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【44】地球の記憶



――――早速アンナさんに連絡を取り、俺たちは綿花牧場へとやって来た。綿花牧場の屋内ではアンナさん、イヴァンさんに綿花たちが待っていた。


『おにいたーん、おねえたーんっ!ふわわーっ!』

ぎゃふっ。相変わらずかわいすぎる大歓迎である。


久方振りの綿花たちとのふわもふ、ふわわもちびっ子仲間とふわもふ。何て幸せな。


――――と、目一杯ふわもふしたところで気を取り直して。


「実は俺、アンナさんに言ってないことがあるんだ。お願い事ってのはそれにも関係してくるんだが……もしアンナさんが語りたくないなら無理は言わない」

「……リードくん?」

アンナさんは少し緊張しているようだ。


「実は俺……前世日本人なんだ」

「……」

アンナさんは一瞬驚いたように俺を見、そしてどこか安堵したように微笑んだ。アンナさん……?


「あのね、編みぐるみの編み棒のこと知ってたでしょ……?」

「あぁ」

「それはこの世界にはまだないものだったから……私はもしかしてと思ってた」

アンナさんも……っ。


「だけど……リードくんは優しくて、それに親切だから……同じ世界の記憶を持つのがリードくんで安心してる。私は……ひとりじゃないんだって」

それはあの召喚勇者の影響だろうか……。けど俺の存在が少しでもアンナさんの安堵に繋がるのならこうして打ち明けたことはきっと間違っていないのだろう。


「だから私に協力できることなら任せて」

「ありがとう、アンナさん」

そして俺はアンナさんに協力してもらい、化粧品についてのレクチャーを受けた。


「普通の店のアイシャドウやファンデーションなんかはこんな感じかな……」

アンナさんが絵に描いてくれる。なんとアンナさんは絵も上手い。編みぐるみの設計図なんかも描いているからだろうか。


「あと、100均のアイシャドウはもうちょっとケースが簡略化されているかも。それからチップやブラシ、パフなんかの小物も必要だよ」

「いろいろあるんだな……」

「うん。小物は100均だと別売。ドラッグストアなんかにも小物はあるけど、基本的にここら辺は安いかな。高級品は高いけど……」

えーと……何だっけ。熊野筆みたいなやつかな。聞いたことがある。


早速アンナさんに教えてもらったパーツや小物の生成に入る。


簡単な形状なら100均スキルで作ることができる。


【それ以上なら700ゴルゴルを越えるだろう。技術料と鏡代だ】

技術料とか初めて要求されたんだが。そんなのもあるのか?まぁしかし、アンナさんの図によると空気孔が空いていたり鏡がついているからこそお高くなるのだろうか。思えば鏡って……ガラスだったかも。そりゃぁ高いわけである。


【スキル100均はちょっとお高くいい製品300ゴルゴル(税別)や500ゴルゴル(税別)のように500ゴルゴルまでならできるがそれ以上は不可だ】

うん……確かに俺もそう思う。なおこれは俺の勝手な主観である。700円(税別)商品や1000円(税別)商品もあるが……100円(税別)から離れれば離れるほど……切ない気分になるんだものっ!そこは仕方がないしGIさんと感覚が共通しているのは嬉しい。


ならアンナさんの描いてくれた100均風のアイシャドウはどうだろうか?


【それならコストを抑えられるからイケる】

どうやら複雑な形状を抑えることで安く済むらしい。あと鏡も別売だ。


そしてスキル100均でブラウン系とピンク系を生成する。


「すごい……本当にできた」

「粉末じゃないのか」

アンナさんだけではなくイヴァンさんも驚いている。どうやらこの世界の化粧品は男性陣にも粉から混ぜて付けるものと言う認識があったようだ。


【因みにチップなどを使い、ちゃんとフタを閉めることで1ヶ月ほど持つかな】

とGIさん。やはり空気に触れないようにしたり、雑菌を抑えることも長く持たせるコツになるようだ。なお、空気事情や細菌培養うんたらかんたらは地球と違うかもしれないから日持ちは気にしないでくれ。マジックボックスやバッグに入れたら時間止まるしな。……その前に、俺は空気中に窒素が含まれていたようななかったかのような知識しかないからそこら辺の解説はできない。


【深層記憶の理科の教科書によると……地球の空気中の窒素の割合は約78%だね】

窒素……多っ!


「じゃぁ次はチップか」

現状毛になる素材は思い付かない。筆なら何かの動物の毛や合成素材だろうな。しかしふわわたちの毛は筆の素材にはなりそうもない。でもパフとチップならいけそうだな。


【チップやパフはプラ・ウレタンと樹脂で生成しよう】

うーん……樹脂?

【プラ・スティックがあればできる】

樹脂ってそう言うものなのか。樹脂って言うからてっきり木に関わる素材かと……あ、こっちの世界のプラ・スティックって植物だった。


【つまりはバイオマスプラ・スティックだね。ボタン素材の話を認識したお陰でプラスチックの知識の引き出しをたくさん見られるようになったようだ。その中の君の深層記憶で見つけた】

え……?あーバイオマスってなんだったっけ。でもバイオマスってついているから何となく環境に優しそうな気がする。中学か高校のどっかで聞いたような気がする。


そうしてパフ5個セットとチップ8本セットができた。実際の素材で作ればもう少し個数が減るかもだが、無事に生成できることが明らかになったのである。


「実際に使ってみます?」

「ええと……」

アンナさんがコーデリアを見やる。


「……アンナさん?」

コーデリアが首を傾げる。


「コーデリアちゃんと……一緒にやっちゃ……ダメかな?ひとりだと……恥ずかしいから」

「その、私は化粧は……したことが」

「なら、一緒にやる?」

「……その」

コーデリアが俺を見る。


「いいんじゃないか?コーデリアも年頃なんだからさ」

「……分かった」

コーデリアは少しだけ恥ずかしそうにしながらも、アンナさんと共に洗面所に向かいアイシャドウを塗ってきたようだ。


「ど……どうだ?」

「似合うよ、コーデリア」

「……うん、その……たまにはいいかもな」

何故だかコーデリアの頬が赤い。チークは作ってないはずなんだけどな。


「アンナもきれいだよ」

「……うん、ありがと」

イヴァンさんの言葉にちょっと照れたアンナさんに綿花たちがきゃっきゃと嬉しそうに微笑んでいた。

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