表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ネームレスワールド ~ 星空の降る夜に~   作者: 茄子 富士
第二章 【NAMELESS WORLD】 スクールライフ
11/49

始まる馬上槍試合



 ダースラさん達と初めて出会ったあの時から数年の月日が流れ

俺は現在十三歳になり【アルメニア王国】の【王都アイオン】にいる。

いや、王都にいると言うよりは王国内唯一の学園【アルメニア王立学園】

にいると言ったほうが正確かな……?

この学園はかつて貴族だけの為の学校であり、アルメニア王国内に存在する五十を超える諸侯達の

子息らを教育育成する為のもので、七歳より入学させ七年制の勉学を努めた後に卒業となっている。

似てるのを探すならあれだ、額に稲妻の形の傷のある少年が通っている学校に似てるかも?



 まぁそういうのが建前で実質は貴族の子息らを王家に対する人質にする為の物だったらしい。

今現在は諸侯のみならず学園の学費を払える家ならば誰でも受験資格を与えられ

また優秀ではあるが学費を払えない者の為に奨学金制度も採用されているな。


一般にも門戸が開かれて学年毎に三百人を受け入れている為

総生徒数が二千人を超える巨大学園となっている。

後は諸侯の子息を人質にする為の口実から生まれた学園だから全寮制だ。

生徒総数が多いから必然的に学園敷地が広がり一種の街と化しているぞ。



そして元々が諸侯の子息らの為の学園なのでその教育レベルは国内随一を誇り……

と言うか普通、教育を受ける際には私塾や家庭教師もしくは親から直接学ぶ形しかない為

ここにしか学校が無い。まぁ義務教育の概念がまだ無いんだから仕方無い……のかね?



 アルメニア王国は前述の通りに五十を超える諸侯が集まり王権とは

その諸侯の調停役程度の象徴でしかないんだよなぁ。

まぁそうは言っても王だからそれなりの権威と貴族に対する命令権は持ってるけどさ。

前世の日本で例えるなら大化の改新以前の天皇、世界史で例えるなら神聖ローマ帝国の皇帝か?

あぁでも、一応王位は世襲制だから神聖ローマ皇帝とはちょっと違うかな?



絶対王政の始まる前のフランス王国の方が近いのかなぁ……。

まぁ傍から見てる感じじゃ絶対王政には程遠いけどさ。

支配階級に匹敵するほどの被支配階級の台頭が全然だもんなぁ。



せめて工場制手工業(マニュファクチュア)が普及しないと無理だろ。

この世界だとギルド制の徒弟制度だから技術が秘伝化されてて普及しないし競争も起き難いんだ。

でもまぁ絶対王政って支配階級と被支配階級との力の天秤が同じ位になってないと無理だし

なったらなったで天秤があっというまに傾くから絶対王政の期間って短いしなぁ。

一代持てばいい方で直ぐに市民革命が始まって血の粛清の嵐……だっけ?



