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【82】在りし日のリード少年



――――いいか?季節戦線は重要だ。残念ながらガーバルフで毎年盛り上がるハロウィンは過ぎてしまったが、この世界ではこれから冬の祭典が来る。地球で言うクリスマス。

こちらで言えばマキナ生誕祭。ガーバルフやサンツ・ワロク、グドトッホだけではなく魔王国でも行われる。但し祝われるのはマキナじゃない。魔神生誕祭。


「だけどさ、マキナと魔神の誕生日って一緒なの?」

「多分違うと思うけど、大巫女さまは人間の国の女神生誕祭を知っているからね。魔神さまが生誕祭ないのはかわいそうって提案したら魔神さまからオッケー出たんだって」

さすがは兄ちゃん、詳しいな。


「でもいいのかよ、そこは」

「楽しむことが何より大切だからな」

「それは言えてる」

そのお陰で全世界の商売も盛り上がるのだ。


「そんなわけでもうすぐウィンターマーケットだ!商売人にとってはマキナの生誕祭なんて二の次!」

「ひどいじゃない!ちゃんと祝いなさいよ!」

だからなんで突然出てくんだよ。魔女さんたちにもマキナを紹介して……と。


「祝ってるのなんて神殿関係者くらいだろ。庶民は1ヶ月に渡るウィンターマーケットを楽しみ生誕祭当日は家族でごちそう囲んでまったり過ごすのが定説!」

何か前世のクリスマスと似たような似てないような。


「コーデリアとアンナちゃんはお誕生日プレゼントくれるって言ったもん……っ」

「良かったじゃねえか。ちゃんと心からのプレゼントくれる聖女を選んで」

「ふぇっぐ。儀礼的なことで済ませて自分たちだけごちそう囲う神殿関係者なんかとは雲泥の差よ!」

そこは女神としてもうちょっと教育した方がいいと思うぞ。


「だから……雑貨だ!」

「うん?」

「ウィンターマーケットと言えばウィンター雑貨もあるだろ?だからこういう風に」

フェルトと虹殻ラメを合成した雪の結晶オーナメントを取り出す。


「100均グッズも売り時だ」

高いガラスオーナメントも素敵だが、全部が全部とはできないから。100均でパーティーグッズやオーナメントも売るのだ。


「例えばマギドールを模した小さな人形とか、ここならではの名物をモチーフにした雑貨……ベーグルのキーチャームなんて絶対人気出ますよ」

ガーバルフでもバーガーチャームは人気商品だ。


「それは良い考えですが……魔女と言う立場もある」

「まずはルグーベや……ガーバルフから始めましょう」

ガーバルフなら魔王国の魔女オーナメントなんてめちゃくちゃ人気が出そうだ。


「もし観光客や商人に注目されるようになればいずれは魔王都でも。もちろん商業ギルドがついてますんで。ね、ランベルトさん」

「ああ。もちろん。商売の邪魔をするやつは用心棒たちが叩き出す」

多分冒険者ギルド以上に敵に回しちゃならないのが商業ギルドである。


「それにこれは……多分、ご先祖からの願いだ」

「それは……」

オードリーたちが驚いてランベルトさんを見る。


「魔女たちが堂々と暮らせるように。今も隠れ里として堂々と暮らしているが……ガーバルフのように魔女たちが自然に街を歩ける国になって欲しい」

「まあ、魔王さまもそう言うつもりだと思う」

兄ちゃんまで。


「ゆくゆくは本物のベーグルも勧めたいのだが……季節限定で魔王都に卸してみるのはどうだろうか?トルティーヤ屋台にこっそりと混ぜよう」

「あらあらそれは」

「トルティーヤに混ぜるなら誰も文句は言えないわね」

魔女さんたちがクスクスと苦笑する。やっぱり魔王国にとってトルティーヤはソウルフードなんだろうな。スペイン風なのかメキシコ風なのか……どっちなんだろ。


魔女さんたちとの商談を終え、滞在地に戻ればブレイクとコーデリアが歓喜の悲鳴を上げる。


「リードがちっちゃくなった!?」

「かわいい!」

いや、俺はずっと隣にいるんだけど。2人が真っ先にちびリードきゅん……くまちゃんを抱っこしたウェイドに抱き付いた。


「GIさんだよ。そうだ……名前を付けたんだよ。ウェイド」

『はい、GIさん改めウェイドです』

「おにーたんのちびリードきゅんがぁっ!」

「文句言うな兄ちゃん」

後ろから俺本体をぎゅむーしておいて。


「それとウェイドの身体な。隠れ里の魔女たちの技術のマギドールを使わせてもらってるんだ」

『ええ、あとくまちゃんもちゃんと動きます』

ウェイドがくまちゃんを下に下ろせばとたとたと歩く。


「ふーわー」

ふわわとかわいくじゃれあっている姿に、ブレイクと兄ちゃんが崩れ落ちた。


『萌ええええぇっ』

はあ、全くコイツらは。


「……しかし、うーん。服がぶかぶかすぎないか?」

「そうなんだ、そうだった。コーデリア。できれば……なんだけど、服を作ってくれないか?」

「……デザインは?」

「んー、どうしようかな。ウェイドは希望ある?」


『ふむ……聖女コーデリアの趣味に興味がありますので、お任せはどうでしょう』

「よし、乗った」

『夕飯何にする?』『何でもいい』は困るが、コーデリアのお任せコーデは本人も大賛成らしい。


俺たちはルグーベの素材集めや現地のギルドの手伝い、オーナメント試作品の発表や販路の会議、雪が降り積もって雪かきのお手伝いなんかをしつつ、コーデリアがイチオシを作ってくれた。因みにそれまでは既製品を着てもらっていたのだが。


「どうだ!私の最高傑作だ」

『ふむ、なかなかよいものですね』

ウェイドは……ふりふり重視のハーパンタイツショタっ子コスに身を包んでいた。


「子どものリードはこう言う服も似合うと思っていた」

良かった、当時着せられなくて。しかし裁縫技術は見事なもので、会議で来ていた魔女さんたちにもすかさず人気を博していた。因みにマギドールのコスも見せてもらっているようでコーデリアも楽しそうだ。


やっぱりうちの聖女はどこに行っても人気者だなあ。





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