【35】キャリテ班
――――ユルヤナさんに案内されたテントには2人の男女がいた。ひとりはエルフのようで、もうひとりは魔族のようだ。
「2人とも、新たなメンバーを連れてきましたよ」
ユルヤナさんがそう言い、俺たちを紹介してくれる。
「リード・ノームくん、綿花のふわわちゃん、それからブレイク・フレイムくん、コーデリア・マーレちゃん。ブレイクくんは勇者でコーデリアちゃんは聖女ですね」
「勇者と聖女って本当だったのか」
青年の方がクスクスと苦笑するが、女性の方は少し表情が固いな。どうしたのだろう?
「俺はルーク・ランツェ。見ての通り魔族だが、人間の血も入っている」
そう述べた青年はダークグレーの髪にオレンジの瞳に白い魔族角。見た目は20代半ばである。……ってことは俺と兄ちゃんと同じだが、ルークさんは兄ちゃんのように魔族の部分が濃く出たんだな。
「俺は商人兼用心棒だ」
つまりルフツワの商業ギルドのアーノルドやその親父さん的な立ち位置である。
それから気が付いてしまった。ルークさんの爪には……マニキュアがしてある。俺は思い出す。兄ちゃんが送ってくる痛い自撮り写真でも兄ちゃんがマニキュアしていたし、この間会った時もしれっとしていた。俺の中にひとつの可能性が生まれる。あれ……兄ちゃんの痛いコレクションの一部じゃなかったのか?もしかしたら魔族的な風習とか……そう言うのだったらどうしよう。しかし少なくとも人間のマダムやレディーたちはマニキュアをしていない。マダムに関しては確固たる自信があるから間違いない。しかし……マニキュアね。ちょっと何か閃きかけている。
「続いてはミレイユさん」
「あぁ」
答えたのは美しいエルフの女性だ。プラチナブロンドのロングヘアーに翡翠の瞳の美女。エルフも実年齢は分からないが見た目はマダム味のある……未亡人である。ふっ、俺の目は騙せねぇぜ。
「ミレイユ・ウッドベリー。冒険者ギルドから出向しているA級冒険者だ」
凛として告げるミレイユさん。
「商業ギルドの旅団にはこうして冒険者ギルドから出向の護衛や案内人を迎えることもありますし、目的があって旅団に加わる冒険者もいるんですよ」
「そうなんですか、ユルヤナさん。勉強になります」
「……」
そして傅いた俺にミレイユさんがドライな視線を向けてくる。
「おい、リードだったか」
「ええ」
ミレイユさんの冷たい声。しかし俺の名を呼んでくれるとは……光栄の極み。
因みにふわわは俺の隣で真似をしてくれていてWで萌えてる俺。
「何故半径1メートルの距離で……その、跪いている」
「ミレイユさん……あなたは高潔なエルフと見た。最初は半径1メートルに容易に近付けぬバリアを常備している」
「……バリアは展開していないが……まぁいきなりは私のプライドが許さん」
「ふ……っ。分かってるぜ」
「何だその分かりみはっ!そ……そんなことはないんだからなっ!」
ふいと顔を背けるミレイユさん。
「りーどおにーたん抱っこ」
ここでふわわが抱っこをせがんで来たので立ち上がりふわわを抱っこならびによしよししてあげる。
「……ふわふわ……」
ミレイユさんがふわわを見つめている。しかしすぐに視線をそらしてしまった。
「リード、珍しいな。いつもなら真っ先に手を握って呼び捨てで呼ぶのに」
とブレイクがやって来てふわわをなでなでする。
「ふ……っ。俺には分かっている。ミレイユさんはいきなりそれをするとツンを大暴走させてしまうと」
「ふぅん。相変わらずだな」
コーデリアもふわわをなでなでする。
「因みにミレイユさんが女性、ルークさんと旅団長が男性な」
「うむ、覚えたぞ!」
よしよし、コーデリアのリハビリも順調だ。
ふと、視線を感じて見ればやはりミレイユさんがこちらを……いやふわわを見つめており、俺と目があった途端そらしてしまった。
そしてその時、ルークさんがミレイユさんに声をかける。
「いや、お前興味があるならなでなでさせてもらえば?」
「そ、そう言うわけではっ」
「いや別にいいって。お前が高潔なエルフキャラ崩したって誰も気にしないから」
「キャラじゃないいいいいぃっ!!!」
ミレイユさんはどうやらとても萌えポが高いようだ。よしっ。
「リードは何故満足げな表情を浮かべているんだ?ブレイク兄さん」
「うーん、ツンデレ萌えってやつじゃないかな」
そうだぞ、ブレイク。さすがは俺の相棒だ!あぁ、ツンデレエルフ未亡人……最高だぜ。




