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【64】聖女の光



――――実は冒険者ギルドの職員や冒険者たちにより拘束された。散々怒られ反省したのか、全ての力を失ったからか抵抗する気力も起きないようだ。


「さて、魅了と洗脳を解くわよ、コーデリア」

「はい、リリアナさん」

実はスキルを失ったものの、無理矢理こじつけられたものは少女たちを完全に解放することができない。


無効化スキルでもなければ……いや、それでも無効化スキルなんてものがあっても第2第3の悲劇を招くだけだ。でも、今ここには稀代の魔女がいるから……。


「モニカさんの腕も治しましたよ~~!あと関節も」

と、ユルヤナさん。治療魔法まで使えるって、ほんと何者なんだろう、ユルヤナさんって。もうミレイユさんを攻撃しようとはしていないモニカさんだが、しかしひどい混乱状態でミレイユさんと周りの用心棒や冒険者たちが必死で抑えている。多くの少女たちがそんな状況なのだ。ほかの子らも関節は治してもらったようだけど。


「ヒーリングフィールド」

コーデリアがそう唱えれば、辺り一面の地面が光輝く。そこに母ちゃんが瓶に入った解除薬をぽとりと落とせば、その効果が広がるように周囲に清らかな光が溢れる。


「ヒーリングフィールドの影響で解除薬の効果も上がる。これがあることでヒーリングフィールドも魅了や洗脳の解除スキルを帯びるし、ヒーリングフィールドが混乱状態からも守ってくれるわ」

「……ヒーリングフィールドは聖女としても珍しいスキルだと神官は言っていました。以前にも、必要とされたことがあったんですか?」

「……そうね。聖女に助けられたのよ。前にも……彼女もあなたのように正しい道を選ぶ聖女だったわ」

旅の途中学んだ歴史では確か……母ちゃんは魔王と人間がまだ争っていた時代に生きているはずだ。下手すれば人間と魔族が、聖女と勇者が母ちゃんと敵同士だった時代に同じように助け合ったと言うことか?

母ちゃんはどこか懐かしそうにコーデリアを見る。


「これで、大丈夫。精神的な面はこれから見ないといけないけど」

混乱状態から解放されたのか、少女たちは抵抗をやめていたが、泣き出す子やひどく怯える子もいる。ミレイユさんも泣きじゃくるモニカさんをぎゅっと抱き締めていた。


「これから冒険者ギルドを通し親元や家族とも連絡を取ります」

「なら私も協力できることがあれば協力しよう」

ユルヤナさんの言葉に父さんが頷く。世界中どの国境の出入りも自由な父さんが言うと最強だなぁ……。


そして実も少女たちの精神に影響を与えては大変だと冒険者やギルド職員たちが連れていく。姿かたちは違うが……アンナさんのように気付く子だっているはずだ。


「あの……」

実を護送する冒険者たちに駆け寄れば、兄ちゃんがぴたりと俺の腕に張り付いているので実がびくんと震える。今は俺に夢中で何も見えてないから暴走することはないと思うけどな。最強になったはずの実を震え上がらせた兄ちゃんだもんなぁ。イイコにするように兄ちゃんの口に携帯栄養食をぶっ込めばもひもひと上機嫌にむしゃむしゃしている。よし。


「どんだけ反省させられんのかは分からんが……」

少女誘拐に洗脳、その他余罪もあるかもだし、どれくらいの罪になるかは分からないが、少なくとも……生きてる。

全員生きて自由になれた。これから家族とも再会できる。

だが……コイツはもう二度と家族とは会えないのだ。罪うんぬんと言うよりも……世界の壁があるから。コイツは世界で……本当にひとりになるのだ。


「これ、やるよ」

実に差し出したのはプラ・スティックで作ったマグカップだった。


「……え」

「お前も元日本人だろ?俺は前世日本人だった」

「……そんな……」

「だからさ、お前も好きだろ?100均。俺、いつかこの世界でも100均を開くからさ、お前も来いよ。刑期が終わったら」

「……ぼくなんかが……いい、のか?」

「アンナさんが言ってたんだ。お前は、本当は根が優しいんだって。だから優しい自分を取り戻して、きっちり刑期をまっとうすれば立ち直れるって思うよ」


「……アンナ……三日月、アンナ?」

「そ。もう結婚して姓は変わってっけど」

「……結婚?彼女は……いま」

「幸せに暮らしてる」

「そうか……良かった……それだけが、気がかりだった……あり、がとう……」

実は俺が差し出したマグカップを受け取った。


「あの……名前は……」

「リード・ノーム」

「ぼくは……ぼくは、ミノル……タツタ、ミノル」

「あぁ。ミノル。元気でやれよ」

「うん……リード……」

ミノルが頷けば、冒険者たちに促され護送されていく。


「元気でな」

「……少なくとも元の世界よりはまともに生きられる。冒険者ギルドの牢屋はしっかりしてるからな」

「……兄ちゃん?魔眼で何か見たの?」

「次チーズ味あーんして」

すっとぼける気か。まぁいいや。兄ちゃんにチーズ味の携帯食を食わせてやれば、ルークさんに後片付けを手伝えと引っ張られていったので……俺はみんなにMPHP回復ブロック食でも配ろうかな。



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