【78】GIさんの記憶
完結まで更新予定です。
――――魔の山からさらに魔王国を進む俺たちは魔王都の前に魔王国の北部ルグーベに向かっている。
「もうすぐ冬だし……冬物を作るのもいいなあ。 GIさん」
休憩の荷馬車の上で暫しうとうととしながらある意味相棒でもある相手に語りかける。
【そうですね……ところで自分のレベルが100突破したことに気が付いてます?】
「え……?いつの間にぃっ!」
自分のステータス確認をマジでGIさんにゆだねっぱなしであった。
「わあ……すげえ。いつの間に」
――――
リード・ノーム
レベル:100
MP:50000
――――
100を突破したからMPまでボーナスで増えてやがる。
「何でだ?」
【聖剣を握って無茶したからでは?】
「……あり得る」
一般的なレベル限界は99。99を越えるためにはそれなりの成長だの刺激だのが必要だ。魔族はレベル100以上が多いし、兄ちゃんも1000を越えているはず。魔族でも999を越えるのは相当な実力がなければ不可能だが、それでも魔族はその過程を乗り越えるスペックに優れている。
「……人間じゃあなかなかできないぞ」
そりゃあ俺は魔族の血を引いているから普通よりかは限界を突破できる可能性もある。
【勇者ならば可能かと】
「ブレイクとかな」
【あなたは?】
「俺のスキルは雑魚だぞ」
【そうでした】
「でもスキル100均はチートすぎんなあ……ええっと、レベル100突破でボーナススキルが追加されてる」
――――
自動生産
任意で設定したアイテムと個数を自動生産。一度に設定可能なのはMP上限まで。
自動納品
マジックボックスを拡張、自動で納品ボックスを作成。
あらかじめ設定すれば訪れたことのある商業ギルドなどの転送装置に自動で転移納品される。
――――
チートすぎんだろ、これぇっ!
「しかしこれがあればルフツワや魔の山にも商品を気軽に卸せる。場所はブレイクが行ったことがあればゲートで繋いでもらえばいいんだもんな」
【商業ギルドの転送装置を使うのならば、旅団長に許可を取る必要があるのでは?】
「それもそうか。それは後程ランベルトさんに相談するとして……」
【納品ボックスの整理やら設定やらはやりますよ】
「助かるよー。GIさん神か」
【私自身は神ではありませんよ。それに……私はかなりやらかしている女神の目の上のたんこぶです】
「そういや前にもそんな話を……何があったんだ?」
【……リード、あなたはロイド・ノームが死んだ後の事をどれだけ知っていますか?】
「……俺が知ってるのは、当時聖女だったロイドの妹がドンサ村に戻って所帯を持ったこと、ロイドの聖剣がドンサ村の側の森に安置されたこと」
前に父さんに家系図を見せてもらった。それから聖剣のことはドンサ村の子どもたちならみな大人に習う。今はその聖剣は勇者ブレイクが手にしたっつーのも習うだろうな。
【ではロイド・ノームの骸は?疑問に思ったことはないのですか?あなたもロイド・ノームの最期は知っているのでは?】
「……」
【ドンサ村のロイドの墓の下には確かにロイドの骸が眠っています】
「……どうやって還ったんだ」
ひとりで帰れるような状況でもない。
「ロイドはまさに戦場の中心にいたはずだ」
自らが囮になり膨大な敵を塞き止めていた。そして逃げ延びるであろう時間を稼いだはずだ。そうして、最期は……。
【戦場で命を落とし、戦争の道具に利用される前にロイドの骸は消えました。……自ら】
「自らって……まさか」
【私が、ロイドの意識を乗っ取りその身体をジェーンさまやリリアナさまたちの元へと運びました】
「……」
だからこそ、ロイドの骸は故郷に還ることができたのだ。
「GIさんだったのか」
【ええ。GI最大の禁忌を破った私は異端分子となりました。結果的に世界は救われましたから、抹消されることはありませんでしたが】
「……どうして」
俺はGIさんを知らなかった。
【私もあなたのことを全部は知ることはできなかった。我が主は過保護であると】
「……そのようだ」
秋の風が冷たい。
そろそろ出発の時間のようだ。買い出しに行っていたブレイクやコーデリアたちが戻ってくる。
本日の昼飯は魔王国限定ハッシンュドボテトバーガーだ。




