【48】魔女結社の話
――――魔女結社とはその名の通り魔女たちが所属する結社である。その結社は派閥に分かれるが派閥争いがあると言うよりは得意な魔法や知識の種類などの専科が異なると言った感じだ。母ちゃんは多分状態異常に詳しい派閥だろうな。ツナードのママさんたちは武闘派だろうか。東部の魔女たちのことはよく分からないがミレイユさんが頼ろうとしていたのならば状態異常系なのかもしれない。
因みにこの結社は男子禁制ではなく資格や素質があれば老若男女問わず所属できるそうだ。俺はMPはあれど魔法はそこまで得意じゃないから入りはしないし、父方で育ったからな。
兄ちゃんは……どうだろ?聞いたことないけど名前くらいはおいてるかも。母ちゃんに引き取られて育ったからな。
そんな近いようで秘密の多い不思議な結社の初代代表か。
「初代代表は魅了スキルを持っていたが故に世界を乱したが彼女は善良な魔族だった。だから結社を……いや、初代代表のために周りの魔女たちが結社を作ったんだ」
あれ……魅了スキル、魔女……どこか聞いたことがあるがあるような気がするのは気のせいだろうか。
「ええと……その頃の魔女は結社がなかったからいわゆるフリーだったのか……」
「いや、違うな。この世界の全ての人類は神からジョブ、スキルと言うギフトを受ける。しかしながら人間に害を成すと見なされたジョブやスキルのものたちが魔女と呼ばれ魔女狩りにあったんだ」
この世界でも魔女狩りがあった。それも本来はギフトと言う神からの祝福であったのに。
「だから初代代表は魅了スキルで多くの魔女を助けたが、同時に悪女のレッテルと魅了スキルへの恐怖や偏見が生まれてしまった。だから彼女のために魔女たちは媚薬などの状態異常薬や解除薬を作り結社として守った」
なるほど。木を隠すなら森の中戦法か。しかしやっぱりどこかで似たような話を聞いたことがあるような。
「しかし事態はそれで収まらず、人間たちの中に『無効化』スキルを持つものが現れ魅了スキルにかかったものを解除して回った。彼は召喚者だったと聞く。そして魅了を解除されたものたちの怨みは魔女たちに向かったんだ。人間たちは無効化スキルの持ち主を使い魔女たちを追い詰めた」
魅了スキルの持ち主に対抗できる唯一のスキルだったってことか。
「しかし……その争いは無効化スキルを持つものの消失によって維持できないものになった」
「消失って……」
「……分からない。ある日パタリと消息を経った。しかしその昔話から何百と経っている。さすがに生きてはいないだろう。そしてそれ以来、まるで神の意思のように魅了スキルの持ち主も無効化スキルの持ち主は生まれていないとされている。その後は魔王が台頭し魔王と人間の争いとなり、この話は忘れ去られた」
まぁ今は魔王も人間も仲良くやっているが、魅了スキルや無効化スキルを持つものが生まれなくなったことでそれを蒸し返すものもいなかった。そして魔女だけがひっそりと受け継いだ。もしかしたら禁書のたぐいにもあるのかもしれない。だからこそ父さんは知っていた。
まぁ魔女自体はガーバルフ王国では堂々と暮らしているけど、外国ではそうはいかないんだもんな。魔王国は母ちゃんも兄ちゃんもいるし多分大丈夫だろうが、堂々と魔女の街を掲げているかは分からない。
「だが、それを教えて良かったのか?」
とミレイユさん。もし禁書の内容だとしたら……いいのか?
「この世界に再び魅了スキル持ちがいるのなら、公にすべきだしその本のほとんどは……リリアナが書いたものだ。まぁ私は本人から聞いたものでな。禁書を当たったら本人が言っていたことだったと言うだけのことだ」
いや、著者母ちゃんかよ……!そしてそれならば別に法に触れないと。まぁそのお陰で俺たちも知ることができたのだ。
「無効化スキル持ちがいればなんぼだが……いない以上は現状、リリアナしか頼るものがいないな」
やっぱそうなるよな。
「俺たちはこれから西部に向かって、母ちゃんからの素材を集めてみるよ。それで何とかなればいいんだけど」
「そうだな。少なくともあの召喚勇者は善行に使う意思がないようだ。私も色々と動いてみる」
「うん、よろしくね。父さん」
思わぬところで父さんの協力を得ることができた。
「あぁ、それと……」
「うん?」
「王都にはガーバルフ王国の大神殿がある」
それって各地の神殿の長ってことだよな。
「もしも彼らが何か言ってきたらこれを使いなさい」
父さんが差し出してきたのは書簡のようだ。しかし大神殿か……。まさかコーデリアに接触してくるとか……?あり得ない話でもないな。
「ありがとう、父さん」
そして父さんはまた仕事で別の地域に向かう。新商品のモニターを色々と勧めておいたので、旅に役立つといいなぁ。
一方で俺たち旅団は翌朝早朝に西部へと向かうこととなった。




