かアリアが偉そうに
「そうよ先輩、ルーシュナ先輩は全然悪くないわ。
悪いのは先輩に不安をかけた私の下僕だけよ!」
と、ビシッと俺を指差した。
……イヤイヤ、アリア、お前どうしてそんなに無駄に偉そうなの?
あ、一応王女様なんだっけ……ほんとに偉かったんだよな。
でも、こいつを見てるといつもそれを忘れるんだよなぁ……なんでだろ?
ん?あれ?……何か当然みたいな顔してここにいるから不思議に思わなかったけど
なんでアリアが此処にいるんだ???
……ア、そうかルー姉がいるからか。
ルー姉をライバル視してるだけじゃなくて割りと慕ってたもんな。
で、心配そうな顔して俺の看病してたルー姉を元気づけてたって所か。
と俺が一人で納得してると俺とアリアの励まし?で元気が戻ったのか
ルー姉がクスッと微笑み
「アリア王女ったら、お見舞いに来てソリッドが起きるまであんなに不安そうにしてたのに……
二人とも相変わらず仲が良いわね♪」
と、仰るではあ~りませんか?
ルー姉のその言を受け
「「ハ?……ハァアアアッ!??」」
俺とアリアが見事にハモッた。俺はとっさにアリアの顔を見てみるが
………………俺の事を心配してたって風にはこれっぽっちも見えなかったよ。
少しでも顔が紅かったとかだったらルー姉の言葉を信じたかもしれないが
う~ん、全ッ然そのデレの名残は無いな……。
これは寧ろ俺達が険悪な雰囲気に落ちる前にからかって場を鎮めようと狙ったのかな?
でも、ルー姉がからかうにしても嘘を言うような人じゃないよなぁ……。
「ル……ルーシュナ先輩ッ!?冗談はそこの下僕の顔だけにして下さい!」
とアリアがルー姉に抗議する。
顔を冗談にされてしまったけど
ん~、一応ルー姉の言う通り見舞いに来たのかもしれないし礼くらい言っとくか?
「ん~、見舞いに来てくれたのか、アリア……ありがとうな。
それとルー姉ェちょっと遅れたけどジョストの連覇、おめでとう♪」
一応、見舞いに来たのかもしれないアリアに礼を述べ
馬上槍競技二連覇の栄誉を受けたルー姉に遅ればせながら祝辞を送った。
「フン、私は先輩の付き添いで来ただけよ、勘違いしないでよね?」
「ありがとう、ソリッド。そう言って貰えると私も嬉しいわ♪」
……見事なツン台詞を有難う御座います、デレはあるんでしょうか??
しっかし、ホントにツンデレなのかどうかは……判らん。
ま、それは措いておくか。
今はルー姉に喜んで貰えたってことで良しとするよ。
◆◆◆◆◆◆
ルー姉の祝勝会、二連覇おめでとう!ってのを俺達の入っている寮の談話室で開かれた。
寮は基本的に男女は別の棟になるけれど、この談話室というかホールは男子寮と女子寮とが
中央に位置しどちらとも繋がっているのでこういった催しに良く使われてるな。
祝勝会では様々な料理が並べられ飲み物としてはワインが用意されている。
用意された料理は俺達寮生が自分達で用意し、調理したんだぜ。
俺達は勿論のこと未成年なんだけど、食事の時はワインだけは規制されてないんだ。
理由が日本程には水質管理がされてないのでアルコールによって消毒された飲み物推奨だから
ってのが一番かなぁ。
その理由からお茶はあってもなぁ……惜しい!って感じだ。水がアレだからね。
水を飲む時は最低限、煮沸させないと駄目なんだよなぁ……。
とは言ってもお茶会とかもあるからな……水をそのまま飲むより風味はいいし。
ちなみにこの国じゃ十五歳から大人と看做される。
並べられた料理は主食が小麦だから用意されたのはパンにポリッジにパスタ類。
小麦から作れる物は大体あるね。ビスケットや、パイ、パンケーキと思いつくのは大体揃ってるぞ。
肉類は豚と鶏が基本で牛肉はちょっと高級品扱いだな。
ゲームの時にあった魔物肉ってのも嗜好品扱いだけどあるよ。
ただ家畜の肉とは違っていつでも手に入るって物じゃないけどさ。
冒険者とかが食べられる魔物を狩りとって来た時だけ出回るから高価なんだ。
魔物肉は大抵臭く筋張ってて不味い。
まぁ雑食だったり肉食だったりするのが多いから当然かな。
そういうのは大抵灰汁を抜いてから食べるけどわざわざそれを食べたがる人はいないよなぁ……。
なので、出回る魔物肉は草食性の魔物の物になる。
代表的なのが水草を食べる草食恐竜に似た【ピクトン】と呼ばれる物と
大亀に似た【陸亀】の物が人気ある。
ま、高級品でたまにしか出回らないので今回の料理には出てないから余談になったか。
並べられた肉類はそれぞれ煮た物、炙った物、揚げたもの……うん、これも然程予想外の物はない。
宗教上禁止されてる食べ物が無いしね。
野菜類は生サラダやシチューやポタージュ、煮物の具材にされたりと……これも斬新なのはないなぁ。
後はデザートとしてフルーツの盛り合わせや菓子類にヨーグルトやチーズの乳製品かね?
あぁ、アイスだけはちょっと……無いな。
【氷結】の魔法使えば作れるんだろうけれどこれは多分ママから禁止されるだろうな……
この世界に無いんじゃないか?
あ……でも千年前にプレイヤーキャラ達や俺のアバター【マサト】とかが存在してたなら
あるのかも知れない?
でもまぁ、この大陸に無いのは確かだけど。
ま、そういった物が沢山用意されて寮生の皆が談話しながら食べ歩く
バイキング形式の立ち食いパーティーで行われたんだ。
このパーティーの主役であるルー姉の周りには流石に大勢の生徒が集まってるな。
お……アリアの周りも多いなぁ。
まぁ二人とも美少女と言って良い容姿だし性格も良いもんな。
アリアは俺に対しては当たりが強い気がするけど。
それと比べると俺の隣には……
「ねぇねぇ、ルーシュナさんの好みのタイプの男性ってどんな人なの?」
と、俺にいつも聞いてくるこの学園入学以来の悪友であり、エロ友でもあり
腐れ縁でもある、【ギルヴァート ヴァイス】通称ギルしかいなかったりする。
この悪友の実家はヴァイス侯爵家であり、身分的には高いんじゃないかなぁ?
気にした事無かったけどさ。
こいつの見た目は金髪碧眼の美少年でモテそうなんだけど……。
俺とこいつの他は周りに誰もいないのは
自業自得とはいえ俺達の普段の行いのせいだろうなぁ……。
ハッハッハッハァ…………。
俺達の普段の行いは……一言で言えば、オープンエロス!……これだろうな。
前世で今の年齢の時は純情シャイボーイで隠してたんだけどなぁ……。
いかんせん娯楽が少なすぎるぜ……。
俺達のエロ活動といっても大したことは出来ないけどな……精々が更衣室覗き?
と言っても実際に覗けたことなんてありはしないのが又何とも……警戒が厳しいからな!
後はまぁ普通にエロ話で盛り上がるくらいかな。
ちなみにルー姉の好みのタイプは俺も知らなかったりする……どんなタイプなんだろう??




