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【67】手のかかる女神



――――ルーロンダンジョン都市での日数も残り僅かだ。兄ちゃんにマニキュアを送ると言う話をしたら空間に裂け目を開けて会いに来た。


「そうだ、そう言えば兄ちゃん。ユルヤナさんと知り合いなんだよね」

……と聞いてみたら3秒くらい微動だにしなかったので、ちょっと効果があるらしい。


「リードきゅんっ!おにーたんといる時にほかのやつのこと話さないで!」

兄ちゃんのヤンデレのデレ部分強めになってきた時に……ユルヤナさんが現れた。


「おや、来ていたんですか?実はダンジョン都市の商業ギルドでいい新商品を開発したみたいなので、試しません?」

「嫌だ!ドMがすぎるううぅっ!!」

え……?ドM?兄ちゃんはウルトラSだよな?


「うう……リードきゅんと離れたくないけど……帰る」

魔族側の商業ギルド統括長なのに新商品を試さなくていいのか?


「魔王国行くなら、これアダマンタイナ姉さんに、こっちはアンナさんに届けておいて」

マニキュアセットを2包み渡す。アンナさんにはこちらの世界のマニキュアマニュアル付き。イヴァンさんもいるから大丈夫だとは思うけどね。

「うう……おにーたん使いがあらいけどリードきゅん……しゅきっ」

「はいはい、とっとと行け」

兄ちゃんが帰っていけば、ユルヤナさんは残念そうにしながらも相変わらずにこにこしている。


「新商品って何ですか?」

「ああそれは……リードくんにマニアックなことを教えすぎたらランディに怒られちゃいますから。もう少し大人になったら……ですよ」

それは何だろう。日本の成人は18歳になったがお酒は20歳からなのと同じような感じだろうか?


※※※


夕飯の仕度まで好きにしていいとユルヤナさんに促され、俺はキャンプ地から少し離れた原っぱにやって来た。


「GIさん、あの時は視界を貸してくれてありがとな」

あれがなければ、俺はブレイクを失っていたかもしれない。


【全てうまく言ったろう?】

そうだな……父さんが間に合ったかもしれないが、それだけじゃ……兄ちゃんを招くまでにはならなかった。

あの時あの瞬間、兄ちゃんの守護魔法が発動したから。

【それがGIの本質だ】

うん。100均以外でもすげぇ頼りになるなぁ。でも……でもさ。


「なぁGIさん。俺、ずっと気になってたことがあるんだ」

【何だい?】


「冥界神ってさ……熟女マダムみの溢れる熟女マダムだよな」

年齢は熟女層ではないかもしれないが、女性の年齢を気にしすぎるのは失礼だ。長命種のミレイユさんが今まさに熟女みあふれる未亡人なように、冥界神はまさに熟女に当てはまる熟女み!そして人妻!人の妻ではないと思うがつまりはマダムである!


「おい、コラてめぇっ!また熟女か!マダムか!そんなに人妻がいいか!神の妻だけど!」

元気よくツッコんできたのは、何を気にしてるのか最近めっきり姿を現さなかったマキナだ。単純に女神の仕事だったのかもしれないが……何となく近くにいる気はしてた。


「やっと出てきたか 」

あと、たとえ神の妻であってもマダムはマダム!

「んもういいわよ……それがあなただもの。でも……」

「マキナ?」

「……やっぱり私はダメなの?」

目がマジだぞ、お前。


「永遠の16歳はちょっと……」

「結婚したら!?結婚したらどうよ!これでも実年齢は……言わないけど」

いや、無理して言うことでもないと思うけど。


「母ちゃんと同じ原理」

母親って言う理由もあるが、父さん曰く自分と結婚してる時でも『熟女マダムみはない』だそうだ。あまり本人に言いたくはないと言うか言ったらそれはそれで離婚じゃーっと叫ぶが……。


「お前ら父子……父子なぁ……。でも、あの2人が結ばれて、息子ができて……私は安心したのよ」

「……マキナ?」

「私は……リリアナを幸せにしたかった。リリアナは多くの魔女を、時には聖女を救ったわ。私がスキルを与えたがゆえに魔女にされてしまった……人間の娘たちを。けど……それゆえに悲劇が起こった。リリアナのために与えた。けど……結局リリアナがひとりになっただけだった」

最初に父さんに話を聞いた時、思い出した母ちゃんの絵本……マキナは女神だからいいとして、聖女ではない母ちゃんに魅了が効かない。レベルの可能性もあるが、レベルがそこそこありそうなモニカさんまで操られた。

何よりガーバルフ王国の図書館に寄贈された禁書の数々。何故母ちゃんの出身国ではなくガーバルフ王国に、母ちゃんが書いた本がある。キャリテの魔女たちが願っていたのは何だったのか。そんなの……決まってるじゃないか。魔女協会の深層に魔女結社がある意味。伏線はたくさんあったのだ。だけど……。


「……そうかな」

「……え?」

「母ちゃんの周りには魔女たちがいた。外国では隠れて暮らしてるって言うけど……ガーバルフでは堂々と。それは多分……魔女たちがそれを願っていたからだろ?」

そして母ちゃんは父さんと再び出会えたんだろ……?


「それは……そうかも」

「うん。けど……父さんは……無効化のスキルを持つのか?」

確かに母ちゃんの惚れ薬はことごとく効かなかったが。

「……ううん、もうあのスキルは与えない。魅了も……魔神側とも取り決めたの。ジェイドの特異な体質はかつて無効化スキルを持っていた魂の伝承か、それか本人の努力で得た耐性よ。もしくは……そのどちらもかもしれないわ。そのどちらもがあって得た力。それをジェイドが正しいことに使ってきたから、ジェイドは3番目のスキルも持つけど……無効化だけはあげないわ。この世界の人間と魔族の共存が続く限り。私は、この世界を守りたいのよ」

「そうだな。マキナがこの世界を守ってきてくれたんだ。だからあんまり落ち込むな」


「……リード」

「女神の仕事は忙しいかもしれないけど、また会いに来いよ。バーガー食べに来てもいいし、コーデリアも寂しがる」

コーデリアは聖女だからなのだろうか?どうしてかマキナが女神であると本能が知っていたらしい。だからそんなに驚いてなかったんだな。


「……分かったわ。また、会いに行くわね」

「ああ。季節限定バーガーも出るからな」

「うん。アンタたちも気を付けて行きなさいよ」

「ありがとな、マキナ」




――――季節は秋へ……冬へと向かう。これから先は雪が積もるまでに魔王国へと旅立つのだ。


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