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【80】魔女の隠れ里



――――ヤーティルート魔王国北部の都市ルグーベ。名物は何となく分かるだろう!そう……ベーグルだ!


「もっちもち~~」

「ん、旨い!」

あっちでミーナさんやコーデリアたち女性陣が夢中である。


「ここに旅団として来ると人気なんだ」

とランベルトさん。


「そろそろ魔王都進出しては?」

とルークさんももひもひしてる。


「いやしかし……魔女の隠れ里から卸しているからな。魔女たちが納得するかどうか……」

「まさかの魔女さんたちお手製!?」

「魔王都での販売は商業ギルドが担うとしてもな……ユリアンが素直に来れば何とかなろうが」

「あ。餌ならあります。アダマンタイナ姐さんに預けてあるので」

「君が旅団にいてくれて本当に助かる」

まあ兄ちゃん対策としても有効だからな。


「それにGI殿の身体だったか……もしかしたらヒントを得られるやもしれん」

「おおっ!じゃぁGIくまちゃんも一緒ですね」

「それくらいなら許可してくれるだろうが、特殊な場所だ。領主子息の俺とリードとGIくまちゃんと……ユリアンを呼べば何とか交渉の席に着いてくれるだろう」


「4人だけですか?」

「領主一族なら隠れ里の土地を好きにしていいと言う条件を出しているから話はできるが……なかなか交渉や隠れ里への出入りは難しい」


「兄ちゃんがいれば入れると?」

「魔女の隠れ里は男子禁制、魔女以外はなかなか入れん」

「俺たちみんな男ですが」

GIさんも多分……男だろうな?


「だがユリアンは男の魔女だ。男の魔女がいるのなら男子禁制でも入れる」

だって魔女だから。

ランベルトさんは領主一族として兄ちゃんの付き添いならってことか。


「でも俺は?」

魔女ではない。


「ユリアンを好きに動かせる唯一の存在」

まあ確かに。


「さらにはリリアナ殿の息子だ」

母ちゃんの名と言うのは本当にどこの魔女にでも受け入れられているんだな。

それは俺の知らなかった功績だ。

けれど親父の功績の重圧と違うのは……やっぱり聖剣に蛇蝎のごとく憤怒されて呪いかけられたからかねえ。いや、それでいいんだけど。


さてと、そんなこんなでルグーベの滞在拠点でのあれこれはユルヤナさんたちに任せ、俺はランベルトさんとGIくまちゃんと共に魔女の隠れ里を訪れた。


「ここ、ルグーベの領土の2/3は魔女の隠れ里と呼ばれる領土内の特別保護自治区なんだ」

「2/3って隠れてなくないですか?」

「確かにな。でも昔は隠れていた。ここ北方の僻地ルグーベなら隠れ住めると当時の領主が考えたんだ」


「へえ……ランベルトさんのご先祖ってすごいひとだったんだな」

ニュアンス的には魔女がまだ隠れなくてはならなかった時代なんだろう。


「ああ。だからこそ辺鄙なルグーベも廃れずに住んでいる」

「辺鄙なって……魔の山とも魔王都とも街道で繋がってるじゃん」

「今はな。昔は街道も整備されてなかった。敢えてだ」

「魔女たちのためにってことですね」

「ああ。魔女リリアナと、リリアナたちのために戦った勇者ロイド・ノームのために」

俺の知らない話だ。ロイドが死んだ後、ガーバルフでは時の聖女や魔女たちが堂々と魔女として生きられる国にした。

魔王国では情勢が違ったからこそランベルトさんのご先祖が隠したのだ。


「でも今は……」

「ガーバルフの魔女たちのお陰だろう。グドトッホやサンツ・ワロクに比べて、魔王国はガーバルフとの国交も大事にしてきたから」

ガーバルフで胸を張って歩ける魔女たちを排斥するはずがない。だから少しずつ、魔女たちも日の目を見られるようになった。


「それに……ロイド・ノームの奥方が」

「ジェーンだったから」

色んなところでロイドが紡いだ功績が奇跡を繋いでいる。ロイドの功績、ジェーンの存在、ガーバルフの魔女たち。


「多分魔女たちはお前がロイド・ノームの末裔であることも喜んでくれそうだ」

「それは俺も誇らしいよ」

そうして、遂に魔女の隠れ里の入り口へとたどり着いた。


「ようこそ、ルグーベのご令息」

出迎えたのは物々しい雰囲気の年配の魔女や熟練を思わせる魔女たち。みな地球で言うザ・魔女の格好だ。


ガーバルフの魔女たちはその点自由すぎるほど自由である。時にはサンバストライキ、時には町娘、時にはバトルバレースーツである。

まあどっちもいいと思うけどね。何故なら……。


「あなたは美しい」

もちろん魔族だから実年齢は違うだろうが、溢れ出す熟女みの嵐!素晴らしすぎる!俺は自然な所作で年配の魔女の手を優しく包み込み跪いていた。


「やだ……っ、もう私、魔族の中ではおばあちゃんなのに」

『長がデレた――――っ!?』

魔女たちが大合唱した。


「……相変わらずと言うか何と言うか」

『ブレませんよね』

だがこれが俺なんだ!ランベルトさん、GIさん!


「その様子ではあなたがリリアナの子と言うことね。さらにはロイド・ノームの末裔とはね。会えて嬉しいわ」

年配の魔女が微笑む。ああっ、これは老舗のバーとかで出会ったら一瞬で魅了されちゃうやつううぅっ!


「言動はあのプレイボーイそっくりだけど」

「親父はマダムに関しては真剣です」

これだけは言える。俺も親父のそう言うところは尊敬しているんだ。剣の部分はともかく。


「そうだった。あのひとも……」

「あの、長」

お付きの魔女さんに諭され魔女長がハッとする。そんなところも……萌えるぜ。


「リード、話が進まんからそろそろユリアンを召喚してくれ」

「あ、そうでした」

その話に魔女たちがそわそわし出す。


「リリアナさまの長男!」

「直弟子なんでしょう?楽しみだわ」

「何より若い男の魔女なんて幾らぶりかしら!?」

男なのに魔女と言う名称がどうかと言う理論もあるが、勇者の勇だってマの下が男だ。気にすること勿れ。


「まあ男の魔女はツナードにならたくさん……」

「ルグーベの子息殿」

「それはなりません」

途端に魔女たちの空気が重々しくなる。


「……すまない。彼女たちは立派な女性だったな」

「分かればよろしいのです」

話、纏まったかな?


「じゃぁアダマンタイナ姐さん、お願いします」

『はぁーい!』

相変わらずかわいくていい声だ!うん!


そしてコンマ0.01秒。


空間が裂けお目当ての魔女が現れた。


「リードきゅうううぅんっ!!!」


『捕まえた』

俺に抱き付こうとした兄ちゃんは見事に魔女たちに捕まったのであった。








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