 前世の地球の知識が禁止されてる理由の一つが

多分こういった事も含まれるんじゃないかな?と最近思うようになった。

工場制手工業、所謂流れ(ライン)作業なんかを導入させると

この世界でも商品の大量生産が出来るようになる訳でその商品が例えば英国の様に

毛織物製品……衣食住の一つである衣を大量生産させる、売れる、そしてその売れた利益で

持って設備投資でさらに量産体制を敷く、で、最終的に経済圏が国内で飽和すると市場の拡大を求め

外に出るようになる……で世界史の歴史通りに植民地化が進むわけだ。

こうなると資本主義の始まりだね。


これにはいい面もある。大量生産によって生活が便利になっていくとかね

でも、植民地化で間違いなく大量の血を流す事にもなる。多分個人じゃ責任取れないくらい多くのね。

ってな訳で仮に異世界知識チートが使えても小心者の俺じゃちょっと使えそうに無いわ。


まぁ他にも折角の異世界なんだし地球とは別の形になるのを見てみたい!ってのもあるけどね。

ただ、この地球とは別の形、概念ってのは俺じゃ想像もつかないね。地球での常識がガチガチだもんよ。

多分、地球の常識を外れた新しい世界を作れるのはこの世界の人達の方なんだろうなぁ……。



 何でこんな事を考えているかっていうと今、王国の歴史の授業中なんだよ。

半分以上が王国の権威を称える事や王家の偉業?を称える事に費やされてるんだよなぁ。

この【ラブラドール大陸】に置いて人間主権の国家は此処【アルメニア王国】しか存在しない。

まぁ他の大陸はどうか知らないけどね、それは措いておこう。


 どうして大陸にここしか人間主権国家が無いのか?だけど答えは簡単だ。

生物生存競争で勝ち切れない、これだと思う。……多分だけどさ。

他のVRMMOやファンタジー作品に置いて人間種族が人間より能力的に優秀な種族を抑えて

覇権を握っている理由の一つに他種族に比べて多い繁殖力が良く上げられる。

でも、この世界ではその繁殖力が充分に活かし切れてないのが覇権を握れない理由の一つだと思う。



何故、繁殖……言葉がアレなので人口が増えないのか?だけど、これまた理由は簡単だ。

食料供給力、つまり第一次産業の生産力そして食料の保存力が人口に比べ足り無いからだと思う。

足りない理由、例えば一つは空白地帯を代表する魔物や魔獣の存在があり国の外へ

農地や放牧地を拡大する事が出来ない事。其の理由から各諸侯の領地で食料供給力以上の

人口が増えると領民が飢える為、国内の他領へ略奪戦争がおっぱじまると悪い流れが出来る。



今より人口が増加し競争が激化することによって生じる技術力の向上や数による戦力の増加

で魔物などが支配する空白地への拡大を繰り返せれば覇権を握れるんだろうけれど

その最初の一歩、食糧不足で全部が止まってる。

ちなみに空白地の主である魔物ってのはその地のトップなのでとっても強い。ドラゴンとかだしな……。



領内で増えた人口の為に食糧不足が起こり、その解消法で空白地を開拓するよりも

他領を奪う方が楽だから領土間戦争になり日本で言うと戦国時代のような乱世となって

人同士の身食いが始まりその結果で人口が増えない。そして人口不足から他種族を圧倒出来ない……と。



 あ、一応確認して置くけど人が主権を持つ国が【アルメニア王国】なんだけど

この国にも他種族が総人口中の三割程度は住んでいるし、他所の国に(例えばエルフの国

ドワーフの国、魔族の国、その他)人間種族が住んでいる事を追記して置くか。

他にもジプシーの様に国に所属しないで放浪する民族や放牧する人達もいるよ~っと。


後はありそうなのが人種差別の様な他種族差別?だけど、表立っては無い。

どの種族も勢力が拮抗しているので下手に差別なんてしたら酷い事になるらしいよ。

まぁ裏じゃ差別があったりするかもしれないけどさ。



 でもまぁ、そういった理由から一応今は安定期ではある。

食料生産力と人口のバランスが取れているんだろうな。

物語にありがちな貴族や王の領土拡大欲の様な野心で始まる戦争ってのは一応あるけど

始まる理由はどちらかと言うと被支配階級からの要望、食糧事情や市場の拡大及び

以前からの戦争による憎悪の連鎖で始まる事の方が多い気がする。


実際、戦争するには大義名分ってのが必要だろ?大義名分が無いと人が集まらんからね。

そして大義名分を必要になる理由は戦う兵士達に自分が正義!と思わせる事だもんな……。


他種族との戦争も数で圧倒出来ないから勝率が怪しすぎるしやる奴もいない。

平和でいいんじゃないか? 俺は戦争賛美者じゃないし平和でまったりのが好きだからいいけどね。


別の一面じゃ戦争……は言いすぎとしても競争が無いと文化面で停滞する問題はあるんだけどなぁ。

何事も上手く治まる事ってないのか?


 ちなみに今の授業だとこの平和は王家の権威と偉業によって為されたものらしいぞ。

涙ぐましい努力だな……王家。でもまぁ諸侯間の調停役としては確かに頑張っているし

特に否定する必要もないけどさ。



多分ゲームと同じ千年前からさほど文化が進歩してない理由の一つに

競争が無い為の停滞もあんじゃね?



◆◆◆◆◆◆



 俺より一年早くこの【アルメニア王立学園】に在籍してたルー姉は今年で最上級生で

学園執行部会長様でもある。

幼少の頃もチート染みたスペックを誇っていたルー姉だが現在もそれに磨きがかかってるぞ。

学園の偶像(アイドル)なのは確かだしね。



会長に選出された頃からルー姉はかつてのツインテールは止め、ポニーテイルに宗旨替えしたようだ。

その容姿は頭が小さく八頭身で手足は長くそして全体的にスラっとした細身の体で

肉感的なエロスを感じる体形では無く絵画や芸術品のような美しさという形だ。

まぁそういう体形だからして、おぱ~いが……無いわけじゃないが慎ましく……まぁモデル体形だな。



 そして相変わらずに活動的で発言もハキハキしつつ明るく優しい完璧超人である。

ルー姉とすれ違った男は十人中九人は振り返りその腰の辺りまである黒く美しいポニーテイルが

左右に揺れ歩き去るのを見つめる事になるだろう。

で、これまた相変わらずに文武両道を誇ってるしなぁ……弱点ないのか?あの人は!! 

