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【23】国境越えと召喚勇者



――――世界は広い。まだまだ知らないことばかりである。昨日だって素敵な熟女マダム集団ママさんバレー部と出会えたのだから。


「さーて、ついに今日は国境越えだぞ、ブレイク」

商業ギルド宿泊所に一晩お世話になって、朝が来た。


「うん、俺も今回の魔王国との国境は越えたことがないんだ。いつもは魔物多めの冒険ルートを通らされたから……」

ブレイク……やっぱり苦労してんなぁ。よし、今回こそはブレイクのために平和的な国境越えを成し遂げたいものだ。宿のロビーに向かえば既に準備を終えたコーデリアとマキナが待っていた。朝ごはんは宿で出してもらったサンドイッチで既に済ませてある。

それにしてもサンドイッチ……サンド……ドンサ村が妙に恋しいような。いやいや今は国境越えだ。王国の外……魔王国側には一体どんな世界が広がっているのだろうか?


国境までの道のりは徒歩で可能で、お世話になった商業ギルドのひとびとにお礼を言って街の門へと向かう。


「そこからは馬車だって」

乗り合いではあるが国境ともあって屋根付きのちょっといい馬車だが、身分照会などもきっちり行われるのだ。空港の検査みたいでちょっと緊張するなぁ。


「マキナは身分証、大丈夫か?」

「……もちろんよ。ステータス画面は開ける」

まぁ12歳以上だとそれが何よりもの身分証になる。12歳未満は保護者や後見人が身分を保証する申立書を持たせるのだが……普通は大人と一緒だから親や付き添いの大人が申請書を検問官に見せればいい。


俺たちも国境越えのための列に並ぼうとした時だった。何だか騒がしいような。


「何かあったんですか?」

真っ先にブレイクが周囲の大人に問う。


「何だ?ガキはあっち行ってな。ちょっとした揉め事だからよ」

「いえ、俺勇者なんで……!勇者、ブレイクです!」

ブレイクが絵に貼り付けたような笑みを浮かべる。うぐおおぉっ!?

いつの間にあんな営業スマイルを……!?いや、勇者スマイルか。


「ゆ……勇者さま!勇者さまだと!」

「え、そっちも!?」

そっちもってどういう……。


「でもこっちは勇者ブレイクだぞ」

「ガーバルフ王国の勇者だ!」

「ならあのグドトッホ公国の勇者に言ってやってくれよ!」


「え……グドトッホ公国のって……まさか召喚勇者か!?」

「だと思うよ、リード。早速行こう」

「あぁ!」

周囲の検問待ちのひとびとがブレイクが自国の勇者と知り道を空けてくれる。


「何だ何だ!今は取り込み中だぞ!」

検問官が叫ぶが。


「勇者ブレイクです!騒ぎと聞き駆け付けました!」

「ゆ……勇者さまぁっ!!どうぞ!」

すげぇ……勇者ブレイク。勇者特権ハンパない。しかし偽物と言う可能性は踏まないの?いや、この世界で勇者を詐称するような命知らずはそうそういないか。平和な世界ではあるが、勇者とは時に魔王四天王に斧を振り回して追いかけ回され、魔物だらけの旅路を歩まされる命がけのジョブだもの。もちろんこれからは俺がブレイクにそんなことをさせないがな!


そして国境の門の通用口を通してもらった俺たちの前には、数人の美少女たちを引き連れた西洋風の青年が検問官や国境警備騎士たちと言い争っていた。え……?あれが召喚勇者なの……?


てっきり日本からの召喚者かと……いやいや先入観はいけない。日本人にだっていろんな髪や瞳のひとがいるし、外見だってひとそれぞれなのだから。そう言った野暮なことは考えないようにしよう。だから俺にはっきりと言えることは……あの召喚勇者は未婚、周りのガールズたちも未婚女性と言うことだ。つまりは俺のストライクゾーン範囲外と言うことだ!


「何事ですか?俺は勇者ブレイクです」

勇者ブレイクの登場に周りの検問官や騎士たちの表情が明るくなるが……その中なら現れたこわもてな中年騎士が難色を示す。


「こちらは我々に任せてもらおう」

「……ですけど……」

中年騎士の威圧にブレイクは躊躇うが、その時やけに悠長な声が響く。


「ちょうどいい!ぼくもガーバルフ王国の勇者ブレイクと話がしたかったところだ」

「……ちっ」

中年騎士……多分この現場の指揮官なのだろう。あからさまに舌打ちをした。もちろんブレイク相手ではなく召喚勇者の方にだ。

この中年騎士は自国の勇者にそんな態度はとらない。分かるぜ。だってこの中年騎士にはしたたかで優しい姉さん女房がいるんだから。俺には分かるのさ。


「勇者ブレイク!」

グドトッホ公国の召喚勇者が左右に美少女を侍らせながらブレイクの名を呼ぶ。

年齢は俺たちと同じ16歳くらいなのだろうか。だいぶ大人びているような外見だが表情や口調はどこか見た目に似合わず子どもっぽさを感じさせる。


色素の薄い髪に青みがかった瞳。色白の肌にそこそこなイケメン。つまりはブレイクや兄ちゃんの方がイケメンと言うことだ。


「お前のパーティーには聖女コーデリアがいるそうだな!」

「……それはそうだが……それが何だ?」

ブレイクが首を傾げる。まぁいきなりそんなことを言われればそうなる。コーデリアとマキナも訝しげな表情で俺の隣にやって来る。


「勇者と言えば聖女。勇者と聖女はセットだ」

まぁそれはテンプレと言えばテンプレかな。でもコーデリアがブレイクを追いかけていったのはくまちゃん狂を禁じられるであろう従兄のブレイク【兄さん】を心配してだぞ。


「だからこそ、聖女コーデリアはぼくたちのパーティーに入るべきなんだ!異世界出身の地産勇者よりも優秀な召喚勇者のぼく……アレン・タッセルの聖女であることが何よりもふさわしい!」

はぁ……名前はアレン・タッセルって言うのか。うーん……でもしゃべっている言葉は自動でこちらの言葉に翻訳されているので彼が日本出身かどうかは分からない。もしかしたら世界が違う関係もあるのだが。少なくとも俺の知っている日本語とこの世界の言葉は違う。


「勝手なことを言うな!」

その時口を開きブレイクの隣に並んだのはコーデリアだった。



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