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【3】100均を知らねぇだなんておめぇら正気か


――――あぁ、素晴らしいな。まさかルフツワの街でこんな素敵な熟女マダムが待っていただなんてっ!


「それじゃ、マリアン。書類書けたよ」

「ありがとう。リードくん。あぇとジョブは……」

マリアンはそれを見た後、悲しみの表情を浮かべる。マリアンは淑やかな熟女……たとえ俺のジョブが雑魚でも頭ごなしに攻めたり笑ったりしない。なんて奥ゆかしくて愛に溢れているのだ。


「分かってる、マリアン。俺は確かに雑魚だ。だがクズじゃない。だからこそこのスキル100均で商売を成功させてみせる!」

「リードくん……っ。そうね……この世界はジョブが全てじゃない。全ては本人の努力次第よ」

「マリアン……っ」

あなたはなんて慈愛に満ちているんだ!あぁ俺はこの商業ギルドを選んで本当に良かった!マリアンと言う素晴らしいギルド長に出会えたのだこら!


「それにあなたのこのスキル100均……これを活かしていくってこと?」

「ええ……っ!俺は必ずやこのスキルを活かしてこの世界に100均を広めてみせる!」

「まぁ……っ。それは新しい商売?とてもわくわくするわ」

さすがはマリアン!この100均の可能性を期待してくれるだなんて!


「マリアン」

俺はマリアンの手を両手で包む。


「リード……くん」

俺はマリアンのために、必ずや……。


――――と、その時だった。唐突に扉が乱暴に開く。


「貴様ァッ!!私の妻に何してやがるうううぅっ!!!誰じゃぁワレええぇっ!!!」

部屋に入ってきたのはがたいのいい男性で用心棒なようだ。ふむ……彼がマリアンの夫か。


「俺は……マリアンを崇拝する教徒……リード・ノームです」

夫氏に失礼のないよう、丁寧に挨拶する。


「……その、マリアン。えぇと……彼は頭がおかしいのか?」

と夫氏。

うん……?その言葉ならドンサの村で散々言われたよ。100均だなんて頭がおかしいのかと。しかしそれは俺のセリフだ。100均の素晴らしさを知らねぇだなんておめぇら正気かと!!


「いえ……その、彼はこの街に来たばかりで……えぇと戸惑っているだけなのよ」

さすがはマリアン。巧みなフォローだ。


「今日からこの商業ギルドの一員よ!優しくしてあげてね、トール」

「……あ、あぁ……お前がそう言うのなら。でも少し気になるのだが……君誰かに似てないか?それに『ノーム』って……」


「……よくある苗字です!」

キラッ。相手に有無を言わさぬ営業スマイル。日本人の得意技。もちろん得意なひとばかりではないだろうが、前世は社畜であった。上司の無理難題に鉄壁の笑顔で頷く。それも大切なことだ。ま、後で内部通報窓口に通報したけどな!


「そ……そうか?それならいいが。その、彼は商業ギルドではどう……」

「えぇ、トール。彼は奉公が希望だからまずは商業ギルド経営の直営店で研修してもらうつもりよ。それから商売についての勉強もね」

ま……マリアン!何から何まで選り取り見取りの待遇!やはりマリアンは……女神か!

天の女神に見捨てられた俺にとっての唯一の女神……それがマリアンである!


「分かった。寮が必要なら部屋をあてがおう」

「えぇ、おねがいね」

マリアンの言葉に頷いたトールさんが寮に案内してくれる。


「……ところでリードくん」

「はい、トールさん!」

マリアンの夫氏に失礼はできない。会社のお偉いさんに挨拶するときのように爽やかに応じる。


「……その、息子のアーノルドに聞いたのだが……妻のことを呼び捨てで呼んでいると」

「……はい!マリアンは俺の推しのひとりですので!」

「いや……推しとは、何だ……?」

「それは……俺が心から崇拝を……」

「いやいい。聞いた私が悪かった」

え……?んー……何だろう?なぁんだ。トールさんもマーサやローサたちの夫氏と同じように優しいなあ。俺のドル活を認めてくれるだなんてっ!


そしてトールさんに案内してもらった部屋はベッドと簡単な机、小さめなクローゼットのあるひとり用の部屋。まぁ住み込みで暮らす分にはなかなかいい待遇だ。住む場所があると言うのは幸せなことである。


「食事は食堂で。研修は明日からだ。明日に備えて身体を休めてくれ」

「はい、トールさん」

トールさんがくれた簡単な冊子には寮の説明や食堂の開放時間が書かれている。

その日俺は開放時間に食堂に足を運び簡単に食事を済ませる。


「さて……無事に100均を開くための勉強やノウハウは学べそうだけど……俺もそろそろスキルを活かせないかな」

スキル100均……使おうとしてもなかなか使えない。しかしながら日々薪割り荷物運びをしたお陰で基礎レベルが5に上がった。HPは36、MPは100。MPが高いのか低いのか分からないが……ちょうど100か。スキル100均と何か関係があるのか?


――――いっちょ試してみるか。


「スキル100均」

試しに言ってみたが何も起こらない。


「はぁ……100均製のかわいいマグでもあればマリアンも喜んでくれるのに」

そう述べ赤いマグカップを思い浮かべた瞬間、俺の手元に突如木製のカップが出現した。


【MPを100使用し100ゴルゴルマグカップを生成しました!】

え……?MP全消費って……疲労がヤバすぎて俺はベッドに背から倒れ込んだ。


やば……ねむ……もう、無理……。

しかしこれってスキル100均が発動した……?願えばいいのか?しかし何故木製……カラーなし……なんだ……ろ……。


すぅ……。


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