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【45】100均コーナー



――――さて本日向かう先は王都商業ギルド運営コスメグッズ売場である。早速ふわわを抱っこしブレイクと朝食の食堂へ向かおうとしていれば、何やら話し込んでいるランベルト旅団長とユルヤナさんが目に入る。


「大神殿が聖女を渡せとか……」

ユルヤナさんが話しているのはコーデリアのことか?


「本人が望んでいないのに何故大神殿の言いなりになる必要がある。王都の商業ギルド長も首を傾げていてな……」

「いざとなればポーションや素材を卸すのをボイコットですよ、ランディ」

「いや、それはエグいのでは」

「商人の邪魔をすると言うのならそう言うことですよ」

「それもそうなんだがな……」

ユルヤナさんがマジでエグいことを言っているのだが。ぶっちゃけポーションも商業ギルドで手には入る。神殿のものは寄付金のお陰で少し安くなったり、無理奉仕があったりするだけである。

それにこう言う時お金がないものが困ると言う考えもあるかもだが……普通に地方の村で育てば日常生活や家の手伝いの中でおのずと薬草の種類だとか形を覚えて使うから、わざわざポーションに頼らなくても済む知識を携えている。

日々危険と隣り合わせの冒険者やよほどの重傷でもなきゃ、平民はそれほどポーションに頼らずに済む。王都は……よく分からんが。裕福ではないのなら裕福でないなりの生きる術は身に付けているものである。


「やっぱり大神殿のやつらはコーデリアが欲しいってことか?」

「コーデリアなら実力行使で逃げ出しそうだけどね」

ブレイクの言う通りだ。しかし大神殿からこちらに圧力がかかっているとは。


「大丈夫だよ。むしろ俺らからすれば大神殿の弱味を握ったようなもんだから」

後ろからルークさんの声がすれば、ルークさんがニヤリとほくそ笑む。


「そうですよ~~!難しい話はこちらに任せてリードくんたちは気兼ねなく過ごしてくださいね」

いつの間にかユルヤナさんがこちらに手を振っていた。本当に……いつの間にか多くのひとたちの力を借りているもんだ。


ユルヤナさんたちに感謝しつつ、食堂の中に入れば、コーデリアとミレイユさんがミーナさんたちと席についていた。よし、俺たちも食事にするか。


――――そうして朝食を済ませた俺たちは王都商業ギルド運営コスメグッズ売場にやってきた。


「100ゴルゴル均一(税別)の売場コーナーですか」

「ええ」

その日俺はブレイク、コーデリア、そしてふわわと一緒にコスメグッズ売場の商人のお姉さんと交渉中である。


因みに本編では税抜記述が多いが、実際の売場には税込価格もしっかりと表示されている。消費者庁に怒られたら困るからな。


「プラ・スティックの加工、錬成技術が浸透すればこの売場でも加工済、1ヶ月は持つ化粧品が売れます」

それ以上持たせるなら防腐剤ってのが必要なのかな。こっちの世界では魔法で付与することが多いが、化粧品に使うよりは装備や武器に使われる。この世界は剣と魔法と、それから魔物との戦いもある世界である。しかしながらまずは1ヶ月持てば……今よりももっと顧客が増えるはずだ。


そうなれば頻繁に買われなくなると思われがちだが、現状3日くらいしか持たないので滅多に買わないと言う風潮があるのでどちらをとったら利益が生まれるか、リピート率や売れ高を確保できるかが重要だ。


「確かに王都商業ギルド本部からもお知らせがありましたね」

「そうです。そして売るのはクリームタイプではなくパウダータイプです」

ここらで混ぜて作るものは液体タイプである。それでも魔法の世界の素材を混ぜているからすぐには乾かない。普通ならチューブタイプってのに入れるそうなのだが。パウダータイプの方がチップなどで塗れるので手が汚れないのだとアンナさんに教えてもらった。俺は100均用のアイシャドウを見せる。


「一応検算だと1ヶ月持ちますが、試行して日持ちを確かめる流れになるかと」

「そうね。日持ちについては技術班と連携して試行するとして……100ゴルゴル(税別)の化粧品なら手を出しやすいのもいいわね」

「ええ。興味を持って始めるひとにも優しい。100均だとカラーパリエーションも豊富にできます。けど商品が被るので……」

100均版はカラーパレットにもできるが量は少なめ。お試しにも向いている。

100均以外のブランドものはコストはかかるがよりいいものを提供できるが……。

「そこは売り方次第ですね。日持ちするなら地方でも売ることができますし、今まで手が出せなかったひとにも届きます。問題は100均製品とブランド製品をいかに住み分けするかだけど……そこはお姉さんに任せなさい!」

さすがは生粋の商人のお姉さんである。コスメの知識も経験もあるお姉さんだ。存分に任されよう。


「それからこっちのチップやパフなどは今からでも売れますよ。ショップの中にメイク小物の100均コーナーを作ってはどうかと」

「うーん、そう言うのもありかもね」

そうそう、最近では100均コーナーのあるコンビニなんかにもあるだろ?


「問題は鏡なんですが……コンパクトケースに付けても、別売で100均コーナーに出してもいいと思うので」

「鏡……そうね。普通はガラスを使うから高いのよ」

残念ながらガラスって高いんだよな、この異世界。100均で気軽に売れる感じでもない。


「でも結晶を使えば別なはずよ」

「結晶を……?」

「そう。姿見を作るだけならガラスよりも似た結晶を使うのよ。鉱物ダンジョンなんかでよく見かけるわね」

もしかしたらダンジョン都市で手に入るかもな。


「他に何か聞きたいことはある?」

「そうですね……そうだ、ついでに聞きたいんですが、商業ギルドのコスメグッズショップを通じて情報収集をできないでしょうか」

「情報にもよるけど……」

「えっと……その、探している女の子たちがいるんです。グドトッホの勇者を知ってますか?親にも無断で女の子を連れていっているようで……」

特にミレイユさんの娘さんはそうだ。それに他の女の子たちもいるはずだ。


「噂は聞いているわ。大層な女好きとも……。でもみんな気味悪がってるし、うちの国の勇者とも衝突したって聞くわ」

お姉さんがブレイクを見る。


「はい!ガーバルフ王国の勇者としても許せません!」

ブレイクは相変わらずまっすぐである。


「……そうね、確かに。それならコスメグッズは最適よね。連れの女の子やその子たちのために買いに来るかも。いいわ。私もガーバルフ国民だもの。ガーバルフの勇者に協力するわ」

今回もブレイクに助けられたかも。それはブレイクが正しいことをしてきたからだろうなぁ。俺の幼馴染みが立派すぎて誇らしい。





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