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異世界FIRE~平民の幼女に転生したので経済的自立を目指します!~  作者: 青月スウ
第六章 オーディション編

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104. 自衛しよう

新年初投稿!

本年もよろしくお願いいたします。


 前世の一件で私が学んだのは、自衛のためには無実を証言してくれる味方が必要だということだ。

 フローラが私にいじめられたと周囲に吹聴していても、私が平等に候補者たちをサポートしていることを証言してくれる第三者がほしい。そしてそれはヴァルツレーベン関係者ではない方がいい。


 なので私は生徒会顧問のボダルト先生を巻き込むことにした。

 まず合同練習初日からの日誌を作成し、どんなメニューの練習を行ったか、候補者たちの様子、どんな課題があるかを詳細にまとめ、デュッケ夫人にも講師目線で同じように日誌を作成してもらうことにした。(デュッケ夫人は「随分と手ぬるい方法を選んだのですね」と呆れていたが、日誌作成には協力してくれた)

 それをボダルト先生に提出した上で、フローラが練習に来ていないことを伝え、練習に参加してほしいが彼女が何か勘違いをしているようで私が何を言っても素直に受け取ってもらえない可能性があるため間に入ってくれないかと相談した。

 ボダルト先生は快諾し、先生の方からフローラに話を聞いてみると約束してくれた。


 後日、ボダルト先生がフローラと話したところ、予想通り彼女は私や他の候補者からいじめられていると涙ながらに訴えたそうだ。

 ただボダルト先生は私から事前に話を聞いていたこともあり、全てを鵜呑みにするようなことはせず、その場は彼女の言い分を聞くだけに留め、関係者全員の意見を聞くことにしたようだ。

 公平な目を持つ頼りになる先生である。


 私、デュッケ夫人、他の候補者三名にそれぞれフローラに関して話を聞いたボダルト先生は、フローラの話だけが他と食い違っており、私たちの証言に矛盾点もなかったことからフローラの思い違いだろうと結論を出した。

 私や候補者たちにフローラに対する敵意はみられない、自分も同席するから練習に出てみてはどうかと、先生から再びフローラに声を掛けたようなのだが、彼女は頑なに頷こうとしなかったらしい。


 先生と相談した結果、フローラに練習参加の意思がない為、代わりの候補者を立てるように東の寮に連絡を入れることにした。

 しかし東の寮から返ってきたのは、「東の寮代表はフローラ・ポシュナーから変更はしない」という返答だった。


「どうしましょう。選定式は一曲を皆で歌うため、練習に参加せずに本番のみの参加なんて無理です。特にフローラ様は四季の宴を歌ったことがないと仰っていましたし」


「そうですわねぇ……」


 私の言葉にボダルト先生も困り顔だ。

 眉を寄せ厳しい顔をしたデュッケ夫人が口を開く。


「万が一に備えて三名用に編成を変えたものも準備しておきましょう。ボダルト先生、教会側に今期の選定式の候補者は三名になる可能性がある事を連絡して頂けますか。本人に練習に参加する意思がないのではどうしようもございません」


「かしこまりました。東寮の方にも、フローラ様が練習に参加されないようでは彼女以外の三名での選定式になる事を改めて通達しておきます。しかし、引き続きフローラ様の説得は続けましょう。四季の宴はやはり四名で歌うことが望ましいですから。ただリリアンナ様、あの方はどうにも貴女様に対して穿った見方が強いようです。フローラ様にお声掛けをする時は、中立の第三者の方と一緒に、人目のある場所でされるのがよろしいかと思います」


 頼りになる教師たちのおかげで今後の方針が決まり、フローラが担当予定だった春パートはクラウディアに変更、クラウディアが担当だった冬パートは全員で歌い、最後の合唱部分も三人用に変更されるになった。

 ボダルト先生のアドバイス通りちゃんと人目のある場所でフローラに声を掛けるつもりだが、私の説得に彼女が応じてくれるとはあまり思っていない。

 説得というよりは、こちらはちゃんと歩み寄ろうとしているという周囲に対するポーズである。

 はぁ、気が重い……。


「フローラ様、ご体調はその後いかがですか?」


「はぁ、またですか? 何度も言ってるじゃないですか。私はもう行きません!」


 授業終わり、他の生徒も多くいる教室で、フローラに声を掛けると、彼女はもはや嫌そうな顔を隠しもせずにそう吐き捨てた。


「そうは言っても、練習をしなければフローラ様が恥をかいてしまいます。まずは見学だけでも、レッスンに顔を出してみませんか?」


「だからっ……!」


 噛みつくように声を上げたフローラは、私の隣にいるゴットヘルフを見て口をつぐんだ。

 騎士団長の息子である彼には中立の第三者として同行してもらっていたのである。(メラニーとの合同鍛練を餌にしたら見事に釣れた。メラニーありがとう)

 私たちの様子になんだなんだと周囲の注目も集まっている。

 フローラはパッと表情を変え、庇護欲をそそる悲しそうな顔で目に涙を貯めながら口を開いた。


「皆にいじわるされるから辛いんです。わ、私なにもしてないのに……」


「ボダルト先生からもお話があったかと思いますが、それは誤解です。候補者の皆様もわたくしも、フローラ様を嫌ってなんていません。皆フローラ様が練習に参加されるのを待っていますよ」


