【25】魔王国へ
――――ヤーティルート魔王国。この世界の魔王国の正式名称だ。そしてここは魔王国へ入国してすぐの交易街プーレク。古今東西ありとあらゆる異世界ファンタジーものにおいてそれは最終決戦に向けた場であろう。国境に交易街とかあんまりない展開だろう。
普通はものものしい雰囲気だとか魔物が蔓延っているとかそう言うイメージだ。しかし人間の王国側もさることながら両国の間にあるのは賑やかな交易街。この世界の魔族と人間の在り方をよく表しているよなぁ。
そして俺たちは魔王城ではなく綿花たちの牧場に行くのが目標だ。
――――それに魔王城と言うかダークドラグーンとは通信番号交換してるからいつでも連絡とれるし。
「そっちも国境でせき止めてたんだ」
『うむ、あからさまに挑戦的であったそうだし……検問の検査も拒否したようであったしなぁ』
中継地のプーレクにて、バーガーの買い食いをしながらダークドラグーンに通信を入れてみればだ。やはり魔王国に入ろうとしていたのだ。
「検問拒否ったら普通入れないだろうに」
普通は分かるよな。
「俺たちもちゃんと見せて入国したけど」
「うむ。それが常識であろう」
ほら、現地勇者と聖女もこう言ってるじゃん。
異世界召喚された勇者だってちゃんと検問には応じなきゃ。魔王国だって国なんだから国境検問があるのは当然だろ?
「でもせき止められて良かったな」
『あぁ、そうだ。そちらにはユリアンを行かせてあったのだ。あの召喚勇者は目立つであろう?事前に入国を察知していたのだ』
確かに美少女侍らせてたもんなぁ。この世界で女囲いながらチーレムなんてどこの好色王または貴族かって感じだもんなぁ。庶民がやったら確実に目立つだろう。
「ははは……兄ちゃんなら最強だもんなぁ」
何せブレイクすら苦戦するんだが……あの時でも多分兄ちゃんは手加減していたし。
「つか、ちゃんと働いたんだ兄ちゃん」
ダークドラグーンの寝首掻くとか堂々とほんにんに言うくせになぁ。やはり大人だからか。
『うむ。たまに弟狂いして暴走はするがな』
「……ほんとすんませんうちの兄が」
苦労性の弟とはこんな感じなのだろうか。全く兄ちゃんは。
『構わん。リードの言うことは不思議と聞くしなぁ』
「……まぁね」
上司の言うことも聞いとけよー。兄ちゃん。
『ではまた何かあれば』
「うん、またな」
ダークドラグーンとの会話を終了する。
「何で魔王とまで交友を深めてるんだか……まぁいいけど」
マキナはふぅとため息をつきつつも手元のバーガーにかぶりつく。
「つか、うちの国の名物のバーガーが魔王国にもチェーン展開していたとは」
俺の100均もバーガーのように国を跨いで広めたいものだ。
「リード、バーガーお代わりしてもいいかな!?」
「私もチーズバーガーをお代わりしたいぞ」
「まぁいいんじゃね?たまにはさ」
どうやら2人はナビゲーターによりガーバルフ国民の魂バーガーまで禁止されていたらしく久々のバーガーをとても幸せそうに頬張っていた。そしてさらにお代わりに走る。ほんとなぁ、バーガーを我慢させちゃダメっ!あぁ言う風に禁断症状でるから!あとバーガーのテイクアウトだとか店でのトレーの片付け方とか知らないと友だちとバーガー店行く時困るからな!適度なバーガーは必要!それがガーバルフ国民流である!
「……この目玉焼き入ったバーガー……美味しいわね」
「あぁ、肉とハンズとの相性ピッタリだ」
ほんと……前世を思い出しちまうなぁ。この世界にバーガーがあって本当に良かった。
「さて、今晩は商業ギルド運営の宿を取ってるから行くぞ」
『はーい』
こう言う時商業ギルドの恩恵に感謝する。魔族の土地でも商業ギルド仲間だと分かると魔族のひとたちも親切だし、こうして事前に宿も手配してくれている。
「しかし……やっぱり魔族のひとが多いなぁ」
宿も魔族のひとたちばかりだ。因みに夕食はスイーツではなくナイフとフォークで食べる料理クレープだった。
「いや、リード。リードも半分魔族だから」
「……あ、そうだった」
ブレイクの言葉にハッとした俺だった。




