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【76】魔の山の大巫女



――――ここは魔の山の魔神神殿。


とてもいい感じのテラスである。


「これが100均マグカップ、木製ステンレス製にあとプラ・スティック。他にもキッチン便利雑貨とか、あと裁縫系もあるんだ」

「すごいわ!魔の山でも100均の噂は届いているのだけど、私はなかなか足を運べないから」

そう微笑むのは人間で言えば初老か。しかし魔族であるならば数百年は下らない時を生きている。白髪に黒い魔族角、藤色の瞳の柔和な女性だ。


「ならこれからは俺が配達しようか、ジェーン。魔の山の商業ギルド宛に転送すれば、近くにいなくても多分ここにも届けてくれるんじゃないか?」

「魔神神殿にも商業ギルドの配達サービスがあるから、他の納品の時に合わせればついでに届けてくれるわ」

「それはいい。これからもじゃんじゃん開発するぞー」

「楽しみだわ」

スキル100均の話を楽しそうに聞いてくれるジェーン。


「やはりジェーンは何歳にになってもかわいらしい」

「やだもう……っ。私はもうおばあちゃんで……魔族の中でもひいおばあちゃんなのよ?」

「関係ねえよ、ジェーン。俺はジェーンにも便利な100均グッズをたくさん使ってもらいたいんだ」

「まぁ……」


「それにさ、魔王国のビーズ草を使って作ったんだ、これ」

俺が取り出したのはあの時作ったビーズの指輪。

「……ダメよ、リードくん。私はもう歳だし」

「年齢なんて関係ないだろ?ジェーン」

ジェーンの手をとりその指輪を薬指に嵌めようとしていた時だった。


「大巫女さまに何しとんじゃあぁぁ―――― !!」

いきなりの怒号に振り向けば、そこには半裸の魔族とブレイクたちがいた。


「まあ、ジャン?いきなり大声でどうしたの?」

「ああ、魔の山にいるっつー四天王か!」


「その通りだが……ちょっと待てそこの怪我人!貴様がリードだな」

「そうだけど後ろ気を付けた方がいいよ」

何故なら今ジャンの後ろで兄ちゃんが魔法を構えてる。


「リードきゅんに『貴様』?何様?殺す殺す殺す……っ」

相変わらず物騒すぎる!


「ユリアン、ステイ」

「ひぃっ」

あ、でもユルヤナさんの言葉でおとなしくなった。


「まあ……気を取り直してだな」

さすがは魔王四天王。兄ちゃんに慣れているのか、四天王に必要な資質なのか。


「いくら勇者ブレイクの幼馴染みだからと大巫女さまの指に薬指に指輪などと……!大巫女さまはな夫君を亡くしてかれこれ何百年……再婚もせずに貞操を守って来られたのだぞ!」

ジャンが叫ぶ。


「何だ、再婚くらいで怒ったりしねえのに」

何百年も貞操を守ってきたなんて。

「それでも私には夫だけだったし、ずっと夫と夫婦である証を大切にしたかったの」

「……ジェーン」

ジェーンは愛おしそうに俺に微笑むとジャンに向き合う。


「だからいいのよ、ジャン」

「いやその……いまいち状況が飲み込めないのですが」

「ふふっ、長く生きていると色々あると言うだけよ。ね、リードくん」

「……そう言うことだな」

俺は……ジェーンをこの世界にひとり残してしまったが、彼女がここで多くの魔族たちに囲まれ慕われていることが救いだと思ったんだ。


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