入院
----入院-----
病院に通うのとは違って、病院で生活をする。
いつもとは違う日常=非日常
それを味わう人々の間で繰り広げられる出会い。
これは、そんなどこにでもあるようなお話です。
ある日、俺、平山幸一は入院した。
左足を骨折した。
原因はちょっと高いところから飛び降りたことだ。(あほ
それは、ちょうど高校1年の夏休みが始まる前日、つまり終業式のことだった。
「お~い、みんな見ろよ~」
そんなことを言って、塀の上から飛び降りる同級生の平田実。
あのころは俺もガキで……本当にガキだった、と思う。
俺も真似をしてやってみた。
しかし、着地した時に、ポキッ……嫌な音がした。
ということで、俺がけがをした時点で、その遊び(競争)は強制終了した。
全治2カ月ということだが、さて、生まれて初めての入院生活だ。
はぁ~~
ため息をついてみた。
誰もいない。
個室である。
一人で、この部屋で生活するのである。
消灯時間になったら、証明は消えるし、夕食の時間も決まっている。
そしてあまりうまくない。
本当にアホなことをした……
友人が見舞いに来てくれたけれど、
「病院でラブが実るって、安心しろよ」
「可愛い子が入院していたよ。確か二つ奥の病室だ」
という風に、励ましてくれた(面白がっているな)。
なるほど、入院生活も悪くないかもしれないな。
二つ隣の部屋は確か、平里亜由美という人の病室だったはず。
因みに隣は平本一喜という人の病室である。
「彼女できたら紹介してくれ」
そう言って、友人は帰った。
しかし2週間後、それは現実のこととなった。
「はい、あ~んして」
「おいしいよ。亜由美」
この病院の壁は少々薄いみたいだ。
少なくとも両隣には聞こえる。
しかし、そんなことはお構いなしの二人。
廊下にも聞こえているようだ。
時々ドアを開けたままそういうことをするから、通行人は一度足を止めて、声が聞こえる部屋の方を見る。
なんとも微笑ましい光景だった。
あいつらに彼女を紹介してやろう。
まさか、本当に彼女ができるとは……
隣の病室の人に。
----左右対称文庫 短編集~左右対称~ 入院 終----------
この物語はフィクションです。
実際の人物 とは関係ありません。