【46】王立図書館
――――魔女の注文書。残りの素材はこれから旅立つ西部である。しかしその前に……。
「ここが王立図書館か」
「うん。前に王都に来た時も寄ったよ」
とブレイク。今回はブレイクとコーデリア、ふわわも一緒だ。ふわわは俺の腕に抱っこしている。因みにふわわはテイムしており暴れるような性格でもないので図書館に入ることなら可能らしい。商人としての身分もあるし、受付でテイム契約を確認してもらえば問題ないだろう。
「へぇ……何の本読んだんだ?」
「世界くまちゃんの歴史。ブレイクが読むとナビゲーター神官がうるさいから私と一緒に読んだぞ」
とコーデリア。ブレイクが選んだ本は想像通りだったが、ここにもナビゲーター神官が付いてきたのかよ。ほんとブレイクの師匠に追い返してもらえて良かった。とは言え……ナビゲーター神官か。ここって王都だから派遣元がありそうだが……まさか商人として来ているとは思うまい。今のところ接触はないようだ。
「今日は気兼ねなく読めそうだな」
「ああ、リード!」
ブレイクが満面の笑みで頷く。ウキウキしているブレイクの傍ら、俺は魅了や状態異常の本でも探すか。ミレイユさんもいるはずだしな。
図書館の入り口に入れば、どうやら中で揉めているようだ。
「私は冒険者として資料を探しているだけだ」
凛として告げるのは……ミレイユさん?その前に立ちはだかるのは剣や槍を携えた騎士の格好の男たちだ。うーん……とてもじゃないがミレイユさんのファンには見えないな。
「だが連日禁書の検索やリクエストをしているな」
と騎士のひとり。
「検索リストに出てこない以上、禁書かどうかは知らん」
さすがに禁書は検索一覧に表示しないもんなぁ。しかしそれが禁書だとばらしていいのだろうか、騎士たちよ。
「あれ、王都騎士団の制服だ」
とブレイク。あ、あれがファンタジーでよく出てくる王都系騎士団かっ!
「あの、やめてください!」
ブレイクが真っ先に動く。さすがはヒーロー。こう言う時は頼りになる。
「誰だ貴様……いや、勇者?」
「見たことあるぞ!」
目立つ赤髪にイケメンだからか知ってる人は知ってるのか。まぁ何年も旅してたもんな。
「はい、勇者ブレイクです!ミレイユさんは商業ギルド旅団に出向する冒険者!ただ資料を探していただけです!」
「し、しかし……」
「そうやって潜入したのかも」
「何せ外国のエルフ……よもや我が国の禁書を不正に入手しようとしたんじゃあるまいな!?」
だーかーら禁書ってバラしたのはお前らだっ!しかし勇者ブレイク攻撃が効かないとは……むしろ彼らはお国の任務に忠実だとも言えよう。
「ミレイユさんはそんな人じゃない!」
娘さんのために魅了を解く方法を探しているだけなんだ!
「いや、今度は誰だ」
騎士が首を傾げる。
「俺はミレイユさんのいちファンとして主張しているだけ……ただの一般人Lだ」
「ただの一般人Lに口出す資格はないです」
「いやでも今のセリフ、どっかで聞いたような……」
ん……?俺と同じセリフ……?しかしその時だった。
「彼女が図書館で調べものをしていたのはこの私からの依頼だ」
そこに現れたのは意外な人物……でもいてもおかしくはない。
「父さん」
「待たせたな、リード」
「ああ」
ここは適当に話を合わせておこう。
「え?ジェイドさんが来る何て初み……」
「コーデリアエルボーッ!!」
「げふっ」
天然ブレイクはコーデリアがエルボーで潰してくれたから……よし!
「まさか……」
「いや、間違いない」
「ジェイド・ノームさまだ!」
「しかも『父さん』って言わなかったか?まさか父子!?」
「さっきのセリフは遺伝なんすか?」
父さん、絶対一般人Jとか名乗って何かしてるな……?ま、分かるけど……父さんは顔バレが過ぎるからバレてんな。確実に。
「そこの冒険者ミレイユは私の依頼で書物を探していたのだ。私は忙しい身だから依頼を出すこともある」
先程の俺のセリフを聞いていたのか、長年の知り合いのように語る父さん。
「しかしこのエルフが探していた本の内容は……禁書の……」
「なに、禁書なら私はもう全て読破している」
父さん……マジなの!?そこまでできる権限あんの!?それとも……母ちゃんが父さんに媚薬やら洗脳薬を盛ったから一応調べてたのか?本人には全く効いていないようだったが。
「つまり私が探していたのは新刊、新書。そこに何か新たな情報がないかを調べてもらったのだ」
「そ……それは」
「ジェイド・ノームさんがそう言うなら」
「そう言うことなら、我々はこれで」
おお……っ!王都騎士団が引き下がった。
「さて、ここでは何だ。場所を変えて話そう」
うん、さすがに中は静かにしないといけないからな。




