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【36】新たな目標



――――旅団は今晩はここに逗留するようで、明日朝陽が昇ったら次の目的地に向かうそうだ。旅団の夜はほかの班のみなも集まり料理をしたり明日に向けた準備をしたり。とても賑やかで種族も年齢も様々である。


そして俺たちも夕飯の準備のお手伝いをしつつ、せっかくなので100ゴルゴル均料理雑貨をおすすめしてみる。


「これが噂の100ゴルゴル均か。なかなかいいわね」

計量カップや匙セットを見て、旅団のひとびとが話し掛けてくれる。


「私はレヌカ班の班長ミーナよ。よろしくね。リードくんだっけ」

「はい、ミーナさん。もしほかに100ゴルゴル均で欲しい雑貨があれば是非教えてください!」

「そうねぇ……早速何か考えてみるわね!」

ほかの旅団のひとたちも親切だ。因みにブレイクは竈番を、コーデリアは食器の準備などをふわわと手伝っている。


「しかし、お前のところの勇者は竈番とは……」

野菜を運んできたミレイユさんが感心したように告げる。

「そりゃぁ勇者ってよりも幼馴染みの相棒ですからね」

「……ふぅん。そんな勇者だったら……」

うん?ミレイユさんが何だか物憂げそうな表情を浮かべる。


「いや……何でもない」

そう言うとミレイユさんが完成した料理を運ぶのを手伝ってくれて、俺たちはユルヤナさんたちの待つテーブルに向かう。特段班ごとと決まっているわけではなく席は自由だが、今日旅団に加わったばかりの俺たちからすればその方がありがたい。


ブレイクやコーデリアたちも戻ってきて、班のみんなを加えて夕飯である。夕飯はパンとスープ、それから探索などで得た食材で作った炒め物やサラダ、肉などだ。


「旅団はこれからガーバルフ王国の王都を通り西に向かって旅をする予定です」

そうユルヤナさんが教えてくれる。えーと……地理の教科書で見たな。俺たちがいるのはガーバルフ王国の東部で、ドンサ村もルフツワも東。そこから北東に向かってミケホを抜ければ魔王国。魔王国からみた北西に行くとグドトッホ公国。

そしてガーバルフの西側にはルーロンダンジョン都市がある。


「ルーロンダンジョン都市に入るんですか?」

「その通りです。その途中途中でまだ見ぬ素材を仕入れたり、各地の商業ギルドから依頼のあった品を揃えたり運んだり、届けたり。ウチの班はひとまずミレイユさんの探し物ですね」

「……ユルヤナ、その話は」

ミレイユさんが少し焦ったように口を開く。うーん、もしかしてミレイユさんはその探し物のために旅団に出向しているのか。商業ギルドは世界各地にあるから情報も巡ってくるかもしれないし、各地を旅して目当てのものを探せるかもしれない。


「いいではないですか。同じ旅団の……班の仲間ですよ」

「……分かった。その、私は素材や情報を探しているんだ」

ミレイユさんはポツリポツリと話し始める。


「私は……魅了を解くための素材や情報を求めている」

そう聞いて召喚勇者アレンのことを思い出してしまったが……何か関係があるのだろうか。


「聖女の力じゃダメなのか?」

聖女と言えばうちのコーデリアなのだが。


「魅了は通常の状態異常とは違うんだ。毒や麻痺のようにはいかない。私も少しは治癒系魔法は使えるがダメだった」

ミレイユさんは誰かの魅了を解こうとしているのだ。


「通常は何かのトリガーで解ける可能性が高いな。魅了は幻惑みたいなものだ。幻惑は現実との違和感を自覚すれば解ける可能性が高い。魅了も同じようなものだが……」

そうルークさんが教えてくれる。


「ダメだった。もう性格も好みも変わってしまった」

そんなひどい魅了をかけられたなんて、一体誰に……。コーデリアのように状態異常耐性が強いわけでもなかったのだろう。


「もしかしてと思ってツナードの魔女たちを頼ったが……それでもだ」

ツナードの魔女って……ママさんバレー部のママさんたちか……!そういや魔女職も状態異常系は得意なのだっけ。しかしツナードのママさんたちは専科ではないはずだ。


「あの、因みに惚れ薬とは違うんですか?」

「……惚れ薬?魔女の中にはその手の知識を持ったものもいると聞いたことがある。しかしツナードの魔女たちは肉体言語系でな」

それは……分かる!その肉体言語系なところも魅力的なんだが。


「まぁ似てはいるだろうな。永続的には難しいから一時的な魅了状態にするものだ」

とルークさん。


「もしかしたらその惚れ薬の解毒薬もあるかもしれないですね」

「しかしそれは……なかなか教えてくれる魔女はいないだろうな。キャリテでも商業ギルドを通し魔女にあたってみたいとは思っているが」

確かに魔女的には営業妨害にあたるのか……?そしてミレイユさんが商業ギルドに出向しているのも上手く魔女とコンタクトを取るためだな。冒険者ギルドを通すのならツナードのママさんたちだろうが、母ちゃんは魔女にも専科と非専科がいると言っていた。ミレイユさんの求めるものはキャリテの魔女たちが握っている可能性が高いのか?


「でも……聞き方によってはいけるかも」

ステータスの通信アプリを開く。


「どう言うことだ?」

「えと……ミレイユさん。リードのお母さんって確か……」

「そうそう、ブレイク。一応魔女だかんなぁ。うちの親」


「そうなのか!?えと……東部から来たのならツナードの魔女だろうか?」

「あー……いや、俺の母親はサザンウィッチですよ」

しかも魔王国出身だ。ツナードにも魔族の魔女はいるから母ちゃんも遊びに行ったりはしているようだが所属派閥は違うはずだ。


『え゛』

ミレイユさんとルークさんがピタッと固まる。


「ええと……」

反応に困ってユルヤナさんを見る。


「サザンウィッチって……確か魔女結社集団ですね。リードくんはご存知なかったのですか?」

「……いや、結社なんて知らないっす」

派閥とかならさらっと聞いたことがあるが、母ちゃんはガーバルフ国民はバーガーさえあれば乾杯し出すから派閥は気にしなくて言いと言っていた。それ以上の魔女事情は兄ちゃんなら知っているかもしれないが。


「すまん……その、もしかしてとは思うが……兄ちゃんいないか?」

と、ルークさん。


「……ええ、まぁ」

「……ユリアンか」

ルークさんがボソッと呟く。


「え、知ってるんですか?」

「魔王四天王だろう。しかも魔王国の商業ギルド統括長」

あ……そりゃそうか。魔族ならなおさら知っているのかも。


「俺も以前ユリアンの母方を頼ろうと思ったんだが……惚れ薬の類いは母親からの着拒ペナルティになると聞かなくてな」

「あー……もしかしたらと思うんですけど、兄ちゃん俺に惚れ薬使おうとしたからだと思います」

「……実の弟に使うのか?」

「とてつもないヤンデレブラコンなもんで」

惚れさせなくても普通に追い掛けてくんだろうが。意味ないし、それに俺兄ちゃんのこと好きだもん。なら惚れ薬なんていらないだろ?


「でも魔女は簡単にはレシピを明らかにしないぞ」

「だから別の聞き方をしますよ」

何かのヒントになるかもしれない。


だから母ちゃんにメッセージを送っておいた。


【親父に惚れ薬が効かなかった原因って何だと思う?】


……と。



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