【21】背徳のあんドーナツ
――――交易都市ツナード。
到着してそうそうにあんドーナツにかぶりつくのはこの街ならではだろうか。だって乗り合い所のすぐ側に屋台街があり、あんドーナツツイストドーナツ揚げドーナツが目白押し!
『ん~~、おいし~いっ!』
俺、ブレイク、コーデリアはかぶりつくなり感嘆する。これぞ……背徳的な美味しさ……っ!
「マキナも食べないのか?」
何だかんだでついてきたマキナにもおごってやったのだが。
「……まぁ、その、いただくけど」
もひもひと食べ始めるマキナ。本当は食べたかったのか。ツンデレか……?
「う……うまっ」
いやデレ早すぎ。
「マキナはこの後どこに行くんだ?」
「……商業ギルドよ」
「なら俺らと一緒だな。せっかくだから一緒に行こうぜ」
「……まぁそのつもりだったけど……」
へ……?
「とっとと行きましょ。アンタ相変わらずなんだから」
やっぱり俺のことを知ってる?俺も何だか既視感を覚えるのだが……うーん……どこの熟女マダムの娘さんか……思い出せん。
「あ、でもそっちじゃないよ」
ブレイクが告げる。今回も地元マップはちゃんとダウンロードしてますとも!
「マキナもダウンロードしてくか?」
すぐそこの案内看板を示す。もう16歳くらいだからステータス開示してるだろうし……マップのQRコードも使えるはずだ。
「……いいわよ、今さら」
うん……?まぁ俺たちもダウンロードしてるしな。商業ギルドに親御さんが待っているのだろうか。
それとも……。
「マキナはひとり旅か?」
「そうよ……一応ね」
へぇ……すごいな。とは言えこの世界だと成人してるのだ。前世で言うと高校生のひとり旅だと言うのにしっかりしてる……いや、それを言うなら俺もかな。
――――ツナードの商業ギルド
「さすがは商業ギルド。賑わってるなぁ」
商業ギルドの中にお邪魔すれば、早速職員が出迎えてくれた。
「その紋章はよその商業ギルドからようですね。……ルフツワでしょうか」
「はい、そうです」
さすがは交易都市の商業ギルド。ギルド章だけで分かるとはな。商業ギルドの紋章は見れば商業ギルドの商人同士だと容易に判別できるが、どこの……までは俺はまだまだ判別できない。ルフツワとミケホなら分かるけどな。あとツナードも覚えた。砂糖をたっぷりまぶしたあんドーナツが目印だ。
「今回はルフツワ商業ギルド長マリアンとミケホ商業ギルド長姐さ……ウルリーカ姐さんの紹介で魔王国に行くためにこちらに寄ったんです。リードと言います」
「あぁ、聞いていますよ。ようこそツナードへ。今から出ると魔王国に辿り着くのは夜になりますから、今晩はこちらの宿泊施設にお泊まりください」
「ありがとうございます。あ、マキナは泊まるところとか決まってるか?コーデリアと泊まるか?」
「……いいの?」
マキナがコーデリアを見れば。
「もちろんだ」
コーデリアがうむと頷く。
「それじゃ、決まりだな」
「うん」
さて、マキナはコーデリアと泊まることになったので……。
「もし良ければ何かお手伝いします?俺まだまだ勉強中なので」
「おや……でしたら、一緒に冒険者ギルドにお使いに行ってみますか?」
「冒険者ギルド……!初めて行きます」
「えぇ。すぐそこなんですが、一度行ってみるのもいいかと。商業ギルドから商品を卸すことも多いので」
「でしたら是非!」
初の冒険者ギルドかぁ。楽しみだ。暫くすると商業ギルドの職員たちが商品を持ち寄ってくれる。
「マジックバッグで運びますので、はいこちら」
職員がマジックバッグに商品をつめて渡してくれる。
「俺はマジックボックスがありますけど……」
とブレイク。まぁ俺が作成した商品もなんぼか入れてもらってるしな。
「いえ、勇者さま。在庫管理などの都合がありますので」
ざ……在庫管理!そっか……俺もちゃんと在庫管理せねば。商人なんだから。そろそろ自分のマジックバッグも持つべきか。
「そうですか。分かりました。では俺は用心棒で!」
まぁしれっとルフツワ商業ギルドの用心棒として登録しているからな。
「ははは、冒険者ギルドにも用心棒がたくさんいますが、勇者さまと一緒なら心強い」
こうして俺たちは他の職員と冒険者ギルドに向かう。
「マキナはどうする?こっちにいてもいいけど、ついてきてみるか?」
「……うん……」
マキナも興味があるのかな、とことことついてくる。
「そう言えばミケホの商人から聞きましたよ。便利なグッズをたくさん開発されているとか」
「えぇ。携帯ブロック食いります?試食品です」
ポケットに入っているものを差し出せば。
「これはこれは……!ありがたくいただきますね」
もぐもぐと食べた職員にも美味しいと太鼓判をもらうことができた。
そしてすぐ近くの冒険者ギルドでは、異世界ファンタジーの世界でもお馴染みといえばお馴染みのコワモテな男たちもいるが、やけに布面積や部分鎧が際立つ女性冒険者もいる。そして魔王国が間近とあってか人間だけじゃなく魔族もいる。その中に……耳が長く尖ったひとを見掛ける。もしかしてエルフ……?この世界ではあまり聞かない……と言うか見掛けることがなかったから存在を知らなかった。世界にはまだまだ俺の知らない種族がいるのかもしれない。
そんな中、冒険者ギルドの中に入れば。
ギルドのホールに集まっていた女性集団に目が行いった。
か……彼女たちは……っ!