「そうやって言い包めてみんなで笑い者にするつもりなんでしょう! 私が元平民だからって、馬鹿にして! ひどいわっ!」


 そう言ってフローラは泣きながら教室を出て行ってしまった。

 やっぱり駄目だったか……。


「なんなんだあの者は? 全く会話が噛み合っていなかったぞ。平民の話はどこから出てきたのだ。リリアンナ嬢がいじめなどする訳もなし、少々被害妄想が酷すぎるのではないか?」


 フローラの背を呆然と見送ったゴットヘルフが呆れたようにそう言った。

 勘違い王子のゆかいな仲間である君がそれを言うか、と思ったが、一応私の無実は信じてくれているようなので、「何か行き違いがあるみたいなのです」と言うだけに留めておいた。


「あ、あのリリアンナ様……」


 おずおずと声を掛けてきたのはウルリーケだ。


「お久しぶりです、ウルリーケ様。フローラ様と同じ授業を取られていたのですね。お騒がせして申し訳ございません」


「い、いえ、わたくしは大丈夫です。それよりも、リリアンナ様です。最近ポシュナー男爵令嬢が、リリアンナ様にいじめられていると周囲に漏らしていて、リリアンナ様がそんなことをされるはずがありませんのに、そのことを面白おかしく吹聴される方もいらっしゃるようで心配していたのです……」


 やはりフローラはどうしても私を悪役にしたいらしい。


「そういった噂をされている方を見かけたらわたくしやエメリヒ様で訂正するようにはしているのですが、お役に立てているかどうか……。リリアンナ様は大丈夫ですか……?」


「ウルリーケ様……。ありがとうございます。エメリヒ様にもお礼を伝えて頂けますか。少しすれ違いがあって、フローラ様が頑なになってしまっているようなのです……」


「リリアンナ様! 記者クラブの方でも貴女がいじめをしているなどという事実無根の噂をしている不届き者を見つけましたら、訂正しておきます!」


 ウルリーケと話していると、記者クラブのダミアンも現れた。


「ダミアン様まで。ありがとうございます」


「リリアンナ様がポシュナー男爵令嬢に歩み寄ろうと、辺境伯令嬢自ら彼女の元に何度も足を運んでいらっしゃるところを見ている者も多いですから。いざという時には証人としてどこででも証言させていただきますので、必要な時はお声掛けくださいね」


 私の行動の意図を察して証言まで買って出てくれるなんて、できる男である。

 学園に入学したばかりの頃と違って、今はこうして私の味方になってくれる生徒もいることがありがたい。フローラへの対応は頭が痛いが、何とかなりそうな気がしてきた。

 心配してくれた二人にお礼を言って、ゴットヘルフと共に教室を後にした。


「ゴットヘルフ様もお付き合いいただきありがとうございました」


「いや、そもそも神の乙女選定式の運営は生徒会の仕事だからな。リリアンナ嬢に礼を言われることではない。それにしても、寮の代表ともあろう者があんな態度とは、東の寮の者たちは自分の寮の代表があれでいいと納得しているのか?」


「それが……東の寮には候補者を立て直してもらうように連絡したたのですけれど、フローラ様でいくの一点張りで。どういうつもりなのか、本当によくわからないのです」


「なんだそれは。言うだけ言って野放しとは、職務怠慢ではないか。ポシュナー男爵令嬢に任せると決めたならば、引き摺ってでも練習に参加させるべきだろう!」


 憤慨しているゴットヘルフと連れ立って廊下を歩いていると、「リリアンナ嬢」と後ろから声を掛けられた。

 振り向いた先にいたのは、にっこりと爽やかな笑みを浮かべている意外な人物だった。


「リュディガー様……?」


「リュディガーじゃないか。久しいな。色々あったと聞いたが、大丈夫なのか?」


「なんだか大変そうだね。君に対する心無い噂も耳にしたよ。もちろん、私は君がそんなことをする人ではないと信じている。王子の側近からは外れたけれど、生徒会にはまだ籍があるから、私に力になれることがあれば、いつでも相談してほしい」


 リュディガーはゴットヘルフには目もくれず、にこやかに私だけを見ている。

 え、この人こんな感じだったっけ……?

 リュディガーのあまりの豹変ぶりに呆然としていると、彼は私の右手を持ち上げて両手で包み込んだ。


「私は君の味方だ。覚えておいてね」


 蠱惑的な笑みを浮かべリュディガーはそう言うと、背を向けて去っていった。


「……なんだ、あいつ? あんなすかした奴だったか?」


「付き合いの長いゴットヘルフ様がわからないのに、私にわかるわけありませんよ」


 まるで別人のようだったリュディガーの様子に、ゴットヘルフと二人で首を傾げ合った。

 生活環境が激変したことで、人格まで変わってしまったのだろうか……。


 そして数日後、入学して何度目かの学園の夜会にて事件は起こったのである。

 



次回、第105話「どこかで聞いたことある台詞だ その2」お楽しみに~!

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