【66】マニュキュア
――――ルーロンダンジョン都市にて。
ミレイユさんやモニカさん、サンツ・ワロクに向かう彼女らを見送って、俺たちもほかの班と一緒に探索や配達などをこなしていた。今日はダンジョンのセーフティーエリアのある階層に物資を届けつつ、素材の採集などを行っている。
「これがガラスの結晶か」
「正確には代わりになる結晶だな」
ルークさんに教えてもらいながら慎重に採掘する。ふわわはコーデリアに抱っこしてもらっており、ダンジョン内の不思議な空間に興味津々だ。
一方向こうではブレイクが魔物討伐を手伝っている。しれっとユルヤナさんも混ざっているが……相変わらず槍使いがヤバい。ほんと何者なんだろう、あのひと。
その最中も俺はルークさんに教えてもらい樹脂を採集する。
これで鏡やマニキュアも作れるかなあ。
試しにスキル100均を使って鏡を生成。ガラスを鏡にするためには金属素材を吹き掛けるのだが、結晶の場合は金属が含まれており結晶そのものが鏡になっているので、加工すればそのまま鏡になる。プラ・スティックを使って前世の立てられるミラーを作ってみた。
「コーデリア、どうだ?これ、床に立てられるぞ」
試しにコーデリアがダンジョン内の岩の上に立ててみれば。
「すごい……っ」
どうやら気に入ってくれたようだ。キャンプ地に戻ったらミーナさんたちにもお裾分けしてみよう。
「ルークさん、マニキュアも作ってみていいでしょうか」
「あれは匂いがけっこうキツいから、外の方がいい」
そうなのか……?俺自身は使ったことがないから初めて知った。
ダンジョン探索を終えれば、外の拓けた空き地でマニキュア作りである。素材は虹殻と樹脂。樹脂は地域ごとに違い、ガーバルフだとホワイトウッドとブロウンウッドだ。容器はガラスが高価で結晶は金属入りなのでひとまずはプラ・スティック製。アンナさんに教えてもらった筆とセットの蓋も生成。
【量は少なめだね】
それでいいよ、GIさん。
どれくらいの量なのかも含めて実践したい。色は花の蜜で着けて。
旅の途中にミレイユさんに教えてもらった花の蜜や女性陣に協力してもらった着色に使えそうな素材を実際に見て採集しておいたのだ。
できたのは……ほんのりピンクのマニキュアである。
「できた……!これを……」
キャップを外すと独特の匂いがする。
「塗るか?それで塗るのは初めてだけど」
ルークさんがコーデリアの爪を借り、マニキュアを塗っていく。普段はマニキュアの液を作って筆で塗るらしい。
それからルークさんや兄ちゃんは魔族なのでマニキュアはするが黒っぽい色だ。旅団や冒険者の魔族のひとたちにも見せてもらったが、男女問わず黒っぽい色なのだそうだ。しかしピンクや赤で作ってもそれを禁ずるルールはなく、むしろ女性陣はあったら嬉しいと言ってくれた。
そうしてルークさんがコーデリアのマニキュアを塗り終えれば、ユルヤナさんが風魔法で固めてくれた。前世だと魔法がないから乾くまで大変だな。
因みに落とす際は地球では除光液と言うものを使うらしいが、こちらではポーションを水に溶かして落とすと聞いて驚いた。
使用量は……3回分くらいだが、塗り直しは1週間に一度程度、プラ・スティック瓶でも1ヶ月はもつそうだから保存も問題なさそうだ。
地球では中にはラメ入りなんかもあるそうだが……そこら辺はコスメグッズコーナーが通常品として販売することになるのかな。こちらではまだまだおしゃれ用ではないから、今後の商品展開が楽しみだ。商業ギルドの女性陣にも協力してもらってマニキュアを着けてもらえれば一番の宣伝になるからな。
「コーデリア、どう?」
「うん……なかなか、いい、かもな」
何だか照れているようだった。やっぱりコーデリアも女の子なんだよなぁ。勇者よりも勇ましいが。
さらにはほかにも色んな色を作ってみたので、早速旅団のみんなに試してもらおうかな。
「……これは兄ちゃんに送ろうかな」
何か出来てしまった真紫のマニキュア。ルークさんが兄ちゃんならつけそうとか言っていたので。




