【40】森林フィールド
――――ここは王都近郊の森林フィールドだ。ダンジョンとは違い地上にある。ここでもたくさんのアイテムや素材が手に入るものの、魔物も生息しているので簡単にわけいっていいわけではない。俺たち商人も冒険者や用心棒たちを連れて入るのだ。
なので今日はキャリテ班とミーナさんのレヌカ班で探索にやって来た。
「そうだ、ミレイユさん。資料の方はどうですか?」
「魔法の本をあたっているが、なかなか目当てなものはないな。やはり機密文書の類いやもしれん」
「そっか……身近に閲覧できるような知り合いは……」
あれ……いるっちゃいるかもだけど。うーん……。
「とにかく、もう少し調べてみる。今は素材だな。私も出向者として義務を果たそう」
「はい、ミレイユさん」
「おねーたん、ふぁいとっ」
「ぐはっ」
ミレイユさん、また萌えがクリティカルヒットしたらしい。
とは言えさすがは冒険者。すぐに体勢を立て直す。他にもブレイクは勇者だしルークさんも用心棒を兼ねており、ミーナさんの班にも用心棒のお姉さんずがいるので頼もしい。
「アイシャドウの素材ってどこにあるんですか?」
「森林フィールドの岩肌部分ね。その途中の林道に虹殻が落ちているから拾うといいわよ」
「はい」
頷けば早速ルークさんが拾って見せてくれる。
「選り分けは後でやるから……そうだな。旅団や王都の商業ギルドに納品する分も合わせて多めに採っていいぞ。これは通年で色んな所にあるし、また合成などに必要な素材だから」
「割りと便利な代物なんだ……。どんなものに使われるんですか?」
「そうだな……樹脂製品から魔法で使う壺なんかの錬成にも使える。あと、これ」
ルークさんが見せてくれたのは爪先である。
「……マニュキュア?」
「そう」
「確か兄ちゃんもしてたけど……魔族的なものなんでしょうか」
「そうだな。魔族は男女問わず自分で素材混ぜて塗るんだ。使った素材によって魔除け厄除け、あとは魔法の補助や願掛けとして使われる」
つまり兄ちゃんもそう言った意味で爪に塗っていたのか。
「エルフは女性が多いわよね」
と、ミーナさん。
「あぁ。よく花の蜜を魔除け厄除けに塗るぞ。今は塗っていないが……」
ミレイユさんが教えてくれる。他種族の間では割りとメジャーなものなのか。
人間の街や村では見かけないが……あれ、100均にもマニュキュアって売ってなかったか。
「あの、マニュキュアの素材も集められますかね」
「ん?ひょっとして作るのか?」
「はい。できればスキル100均でやってみようかと」
「ふぅん。でも混ぜるとすぐ乾くから売るなら素材でだな」
やはり化粧品と同じなのか。前世のような入れ物があればいいのだが。あれはガラスなのかプラスチックなのか……さすがに分からないな。
「ガラス瓶に入れることはできないんですか?」
「いや……さすがにそれは現実的じゃないな。魔王国なら少しは……でもなぁ」
ルークさんがユルヤナさんを見る。
「そうですねぇ……魔王国なら魔族たちの高度な炎魔法が必要ですし、ヒト族でも高度な炎魔法の使い手がいなければ手作業です。錬金術と言う手もあります。商業ギルドには錬金術工房もありますが……ポーション用なのでとてもそんな余裕はないでしょうね」
この世界じゃ必須級アイテム用なのか。なら嗜好品に当てるわけにもいかないか。
「あと、錬金以外だと普通に高いんですよ。素材も色々とありますし。ポーション瓶ひとつを錬金術だと300ゴルゴル(税抜)な上に各所から補助が出るので販売時はポーション並で100~150ゴルゴル(税抜)で販売できるんですよ」
ほ……補助割合が……ヤバい。でもこの世界の生命線ならば仕方がないのか。
「せめてプラスチックがあればなぁ」
でも地球的科学の結晶は剣と魔法の世界では世界観が違うような気もしなくもない。むしろそうなら化粧品のケースのようなものもありそうだ。
「え?プラ・スティック?」
「ぷらすてぃっく……?」
ルークさんの言葉をつい反芻する。まぁそう言う言い方もあると思うけど何か違うような。




