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【61】モブ幼馴染みの務め


――――古今東西様々なファンタジーではよくある展開だ。この世界で100均を広めると言う夢は……商業ギルドのみんなが引き継いでくれれば……。俺は、モブ幼馴染みに生まれた意味を全うするだけだ。


「違う!そうじゃないのよ!バカリード!」

マキナの声……?


【やっと居心地のよい滞在先を見付けたのに、私がみすみす失わせると思うか?】

GIさん……?


【計算するのはGIの本領だ】

それは……?


そして次の瞬間鋭い金属の感覚が消え失せる。いや……違う。これは……。


「ギャアァァァァッ!!」

アレンが弾き飛ばされ悲鳴をあげる。


「この……っ」

父さんが素早くアレンに迫り剣を持った腕ごと斬り飛ばしたのだ。


「ヒイイイィッ!!」

アレンが片腕を失い痛みで絶叫する。日本で平穏に生きていた凡人には決して想像できぬ痛みだろう。いや、この世界で平穏に生きていても、恐らく。


たとえ勇者であっても、世界でも指で数えられる実力の剣聖の剣技にかなうはずがない。少女たちを盾にし、彼女たちを無力化しやっとのことで自ら出てきた臆病者になど。

何せ父さんはブレイクよりも、兄ちゃんよりも……魔王よりも強いんだぞ。


そして父さんにより無力化されたと見られるアレンだったが、不意に不気味にほくそ笑む。その瞬間斬り落とされた腕がアレンの肩にくっつき復活したのだ。


「スキルは魅了だけではなかったか」

「でもさっきの高速移動もスキルでしょ!?アンタの剣に追い付けないやつがスキルもなしに高速移動なんてできるはずがないわ!」

母ちゃんの言う通りだ。


「ぼくはスキル再生でどんな傷も治せる。そして不死、不老、オーバーブースト……もっともっと……そうだ……それを使えばお前もっ!」

ちょ……スキルって基本はひとり1つ。努力次第で2つ目もあり得るが、生まれつきは2つでも激レア。3つは相当な研鑽を積まない限りは……父さんや魔王クラスでもなきゃ無理だろ……!


「そんなことって……っ」

どうしてか母ちゃんがマキナを見る。

「事実よ。でも、私はそんなの許可してない!」

マキナが……許可?


「さぁ、今度こそ邪魔なお前を始末して、ブレイクも、そこのモブも!」

「させるか!息子たちには手を出させない!」

父さんが剣を構える。でも……今この場でアイツにかなう可能性があるのは……一番強いのは……。


「つ~かま~えタアァァァァァァ――――ッ!!!」

その時アレンの頭をぐいと押さえ付け、さらにアレンの腕があり得ない方向にひしゃげる。


「ギャアァァァァッ!!?」

アレンが悲鳴を上げる。そうだ……もうひとりいた。スキルを幾つも持ち急襲を仕掛けてきたアレンの一撃すらも跳ね返す守護魔法をかけた張本人が。


「……兄ちゃん」

そう呟けば、幾度も再生するアレンの腕を幾度となく粉々にしながら悲鳴を我関せず俺の方を見てデレッと頬を歪める。


「リードきゅううぅんっ!おにーたんのこと呼んでくれて嬉しいいいぃっ!おにーたん超マッハでリードきゅんに会いに来たよおおぉっ!」

いや……本当は兄ちゃんがラスボスなのではないかと言うサイコスマイルである。

しかし次の瞬間兄ちゃんはさらに口角を吊り上げる。

「その前に……おにーたんのリードきゅんに攻撃を仕掛けやがったこのゴミを始末してあげるから待っててええぇっ」

「あ゛、ひ……っ、だずげ……っ、無駄、だ、ぼくは無限にさいせ……え ……」

「ふぅん……?無限再生するんだぁ……そうだねぇ、そうみたいだねぇ」

その間にも兄ちゃんはアレンの腕を砕き、再生すればまた砕く。

「じゃぁ思う存分楽しめるねぇ。永遠に……苦痛で悲鳴をあげながら、一生だあぁぁっ!心配しないで……俺の魔眼で気絶も精神崩壊もできないようにずう苛んでやるからあーははははぁっ!!!」

兄ちゃんの仮面の奥の魔眼が怪しく光る。それは不老不死を得た男ですら恐怖させるもの。人間としての本能的な恐怖だろうか。

無限再生、不老不死、それはヤンデレサイコとはとことん相性が悪いのだと……初めて知った。


「ちょっとリード!取り敢えず止めなさい!アレ!私、他にもやることがあるのよ!」

「え……?マキナ?」


「……親として不甲斐ないが……」

「あの子ああなったら弟萌えでしか元に戻らないわよ」

はぁと頭を抱える父さん、そして母ちゃんの的確な指摘。

うーん……周囲もどっちが悪役か分からなくなっているようだし。仕方がないか。


「兄ちゃん!ハウス!おすわりいいいぃっ!!!」

ダンジョン都市の晴れ渡る青く、高い空に……それは、高らかに響き渡った。



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