あ……、いや、あったな弱点。この学校の奴は知ってる奴がいないだろうけどな、あったわ。



……………………金槌なのと音痴なんだっけ。



 そんな美人で有名な姉を持つと弟はクラスメイトやら先輩やらに姉を紹介してくれ!

と頼まれる事や脅迫される事が多かったりする。……まぁ気持ちはわかるぞ?うん。

なので、俺の答えは何時もこうだ。


 「俺にも美人を紹介してくれるなら、紹介してやるぞ?」


人が折角、等価交換で紹介してやるって言ってるのにいつも返事は芳しくないんだ……。


 で、なんで俺がルー姉の容姿の良さだの文武両道だの学園の偶像だのと思い起こしてるかというと

今、全校生徒が集まる中、壇上でルー姉が生徒会長として【アルメニア王立学園】の名物である

馬上槍競技会(ジョスト)の開催の為の宣言をしている間に何故か考えてたわ。

ちなみに馬上槍試合の集団戦をメレー、一対一をジョストというんだ。


本来、馬上槍試合のメインは集団戦であるメレーなんだけど

学生の身としては危険過ぎると判断されこの大会ではジョストしか行われない。

元が貴族の為の学園なのでこういった催しがあるのかなぁ?

大会中はトトカルチョも行われてるので偉く盛り上がるんだ。



「………………………………で、あります。よって我々は正々堂々と戦う事を

アルメニア王立学園執行部生徒会長、ルーシュナ クルースの名に置いて此処に誓います!!」



 うん、考え事してたらルー姉の生徒会長による宣誓をほとんど聞き流してたな……。

俺も今年からジョストの選手になれたからいっちょやったるぜ!

訓練用の装備とはいえ危険なので、この学園名物の大会に参加出来る選手は

学園の六年生からで授業の馬術訓練や馬上槍訓練である程度以上の技量を示せた者だけが選ばれる。


で、俺も選ばれた訳だけど、ゲーム時代じゃジョストの経験なんて全く無かったからな!

はっきり言って自信無し!俺のジョスト経験値は学校で学んだ事だけだもんよ。



◆◆◆◆◆◆



 馬上槍試合用に個人で馬や装備を整えてくる金持ちもいるけれど

大半の生徒は学園で訓練用に用意された馬や装備を借りて行うんだ。

俺?俺も勿論、学園から借りる方さ。

訓練用の槍っていってもさ馬の突進力を使うから鎧とか直ぐに傷ついたり壊れたりするからね。



それにプレートメイルって完全に個人用のオーダーメイドだから

身長が伸びたら直ぐに使えなくなるしさ。

その点学園から借りるとある程度のサイズが揃ってるから無駄が省けるんだよ。



ま、お察しの通り訓練用の鎧だと先輩達の名誉のアレでボコボコになってるけどな。

そんなんだけど一応修理はされてるんで使えるぜ。

鎧はそんな感じだけど、馬は……本気で勝つつもりならやはり自分に馴れている馬の方がいいよなぁ。

とは言え、だ。お安くないしなぁ……馬は。

後、お金の問題だけじゃなくてどれだけお馬さんとの信頼関係って奴を築けるか?が一番難しい。



馬上槍試合に関しては素人の俺だけど馬との連携が一番大変だって事くらいは判るさ。

車とかバイクと違って生き物だしね……思い通りに動かそうって気分だと多分駄目だろ?

生き物なんだからビビッて竦んだり逆に興奮して抑えが効かなくなったりもするだろうしなぁ……。

ま、こればっかりは対策を立てようが無いよな?

本番で借りる馬が少しでも俺に懐いてくれるのを祈るしかないか、こりゃ。



 明日のジョストに備えて今日の試合を観客席で観戦しながら、そんな事を考えていると

本日のメイン試合が始まりそうだ。去年のジョストの優勝者であるルー姉の試合だったりする。


 「WOHOoooOOOOooooWOWOOOhOHOOOOOOOOOOOOOOo!!!」


 凄ェ歓声だ。地鳴りのような…………という形容詞が相応しいな。

まぁ美少女さんで尚且つ実力もあるってんだから当然……なのか?

え~っと相手は誰だろ?……おいおい、真紅に輝く(クリムゾン)全身騎士甲冑(プレートメイル)かよ?派手だね~随分と。


まぁ俺達は十三歳~十四歳、つまり中二真っ最中だからな!黒歴史を作りまくるのも潔しじゃね?

ん?(アーメット)から流れるロングの金髪?

アッ!あのグリフォンの紋章って王家の…………姫様じゃねぇえええぇかぁああぁああ!?






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