【後日譚②】リードとコーデリア
――――ドンサ村の原っぱに勇ましい聖女が待っていた。
「素材集めか?コーデリア」
「ああ。ドンサ村の木の実やら草やら、使えるものはたくさんある。お前こそ……どうしてここに?」
「……その、な。あそこの丘に行かないか?」
「うん?いいぞ」
そこはドンサ村の中でも飛びっきり眺めのいいビュースポットだ。
ドンサ村や森、作物を育てる畑などが一望できる。
「俺たち、ずっとここで生まれ育って来たんだよな」
「……そうだな。今でもたまに帰ってくると落ち着く場所だ」
今はルフツワで商売してるけど、やはり故郷だから。
「あのさ……コーデリア」
「どうした?」
「……これ、いるか?」
差し出したのはビーズの指輪だ。金属の指輪を作ろうと言うのなら商売で頑張れば何とか……だが、この聖女はありきたりな既製品をあげたところで喜ぶとは思えない。
「……前に欲しそうに、してたろ」
「けど、それはジェーンさんのために」
「ああ。ちゃんとロイドの遺志を届けた。だからこれは俺……リードとしての意思だ」
「……」
「それとも俺じゃお前には相応しくないかな」
「バカなことを言うな」
コーデリアの指が指輪をそっと受け取る。
「私は、ドル活とか言いながらマダムの追っかけしてるお前も別に嫌いじゃない」
「……そうなの?」
「お前だって私の趣味も私のこの性格も認めてくれてるし応援してくれる」
「それはもちろんじゃないか」
「だからだよ。今ならリリアナさんがジェイドおじさんを選んだ理由も分かる気がする。私は……かつての2人のように不定期離縁と復縁はしない。最初から最後までずっとお前のしっぽを掴んでおく」
「それは頼もしすぎるな。あの2人も今は何とかずっと結婚してるし、俺たちと同じようにずっとずっと一緒に」
「もちろんだ」
「だけど最後にひとつ。俺は魔族との混血だ。恐らくこれから成長が緩やかになる」
魔族は青年期が長い。人間の特徴が強く出ても、遺伝子上は影響を受ける。ユルヤナさんもそうだったから。
「俺は……コーデリアよりも時間がどんどん遅れていくんだ」
「それがどうした?それでも、私は魔族の連中と関わるのも好きだし、だからこそ一日一秒を大切にするんだろう?」
寿命が違うからこそ、何よりも大切なことをコーデリアもちゃんと分かっている。
「それに私は150まで生きるつもりだからお前をひとりにする時間は短くなる」
「いや……本当にやりそうで恐いんだけど」
一応普通の人間なはずなんだけどな?
「じゃぁ、改めて。コーデリア」
指輪を握るコーデリアの手を取る。
「俺と結婚してくれないか」
「ああ」
逞しく頷く聖女の姿にこの先の寿命の不安なんて飛び去ってしまうかのように清々しい。コーデリアから指輪を受け取り、その左の薬指に嵌める。
優しい風が吹き抜ける。ドンサ村にも新しい春が来る。




