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【72】魔の山のダンジョン



――――魔の山には聖なる魔の山の他にもダンジョンが多く、ダンジョン都市に近い雰囲気だが交易路もあるためそのふたつが入り交じっているイメージだ。


「魔の山にも登るんですか?」

「配達などの用があれば登るかもですが、あそこは元来巡礼地ですので」

とユルヤナさん。


「何だ、行きたいのか?」

とルークさん。

「素材を見に行くこともできるが……許可が必要だろうな。あそこには魔神の神殿もあるし神官の中でも大巫女さまもいる」

「……大巫女?」

「魔神さまの声を直接聞けると言う特別な加護を得られたお方だよ」

「ふうん……魔神のね」

まさかとは思うが、それは……。


「でも参拝なら……お前は半分魔族だからいけると思うが、一応祀ってるのは魔神さまだからってのもあるから」

「なら挨拶しておこうかな」

「何て?」

「マキナが迷惑かけてませんかってな」

「ぶっ」

ルークさんが吹き出す。


「何か立場が逆転してないか?」

「だって手のかかる女神なんだもん」

俺たち人間たちの女神さまはな。


「ま、ランベルトさんにも一度聞いてみるよ」

「ありがとう、ルークさん」

2人で話していれば、ちょうどランベルトさんがやって来た。


「すまん、キャリテ班。お前たちにダンジョンへの配達を頼みたいんだ。場合によってはコーデリアの聖女の力も必要になる」

「ランディ、それは一体……」

ユルヤナさんの表情が引き締まる。


「急ぎ回復アイテムや素材をセーフティーエリアに届けてほしいとのことだ。緊急案件のようで情報も錯綜しているが、助けが必要なことだけは確かだ」

「分かりました。物資の方は?」

「他の奴らが準備を整えている。ルークもいるが、念のため冒険者の魔族連中も同行する」

「分かりました。コーデリアさんとブレイクくんも大丈夫ですか?」


「もちろんです、ユルヤナさん」

「聖女の力が必要なら、もちろん」

2人も真剣な表情で頷く。


「ふわわはミーナたちに」

「ふ~~わ~~」

ルークさんがミーナさんにふわわを預けてくれる。


「リード、お前は戦闘要員じゃない。ここで待っていてもいい」

「……それは」


「リードも来て欲しい」

「……ブレイク」

意外なことにブレイク自らそう告げたのだ。


「もしもの時のためだ。リード。俺も行くけど、ルークさんたちがついているけど……コーデリアは戦えない」

勇者並みに勇ましいとはいえ、専門は支援なのだ。


「……分かった」

「……」

俺が頷けば、ルークさんが俺をじっと見る。


「……もしかして、兄ちゃんから何か聞いてます?」

普通なら非戦闘員の俺には『来るな』と言ってもおかしくないのに。


「アイツは何も言ってなかったよ」

「……そう、ですか」

「だが行くなら、お前も武器を取れ」

「……それは」

ルークさんが差し出してきたのはダガー。小回りが効くので動かしやすくはある。


「気乗りはしませんが、お借りします」

俺はルークさんからダガーを受け取った。


※※※


――――魔の山のダンジョン

俺とコーデリアが物資の入ったマジックバッグを持ち、冒険者やルークさんたちとダンジョンの階層を下る。ブレイクも聖剣をいつでも抜ける状態だし、今回はユルヤナさんも槍を装備している。重々しい空気の中、湧き出る魔物たちをブレイクたちが討伐しながら進んでいく。


「回復は大丈夫ですか?」

「まだ大丈夫だ、コーデリア。セーフティーエリアの連中の方がヤバいかもしれないし、魔族は丈夫だから」

とルークさん。確かにみんなタフである。


「あの、みなさんはよくこのダンジョンに?」

魔族の冒険者たちに話し掛ければそうだと頷いてくれる。


「普段は魔の山で冒険者をしてるからな」

「しかしここは人間の土地よりも魔物たちが強い。実力差を見誤れば大変なことになるぞ」

「勇者はなかなかの腕前のようだが」

魔の山のスパルタ冒険のお陰だろうか。


「……ブレイクは、そうですね。アイツなりに鍛えてるってのもあります。けど……」

「どうした?」

「ここの魔物のレベルはいつもと変わりませんか?」


「ああ、ここはまだ浅いからな」

「下はもっと強いが、セーフティーエリアまでは問題なく行けるはずだ」


「……リンピダスはどのくらいの階層にでますか?」

「……何だ?」

あれ……通じない?


「リード、今のは何だ?」

ルークさんまで首を傾げている。まさか名前が変わった……?


「みなさん、まずいですよ!」

その時ユルヤナさんの声が響く。


「モンスターハウスだ!どうしてこんなところに!」

冒険者たちが一斉に臨戦態勢になる。


「コーデリアは後ろに!」

念のためダガーを構える。

モンスターハウスに湧き出る魔物たちを総出で狩っていく。


おかしい……。俺は妙なことに気が付く。この魔物たち、急激にレベルが上がっている。


【まるで別の階層の魔物たちのようだ】

GIさん。そうだね……そのようだが。どうして彼らが登ってきた。


「ぐっ」

その時ブレイクが攻撃を受け崩れ去る。


「腕をっ」

慌てて治療しようとするコーデリアを下がらせる。


「リード!?」

違う。ブレイクを攻撃した方向には何もない。


「リンピダス!やっぱりいるじゃねえか!」


「それは何なんだ?リード!」

見えないところから攻撃を受けブレイクが聖剣を落としてしまう。


「そこを動くな!」

コーデリアにダガーを預けると、まるで交代するかのようにブレイクの身体をコーデリアの方へ突き飛ばす。


「リード!?」

ブレイクが叫ぶ。俺は咄嗟に聖剣を取った。



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