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【71】再びの魔王国

8/18まで第3部魔の山編を更新予定です。



――――ルーロンダンジョン都市を抜けた俺たちは再びヤーティルート魔王国に入国した。季節は秋へ。何となく肌寒く感じる時期である。


因みにルーロンダンジョン都市から魔王国に入るためには魔の山を経由する。


「あれ、でも魔の山の方向だろ?ならスパルタコースなんじゃぁ……」

ふとそんなことを思った。


「またあの時のスパルタ……くまちゃん……スパルタ……くまちゃんんんっ」

「いけない!ブレイクが発作を起こした!?ユルヤナさあぁぁんっ!!」

一緒に荷馬車に乗っていたユルヤナさんに泣き付く。コーデリアも魔の山が近くてふわわをふわふわなでながら精神統一中~~っ!


「大丈夫ですよ~~。スパルタコースは道なき道ですが街道は安全ですので」

「いや、お前らスパルタコース行ったの?冒険者でもよほどの手練れじゃなきゃ行けないところだぞ?」

荷馬車の脇を馬で進むルークさんが告げてくる。


「ブレイクとコーデリアは昔行ったそうです」

「しかも魔の山では魔王四天王にめっちゃ怒られた」


「あそこの魔王四天王って……ジャンさんか?めっちゃ恐かったろ、あのひと怒ると恐いけど……ユリアンよりは話通じんだろ?」

『あ……っ』

ブレイクとコーデリアが一気に元気を取り戻す。

兄ちゃんったらたまには役立つんだから。弟として誇らしい限りだ。


「まあダンジョンもたくさんあるしさ、楽しめるぞ」

とルークさん。

「あー……人間の土地じゃ見かけない魔物もいるからな。レアなアンデッドとか」

あとは不可視みたいなのとか。

「詳しいな、リード」

「昔冒険書で読んだんで」

「ま、ジェイドさんなら集めてそうだからな」

うんうん、うちにもたくさんあったなあ。主にブレイクに貸してたけど。


あれ……?でも二度目とはいえ魔の山に勇者はいいのか?


魔の山麓の街に到着し、予約していた現地のキャンプ地でテントを設置する。この季節は実りの時期とあってキャンプ地も賑わってる。


俺も設置を手伝っていれば、ランベルトさんが様子を見にやって来た。


「順調だな」

「ええ、何とか。もうすぐご飯の準備に入れますよ」

「それは何よりだ」

ランベルトさんも周りを確認して頷く。

そうだ、せっかくだし勇者が魔の山に来ること、魔族的にどうなのか聞いてみようか。


「ランベルトさん、魔の山って魔族にとって神聖な山ですよね。勇者のブレイクが足を踏み入れることは大丈夫ですか?」

「ああ……そのことか。多分ブレイクなら大丈夫だ」

ブレイクなら……?性格的なことはもちろん大丈夫だろうけれど。それだけではないように聞こえる。


「ブレイクはガーバルフの勇者以前にドンサ村の勇者だから魔族たちの抵抗も薄いだろう」

「ドンサ村の……?」

どうしてガーバルフよりもドンサ村出身であることが重要なんだ……?


「ドンサ村にはかつて勇者がいた」

それはまさか……。


「名をロイド・ノーム。ジェイド・ノームの祖先でもあるからお前も知ってるだろう」

「まあ……そうですね。俺の祖先……でもありますね」


「そう。そして彼は魔王国でもとても感謝されている。魔の山のダンジョンで不可視の魔物を倒したとか、先々代魔王の姉を助けただとか、邪神を改心させたとか色々な逸話がある。寿命の長い魔族は争いの時代を知っているからこそ、ロイド・ノームが魔王国に多大なる貢献をしたことを知っている。ロイド・ノームと同じドンサ村の勇者ならと思うのだ」

「そう言うことでしたか」

まさか自分の……。いや、祖先が関わっていたとは驚いた。しかし命を懸けて守った信念が今でも生きているのは誇らしいな。


ランベルトさんに礼を言い、次は飯の準備。いつものようにみんなでわいわいと飯を平らげれば、ルークさんが珍しいものを採ってきたと見せてくれた。


それは……。


「ビーズ!?」

魔王国でのプラ・スティック製品生成のための媒介だ!


「そうそ、ビーズ草。魔の山の麓産だぞ」

「ならこれも100均で生成を……あとワイヤーを作るか」

ワイヤーなら今まで出会った金属で作れるはずだ。


【もちろん】

GIさんが頷いてくれる。


【ステンレス鋼なら加工できそうだ】

「それじゃ、ステンレス鋼とビーズ草でワイヤーとビーズを作ってくれ」


【了解。リードのイメージを具現化すると、ビーズ三種、ワイヤーで一素材100円ずつ。MP400だ】

「へーきへーき!この前レベル確認したら99、MP19800あったから~~」

【へえ……いつの間にって……こまめに確認しようか?】

「ぎくぅっ」

しかしそんなこんなで完成しましたビーズとワイヤー!


「へえ……?糸で繋げたビーズは見たことあるけど、金属でやるなんて面白そうだな」

「でしょ?でも使い方は……設計図を描いてコーデリアを頼るか」

ビーズとワイヤーが揃ったのなら、せっかくだから作りたいものがあるのだ。

「そうだな、それがいい」

俺はルークさんに素材の礼を言い、コーデリアに設計図を元に説明する。


「うーむ」

カチャカチャとワイヤーとビーズを弄ってみるコーデリア。

その隙に俺もスキル100均でビーズとワイヤーを量産してみる。


「閃いた。こうだ」

コーデリアの神業がひとつの可愛らしい指輪を完成した。


「おおっ!すげえ、まさにそんな感じ!」

俺が感心すれば、ふわわを抱っこしたブレイクもやって来た。


「ふ~~わ~~」

「そうだねえ、かわいいねえ」

ブレイクもふわわも興味津々だ。


「けどワイヤーだとふわわが怪我しちゃったら大変だ!」

すっと極細ゴムを出せば、コーデリアが早業で腕輪を作ってくれた。


「はい、ふわわ」

コーデリアがふわわに腕輪をつけてあげれば。

「ふ~~わ~~!おねーたん、だいしゅき!」

「ぐはっ」

幸せの効果音が鳴り響いた。


「俺も指輪、作ってみようかな」

「リードも作るのか?珍しいな」

「たまにはいいじゃん」

「なら一緒に作ろう」

そしてブレイクも一緒に作ってくれるそうで、3人でそれぞれビーズの指輪をこしらえた。

因みにブレイクはくまちゃんの腕輪にするように少し大きめに作っていた。


「これ、なかなかいいなあ。でもリード、その指輪は誰かにあげるのか?」

ブレイクが聞いてくる。


「うーん……ナイショだ」

だって指輪と言えば何たって、サプライズだろ?


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