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【56】魔女の子


――――無事にキャリテ入りをした俺はユルヤナさんに呼ばれギルド長室へ来ていた。どうしてかミレイユさんも一緒だが、魔女絡みとなると……あの召喚勇者が関わっているのだろうか。


「ようこそ、いらっしゃい。早速だけど、リードくんたちに伝えたいことがあったのよ。あなたたち、召喚勇者について調べているでしょ?」

「ええ」

「王都から連絡があって、西部やダンジョン都市でも情報を集めていたの。そうしたらルーロンダンジョン都市でひと悶着あったようでね、西部にも連絡が入ったのよ。ちょうどあなたたちも来る予定だったし」

あの……まさかとは思いますがそれを狙ってデモを……いや、あの行程は伝統工芸と新素材が共存していくためにきっと必要なものだったのであろうが。


「ルーロンダンジョン都市でコスメグッズを買い占めようとして断られたそうよ。さすがに爆買いしようとしたら断られるのは当たり前。ほかのひとのことを考えて必要な分だけ買いやがれってことよ」

そうだよな。そもそも召喚勇者がコスメグッズを買い与えようとしている子らは自分の意思でお前に着いていこうとしているわけではないだろう。


「ギルドで確認した限り、彼は全員分として15セット買い占めようとした様子で、冒険者ギルドと合同で調査を進めた結果、拐われた子らは15人で間違いない」

アイツは今ルーロンダンジョン都市にいる。下手したら俺たちとかち合うな。


「名前や身元を調べあげた冒険者たちが、冒険者ギルドを通して保護者や家族に誘拐の事実を確かめてくれたわ。そして最後にミレイユ、あなたの娘さんのモニカ・ウッドベリー。彼女で間違いないわね」

「ああ、間違いない」

そっか……ミレイユさんに最終確認するならここで俺たちと一緒に調査結果を伝える方が効率がいいからな。ここにも冒険者ギルドはあるが、わざわざ呼び寄せるよりは滞在先と言うことか。元々セレーヌさんからも話したいこともあったようだし。きっとミレイユさんにも聞いてもらった方がいい。


「でも彼女たちは魅了による洗脳状態よ。それを解くには現状はリリアナの解除薬しかないわ。だから彼女からの連絡を待つしかない。運が良ければルーロンダンジョン都市で……よね」

「場所が場所なので我々の滞在期間も長いです。なので間に合う可能性もあります」

とユルヤナさん。場合によってはダンジョン探索をする班もあるようだし。


「私からの情報は以上よ。何か聞きたいことがあれば遠慮なく言ってちょうだい」

「……その」

ミレイユさんが口を開く。

「もしも事前にリリアナ殿の協力が仰げていなければ、私が解除薬の作成を頼んでも受けてくれただろうか」

「……難しい質問だわ。私たちは安易に媚薬や解除薬は渡さない」

母ちゃんは父さんに使っていたが、あれは作った本人が責任をもって解除薬を作る気だったろうし……そもそも効かなかったし。


「解除薬があると言うことは、その逆もできる」

俺も全部の素材は知らないし、それらを集めていればもっと多くの時間がかかったが……魔女のレシピを全部教えてもらえることは稀である。


「だけど魔女がその子に授けるのなら資格がある。だからリリアナも応じたのよ」

俺……?

「俺は魔女じゃないけど」


「それでもリリアナの子なら、あなたは私たちにとって特別なのよ」

どういう意味だろう……?しかしその言葉にはどうしてか長年の願いのような重みがあった。


※※※


その晩、旅団はキャリテの商業ギルドの宿泊施設に逗留した。そして俺はふわわとブレイクと同室だったのだがコーデリアもやって来た。一応女の子ではあるので心配になったのだが。


「ブレイク兄さんはくまちゃんLOVEだしお前のストライクゾーンも違うだろ」

と言う回答が返ってきた。


「それに話がある」

何だろう?コーデリアが通信を開けば、そこに映ったのはアンナさんだった。


『もう夜なのにごめんなさい。でもどうしても伝えたいことがあって……。リードくんたち、今召喚勇者のことを調べているって聞いたの。私も……魔王国で戸籍を得るために召喚者であることは届け出ているから、メアタワの商業ギルド長から情報提供を頼まれたの』

レオンハルトのことか。

『それで……その、私からリードくんに伝えたいと頼んだら、快諾してもらえて……』

まぁアイツはツンデレってるけど根はいいやつで間違いないのだ。あと間違いなくアイツも綿花大好き、綿花たちにモテモテなアンナさんにも優しいと言うことだな。


『それで……その、私の考えが合っているのなら、彼は姿と名前を変えてるの。マキナちゃんにも教えてもらったんだけど……召喚者なら召喚時にそう言う希望を出せば通ることもあるって……』

相変わらずマキナは博識である。

『私はそんなこと思いもしなかったけど』

「だってアンナさんはそのままでもかわいいもんな」

『いや、その……私は普通だし』

「美人が人妻に必須なわけじゃない」

「人妻って言い方やめろ」

コーデリアにペシャリとはたかれ、それを見てアンナさんが苦笑する。


『ありがとう。リードくんは優しいね。あのひとも……本当は優しかったはずなのに。いいえ、どちらかと言えば気弱で……』


「それって召喚勇者の……」

『うん、彼の本名は竜田(みのる)。姿は変わってしまったけど声はそのまま。多分アレンと言う名前はゲームのキャラクターの名前』

アイツはゲームのキャラクターに成り代わろうとしていたのか。そんなことをして、女の子たちを魅了で洗脳することに何の意味があるのか……。彼女たちはゲームの登場人物ではなく現実に生きている。


「アンナさんはアイツとは……」

『クラスが一緒だったの。それほど親しくはないけど……でも、気弱だったけど根は優しいと感じることは多かったから……』

それなのに理想の姿とスキルを得て傲慢になってしまった。アンナさんは気弱ではあれどアイツのいいところをちゃんと分かっていたのに、そんな子を捨ててまで……。

アンナさんに礼を言い通信を終え、コーデリアも女子部屋に帰っていった。


――――そしてその夜、俺は夢を見た。




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